「NHK俳句」毎月第1週は宇多喜代子さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
今日の兼題はおいしそうな「草」。
春になるとまず出てくるのがこの素朴な草なんですがこれを食べるとやっぱり春が来たなって感じしますよね。
冒頭の句ですけれども…。
「そこらの草もになる」。
そこらの草っていうのはつまり蓬なんだけれども「そこらの草」っていう捉え方がとても一茶らしくて面白いと思いました。
こんなものがと。
こんな草がになるんだという事ですよね。
今日もよろしくお願い致します。
さあゲストをご紹介致します。
今日のゲストは伝承料理研究家の奥村彪生さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
伝承料理これはどういうものだと考えてよろしいんでしょうか?実はこういう肩書を持ってるのは日本で私一人しかいないんです。
縄文時代から現在まで日本人が何をどう食べてきたか。
そして外来の食文化をどう選択して地を受け入れてそれをどう変容させてそれを定着させて更に昇華させてどう進化させて今日まで来たかという事を研究しています。
先生以外ないですね。
昔の事で分からない事はまず先生ですね。
そんな事ないんですけれど…。
いやいやほかにいないんです。
やっぱり俳句と同じように四季を大事にするのがず〜っと縄文時代から続いている文化です。
面白いと思いました。
そういう中で草というのは…?草っていうのは先生いつごろから…?文字として文献に出てくるのは平安時代。
「和名類聚抄」という辞書の中に「」。
米偏に羔を書いて…。
これですね。
字出てますね。
これはうるちの粉。
普通ごはんにするあれを粉にしたもので作るものなんです。
だから米を使ったのと違うんですね。
まあ今は両方ございますけど平安時代はまずこれだったと思います。
そしてもう既に藤原京の遺跡から煮小豆という木簡が出てるんです。
ゆで小豆の事ですね。
木簡に書いてあったんですね。
じゃあ当時からあんこを食べてた。
既に奈良時代に麦縄といいまして今のそうめんの親祖になるそれにゆで小豆水あめで味付けしてかけて食べてるんです。
相当前からみんな食べてる。
草もそうすると…?ひょっとしたら草も奈良時代に食べていたかも分からない。
ただ残念ながら文字が出てこない。
平安時代にならないと。
あ〜なるほどね。
出てくるのを期待してる現在の私です。
でも春に頂くと元気になるような気がしますけどね。
春になると蓬の新芽がもえますね。
これを摘んで草にするという事は蓬の精気を体に入れて元気をもらっているのです。
命の更新ですね。
ですから少し苦みがある。
これがまた薬。
草木の芽を食べると体に楽になるから薬なんです。
確かに薬という字そうですね。
くさかんむりと楽になる。
それで春を感じる。
全ての命は春に生まれ変わって新しくなる。
人間もそれを頂いている。
でもそれにしても先ほど俳句とおっしゃいましたけども俳句についてはいかがでいらっしゃいますか?面白半分に作ります。
どうしても研究のために読みますからね。
でも友達から「会に入れ入れ来なさい」って誘われてやっと先月行きまして作ったけど難しいですね。
今日また後ほど俳句のお話もよろしくお願い致します。
それでは宇多さんが選ばれました入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
これ私面白いと思うんですね。
もし偉人がいたらこの人は草を一緒に食べる気分にならないと思うんですね。
浮き上がっちゃってね。
同じようなレベルでみんなで楽しく暮らしてるという。
そういった点はよく出ていると思いました。
では2番です。
これは2月3月草を食べる時期っていうのは若い方なら学校行くとか就職をするとかで上京なさる事が決まったんでしょうね。
その時に草を食べながらだんだん行く日が近づくんだなという事を感じてらしたと思います。
新庄からですね。
きっとそれを感じながら草を惜別の意味で食べてらしたんだなという感じが致します。
では3番です。
これは非常に遠くに筑波山を見ながら蓬を食べている気分が大きなものを一緒に食べちゃうという気分がとてもよく出ています。
草は蓬ともいいますし草のともいいますから適宜お使いになったらいいと思いますね。
