(紗絵子)何か微妙じゃない?元カレを友達に紹介するなんて。
(爽太)《元カレ?それって俺のこと?》
(えれな)今日の夜倉科さんと会う。
(オリヴィエ)僕まつりちゃんにきちんと自分の気持ち伝えることにしました。
待って。
まつりちゃん。
(紗絵子)爽太君がいい。
爽太君と行きたいんだ。
(紗絵子)爽太君?
(爽太)買い物付き合おうか?
(爽太)紗絵子さんとデートだよ?紗絵子さんそんなつもりさらさらないって分かってんのに。
俺ホントバカだ。
(薫子)いらっしゃいませ。
あっ。
(関谷)こんにちは。
小動ですか?今呼びますね。
(関谷)井上さん。
はい。
今日俺と飯行きませんか?えっ?
(ドアの開く音)
(爽太)関谷さん。
どうも。
どうも。
(爽太)六道さんお元気ですか?
(関谷)あしたから期間限定のイベントショップをオープンさせるんでそっちの準備に追われてます。
(爽太)へえー。
ああ。
へえー。
よかったらいらしてください。
(爽太)帝国デパート!?うわー。
すごいすごい。
(爽太)今日はどうされたんですか?井上さんと飯食いに行こうと思って。
えっ!?駄目ですか?いや。
そんな急に言われても。
私も。
ほら。
色々用事が…。
行きなよ行きなよ。
はっ?ぜひぜひ相手してあげてください。
この人彼氏とかずっといなくてチョコばっかいじって…。
ちょっちょっと。
爽太君は黙っててよ。
何でよ?私だってその色々用事がある…。
用事?用事って何よ?別に大した用事じゃないでしょ?そうですよね。
いきなりお邪魔して失礼なこと言ってすいませんでした。
(薫子・爽太)あっ。
(関谷)それじゃこれで。
えっ?あっ。
ちょっ。
行けばよかったのに。
いや。
よく知らない人だし。
知らないからご飯とか食べて知り合うんじゃん。
あの人すごい勇気出して誘いに来たんだと思うよ。
まあ恋愛とか興味ないのかもしれないけど。
でもさ恋をすると感性が磨かれてすごく生き生きするよ。
俺薫子さんにももっときらきらしててほしいな。
あっ。
ごめんね。
きらきらしてなくて。
いや。
そういう意味じゃなくてさ。
だいたいさあの人がどういうつもりで誘ってきたかなんてまだ分かんないじゃん。
「ところで六道さんのとこの関谷さんてどんな方ですか?」「仕事ぶりもですけど性格とか趣味とか」「あ別に引き抜こうとか考えてるわけじゃないんでご心配なく!俺が個人的に興味あるだけなんで」
(六道)個人的に興味。
個人的に興味?えー!爽太君もそっちだったの!?えっ?ちょっちょっちょっちょっ。
ちょっと待って。
えー?この状…。
返信来ないな。
もういいよ。
自分がデートに誘われて浮かれてるからって私まで巻き込まないでよ。
だからデートじゃないって。
紗絵子さんの買い物に付き合うだけだよ。
でもさ。
あの妖精さんの思わせぶりな態度にはもう嫌んなるくらい免疫ついてんの。
簡単にその気になるほど今の俺はピュアじゃないから。
うわー。
何着てこう?何だっていいじゃん。
着てさえすれば。
お茶とかご飯とか行くよな。
店決めなきゃ。
えっと。
どんな店に連れてこう。
どんな。
どんな。
どんな。
どんな。
どんな。
ううー。
あっ。
駄目だ。
考え過ぎて疲れる。
仕事しよう。
ここまで長い道のりだった
高1で紗絵子さんに出会い一目ぼれ
19歳でついに付き合ってチューを達成するも
その2カ月後に振られ傷心のままパリへ
ショコラティエとして修業を積み華々しく帰国するも紗絵子さんは人妻に
そして傷心のままショコラ・ヴィをオープン
紗絵子さんを常連客にすることに成功したもののそこ止まりで膠着状態の日々だった俺がついについに
《爽太君。
付き合って》
ついに紗絵子さんとデートだ
(オリヴィエ)この間は急にあんなことしてごめん。
勝手にキスしたことは謝るよ。
(オリヴィエ)でも好きになったことは謝らない。
(まつり)えっ?
