(荒い息)おい…。
おい…ちょっと!け…警察呼んでこい!わかった…!
(電車の警笛と走行音)
(堂本治)後頭部から殴打されてますが直接の死因は絞殺の可能性が高いと思います。
(堂本)顔面の鬱血が顕著ですし溢血点も見られます。
(曽根武雄)死亡推定時刻は?昨夜の21時頃でしょう。
凶器は15ミリほどの紐状のものでしょう。
索条痕がくっきりと残ってます。
(富樫謙三)これだけ強く絞めれば皮膚に繊維片が残ってるはずです。
凶器はすぐに特定出来るでしょう。
(曽根)ん?「タキ食品」
(糸村聡)その会社の専務さんみたいですよ。
カードも現金も手つかずのまま…。
物盗りじゃないとすると怨恨…。
推測はするな!はいっ。
(町山千尋)金さん…。
(金城)ん?社員証の再発行お願い出来ます?なくしたのか…。
再発行の手続き意外と面倒なんだぜ。
捜したんですけど見つからなくって…。
(瀧隆一郎)殺された…?うちの専務が?
(宮下晴彦)はい。
義理の息子さんだと伺いました。
ご愁傷さまです。
(瀧富士子)あっ由利枝!
(織田みゆき)大丈夫ですか!?救急車お願いします。
(吉村)わかった。
大丈夫ですか?すいません。
生まれつき体が弱くって…。
ゆうべ博久さんが帰ってこなかったんでずっと心配してて…。
(瀧隆太)ママ…ママ!大丈夫。
大丈夫だからね。
(宮下)被害者は瀧博久40歳。
タキ食品社長瀧隆一郎の娘婿で次期社長を嘱望されていた存在でした。
このタキ食品は国産原材料にこだわった誠実な仕事が売りの会社で業界でも評判の会社です。
(曽根)はい次。
(野口洋)はい。
ガイ者の取引先や組合での印象を聞いてきましたがこちらもおおむね好意的でした。
勤勉で低姿勢協調性もあり今回の事件を皆不思議がっていました。
仕事絡みじゃないって事か…。
おい次!はい。
ガイ者は最近銀行口座から頻繁にまとまった額を出金しています。
会社関係の他に金銭トラブルがあった可能性があります。
なるほど〜。
はい次!あっはい!えー現場にあった営業用車両の荷台にはタキ食品の看板商品であるあわびの釜めしこれが多数積まれていました。
おそらく配達作業の途中で被害にあったものと思われます。
推測はいい。
事実だけを言え。
はい。
えーそれでは明日から…。
それともう一つ…。
なんだ!?ガイ者の腕時計なんですがこれ歩数計が付いてるんですよ。
それがどうした?結構高性能でして歩数計の他にもカロリー計算ですとか過去の歩数記録ですとか…。
要点を言え。
はい。
現場に営業車があったようにガイ者は普段車で移動しています。
ですがこの歩数記録を見ると毎日1万歩から1万5000歩歩いてるんですよねえ。
不思議だと思いませんか?ウォーキングの趣味でもあったんじゃないのか?
(宮下)糸村。
俺たちは毎日1万歩以上は歩いてるぞ〜。
(宮下)なあ!?
(一同の笑い声)えーっとこれが取扱説明書で…これが保証書ですか?はい。
じゃあすいません。
箱の処分お願いしていいですか?はいかしこまりました。
すいません!ありがとうございまーす。
よし。
(村木繁)繊維の成分はナイロンが100パーセントで染料は赤。
まあいわゆるデジカメとか携帯とかあとほら…通行証なんかに使うネックストラップだね。
(横山恵一)了解です。
早速絞り込みます。
(村木)どうしたんですか?ん?いじけてんの?いや…1万歩って大変だなあと思いましてねえ。
はい?ゆうべ秋葉原からここまで約1時間ぐらい歩いたんですけど4000歩ぐらいしかいかないんですよ。
あっああ…それは…大変でしたねえ。
1万の壁は厚い…。
(大石鉄夫)ああ糸村君!待ってたんだよゆうべ。
ねえ実は来週なんだけどさあ…。
ゴルフに付き合えって言うんでしょ。
無理ですよ。
頼む!どうしてもメンバーが1人足りないんだよ。
捜査中であります。
ねえ昼飯おごるから!
(曽根)女?
(野口)ええ。
ガイ者の通話記録を見るとほとんどが取引先や同僚ですが1人頻繁にやり取りをしてる女がいました。
(野口)町山千尋帝都新聞の記者です。
帝都新聞っていったらガイ者の独身時代の勤め先だろ。
(野口)ええ後輩のようです。
しかもこの女昨日急に休暇を取って今は連絡つかないそうなんですよ。
(曽根)連絡がつかない!?
(野口)はい。
けど女に出来るかよ?
(早川)絞殺するにはかなりの腕力が必要ですしね。
後頭部を殴られたあとなら不可能じゃないさ。
すぐに捜し出せ!
