(山本)春を彩る桜。
日本では古くから絵画や歌をはじめ料理でもこの花を楽しむ文化を育んできました。
その一つが…桜の季節皆さんもご家庭で手作りして春の気分を満喫してみませんか?
(テーマ音楽)・「さくらさくら」さあ今年もこの季節やって来ました。
毎月1回お送りしている「和・スイーツ」。
今回は春を代表する和菓子でありながら知っているようで知らない事が多い「桜餅」がテーマです。
教えて下さるのは太田達さんです。
よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
和菓子を作る方たちにとって桜餅というのはどういうお菓子ですか?「節季物」というんですけれど例えば草餅の草とかそれからちまきの笹とか。
香りを感じながら作り手もみんな作りますのでうちのスタッフ全員が作って触るんですけどね必ず。
確かに和菓子というのは季節を描くお仕事ですものね。
作り手もこの香りというもので感じられるものかなと思います。
さあこちらをご覧下さい。
今日教えて頂く関西風の…2枚の桜の葉の間にだんごが入っていて。
ここからもいい香りしてきますよね。
この桜餅毎年見ますけれども実は知っているようで知らない事が多いと。
形がいろいろあってね。
という事でこんなものを用意してみました。
まず最初は…「さくら」という言葉がね「さ」というのは「早苗」を表しているんですね。
「くら」というのは「いわみくら」という神が降りてくるところ。
日本列島というのは稲作民族でございますよね。
桜の花というのは咲く時期が割と一定してるんですよね。
梅とかに比べると。
ずれが少ない。
という事はパイロット・プランツというか「今から農耕を始めよう」という感じの…。
そういう意味では九州から北海道まで非常に重要な植物かなと思います。
合図の花…。
そうですね。
それが好かれる原因かなという事でしょう。
それでこの季節に桜餅を食べて田植えを始めようと。
お花見をしてこれから働こうという感じかな。
さあ2番目です。
確かに地域によっていろんな形がありますよね。
こういった道明寺を使ったものとか小麦粉を使ったものとか地域だと思うんですね。
今こちらにあるのが関西風の桜餅ですね。
大和朝廷の本拠といったらおかしいですけど稲作民族の本拠である関西においてはこういったもち米というのが祈りに通じる材料かなという気がします。
道明寺粉を使っているのが関西風。
特徴でしょうね。
そして…こちらは関東風の桜餅の写真ですが。
長命寺のは小麦粉ですよね。
だから関東における小麦文化というか葛餅も小麦粉を使っていますのでそういった感じかなと思います。
生地に小麦粉を使っているものもあるという事なんですね。
そして3つめの質問。
確かに気になりますね。
気になりますがこれは桜餅が出来てからお答え頂く事にいたします。
では桜餅の作り方の工程をご覧下さい。
大きく分けて3つの工程があります。
この3つの工程に分けて教えて頂きます。
どんなこしあんを目指したらいいですか?今日は関西風と言いましたからあっさりと上品な風味というのが大きいかなと思います。
あっさりと上品に。
これが目標という事で。
材料です。
白ざらめがいいですか?そうですね純度が高いですね。
これは普通の上白の砂糖よりも。
だから長い時間をかけて染み込ませるためにこういった純度の高いざらめを使うという事ですね。
ではお願いします。
こちらお鍋に入っているのは…。
一晩お水につけておいて洗ったものなんですけども膨れてるの分かりますか?ちょっと大きくなってますよね。
こんな感じで膨れています。
洗ってあげてここまでもってくるんですがこれにお水を入れて炊いていきます。
こちらに炊いているものがあります。
こういう感じで。
出来上がったら沸騰してきますよね。
そしたらここでびっくり水という事をします。
びっくり水。
びっくり水というのは水を入れて冷やす事ですよね。
昔薪で炊いてる時なんかすぐに調整できませんからそういう意味もあると言われてますが今日は小豆の中心の温度と外側の温度を調整するためにあります。
そしてこれを半分ぐらいほかしますね。
ではここからがびっくり水ですね。
そうです。
そして水を入れます。
足します。
これ人肌ぐらいがいいですね。
ちょっとまだ熱いかな。
人肌ぐらいまで水を入れる。
そしてこれを火にかけていきます。
つまり外の皮の温度の方が中より高いので…。