(オリヴィエ)僕はまつりちゃんが好きだよ。
(まつり)いや。
ちょっと待って。
(オリヴィエ)他に好きな人がいるのも知ってるし。
それがお友達の彼氏だろうと誰だろうと好きになる気持ちはしょうがないから別に責めない。
(オリヴィエ)でもまつりちゃんは全然幸せそうじゃない。
全然笑ってないし全然楽しそうじゃない。
だから。
フフッ。
確かにそうだね。
オリヴィエの言うとおりだよ。
じゃあ。
(まつり)でも彼と別れてオリヴィエと付き合うことなんてできない。
(まつり)ごめんなさい。
(オリヴィエ)振られました。
あのバカ。
まつりの分際でオリヴィエを振るとかねえから。
(オリヴィエ)でも大丈夫。
これで終わりってわけじゃないから。
えっ?まだ粘る気?あんなやつに?爽太がそれ言うかな?ああ。
そりゃそうだ。
フッ。
だから全然気にしないで。
うん。
あれ?リクドー?ああ。
今日関谷さんが店に来てさ。
わざわざお知らせに?いや。
それがさ薫子さんを食事に誘いに来たんだよ。
えっ?でも薫子さん断っちゃってさ。
ああ。
そっか。
もったいないよなぁ。
関谷さんももう一押ししてくれりゃいいんだけどなぁ。
帝国デパートとコラボか。
これでリクドーのブランド力も不動のものになったね。
そうだね。
薫子さん。
何?普段着だね。
ただの偵察で何でおしゃれしなきゃいけないのよ?分かった分かった。
あくまで今日は偵察だからね。
うん。
すげえ。
2時間待ちだって。
(従業員)小動さんですね?中へどうぞ。
えっ?
(従業員)お待たせしました。
ごゆっくりどうぞ。
(従業員)こちらになります。
イチジクがしっかり入ってて食べ応えがある。
赤ワインが効いてるね。
あと蜂蜜。
うん。
酸味と甘味のバランスがすごくいいね。
でも…。
相当大人向けの味だね。
うん。
価格設定も含めて相変わらず勝負してる。
(女性)おいしい。
(女性)それ何の味だった?
(女性)フランボワーズ?
(女性)おしゃれ。
これも食べてみてよ。
(六道)いらっしゃいませ。
あっ。
どうも。
(六道)初日からご来店ありがとうございます。
あの。
今日関谷さんって?
(六道)関谷なら。
あのう。
ほ…本店にいますです。
えっ?そうなんですか?何だ。
(六道)爽太君。
あの。
ちょっといい?えっ?何ですか?
(六道)ねえ?爽太君。
はい。
私のことどう思ってる?尊敬してます。
ショコラティエとして。
ああ。
いや。
そういうことじゃなくて。
えっ?
