ハートネットTV シリーズ・震災(3)「支えあいの“縁”を創る」 2014.03.05

東日本大震災から3年。
いまださまざまな課題が山積する中新たな専門職の活躍が注目を集めています。
地域が抱える不安や課題を掘り起こし住民自らの力で解決できるよう導く役割を担っています。
解決の鍵となるのは人と人との縁を結びいかに地域の力を引き出していけるか。
地域福祉コーディネーターたちの奮闘を追いました。
2月海は穏やかに輝いていました。
3年前町をのみ込んだ津波。
石巻市ではおよそ3,700人が犠牲になりました。
今市では災害に強い町づくりを目指し10年計画で復興を進めています。
大規模な復興公営住宅の建設も始まりました。
その一方で暮らしを立て直すめどが立たず一人悩みを抱える人も少なくありません。
洋裁店を営んでいた…津波で仕事と住まいを失い仮設住宅で妻と2人で暮らしています。
妻のいよ子さんは認知症を患っています。
幸雄さんが目を離した隙に家を出て戻ってこられなくなる事もあるといいます。
いよ子さんに認知症の症状が出始めたのは5年前。
以来家の事は全て夫の幸雄さんが切り盛りしてきました。
この先症状が進み自分も年を取った時妻を支えていけるのか。
幸雄さんは不安を抱えています。
去年から内海さんのもとに一人の若者が通い始めました。
石巻市の…内海さ〜ん。
(谷)こんなの作ってきました。
この前内海さんと話して…。
ああ介護の。
「同じ悩みを持つ人と語り合いたい」。
そんな内海さんのひと言を聞いた谷さんは認知症の介護をする人たちの集まりを開こうと思いついたのです。
(谷)よろしくお願いします。
はい。
地域福祉コーディネーターの活動拠点となっているのが…現在10人のコーディネーターがおり平均年齢は36歳。
社会福祉士やケアマネジャー中には飲食業で働いていた人など経歴はさまざまです。
谷さんは九州からやって来たボランティアでした。
石巻市では町の復興が進む中一人一人の住民が抱える課題にはこまやかな対応ができずにいました。
そうした状況をなんとか改善しようと新たに配置されたのが…地域福祉コーディネーターが必要とされたのはこれまでの地域のつながりが震災で断たれてしまったからでした。
仮設住宅には同じ地域の人がまとまって入居する事ができず交流は途絶えがちでした。
更に去年からは復興公営住宅への転居が始まり移転先で新たなコミュニティーをどうやって作っていくかという課題も生まれました。
そこで去年4月石巻市は市内を10の地区に分け地域福祉コーディネーターを1人ずつ配置。
今後10年かけ地域の人と人をつないで新たなコミュニティーを作り出す事にしたのです。
地域福祉コーディネーターを立ち上げた…北川さんはこの新たな試みは従来のやり方にとらわれない若者に担ってほしいと考えました。
まねきの家での自主活動のグループの所に寄り…。
住民たちが集う集会所や拠点を一日中訪ねて回っています。
担当は海沿いのエリア。
津波の被害が最も大きかった地区です。
この日鈴木さんが向かったのはかつて800世帯が暮らしていた…今は全壊を免れた23世帯が山の麓に寄り添うように暮らしています。
鈴木さんが訪ねたのは住民たちが寄り合う場所として新たに作られた集会所です。
残された23世帯は今どんな不安や悩みを抱えているのか耳を傾けます。
住民たちが語り始めたのは津波対策への不安でした。
どんなに訴えても声が届かない事のいらだち。
鈴木さんは住民と行政との橋渡しが必要と考えました。
次に鈴木さんが向かったのは間もなく大規模な区画整理が始まる地区。
この機会に誰もが過ごせる新しい施設を自分たちの手で作ろうとしていました。
しかし資金の工面や資格を持つ医療スタッフの確保など住民たちだけでは分からない事が山積みでした。
鈴木さんはどんな制度や助成金があるのかをアドバイス。
住民たちのやりたい事が実現できるまで側面から継続して支援していこうと考えています。
事務所に戻った鈴木さん。
大切にしている日課があります。
その日聞き取った住民たちの声をありのままの言葉で記録する事です。
地域の人と交わす何気ない言葉の中に住民の本音がある。
それを見つけ形にしていく事が自分たちの仕事だと考えているのです。
認知症の妻と2人暮らしの内海幸雄さんが暮らす仮設団地。
地域福祉コーディネーターの谷祐輔さんは認知症の介護をしている家族の集まりに参加してくれる人を探していました。
(谷)おはようございます。
訪ねたのはこの仮設団地の自治会長。
