冬のロンドンは聞いていたほど寒くはなかった。
世界一がイチバン集まる会社に乗り込む事にしよう。
基本来客は受け付けていないとの事。
「中に入れたのはマイケル・ジャクソンとあなたたちだけよ」。
そう聞かされた。
ギネス世界記録の本部にようこそ。
私はロンドンチーフのクレイグです。
ご存じかい?あらゆるジャンルの世界一を集めたこの本が世界で最も売れている本だって。
そしてこの男がその編集長。
好奇心をそそるものがたくさんありますよ。
これはマシュー・マッグローリーという…彼が30歳の時に履いていたもので48.5cmあります。
これは…340個ものアイテムから出来ているんです。
こちらは世界でイチバン長〜い爪。
爪はなんと8mもあるんです。
日本人もいますよ。
世界一長いモヒカンです。
ここにいると世界は広いなって思う。
これは最初に出版された「ギネス世界記録」の本です。
1955年に出版されました。
始めたのはギネスというビール会社でした。
その社長が狩りに出かけた時ある鳥を撃ち損ねました。
その時「今の鳥はヨーロッパでイチバン速い鳥だったな」と言ったんです。
すると一緒にいた仲間は「いやもっと速い鳥がいたよ」と激論になるのですが誰も答えを知りません。
そこで彼は考えた。
論争をやめるためにはこうした問題に答えてくれる本が必要だって。
そうすれば言い争う代わりに本を見ながらビールを楽しめるじゃないですか。
それでこの本が1955年にイギリスのパブに無料で配られたという訳です。
ここがメインオフィスです。
会社の中枢でさまざまな部署に分かれています。
かなり空席がありますがそれは記録の承認に出かけているからです。
彼らを刺激しないようにしましょう。
十分ストレスを受けていますからね。
刺激…してみた。
今世界記録の申請を受け確認しています。
インターネットを使って申請が行われると我々がガイドラインを送ります。
すると彼らから証拠が送られてきます。
この人が申請しているのは目隠し状態でレモンをキャッチできた数。
これは30秒間に2人で行う記録です。
ここでは彼が送ってきたビデオを確認するのです。
知らなかったがこれまでの世界記録は…皆至って真剣だ。
これを見る限り15個のレモンをキャッチする事ができていたようです。
これで新しい記録が達成された事になります。
これまで13個でしたからね。
このビデオを見たあとに目撃証言を確認します。
2人の目撃者が必要でこれが実際に起こったという宣誓供述書です。
刺激するつもりが逆に刺激を受けちまった。
とても面白い仕事です。
私の人生において最も奇妙ででもすばらしい仕事です。
地球上に記録を更新したいと思う人たちがこんなにいて…。
この会社に来て4年になろうとしていますが自分が審査に携わった件数は数え切れません。
現在登録されているギネス世界記録は4万件。
ここには明日の世界一を目指して世界中から週に1,000通もの申請が届く。
ある者は記録の更新に挑みある者は新たな分野を切り開き世界でイチバンを目指している。
中には思わずプッと吹き出してしまうものもあるだろう。
でも真剣になれるものを持ってる事が少し羨ましかったりもする。
中でもイギリス人は世界一申請数が多いらしいぞ。
イギリスではギネス世界記録保持者はちょっと変わり者というイメージを持たれています。
でも新しいものにチャレンジしたいという心意気にあふれた人たちです。
それにこの本は世界を記録したいというイギリス的精神の基に作られたものでもあります。
19世紀ビクトリア朝のロンドンでは世界を記録するというのがとてもはやりました。
世界でイチバン高い山はどこかとかそれに必死だったんです。
イギリス人は何かを達成するとなるとギネス世界記録を意識するようになっているのでこれだけたくさんの申請があるんです。
そんなイギリス人の中でも飛び抜けて多くの世界記録を持っている男がいるそうだ。
その数なんと36!ハロー!ハウアーユー?ハウアーユー!ウェルカムトゥザジム。
みんな口が開いてるぞ。
閉じて。
まだ続くから。
うお〜!ワンツースリーフォー。
不覚にもふだん何を食べてるのか聞き忘れてしまった。
小さい頃若い頃の写真はないそうだ。
かろうじてあったのは二十歳で入隊した軍隊の時のもの。
でもケンカしまくって2年で辞めさせられた。
そういえばばあちゃんが言ってた。
田んぼに足がつかまるとやっかいだって。
力んでもうまくいかない。
抜け出すにはきっかけがいるって。
この男の場合それが世界一への挑戦だった。
もがいた時間が長くつらかった者ほどうまくいき始めてからの勢いはすごい。
36もの世界記録はこの男の人生の火山の噴火みたいなもんだ。
前に進み続けなければ呼吸できないクロマグロのような男だ。
どんなにきれいにしてもピカピカ光り輝く訳ではない。
どこまでも透き通るだけ。
それが窓拭きという仕事。
何でも世の中には114.3cm四方のガラス3枚を速く拭く大会がありおじ様は10秒の壁を破り世界記録を樹立したそうよ。
おじ様の家を訪ねてみた。
ハロー!ウェルカムトゥザマイハウス。
カムイン!世界一になるために自宅で血のにじむような練習をし窓拭きの極意をつかんだとか。
何となくだけどコツは両手を仲良く使う事だと思う。
このやり方を生み出した窓拭き界のスーパースター。
ふだんやっている仕事で世界の頂点に上り詰めたおじ様。