(六道)あっ。
い…。
あっいや。
何でもない。
率直にいうとチョコレートが食べたいって思ったときみんながこういうものを思い浮かべるかどうかは分かりません。
でも六道さんが思い描く世界にブレがないのははっきり伝わってきます。
人によっては好き嫌いがあると思うけど誰にとっても間違いなくリクドーは特別な店だと思います。
ありがとう。
私ねチョコレートを売ってるけど一番売りたいのはやっぱり夢なの。
だってチョコを食べたいだけならスーパーで買うでしょ?万人向けのおいしいチョコがいくらでも売ってるんだから。
ええ。
まあ。
(六道)こんなものは欲しくないとか嫌いっていう人がいてもそれは別にいいの。
私とは縁がなかったってだけだから。
でも人間はこの星に70億人いるもんね。
そのうちの69億9,000万人に嫌われても1,000万人と愛し合えたらもうじゅうぶん夢みたいでしょ?だから私は縁あった人を愛しまくってあげたいの。
69億9,000万の人に嫌われるのは怖くないですか?怖くない。
そんなことより自分自身のビジョンが消えてしまうことの方が怖い。
どんなものが作りたいのか分からなくなって何もできなくなることが怖い。
六道さんお幾つでしたっけ?えっ?あっいや。
あっ。
37だけど。
(六道)うん?えっ?えっ?何よ?いや。
さすがだなぁと思って。
あっ。
き…聞けない。
やっぱり聞きたくない!はい?
(六道)ああ。
ちょっと。
あのう。
ほら。
私忙しいから。
あのう。
またね。
ゆっくりしてって。
ちょっともう何なの?訳分かんない。
《自分自身のビジョンが消えてしまうことの方が怖い》俺のビジョン。
それはもちろん紗絵子さんを幸せにするチョコレートを作ることだ
《私パン・オ・ショコラ大好きなの》《爽太君がパン・オ・ショコラ作ってくれたら絶対おいしいと思う》パン・オ・ショコラ?えっ?諦めたんじゃなかったの?やっぱり何とかしてリクエストに応えらんないかなぁと思って。
パリの一流ブーランジェリーにいた人がさ今日本のホテルにいるんだよ。
でその人に連絡したら特別にレシピ教えてくれるって。
でねパン・オ・ショコラは毎週曜日を決めて限定販売にする。
みんな限定って言葉に弱いしさ毎日焼かなくていいんだったら負担が軽くて済むでしょ。
言うほど簡単じゃないと思うよ。
それに他にもっとやることあるでしょ?ないよ。
今俺がやるべきことは紗絵子さんのために究極のパン・オ・ショコラを作ること。
それだけだよ。
・
(ドアの開く音)
毎週パン・オ・ショコラを買いに来てくれる紗絵子さん
《パン・オ・ショコラ下さいな》お待たせいたしました。
(涼子)どうも。
ありがとうございました。
(まつり)すいません。
(まつり)ねえ?薫子さん。
今のって藤本涼子だよね?そうだったね。
(まつり)ああ。
すごい。
やっぱり女優さんってさ顔がちっちゃくて。
(薫子・まつり)奇麗だねぇ。
何?何?藤本涼子?
(薫子・まつり)うん。
フフフ。
何だ。
俺も見たかったなぁ。
ねえ?っていうかさ近所に住んでるのかな?また来てくれるかなぁ?ねえ?おかえり。
まつりちゃん。
ただいま。
フフッ。
じゃあ着替えてこよっかな。
(えれな)ねえねえ。
倉科さんと会えたよ。
ホントに?よかったじゃん。
えれなのこと覚えててくれた?
(えれな)うん。
たぶん。
挨拶したら「ああ。
どうも」って感じで。
うん。
そんで?
(えれな)倉科さん髪短くなってたから「あっ。
今の髪形似合いますね」とか話して。
うんうん。
そんで?