では4番です。
これもよく分かるんですよ。
先生いかがですか?これ。
これ蓬はちょっと軟らかめにゆでてますね。
そうするとつくと非常に粒子細かくなるの。
量にもよりますけど。
そしてよ〜くつき込んでます。
これはご自分で作ったから句も出来たのです。
やっぱり濃くなるんですか?淡き緑は量も少ないしつき方が足らないとまばらになる。
じゃあこの松陰さんはしっかりおつきになった。
おつきになったんです。
これもおいしいですよ。
さあ今度は5番です。
「ちよつといい話」って「ちよつといい」がいいでしょ。
ものすごい話だと草のじゃ間に合わなくなりますよね。
ですけど草のにふさわしい。
どんな話をしてるんでしょうね?ちょっと今朝こういう事があったんだよみたいな話じゃないかと思うんですけれども草のがとてもよく合っていると思いました。
では6番です。
佐渡市にお住まいですから海と山を越えてこの草が届いたんだって思いが強かったんだろうと思いましたね。
結構見えますしそう遠くはないんですけどもね。
でもやっぱり海と山を越えてきたんですもの。
それだけうれしさが…。
うれしさがあるんですね。
では7番です。
これも私よくお友達がいろんなものを里から送ってきたという時に地方紙で送ってくるとまずものより地方紙の新聞を見てしまうという友達がいるんですよ。
そうするとこちらにはない昔の懐かしい地方の情報が入ってるからとても楽しいのよっていうそれを思い出しましてこの方もきっとそうだろうと思うけど先生どうでしょう?田舎の甘い土の薫りを感じるの。
やっぱり素朴でいいですね。
私好きだねこれ。
好きですよね。
これ私も好きですね。
かつては新聞紙というのはホントにものを包むものでしたよね。
それがとてもよく出てますね。
では8番です。
これはやはり手の平に載せながら蓬を召し上がってるんだと思うのね。
その時にこの蓬が生えてたいわゆる大地とかその辺りの山河とかそういうもの一緒に自分も頂いているんだなという…。
自然の中で育まれたものを頂いてるという気分がとてもよく出ていると思います。
では9番です。
これもよく分かりますね。
私一人が作っても大きさは違いますし大勢で作ればまた違うしその時の気分によってまた違うし…。
そうですよね?先生。
はい。
うち家族たくさんでしたからね。
奥村さん10人兄弟。
ええ10人兄弟でね。
妹なんかと一緒に作るでしょ。
それぞれ大きさも違うけど形違うのね。
ですからやっぱり手作りというのはその作る人の味人柄がそのまま出てくる。
だから人の味ものの味という事よく分かる。
人の味ものの味。
これ今おっしゃった感じがとてもよくこの句には出てると思いました。
ホント手作りのものだったんですね。
以上が入選句でした。
それでは特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
富安風生52歳の句です。
富安風生は明治18年愛知県の農家に6人兄弟の末っ子として生まれました。
俳句を始めたのは学生時代。
就職して逓信省の官吏となり34歳の時高浜虚子と出会います。
風生は「ホトトギス」に入門し人もまた自然の一部という俳人としての生き方を虚子に学びました。
この句が詠まれた頃風生は逓信次官を最後に52歳で逓信省を退官。
その後94歳で亡くなるまで俳句に専念しました。
それでは本日の特選句です。
まず第三席はどちらでしょう?岡部信幸さんの句です。
二席の句です。
松陰眞由美さんの句ですね。
一席はどちらでしょう?保科ひろしさんの句です。
これは私佐渡市にお住まいだというのを一緒に鑑賞の中に入れてしまいました。
こういう事めったに…たまにするんですけどね。
そうするとそう遠い島じゃないですよね。
見えるぐらいですから。
例えば新潟の方だとか越後の方から送ってきたかどっからか来た。
それが海と山を越えてまたここへこうやって来てくれたんだという思いがねこれちょっと大げさですよね。
ですけどそれがとてもいいと思いましたね。
その気持ちが伝わりますよね。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちらNHKの俳句テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