一緒に炊き上げる方がこしあんなので中身を使いますからそれが大事ですね。
中火で煮込んで下さい。
この状態でどれぐらい煮ますか?10分ぐらいかな。
お隣に10分煮たものがあります。
だいぶ水かさも減って色が…。
これアクなんですね。
小豆が見えなくなっちゃいましたね。
今日の目的は上品にあっさり仕上げるために渋きりという小豆の渋を取ります。
今これをやりますね。
渋きりというのはアクの入った煮汁を捨てる事ですよね。
こちらです。
こうする事によって上品な…。
そうですね。
これで洗ってあげてきれいに流してあげて渋を落とします。
こんな形ですね。
これをまた水を入れて火にかけます。
これを更に煮ていくんですね。
更に煮ているのがこちらです。
見て頂けますでしょうか。
先ほどに比べると煮汁の色がきれいで小豆が見えてますよね。
あんこの色に近づいてきたと思われませんか?確かにそうですね。
これをずっと2〜3時間眺めるんですけどね。
これどれぐらいの火加減で…。
加減しながらでいいんですけどね中火ぐらいでずっと見ていてあげて下さい。
小豆がゆっくり動いてるような感じですかね。
グツグツならんように動くような感じですね。
2時間ぐらい煮て頂いたらいいかなと思います。
これ水が減ってきたら…。
足して下さい。
足しながらアクを取って頂いてもいいです。
では2時間煮たものが…。
分かりますか?小豆が動いてるんですけどね。
こういう感じで。
本当ですね。
グラグラ踊っています。
こうなったら上げてもいいかと思います。
ちょっと捨てますね。
これをこういう状態ぐらいで…。
今少し捨てたのは…?これ今から小豆の中…「豆汁」といいますけどそれを出す工程をやります。
こうしてつぶしちゃいます。
玉じゃくしで…。
いいと思いますね。
この中身を出してあげようという事です。
皮から…中身を出す。
このままあげたらつぶあんなんですけどこしあん非常に滑らかなものなので中身を出してあげます。
そして中身を出してこういった細かい通しがあればいいんですけどまあ何回もやればいいのでこのようにします。
こしていくんですね。
そしてつぶしながら下に落としてあげます。
こんな感じでずっとこしていって下さい。
こうする事によって皮から中身が…。
中を出してあげてきれいに下に流してあげてそしてお水を時々下に落としますからこういう感じでやって頂いたらいいですね。
これ下に落ちたのをまた上げてこの中身が大事なんで。
これがこしあん。
これをもう一回こします。
2回やります。
そして2回やったものを今度はさらしの中に入れます。
2回するというのはなぜですか?滑らかに。
だから今日の目標ですよね。
こしあん作りの目標です。
2回こしてさらしの上に流して…。
入れてあげるとコーヒーのドリップみたいに下に落ちますね。
水分が。
これくらい落ちたらいいかな。
こうしたら中が大事なので…。
「生あん」といいますけどこれがこしあんの素ですね。
こうやりまして…。
そしてこうやって絞ります。
しっかり絞っていいんですか?しっかり絞って下さい。
ギューッて。
さっきのこす時も底に付いたのも大事に残してこそげて中に入れてあげないとなくなってしまいます。
こうして絞り上げたものをあけますね。
さあ見てて下さいね。
こしあんの完成です。
生あんですね。
まだ糖分の入っていない生あん。
きれい!糖分が入っていないとちょっと白っぽいんですね。
でもきれいですよね。
きれいですね〜。
こんな感じですね。
こしあんの生あんが出来ました。
ではお鍋の中を見て頂きましょう。
これは…?さっきのざらめですね。
こうやって沸騰さすぐらいにしましてね。
これを大体半分に分けて練り上げるのがこしあんを作るという作業になります。
沸いてきましたね。
ここ非常に大事なんですけど。
こうやって入れてあげて…。
半分ずつぐらい。
「砂糖を食わす」って僕らは言いますけど。
「食わす」?中の小豆の豆汁にね。
これ大事なのは焦げないように。
周りが温度が焦げますから。
こうやって2回入れちゃいます。
せっかくここまで丁寧に作業してきてここで焦げちゃったら悲しいですよね。
味が台なしになります。
これほんとにじっくり水分をゆっくりとばすように見ていって下さい。
ここは手を動かして…。
だいぶ仕上がってるのがありますのでこちらに移ります。
どういう状態になるまで混ぜるかといいますとこういう状態だそうです。
周りの縁に付いたりするのが…白茶けているのはないように頑張ります。