(えれな)えー。
(えれな)以上。
えっ?えっ?連絡先交換した?してない。
何で?うーん。
だって緊張しちゃって何話していいか真っ白になっちゃったんだもん。
ああ。
そっか。
でも直接会って話したらやっぱりこの人のこと好きだって思ったよ。
それだけでもじゅうぶん幸せ。
ハァー。
なんて言い聞かせてるけど。
ホントはちょっとだけへこんでるかな。
駄目だね私。
まあ気持ち分かるけどね。
俺も紗絵子さんの前だと緊張しちゃって訳分かんなくなっちゃうから。
あっ。
あしたはいよいよデートだね?うん。
ヤベッ。
また緊張してきた。
そうだ!あしたの服まだ決まってないんだ。
別にいつもの奇麗めカジュアルでいいじゃん。
ただしトップスは黒ね。
黒?何で黒?紗絵子さんにとってはいつもの爽太君は白いパティシエ服なわけでしょ?真逆の色で新鮮。
カッコイイ。
きゅーんだよ。
おおー。
さすがモデル。
ありがとう。
えれな。
うん。
(吉岡)俺今日遅くなるから。
そうなんだ。
お仕事頑張ってね。
(吉岡)うん。
うん。
(吉岡)いってきます。
いってらっしゃい。
よし。
・爽太君!ハァハァ。
お待たせ。
《おおー。
カワイイ》《この妖精さんを今日1日俺の好きにしていいんだ》《いや。
違います》《お買い物に付き合わせてもらうだけです》《分かってます》爽太君いつもカッコイイけど今日はすっごくカッコイイね。
《うわー。
出た。
妖精さんのカワイイ呪文》《引っ掛かんねえぞ。
こら》ありがとう。
うん。
行こっか。
うん。
ウフッ。
どんなのにするかイメージはあるの?結婚祝いだよね?うん。
ペアのお皿とかマグカップとかで明るい色使いでお花柄とかが…。
こういうのもいいっかなぁ?お祝いらしい感じだね。
うーん。
でもいかにもお祝いの品ですって感じじゃちょっとつまんないかなぁ。
うん。
インパクトある色柄で。
うん。
そこそこカジュアルで丈夫そうなの?うん。
そうだね。
あっ。
うん。
《あれ?何か顔が近いんですけど?》あっ。
でもプレゼントだからあんまり安いのってのもね。
そう。
そうなの。
《変だな》《いつもこんな近かったっけ?》《あっ。
ヒールが高いんだ》《そのせいか。
この近距離っぷりは》《ヒールの低い靴履いてかれんそうな演出したり》かわいくて安っぽく見えないのがいいな。
何かそういうのないかな?《ああ。
耳元。
声が近い》《薫子さん。
高い靴も低い靴も使いようだよ。
薫子さーん》あっ。
あっ。
ねえ?うん?アラビアは?俺ここの食器結構好きなんだよね。
あっ。
私も好き。
北欧の食器とか雑貨ってカワイイもんね。
例えばこれとか?うん?あっ。
カワイイ。
いいよね?えっ?これいい。
《あっ。
胸。
胸当たってますよ。
奥さん》《駄目だ。
俺の理性》《弱過ぎる》うーん。
どうしようっかなぁ?お店の人に見られちゃうよ。
ごめん。
我慢できなくて。
でも誘ったのは紗絵子さんだよ。
誘った?いつ誰がどうやって?えっ?いや。
だってほら。
顔こんな近いし。
腕も組んだでしょ?ぎゅーって。
ほら。
ぎゅーって。
はっ?そんなん誰にでもするでしょ?えー!そうなの?っていうか男として意識してないから平気でできるんじゃん。
それを誘ったとか何勘違いしちゃってんの?爽太君変わってないねぇ。
相変わらず痛ーい。
えっ?えっ?ハハハ。
はっ。
はっ。
はっ。
《そうだよ。
よく考えろ。
小動爽太》《紗絵子さんにとってこんなこと大した意味ないって知ってんじゃん》《能天気に喜べるバカさかげん》《結局いつまでたっても同じだ》《嫌んなる。
マジで》爽太君。
えっ?これからうちにお茶飲みに来ない?えっ?あっ。
お酒もあるよ。
こないだね赤ワインもらったんだ。
ああ。
吉岡さんにはご挨拶したいけど10時近いしちょっと。
いないよ。
まだ帰ってこないよ。
あっ。
あれだよ?あの。
旦那さん今はまだ帰ってきてないけどそろそろ帰ってくると思う。
ああ。
そっか。
爽太君来てくれたらすごい喜ぶと思う。
ごめん。
行きたいけどあしたの仕込みがあるんだよね。
これから?うん。
そっか。
ごめんね。
ううん。
お仕事の邪魔はできないよ。
私も爽太君のチョコを楽しみにしてるお客さんの一人だから。
今日はホントに楽しかった。
ありがとね。
フフフ。
またデートしてくれる?ウフフ。
エヘヘ。
別にデートじゃないでしょ。
分かってるよ。
冗談で言っただけだよ。
お仕事頑張ってね。
うん。
気を付けてね。
うん。
またね。
ウフッ。
爽太君。
どうしたの?今日デートだ…。
ちょっと。
爽太君?ごめん。
抱かせて。
えれな。
(吉岡)おかえり。
帰ってたんだ。
誰と出掛けてたの?みくちゃん。
どこ行ってたの?友達のプレゼント買いに食器屋さん回ってた。
それから?食事して帰ってきた。
どこで?もういいでしょ?