でも昔は窓拭きにはあまり情熱を持っていなかったそうよ。
「夢はみるものじゃない。
かなえるもの」って成功者は言うけど…そううまくはいかないのよね。
ふだんやってる仕事が夢に変わったらどんなに毎日が刺激的なんだろう。
考えただけでワクワクしちゃう!おじ様にとって1秒はとても貴重なの。
おじ様の本当にすてきなところは世界一の速さじゃなくてつまらないと思っていた仕事を夢にしちゃった事なのかもしれない。
人間にはイチバンになろうと努力する欲求のようなものが生まれつき備わっているんだと思います。
それによって人は進化し改善をしていく。
食糧や住居新たな穀物を育てる場所を探す事など何でもね。
ほかの動物とは違い自分を追求する欲求が備わっていてそれが人間をつくっているんです。
生まれてから死ぬ時まで心を揺さぶるものは何だっていい。
やってみて楽しいと思える事芸術作品を作ったり誰かを笑顔にしたり自分が住む世界について学んだり…。
そうすればどんな事も大切に思えてきますよね。
老いるという事は女の敵とばかり思っていた。
この村にいるイチバンは82歳のおばあちゃん。
近所で新聞配達をしている人がいたら教えてあげて下さい。
この人が新聞配達をする世界最高齢の女性です。
配り続けて42年。
一日も休んだ事はありません。
戦い競い合うだけがイチバンになる方法ではない。
静かな日常を静かに続けるだけでも世界一にはなれる。
配達は1時間ほどで終わる。
なじみのお宅でティータイムといこう。
(犬のほえる声)42年かあ…。
配達が遅れると心配して電話がかかってくるし大雪になると手伝ってくれるそんなご近所さん。
3人の子どもたちが巣立ち今は独り暮らし。
大好きな時間はどくしょ。
この日は12月18日。
部屋には所狭しとクリスマスカード。
いつものお礼にとご近所さんから届いたもの。
おばあちゃんの世界記録は近所の人たちとつながりながら静かにゆっくりと更新中。
マラソン走り〜の編み物編み〜の。
つまりはマラソンを走りながら世界一長い編み物を編んだ方。
え〜いろんな疑問が湧くだろうが1つずつ解決していこう。
まずはどうやってするのか?毛糸は腰にくくりつけるらしい。
ちなみにこいつは予備だ。
実際に編むのはエプロンの前ポケットに。
…で編み上げたものは腰に巻いていく。
これでおなかも冷えなくて済む。
こんな感じだ。
もちろんならではの悩みもある。
ここまでで質問のある人?…よし。
ではいよいよ聞いちゃうぞ。
なぜこんな事をやろうと思ったか。
母が娘に編み物を教えた。
母が認知症になり娘が介護した。
母が亡くなり明るく優しかった母が再び思い出された。
人を大切に思い続けると時に世界でイチバンになれる。
誰も思いもしなかった事を始める。
いつの時代でもそれはたやすい事じゃない。
イギリスのとある病院で一人の医師が世界一を競う新しい舞台を作り出した。
60年ほど前障害のある人がスポーツをするなんて考えられなかった時代。
その常識を打ち破った博士の信念を物語る言葉が残されている。
彼の信念は障害者のスポーツ競技会を生んだ。
種目や参加人数は年々増えていった。
実はこれがあのパラリンピックの起源となったんだ。
博士の信念はギネス世界記録保持者にも受け継がれている。
とにかく自分を変えたいと松葉づえでマラソンを走った。
世界記録も作ってみた。
でも博士の言葉の本当の意味を知ったのはそのあとの事。
難病の子どもたちの夢をかなえるチャリティに参加してからだった。
それからこの男は生まれ変わったのさ。
それまでのネガティブな自分がうそのように。
誰かのやる気のきっかけとなる。
それがイチバンを目指す意味だと。
ほれてまうやろ!
(歓声)イチバンになるって一体何なんだろう?過去にとらわれず前に向かう人。
夢の続きを追い求める人。
淡々と真面目に生きる人。
誰かを元気づけようとしてる人。
今では息子さんも相撲を始めたんだって。
アーユーレディー?ハッケヨイ!一つだけ言えるのは今回出会った人たちは皆一生懸命に生きた証しとして世界でイチバンを持っていた。
僕たちが思うに…サンキューベリーマッチ!
(通訳)ありがとう。
ありがとう。
(テーマ音楽)2014/03/05(水) 16:05〜16:55
NHK総合1・神戸
地球イチバン「世界一 イチバンに挑む人々〜イギリス・ギネス世界記録〜」[字][再]
年間5万件の申請が届くギネス本社に潜入取材。限界に挑み続け30個以上の記録を持つ人や、日常を続けることで世界一になった人など。あなたのイチバンも見つかるかも!?
詳細情報
番組内容
年間5万件の申請が届くギネス本社に潜入取材。あなたの知らない「ちょっと風変わりな世界一」が、ここにはある。肉体の限界に挑戦して36個もの世界記録を持つ男に、窓ふき界のスピードキング。日常を続けることで世界一になったおばあちゃんや、コンプレックスを記録に変えた人など。世界中を熱狂させ、数々の記録を生み出すあの大会も、実はこの地から生まれた。あなたのイチバンも、きっと見つかる。
出演者
【語り】宮迫博之,鈴木砂羽
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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