最期まで住み慣れた地域で暮らしたい。
広島県尾道市の…40代半ばに脳出血で倒れ今は意識に障害があります。
妻の智子さんはそんな寝たきりの夫を自宅で介護しています。
尾道ではどんなに重い病気になっても自宅で暮らす事が可能になっています。
(2人)こんにちは。
理由は医療と介護をチームで行う事にあります。
その中心は在宅の主治医。
患者の症状に合わせ専門医に診療を依頼したり看護や介護スタッフに的確な指示を出したりするのです。
ますます増加する高齢者の医療の在り方を尾道の取り組みから見つめます。
瀬戸内海に面した人口14万の広島県尾道市。
高齢化率は30%を超えています。
全国平均より10ポイントほど高い数字です。
親子3代で地域医療を支えてきた…患者の平均年齢は79歳になります。
医師の片山壽さんは高齢化が急速に進む中新たな医療の在り方が必要だと感じてきました。
認知症やがんになる患者への対応が重要になったのです。
(片山)次々とそういう人が今同じような人がいっぱいいる。
片山さんはどんなに症状の重い患者でも訪問診療で支えてきました。
そんな姿勢に対し町の人は大きな信頼を寄せています。
はい。
すいませんでしたね。
お姉さんってどなた?ハイガキ。
はいどうも。
またよろしくお願いします。
すいませんでしたどうも。
(2人)こんにちは。
こっちへ?こっち向ける。
仁井さんちょっとこっち向こうな。
この日訪れたのは意識に障害のある…仁井さんは自力で呼吸をする事が難しく酸素吸入器を使っています。
去年には腎臓がんも発症しました。
妻の智子さんは刻々と変わる夫の症状がいつも心配です。
排泄呼吸歯や皮膚。
仁井さんには医療としてケアすべき点がいくつもあります。
そのため内科医の片山さん一人では限界があります。
そこで片山さんはほかの開業医と連携するチーム医療を築き上げてきたのです。
この日訪れたのは…気管のケアを行っています。
チューブの交換を定期的に行う事で菌が入り起こる合併症の危険を減らしています。
泌尿器科や眼科皮膚科歯科など6人もの医師が主治医の片山さんを中心にチームを組んでいるのです。
気管切開のトラブルこの人プロがやってるからゼロ。
だからそういう開業医のプロ集団の集まりでチーム医療をやってるという事。
尾道では地域で暮らす患者に必ず在宅主治医がつきます。
その主治医が決めた治療方針を基にさまざまな専門医がバックアップします。
更に主治医は訪問看護や訪問介護のスタッフとお互いの情報を交換します。
こうした連携システムによって患者の最適な医療と介護を考えていくのです。
しかし最近厳しい現実が出てきました。
老夫婦世帯や独居老人の増加です。
仁井智子さんも2時間置きのたんの吸引や体温の計測を一人で行っています。
自分の体がしんどいでしょ。
厳しい看病の現実。
チーム医療があっても在宅を支えきれないケースが出てきています。
そこで尾道では地域密着型の介護施設小規模多機能ホームに注目しました。
1歩1歩よいしょ。
この施設では通いのデイサービスのほか宿泊もできます。
その宿泊サービスを使い第2の自宅として患者に利用してもらう事にしたのです。
全国的には比較的症状の軽い人が利用する小規模多機能ホーム。
ここでは重症の人も入所できるようにしました。
(佐古田)九十九さん。
九十九さん。
去年の10月に入所しました。
肺炎を患い酸素吸入が必要です。
また食事は自力でとる事ができずチューブで栄養を補給しています。
分かる?ねえ見える?九十九さんがここを利用する事になったのは肺炎を起こし医療行為が増えたため家族が自宅で看病しきれないと判断したためです。
主治医は片山さんです。
片山さんはこの施設でも自宅と同じようにチーム医療をしています。
そのため施設は安心して重症の患者の受け入れができるのです。
排泄の調子が悪いと施設から報告を受けました。
ルネトロンに変えよう。
医療と介護の連携が九十九さんを支えています。
独り暮らしに不安を感じて入所した人もいます。
年末に脳腫瘍が見つかりました。
そのため離れて暮らす家族と相談し入所する事にしました。
片山さんは脳外科の医師と連携し適切な薬物治療を行う事で症状を和らげています。
熊本さん今度1回熊本さんの事で会議するから。
だいぶよくなったからな。
脳腫瘍このくらいだったの。
歩行も安定してますし家族の人は話もすごくできるようになったって言われてるので。
だって90越えてる人は多いし…脚が腫れたり…。
そうそう腫れたりするしね。
片山先生が久しぶりに血液検査しとこうや言うて。
介護施設の…佐古田さんのもとには入所を希望する人から次々と問い合わせが入ってきます。
お世話になります。
これから施設を出ますので…。
この日も急性期病院に入院している患者の家族から連絡が入りました。
佐古田さんは早速患者のもとに向かいました。
おはようございます。
おはようございます。
お待ちしてました。
おはようございます。
調子は?まあ…まあまあ。
年末にすい臓がんが見つかり化学療法のため入院しました。
吉田さんは尾道で寿司屋を営んできました。
お見舞いの花は50年以上のつきあいがある近所の人からです。
退院後叔母が独り暮らしを続ける事に不安を覚え施設への入所を希望したのです。
佐古田さんは片山医師を訪ねる事にしました。
めどが立っていなかった在宅主治医を片山さんが引き受けたのです。
おはようございます!初めまして。
吉田さんの姪御さんの沖谷さんです。
座って下さい。
片山さんはCVポートと呼ばれる器具を使い栄養補給する事を提案しました。
片山さんは早速入院している病院を訪ねました。
急性期病院の医師との連携は在宅主治医の役目だと考えているからです。