(まつり)ねえねえ。
ちょっとこれ見て!ジャーン。
うわー。
うちのムースが2位になってる。
(まつり)女優の藤本涼子がうちのムースのこと絶賛してたんだって。
こないだ来たよね?
(まつり)うん。
あの人のブログすごい影響力あるみたいだよ。
ねえ?いいタイミングだから新作のショコラの試食出さない?賛成。
いやー。
藤本涼子さまさまだな。
俺今日からファンになる。
私も。
あの人の悪口絶対言わない。
言ってたんだ。
あっ。
いや。
うわー。
悪口っていうか。
(まつり)うわー。
意見だよ。
(まつり)えー?何て言ってたの?
(女性)ムース・オ・ショコラ2つ下さい。
(まつり)はい。
ムース・オ・ショコラですね。
ありがとうございました。
(女性)ありがとうございます。
・
(ドアの開く音)いらっしゃいませ。
あっ。
薫子さん。
はい。
好きな人います?はい?好きな人。
あっ。
いや。
ああ。
いませんよ。
いたらいいんですけどねぇ。
何か年がいくにつれどんどん出会いとか減っちゃって。
うーん。
出会いか。
「出会いたければあちこち行って迷子になってみな」って前にうちのお母さんが言ってたな。
行き先に迷いなくざくざく前進してっちゃう女の人よりも何か心細そうにうろうろしてる女の人の方が男の人は寄ってきやすいって。
ああ。
あっ。
まあでも薫子さんはしっかりしてるからどこ行っても迷子になんかならなさそう。
ウフッ。
私もついていきたい。
いや。
どうだろ?案外今迷子のような気もするんですけど。
(ドアの開く音)あっ。
フゥー。
新作のボンボンショコラ。
ご試食どうぞ。
ウフッ。
ありがとう。
うーん。
うーん。
おいしい。
私これすごい好き。
フッ。
だと思った。
最近わりとショコラ・レ選ぶよね。
前は結構ノワール好きだったのに。
すごい。
ちゃんと分かってくれてるんだね。
フフッ。
そりゃあ常連客の好みはちゃんとチェックしてるよ。
これでもプロだからね。
そっか。
そうだよね。
うん。
じゃあそろそろ行かないと。
お会計お願いします。
ありがとうございます。
何か大人っぽい格好だね。
デートだよ。
ああ。
ラブラブ夫婦だね。
旦那さんとじゃないよ。
やっぱりあの女昔と何も変わってないんだ。
デートする相手なんていくらでもいるんだよ。
買い物デートとかいって舞い上がんなくてよかった。
(オリヴィエ)女の子ってさ同性の子と出掛けるときもデートっていうよね。
いいんだよ。
オリヴィエ。
俺は俺が作ったショコラを紗絵子さんが食べて幸せになってくれたらそれでいいんだ。
ハァー。
そうだよ。
紗絵子さんが誰とデートしようが関係ない。
俺はただショコラ・ヴィでしか味わうことのできない究極のパン・オ・ショコラを完成させてこの店で彼女を待つだけ。
ねっ?