艶が出てますね。
ほんとに滑らかな上品なこしあんが…。
これ目安はこう…。
ぽたっと落ちたでしょ。
分かりますか?こんな感じ。
ぽったりしているぐらいまで。
これくらい水分をとばしてあげて下さい。
これであんの完成ですね。
冷ました方がいいんですか?これでも冷やすのは2〜3時間ですけど。
ほんとは一晩ぐらいおいて頂いた方がいいですね。
これでこしあんの完成です。
次は道明寺粉を使って…材料です。
上白糖。
さっきと違いますでしょ。
これは早く食わす。
さっきはゆっくり砂糖を染み込ませたじゃないですか。
これはゆっくりと食べさせるために上白の純度が低い方がいいですね。
そこで使い分けてます。
ではお願いします。
これも実は前の日の仕事なんですけど分量の…水は大体1.3倍だと思って下さい。
これを合わせてあげます。
この道明寺粉は細かいものですね。
いろいろありますけれども。
これ6分割してますね。
「6割り」というのを今日使っています。
じゃあ細かいものを使う。
上品な滑らかな感じを出すという感じで思っています。
こうなりましたら一晩おいて下さい。
固まってきます。
固まってきたのを蒸し器にかけるという事です。
さあ蒸し器にかかっているものがこちらです。
これで大体20分蒸して下さい。
家庭用のだったら20分でいいかな。
ふたを開けて見せて頂けますか?中火で20分蒸したものがこのようになります。
ふっくらとしましたね。
固まってるのも小さく分けて頂いた方が蒸気がよく通りますよね。
熱いので気を付けて下さいね。
ここは一番熱いので。
やけどをしないようにご家庭の皆さんも気を付けて下さいね。
ボウルにあけます。
これを…餅つきみたいになったらいけないですね。
粒子を残すように粒を残すようにという感じです。
切るようにというのかそんな感じでいきますが砂糖はいっぺんに入れないで下さいね。
分けて入れます。
そうしないと浸透圧でお水が出てまとまらなくなります。
じゃあ3回ぐらいに分けて入れさせて頂きます。
最初です。
粒をつぶさないように混ぜる事が大事なんですね。
日本という国は粒食と粉食という文化がありますよね。
やっぱり神聖なものというか粒の道明寺って「日本書紀」とか「古事記」にも出てきますので。
粒の感じが残った方がいいかなと思います。
表面がぬれてるような…。
浸透圧でお水が出てます。
こういうふうに徐々になんですが素早く。
それから次にあんを包むという工程が待ってますけど冷めちゃうと包めなくなります。
下さい。
こんな感じで合わせていきます。
これで3回。
3回ですね。
もう一回入れて混ざったら生地の出来上がりです。
これで生地の出来上がりです。
先ほどの生地このように10等分にいたしました。
あんも10コに分けてあります。
これまだ温かいんですよね。
温かくなければ包めないので実は素早くやって頂きたいです。
ここは時間との勝負ですね。
忘れてはいけないのは葉っぱを先においておくという事ですね。
桜の葉っぱが登場しました。
じゃないと包んで置く所がないって事になっちゃいます。
これ分かりますか?裏表があるの。
はいこちら葉脈が…。
これが裏ですよね。
裏の方に産毛があるのでお菓子自体は表に置きます。
今こういうふうに先に用意されたらいいかなと思います。
そしてこれも大事なのは道明寺をつかむ時はちゃんと手水をして下さい。
そうでないと付いてしまいます。
ベトベトにくっついてしまう。
これでこうやって持ちますね。
ここから注目です。
包み方です。
かぶすようにしてこの辺りから回しながら周りを立ち上げていきます。
それでこうやって寄せてあげます。
これいくつかやられたらすごくお上手になります。
そしてここでこのように…。
形を成形しますね。
小判形のようになればいいかな。
そしてこのように置きます。
あ〜きれい!うっすらとあんが透けて見える感じで。
このように…上の葉は下よりもちょっと大きい方がいいですね。
その方がきれいになります。
これ外側裏側が…。
さっきと同じ事です。
裏には産毛が生えてますので桜餅に関してはこういうふうな表側のつるっとした方を使います。
これで完成です。
さあ出来上がりました。
関西風の「桜餅」です。
こうやって桜の葉に包む事によって桜の香りあと塩けが移っていくわけですね。
香りがすごくいいですね。
これを食べて皆さん「いよいよ春だお仕事を始めよう」と…。
農作業を始めようという事ですね昔は。