尾道では病院から退院する時などその後の医療や介護について話し合うケアカンファレンスを開きます。
この日参加したのは病院の医師や在宅チーム医療の面々。
そして佐古田さんたち施設のスタッフでした。
事前に情報をメールなどで交換する事でできるだけ会議そのものの時間を短縮しています。
そのため参加者の時間調整がしやすくしかも患者の状況に変化が起きた時迅速に開く事ができるのです。
介護施設は医療と連携する事で介護の質が大きく変わってきたと感じています。
はい撮ります。
はいいいですよ。
毎日チーム医療の専門医が入れ代わりやって来ます。
九十九さんこんにちは!ちょっと口の中見せて下さいね。
九十九さんのもとを訪ねたのは…佐古田さんは医師の治療に立ち会います。
治療の内容を知る事が介護に生かせると考えての事です。
佐古田さんは黒瀬さんのやり方を学び九十九さんの口腔ケアに努めています。
歯があるんよねおじいさんはね。
自分の歯よね。
食事が口からとれない人は特に念入りに歯磨きが必要だと教わったのです。
菌の発生を防ぎ誤嚥性肺炎につながる危険性を減らしています。
ほかの施設で働いた経験のある介護スタッフたちは医療と連携する事で介護内容がこれほど変わるのかと驚いたと言います。
佐古田さんは施設を自宅と同じような環境にしたいと考えています。
そのため家族の面会は24時間いつでも自由と決めました。
おはよう。
私誰?あんた来たん。
私誰?何しに来たん。
いい天気よ外は。
こんにちは。
93歳の井上ナツコさんのもとには近所に暮らす娘が頻繁に訪れています。
高校生もね。
(ナツコ)ほうよ。
じゃけようもうけたよ。
ねえナッちゃん。
もうけた。
(笑い声)肺炎を患っている…おととし病院からここに移り住みました。
妻の宏子さんは夫の表情が病院にいる時とは比べ物にならないと感じています。
(宏子)ここは本当ありがたいですよ。
よくしてもらって。
家族から話を聞く事でスタッフたちは患者の人生や考え方を知り接し方に変化が生まれると言います。
私たちが何が尾道方式の中で役立てるかなと思ったらそういう小さな環境を整える事であったり本人の本当の意思を24時間聞ける訳ですからそういった事を聞いて片山先生主治医の先生たちと相談をしてまた方向性を決めるとか治療のしかたを変えてもらうとかいろんな方向ができるじゃないですか。
だからそれが私の施設の役割かなと思ってます。
最期まで自宅と同じような生活を送ってほしい。
施設では末期がん患者も受け入れています。
原田吉明さんは末期の喉頭がんでした。
家族からは穏やかな最期を過ごさせてほしいと希望がありました。
大好きなワインを味わえたクリスマス会。
近所の保育園児との交流会。
原田さんが最も喜んでくれました。
この翌日亡くなりました。
スタッフたちは患者の死を家族を失う事のように感じています。
理屈ではないと思います。
人の命が過ぎる時をそこに立ち会うっていうのは。
怖いのではなくて悲しいのです。
肉親ではないけれどもこういう小規模で顔見知りになって会話ができなくても声かけしてふだん見てる人が亡くなる時悲しいんです。
だから命が尽きる時そこを立ち会うというのはやはり覚悟がいる事だと思うんです。
小規模多機能ホームとしては1年で10人以上という全国でもまれな数のみとりを行っているのです。
チーム医療に取り組んできた片山さん。
この日も訪問診療に出かけました。
心臓にペースメーカーを入れています。
ずっと片山さんに診てもらってきました。
川柳が趣味の山本さん。
80歳を記念して作った句があります。
片山さんは患者がどのような最期を送りたいか知っておく事が主治医の務めだと考えています。
山本さんとはこれを取り交わしてあるんです。
「生前の意思」というものを。
「意思決定が不可能になった場合一切の延命的処置を希望しない。
ただし可能な緩和医療はお願いします」。
僕が裏書きをしてる。
主治医として患者の人生に寄り添いたい。
その信念がチーム医療を築き上げる力になったと感じています。
超高齢社会というのはホントに国民にとって希望しない実態希望しないケア希望しない人生の最期になっちゃう可能性があるでしょ。
だからそこを一番担保するのは主治医であると。
主治医が責任持ってればその人は望んだ最期を迎えられる。
日本は近い将来3人に1人が高齢者という時代を迎えます。
最期まで豊かな人生を送りたい。
患者の希望をかなえるためどのような仕組みが作れるのか。
尾道の取り組みは一つの道筋を示しています。
2014/03/19(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「最期まで地域で暮らしたい〜チームで支える 広島・尾道〜」[字]
介護、認知症を抱えるがん患者など、自宅でのケアが難しい世帯が増加。そんな中、注目されているのが小規模多機能ホーム。先進的な取り組みを行う尾道の取り組みを伝える。
詳細情報
番組内容
広島県尾道市では、医師会が中心になり、15年ほど前から地域連携医療に力を注いできた。急性期病院、開業医、看護師、介護スタッフなどが連携してチームを組むことで、一人一人の患者にあたり、全国的に注目されてきた。しかし独居老人や老老介護など、自宅でのケアが難しい世帯が増加。新たな取り組みとしてスタートさせたのが、小規模多機能ホームだ。スピードある治療と、的確な介護を提供する尾道の現場を見つめる。
出演者
【語り】飯田紀久夫
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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