(オリヴィエ)うん。
今日ちょっと早く上がっていいかな?えっ?あっ。
いいけど。
何か用事?デート。
デート?嘘。
嘘。
ハッ。
何だ。
びっくりした。
ああ。
ああ。
そっか。
(関谷)《この間のことなんですが》《言葉が足りなかったような気がしたので説明しに来ました》《はい》《実はうちの六道に言われまして》《えっ?何を?》《狭い世界で暮らしてないでたまには新しい人と知り合って刺激を受けなきゃ駄目だって》《で次の休みに誰か誘って食事に行くよう宿題を出されたんです》《宿題?》《誰にしようか色々考えてたら井上さんがぱっと思い浮かんだんですよね》《ああ。
あっ。
なるほどね》《フフッ。
そういうことならぜひ行きましょう》《私も今ちょうど話してたとこなんですよ》《出会いが。
ああ》《付き合いの幅が広がらなくなってきたねって》《六道さんとの宿題私も参加させてください》
(関谷)《髪。
何かいい感じです》乾杯。
(関谷)ういっす。
ああー。
(関谷)ああー。
お忙しい中時間つくっていただいて申し訳ないっす。
ああ。
いえ。
あっ。
うちなんかより六道さんとこの方が忙しいでしょう?すっごい人気じゃないですか。
あっ。
そういえば期間限定のイベントショップにもこないだ行ってきたんですけど。
2時間待ちの行列ができててびっくりしました。
そうみたいっすね。
フッ。
あっ。
あのう。
お店も豪華できらびやかでセレブって感じですよね。
この間のパーティーもすごかったもんなぁ。
私なんか場違いって感じで気後れしっ放しでしたよ。
爽太君は物おじしないタイプだからどんな場所でも堂々と振る舞えちゃうけど。
いやー。
私はね。
エヘッ。
(仁美)ねえねえ。
うん?
(仁美)そのバッグって最近出た新作?うん。
(仁美)いいなぁ。
紗絵子はいい旦那さん持ったよね。
稼ぎはいいし優しそうな人だし。
うーん。
優しいかな。
外づらはいいけど家では結構あれだよ。
取材だとか接待だとかって言い訳ばっかして朝まで飲み歩いてばっかだし。
(仁美)それぐらいはさ高給取りなんだから許してあげないと。
それにねパートとか何かお仕事したいって言っても許してくれないんだよ。
何かさおうちの中で一人でいると私って何の価値があるんだろって。
(仁美)まあそういう考えの男はいるよね。
あのね。
今は暇だからそんなことで悩んじゃうんだよ。
子供ができたらそれどころじゃなくなるって。
今が一番幸せなんだからさ。
ハァー。
だってさ紗絵子なんて見るからにえげつない女だよ?もう結婚してんのにデートに誘うとかさ。
「はあ!?」って感じなんだけど。
それにほいほい乗っかって舞い上がってる男も「どうなのよ?」って思わない?ハァー。
そうっすね。
それにさ紗絵子さん一筋で純愛貫いてんならともかく他の女の子としっかりやることはやっちゃってんの。
アハハ。
まあ小動さんモテそうですしね。
なのにさオリヴィエはさ「爽太はもっと紗絵子を好きになればいい」とか言うわけ。
エヘヘ。
爽太君が紗絵子さんを好きになったからショコラ・ヴィが生まれた。
だからそれは価値のある恋なんだって。
ヘッ。
そうなんすか?違うよ。
それだけの才能がもともとあったからだよ。
フン。
私はねあの女に恋することに価値があるなんて絶対に認めない。
だいたい究極のパン・オ・ショコラなんて一朝一夕でできるもんじゃないのにそんなことも分からなくなっちゃってるなんてもうどうかしてるんだよ。
ああー。
ハァー。
(関谷)小動さんに告白したらどうっすか?