続いては「入選の秘訣です」。
ここを変えれば入選していたというあと一歩をクリアーするポイントを教えて頂きます。
今日はこちらの句です。
このままでも十分に理解できる非常にいい句だと思うんですが今日はちょっとこの「あつきが」の「が」の字を「の」の字にする気付きを言ってみたいと思います。
そのためにまず「草にあつき渋茶が添へられて」となりますよね。
「が」を生かすとなると「あつき渋茶が」の普通に平明に言うとなるとこうなりますね。
ところがこの「が」というのはしばしばちょっと主張が強すぎるんですよ。
「草に渋茶が」って「が」の主張が強すぎますのでこれを私は「の」に変えたいと思います。
そうすると「草にあつき渋茶の添へられて」というと一つの句になって非常にやわらかくなるし「の」の字ってこれを日常の言葉ではこういうお手紙は書きませんね。
手紙を書く時は「が」ですよね。
ところが俳句というのはここでちょっと変わってニュアンスがちょっと文芸の味が出てくる。
そういうひねり方をした「の」の字の使い方。
これちょっと皆さんにお知らせしたいと思いました。
ありがとうございました。
どうぞ参考になさって下さい。
それではここで今年度1年間の入選句の中で宇多さんが年間大賞に選ばれた作品ご紹介頂けますか?齊藤慶子さんの句ですね。
これホントに立春の気分が大きく捉えられたいい句だと思いましたね。
まだ雪が頂にずっと並んでる山がまだ地上にまで降りてきてくれない。
しかしやがて来るだろうと。
その気持ちが…。
立春という言葉を大きな景色に捉えるというのは難しいけどとてもよくそれが出てると思いました。
おめでとうございました。
それでは皆さんからの投稿のご案内です。
今月から投稿の締め切りが早まりました。
それでは宇多さんの年間のテーマ「日常を掬うことば」です。
今日はまさに日常の中の生き生きとする草なんですね。
非日常な時にはこういうもの…晴れの日にあんまり使わなくて。
ホントに草はそういう言葉なんです。
言葉をもっとお持ちなんですけれども。
これどなたも説明なしで分かるじゃないですか。
草っていうのはね。
句をご紹介頂けますか。
これは私茅舎の句が好きなんですけど特にこういう平俗な平明な句があるなというのでこの句を選んだんですが。
お母さんがつまむとゆがんでしまったと。
草の…何でしょうね。
作る時の感じなんですよね。
軟らかいんですね?そうなんですね。
それで今回のご投句の中の7割ぐらいが「ふるさと」という言葉が入っているかもしくは「母」が入っているか。
そういう句でした。
だからいかに皆様が草という時に思いがお母さんとかふるさとに帰着するんだなというのがよく分かりましたけれども。
この句もまさにそうなんですね。
お母さんなんですよね。
これは臨場感が非常にあるし面白いと思いました。
ありがとうございました。
さあそれではここで最初にもおっしゃいましたけども奥村さん。
先生がちょっと…。
ご紹介を頂けますでしょうか。
私昨日東京へ来る新幹線の中でちょっと浮かんで書きました。
また夜お風呂に入って寝て夢の中で推敲してたように思う。
ありがとうございます。
朝推敲して書いて今さっき持ってきたんですよね。
それがこの句です。
まあ素人が作りました。
奥村彪生の作です。
私はこの句を拝見して蒿が分からなかったですね。
蒿というんですねこれ。
源順の辞書の中に「和名類聚抄」に「草蒿にて作る」と書いてある。
その蓬の事?蓬の事を蒿と書いてある。
これが一番多かったように思います。
それから5月の節句に使うのがくさかんむりに交わるという。
まだ「こう」ですね。
それも「こう」ですね。
発音が同じですね。
いつの頃からか私どもはくさかんむりに逢うという字を書く蓬でおなじみになっておりますけれどもね。
江戸時代でしょうね。
それにしても最初もさっきもおっしゃいましたけどもご家族で皆さんで作られた…。
あれよ米から洗うのよ。
「一粒も流しちゃいかん。
目が腫れる」って母親が言う。
それをざるに上げてちょっと表面乾かすの。
それ夜なべ…夜食事済んでからひき臼でひくの。
子どもたちがひくんですか?そうよ。
手伝わないと食べさせてくれないんだから。
ほんでねうれしいでしょ。
明日甘いもの食べられる。
だんだん早うなるの。
母親は「ゆっくり回さんせ」ってパッと手たたく。