(一同)はい!俺たちが行きます!野口それコピー取らせろ。
不倫…ですか?
(瀧由利枝)本人に確かめたわけじゃないんですけどそんな気が…。
最近になって帰宅時間が急に遅くなったんです。
休日も1人でどこかへ出掛けるようになって。
由利枝…!ちょっと…甘いものでも買ってくるわね。
ご主人とは大学時代に出会ったんですよね?はい。
主人はジャーナリスト志望で卒業してすぐに新聞社に就職しました。
でも結婚話が持ち上がってうちの父が主人を説得したんです。
婿養子になって会社を継いで欲しいって。
でもその事が主人の重荷になってたんじゃないかって思います。
歩数計をご主人はお持ちでしたよねえ?糸村さん…!すいません。
今聞き込み中ですので。
いやいやお構いなく。
初めまして。
あの…糸村と申します。
歩数計ってこういうやつなんですけど。
ええ私が買いました。
随分前ですけど。
結婚してから運動不足だって言っていたのでせめてウォーキングぐらいと思って。
ああそれで毎日歩いてらしたんですね。
いえ…買った当初は1日1万歩歩いてやるなんて言ってくれてたんですけど仕事でそんな暇はなかったはずです。
私もそんな口約束すっかり忘れてましたから。
でも実際にはかなり歩いてらしたようですよ?そうですか…?じゃあやっぱり…主人は私の知らない場所へ通ってたって事じゃないでしょうか。
先週の日曜日ご主人はご自宅でしたか?日曜…?はい。
確か米山水産の社長さんに誘われてゴルフに行かなきゃならないって言ってましたけど。
ほんとに…ゴルフだったのかどうか…。
ゴルフに行かれてないとするとどちらへ…。
あの…もうお疲れでしょうから。
私たちはこの辺で失礼します。
でもまだ何も聞い…。
糸村さん。
はい。
…何?お願いですから邪魔だけはしないでください。
こっちにだっていろいろ考えがあるんです。
ごめんね。
勝手過ぎます。
いやだからごめんねって言って…。
違います!男の人は勝手過ぎると言っているんです。
いくら婿養子でストレスを抱えていたからといって不倫だなんて…。
まだそう決まったわけじゃないじゃない…。
つらい思いをするのはいつも女なんです。
携帯もメールも何回も連絡してるんですけど千尋の奴全然音沙汰なしですよ。
あっどうぞ。
ああどうも。
そういえば…亡くなった瀧さんもこちらにお勤めだったんですよね。
はい…優秀なジャーナリストでしたよ。
何しろ民自党幹事長の贈収賄すっぱ抜いてトップ記事書いたぐらいですからね。
まあその瀧から仕事をたたき込まれたのが千尋です。
ほう。
2人はその…プライベートでも交流が?まああったんじゃないですかね。
何しろ随分慕ってましたからね。
金さんちょっといいですか?ああ。
これ頼まれてた資料です。
ありがとう。
あと町山さんの社員証これもお願いしていいですか?ああ…。
お願いします!ああすいません。
ちょっとよろしいですか?
(車の走行音)ナイスショット!ナイスショット。
どうも!どうもどうもどうも。
大石さん相変わらずすごいっすね。
ナイスショット。
君!捜査中でしょ。
ゴルフなんかやってていいの?誘ったのは大石さんじゃないですか。
そうやって君はいつも急なんだよ。
ほっほっほっ…。
糸村遅いぞ!お待たせです。
…失礼しますね。
ちょいちょい…!カートをグリーンへ入れちゃダメだ。
球あそこなんですけど。
向こうからぐる〜っと回って。
…はい。
はい走る走る!大石さんゴルフになると人変わるんだ…。
(おもちゃの音)
(隆太)バンバン!バンバン!バンバンバンバンバンバン!ねえねえお母さん一緒に遊ぼうよ〜。
バンバン!バンバン…!退院してもまだつらそうだなあ。
(携帯電話の振動音)失礼。
はい織田です。
事件現場に…?確かに…瀧さんとは最近よく連絡を取り合ってました。
でもその事と事件とは関係ありません。
急に休みを取ったのは?
(千尋)瀧さんが殺されたのを知って気が動転してしまって。
(曽根)事件当日はどこで何をなさってました?
(千尋)地方に取材に行ってました。
岡山に。
それ以上はお話し出来ません。
取材はまだ途中です。
取材対象に迷惑がかかる可能性があります。
まあこれはあくまでも任意の取り調べですからおっしゃりたくなければ結構です。
どうもご苦労さまでした。
瀧さんは最近頻繁に銀行からお金を引き出していたようです。
心当たりは?おい!それと社員証を再発行されたようですねえ。
瀧さんが殺された凶器はネックストラップでした。
織田!お金の事なんか知りません。
社員証は…ただなくしただけです。
誰があんな質問をしろって言った?糸村の影響か?人が死んでいるのに取材対象に迷惑がかかるとかおかしいと思ったので。
相手はマスコミの人間だ。
挑発して記事にでもされたらお前責任取れんのか!?でも彼女絶対に何かを隠していると思います。
それはお前の勘だろう。
俺たちは連想ゲームをやってるわけじゃない。
そう思うんだったら足を使ってちゃんとウラを取って来い!