(関谷)好きなんですよね?言っちゃったらいいじゃないっすか?いや。
いや。
別に。
私は好きとかそんなんじゃ。
(関谷)パーティーでお見掛けしたときからそう思ってましたけど。
違うんすか?じゃあ関谷君だったら言う?例えば六道さんを好きだったとして100%振られるって分かってるのに?
(関谷)言うんじゃないっすかね。
ぐだぐだめんどくさいこと引きずんの俺は嫌ですから。
《そうか》《私はぐだぐだめんどくさいことをひたすら愚痴ってるだけの嫌な女だ》《この人といても私ばっかりくだらないこと話してバカみたい》《私だって別にそこまでしゃべりたいわけじゃない》《相手が話してくれるのを横で笑って聞いてられるのが一番いい》《そうだよ》《私はただ爽太君がバカなことを言ったりするのを横で笑って見てたいだけだ》《何だっていいんだよ。
たとえそれがモデル女の話だろうとお気楽主婦の話だろうと》《このままでいい》《私は別に爽太君の彼女になりたいわけじゃない》《そんなバカな夢は見ない》《私はいい大人だから》
(誠)おう。
あっ。
(誠)遅くまで研究熱心だな。
早く完成させたいからね。
(誠)なあ?
(誠)オリヴィエとまつりは?うん?ああ。
うん。
何だよ。
あのバカ娘。
トレルイエ家の御曹司なんて俺が付き合いたいぐらいだよ。
ホントだよ。
チッ。
お前はいい時代に生まれたな。
えっ?俺がやってたころは口コミで評判が広がるまで何年もかかったもんだ。
分かる人にだけ分かってもらえばいいなんて言ってたらあっという間に店がつぶれちまう。
でも今は違う。
大勢の人間にこびなくてもたった一人の誰かに死ぬほど愛してもらうことができればちゃんと結果につなげることができる。
それはすごく幸せで恵まれた環境だってことだ。
うん。
そうだね。
ああ。
あっ。
そういえば六道さんもそんなようなこと言ってたな。
69億9,000万の人に嫌われても1,000万人と愛し合えれば十分だって。
フッ。
億とか1,000万とかずいぶんスケールのでかい話だな。
まあね。
でもいいこと言うじゃねえか。
でしょ?さすがに10も年が上だと言うことが違うなぁって思った。
フフッ。
うん?えっ?何?それは違うぞ。
えっ?年は関係ないだろう。
じゃあ俺は帰るわ。
頑張れよ。
《六道さんってお幾つでしたっけ?》
俺は何であのとき年を聞いたんだろう?
《いや。
さすがだなぁと思って》
安心したかったから?
そうだ。
10歳も年上なら負けても仕方ない
俺はあのときそう思って安心したんだ
でもそれってその時点で勝負に負けてるってことなんじゃないのか?
《自分自身のビジョンが消えてしまうことの方が怖い》《どんなものを作りたいのか分からなくなって何もできなくなることが怖い》
あの人はすごい。
完全に自分の世界を構築している
君臨している。
だけど孤独じゃない
こびてない。
でも…
愛を売ってる
俺はあと10年であんなふうになれるのか?