そういう事なんですね。
では材料でおさらいしましょう。
こしあんは滑らかで艶やかに仕上げるのがポイントでした。
そのためにアクをしっかりと取って小豆の皮を丁寧に取り除きました。
生地は粒が残るように仕上げて下さい。
道明寺粉を畳むように混ぜると粒が壊れず食感よく作れます。
桜の葉で包んで香りの良さと共にお楽しみ下さい。
さあこれから頂きたいと思いますが…。
先ほどの質問の答え教えて頂きましょう。
これね…食べた方がマナーとしていいのかなと。
…と思われたりね。
悩みます。
おじちゃんとかが「食べるもんやで」とか言う時があると思うんですけどね。
菓子屋とかお茶の立場でいうと食べない方がいいと思います。
食べなくていいんですか?せっかく滑らかに上品に作ったじゃないですか。
それがこの葉っぱでコツコツした感じになるでしょ。
食べなくてもいいという事ですね。
では正しい桜餅の食べ方を教えて頂きます。
基本的にあんまりこんなのお持ちじゃないですけど懐紙があるとすごく便利です。
まず懐紙を1枚取りまして…。
ここにお菓子を黒文字とかようじとかで移して頂きます。
そして食べるんですけどこの中でこの葉っぱをどこに置くんかと思ったらもう一枚使えばいいかなと思います。
そしてこうやって上の葉っぱを外します。
そして付いてる方をこっちに置きます。
それから食べる時ですけどこういうふうな感じで。
取っていきます。
最初に。
そして黒文字で…。
男やったら2つぐらいでいいかなと思うんですけど。
大きさによって。
手で食べても実はいいと思うんですけどね。
こうやって召し上がる…いただきます。
で黒文字を置いて…。
残って汚いのでこうやって汚い面と汚い面を合わせます。
そしてこの懐紙に挟む。
そしてこうやって…懐にでも入れて頂いて。
すてきですね〜。
もしこんなのがない時やったらこういったとこで合わせてお皿の上で…甘党のお店とか行かれて茶店とかで出たら合わせて返されたら出して下さった方に対してきれいな状態で返すというかね。
日本人のそういうところがいいところじゃないですか。
そうですね心遣い。
相手を思いやる。
感謝の気持ちというかね。
こういったものがお菓子の中にあると思います。
今日は「桜餅」をテーマに教えて頂きましたけれどもこういうお菓子一つで季節を感じるそこに意味があるというのは日本人の美意識が詰まったお菓子だなという感じがしましたね。
原点的にはあそこに椿餅というのがありますけど2枚葉で挟むという「源氏物語」から続いてるお菓子ですがこれがあまり広まらずに桜が広まったのはさっきの「さ」「いわみくら」という信仰の話がありました。
椿は大事な花なんですがほんとに祈りですよね。
常緑樹で椿でしたら常緑樹が長い事もつという感じになりますね。
この椿餅が桜餅のルーツという事なんですね。
2枚葉で重ねると。
はい。
という事で今日は「桜餅」を教えて頂きました。
この内容はテキストにも載っています。
「きょうの料理」の3月号になります。
こちらも是非参考になさって下さい。
今日は太田達さんに教えて頂きました。
ありがとうございます。
どうもありがとうございました。
(テーマ音楽)2014/03/20(木) 11:00〜11:25
NHKEテレ1大阪
きょうの料理 和・スイーツ「桜餅」[字]
和の素材やテクニックを生かしたお菓子を紹介する「和・スイーツ」。3月は春を代表する「桜餅」。京都の老舗和菓子店当主・太田達さんが京風の本格的な作り方で伝授。
詳細情報
番組内容
和の素材やテクニックを生かしたお菓子を紹介する「和・スイーツ」。3月は、桜の時期に欠かせない「桜餅」。ひと口に桜餅といっても道明寺粉でまんじゅう型の関西風と、あんをクレープで巻いた形の関東風がある。今回は、平安時代以来の歴史を受け継ぐとされる関西風の桜餅を、京都の老舗和菓子店当主・太田達さんが、小豆からこしあんをきっちり作る本格的な方法で伝授。知ると自慢したくなる、由来や食べ方のマナーも教わる。
出演者
【講師】老舗和菓子店四代目当主…太田達,【司会】山本美希
ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
趣味/教育 – その他
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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