「隣のおばあさんのように居眠りするようにひきなさい」。
またそれが好きなのよ先生のお話の中でね。
おばあさんが居眠りするなんて…。
それが細かくなるの。
やっぱりゆっくり回すと細かくなる?米の粉が。
…でまたふるいにかけて粗いのをまたひき直して一物全体をきれいにするという。
それ今の私のもの作る時の料理作る時の信条ですけどね。
ゆっくり?無駄にしないで全部食べる。
一物全体をきれいに食べつくすというね。
でも石臼ってそんな家であったんですか?隣の家も友達の家もみんなありましたよ。
私のうちにも…どこにもありましたよ。
ちょっときな粉を作ってもね。
いろんなものを…。
それぞれおうちで味違うの。
だから友達と交換したりした。
「おばあさんが居眠りする」とても気に入ったなと思って。
隣のおばあさん腰曲げてこうね。
それは印象として…すぐ分かる。
その言葉で「あっそうや」。
それが重たいのね。
重たいけども粉がきめ細かくなるという。
そうするとやっぱり摘んできた蓬と合ってすごくいいおいしい草になるんですか。
自分のとこで栽培した小豆でしょ。
それであんを作るんですよ。
だから米だけ買った。
だからホントに手作り…つまんだのがゆがむとか1人ずつ大きさが違うって手作りなればこそですよね。
手作りなればこそ表現できない…味わいですね。
これ奥村さんがお作りになった草ですよね。
私の人柄がそのまんま出てますね。
きな粉ですねこれ。
きな粉はご自由につけて召し上がって下さいという。
あの中にあんが入っていて。
中にあんを包んで。
こういうのだったら子どもでもできるの。
でもホントこれを見ると「あっ春だな」って季節を…。
やっぱり春の息吹を感じる一番食べ物だと思いますね。
先ほどおっしゃったように草がもえて出てきたのを命をもらうという。
大地の。
大地の命をもらう。
これは昔の人からそういう思いで食べてきたんでしょうねものをね。
やっぱり天地に感謝するというね。
そしてそれをまた季節を味わう。
丸ごと味わうという意味では俳句と…宇多さん重なりますよね?先生はいつも旬ですよね。
野山のもの魚介のもの。
全て旬ですよね先生ね。
それで俳句もはっきり言って季節の言葉うんぬんというのは旬ですよね。
春風だって旬ですよね。
皆そういうものだから相通じると思うんです。
芭蕉風に言えば「四時を友とす」。
四時。
春夏秋冬ね。
4つの季節。
四時を友とす。
何かにありましたねそれ。
ですから乾物にしても旬の時に作ってちょっと食材が無くなった時補いにして…。
それ今もします。
私たちは古人が工夫したものを今は何気なく頂いてるけど多くの人がいろんな知恵を出し合ってまさに伝承俳句の先生です。
ですからそういう事を一生懸命伝えよう伝えようとしてるけどなかなかね伝わらない。
でもホント今日のお話で四時を友にして過ごしていきたいと思いました。
今日はどうも本当にありがとうございました。
今日は奥村彪生さんにお越し頂きました。
ありがとうございました。
何かおいしく楽しいお話でございました。
宇多さんまた来月もどうぞよろしくお願い致します。
先生ありがとうございました。
いえこちらこそ。
2014/03/05(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「草餅」[字]
選者は宇多喜代子さん。ゲストは伝承料理研究家の奥村彪生さん。奥村さんは縄文時代から今日まで日本人が何をどう食べてきたかを研究し、実際に料理を作ってもいる。
詳細情報
番組内容
選者は宇多喜代子さん。ゲストは伝承料理研究家・奥村彪生さん。奥村さんは、縄文時代から今日まで日本人が何をどう食べてきたかを研究し、実際に料理を作ってもいる。題「草餅」。【司会】桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】奥村彪生,宇多喜代子,【司会】桜井洋子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 480i(525i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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