(ドアの開く音)おはよう。
爽太君。
帰ってないの?新商品試作してみた。
ジャン。
パンデピス?フフッ。
おいしい。
スパイスがすっごく効いてる。
うん。
うちで人気ある商品ってさフランスではごく普通に売られてる日常的なお菓子ばっかりでしょ?その路線で考えててパンデピス思い出した。
究極のパン・オ・ショコラは?どうしたの?ああ。
あれね。
あれはやめました。
フッ。
(オリヴィエ)おはよう。
おはよう。
オリヴィエ。
ちょっとここ座って。
(オリヴィエ)うん。
おっ。
パンデピス?あっ。
私コーヒー入れてくんね。
うん。
でさあらためて考えたんだよね。
ホントにこれでいいのかって。
紗絵子さんにお願いされたことをお願いされたどおりにやってるだけじゃ永遠に前を歩くことはできない。
ついてくだけじゃ駄目なんだって。
たとえリスクがあったとしても紗絵子さんが思ってもみなかったようなものを作ってみせないと。
それでパン・オ・ショコラからパンデピスにシフトしたわけだ。
そう。
リクエストされる前にこっちが先手を打ってやるぜって感じ?楽しそうだね。
爽太。
フフフ。
爽太と紗絵子を見てるとまるでチェスの対戦を見てるようだよ。
楽しんでるよ。
これだって手が見つかったときはわくわくするしぞくぞくする。
俺あの人がいればいくらでも何でもできるような気がするんだ。
爽太いい顔してるよ。
だから僕は反対しないんだ。
うーん。
おいしい。
懐かしいねこの味。
うん。
紗絵子さんが俺にもたらす感情は全てインスピレーションの源になる
不思議だね
だからもっと俺を傷つけてくれていいよ
もっともっとへこませてくれていい
その痛みが苦しみがまた俺を成長させてくれるから
あなたが俺をショコラティエにしてくれたんだ
そして今でもショコラティエで居続けさせている
俺は紗絵子さんが好きだ
2014/02/03(月) 21:00〜21:54
関西テレビ1
失恋ショコラティエ #04[字][デ]
「2人の恋は、チェスのように」
ついに念願のデート!? 主人公・ソータを巡り“動く女”と“動けない女”に明暗。
もちろん、恒例の“妄想”シーンも!
詳細情報
番組内容
爽太(松本潤)は、紗絵子(石原さとみ)と約束した買い物デートのことを考えすぎて疲れ切っていた。そんな折、「ショコラ・ヴィ」に「リクドー」の関谷(加藤シゲアキ)がやってくる。爽太が聞くと、薫子(水川あさみ)を食事に誘いに来たという。爽太は誘いを受けるよう促すが、薫子は断ってしまう。よく知らない人と食事には行けないと言う薫子。爽太は、関谷の上司である六道(佐藤隆太)にメールで関谷の人柄を尋ねてみる。
番組内容2
爽太に気がある六道は、爽太が関谷に興味を持ったのかと疑う。
同じ頃、オリヴィエ(溝端淳平)は対面したまつり(有村架純)にキスしたことを謝罪。さらに、まつりが誰と付き合おうとも自分はまつりが好きだと告白する。
別の日、爽太と薫子は、「リクドー」が出店するチョコレートフェアにやってくる。爽太は薫子と関谷を引き合わせたかったが、関谷はそこに来ていなかった。そんな爽太を見つけた六道は、爽太を
番組内容3
連れ出すと、自分のことをどう思うか、と迫る。
デート当日。いつも以上におしゃれでかわいい紗絵子にテンションが上がりっぱなしの爽太は、買い物中も幸せな気分だった。ところが、紗絵子が異常に至近距離で接してくることに激しく動揺、やがて、そこまで動揺する自分が悲しくなってしまう。その後、紗絵子に褒められたり自宅に誘われたりもするが気は滅入る一方で、ついにはえれな(水原希子)の部屋のドアを叩いてしまう。
出演者
松本潤
石原さとみ
水川あさみ
水原希子
溝端淳平
有村架純
加藤シゲアキ(NEWS)
佐藤隆太
竹中直人
スタッフ
【原作】
「失恋ショコラティエ」(水城せとな/小学館月刊フラワーズ連載中)
【脚本】
越川美埜子
【プロデュース】
若松央樹
小原一隆
【演出】
宮木正悟
【音楽】
Ken Arai
【制作著作】
フジテレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32724(0x7FD4)
TransportStreamID:32724(0x7FD4)
ServiceID:2080(0×0820)
EventID:5372(0x14FC)