ああおはようございます。
はいどうぞ。
自治会長の山崎信哉さんは以前谷さんが取り組んだある問題の解決にも力を貸してくれた人物です。
その問題とはアルコール依存症。
一人の男性が度々救急搬送され周辺は対応に頭を悩ませていました。
谷さんはアルコールに依存してしまう心の背景を知ってもらおうと勉強会を企画。
山崎さんが幅広く声をかけてくれたおかげで勉強会には住民たちも数多く参加。
理解を深め解決に導く事ができました。
どう思いますか?山崎さんは認知症の家族の集まりに多くの人が来てくれるよう今回も幅広く呼びかけると約束してくれました。
この日もう一人の地域福祉コーディネーター高橋早希さんは受け持ちの地区に向かって車を走らせていました。
仮設住宅の外に置かれているたくさんの荷物。
近隣の住民たちはここに住む持ち主の人に早く片づけてほしいと伝えていました。
しかし荷物は片づけられず高橋さんが訪ねてもその人は会ってくれません。
高橋さんは詳しい事情を聞くため仮設住宅の自治会長のもとを訪ねました。
(高橋)そういうスタイルでいいと思います。
その後何度も足を運ぶうち高橋さんはある事に気付きました。
置かれている荷物の中に使い込まれた家具やLPレコードなどがあったのです。
その一つ一つが本人にとって掛けがえのない大切なものなのかもしれない。
高橋さんは自分の考えをほかのコーディネーターたちに投げかけてみる事にしました。
まずはその住人と周りの人が心を通わせる事が大切ではないか。
高橋さんは確信しました。
明くる日高橋さんが訪ねたのは…復興公営住宅の資料を手に入れました。
その住人は引っ越す時に荷物をどうしたいと考えているのか。
本人の思いを聞いてみる事にしたのです。
誰にも打ち明けなかった心の内。
その思いに少しでも近づく事ができればと高橋さんは考えていました。
今回の訪問。
初めてその住人は玄関先で迎えてくれました。
今そしてこれからどうしていけばいいのか。
その住人は一人で決めかねていました。
高橋さんは引き続き相談に乗ると約束しました。
続いて向かったのは仮設住宅の集会所。
分かった事を周りの人たちに伝えました。
同じ仮設住宅で暮らすご近所。
これからはもっと話し合い支えあっていこうとみんなで合意しました。
谷祐輔さんが企画した認知症の家族の集まりの日がやって来ました。
認知症の妻と2人暮らしの…この日を心待ちにしていました。
最後徘徊するようになって24時間体制で…。
集まったのは7人。
それぞれ自らの体験を語り始めました。
家族の大勢の中の一人は駄目だなって思ったんですね。
皆誰にも言えなかった思いを一人抱えていました。
予定していた2時間が瞬く間に過ぎていきました。
会の終わり内海さんはこの日のために用意してきたものを取り出しました。
自ら下絵を描き妻が色を塗っている塗り絵です。
主催したのは地域福祉コーディネーターの谷さんですが主役は最後まで住民たちでした。
内海さんこれ私に一枚一枚頂戴。
あっどうぞ。
活動が始まって間もなく1年を迎える石巻市の地域福祉コーディネーター。
今日も住民一人一人の声に耳を傾けます。
認知症の家族の集まりに参加した内海幸雄さん。
その後震災前に楽しんでいた趣味の彫刻を再開しました。
地域福祉コーディネーターたちが訪ねた先で新たな人と人との縁が生まれています。
2014/03/05(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ・震災(3)「支えあいの“縁”を創る」[解][字]

復興から取り残される人々を支援しようと、宮城県石巻市は市内各地に「地域福祉コーディネーター」を配置。きめ細やかな支援で成果を上げつつある。独自の取り組みを追う。

詳細情報
番組内容
宮城県石巻市では、順調に生活再建が進む人と、そうでない人との格差が深刻化している。そこで同市は、市内を10地区に分け、各地に1人ずつ新たに「地域福祉コーディネーター」を配置。コーディネーターは各地区に入り込み、独居者が集える茶話会の開催や、アルコール依存の人を周囲が支える仕組み作りに取り組むなど、きめ細やかな活動で成果を上げつつある。誰もが取り残されることのない復興を目指す、奮闘の日々を追う。
出演者
【語り】河野多紀

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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