(米山重則)社長つらいだろうなあ自慢の跡取りだったし。
あんないい青年そういないって昨日もね刑事さんに話したんですよ。
そうですか…。
社長!ちょっとサインもらえます?
(米山)おぉ。
あああの…つかぬ事をお伺いしますが日曜日に社長は瀧さんとゴルフに行かれましたよね?ああしましたよ?実はですねえ瀧さんこうした歩数計をつけてまして1日に1万から大体1万5000歩ぐらい歩かれてたみたいなんですよ。
はあ…。
ところがここ最近の…過去の歩数記録を調べますとね1日だけ際立って歩数の少ない日があるんですよ。
それが米山さんとゴルフに行かれた日なんですよね…。
実はね僕今日ゴルフデビューしまして初めて1万歩超えたんですよ!あんなに歩数稼げるんだって驚きまして。
だからかえってこの日が気になっちゃうんですよねえ…。
ああでも電動カートでしたからね。
でん…電動カート?
(米山)カートですよ。
あれに乗ればそれほど歩かないでしょう。
ああ〜!あの遊園地の乗り物みたいなやつですか。
あああれね。
はい…はいわかりました。
はい…。
ただいまー。
お帰りなさい。
あれ?凶器特定出来たんだ。
横山君やってくれたの?上司が揃ってゴルフじゃ僕がやるしかないでしょう!?え?あっ本部からですけど営業車に積んであったあわびの釜めしが腐っちゃうから処分してくれって。
ああいい…!僕行ってくるよ。
ウエイトウエイト…!ん?それでゴルフの事帳消しにしようとしてません?何言ってるの?何言ってるの…そんなわけないじゃない。
僕が行きます!行くって僕が…。
口論ですか…。
(宮下)ええ。
あなたと亡くなった博久さんが言い争ってるところを目撃した社員が何人かおりまして…。
そりゃあ親子といえども社長と専務の間柄ですから議論ぐらいしますよ。
亡くなられる数日前もなさってたそうですねえ。
どんな事を議論なさってたんですか?あんたら俺が息子を殺したとでも言いたいのか!?いえいえいえそんなつもり…。
(隆一郎)出てけ!こっちは跡取りを亡くしたばかりなんだぞ。
遺族の気持ちをなんだと思ってんだ!?わかりました。
お気に障られたようでしたらお詫びします。
今日のところはこれで失礼します。
失礼します。
よいしょっと…!ああ…売れてるみたいですねえこの釜めし。
あなたは?ああ…はい僕はさっきの2人と同じように警視庁の者です。
糸村と言います。
聞き込みは終わったんじゃないんですか!?いえいえいえ…!違います違います。
僕はこの遺留品を届けにあがったんですよ。
遺留品?はい。
博久さんの乗っていた営業車に積まれてたものです。
警察でお預かりしてても腐らせてしまうばかりなんで…。
これが専務の車に?ええ配達の途中だったみたいですね…。
いや商品は配送用のトラックで運んでるから…そう!専務が営業車で運ぶなんて事はありえない。
…は?
(宮下)タキ食品の経営ですけどやっぱりかなりやばいようですね。
とにかく国産にこだわり過ぎて小売価格を下げられずヒット商品のこのあわびの釜めし以外はどれも赤字でした。
(早川)経営方針についてガイ者と社長が口論していたのを複数の従業員が目撃しています。
つまり旧来から会社を守ってきた社長と変革派の跡取りとの確執ってわけか?可能性はありますね。
社長にはアリバイがありませんし。
よーし野口と合流して社長の身辺にさらに探りを入れろ!
(宮下)よしみんな行くぞ!労を惜しむなよ。
(曽根)いいか?ウラを取るっていうのはこういう事だ。
(曽根)勘に頼るだけしか出来ないんだったら刑事なんか辞めちまえ。
あのー曽根さん。
お前の勘にも付き合ってられんよ。
ゆうべの捜査報告書を読んだんですがここにタキ食品の営業車の目撃情報があるんです。
コインパーキングなら監視カメラが設置されてますよね。
映像を取り寄せてもらえませんか?なんの意味がある?瀧さんの歩数の謎を解くヒントになるかもしれません。
歩数計にまだ…。
取り寄せてやれ!よろしくねっ。
(ため息)ん?ん?お疲れ。
ああ…どうしたの?こんな時間に。
これ糸村さんから頼まれたから。
え?ひょっとしてエロ動画?何言ってんの。
コインパーキングの監視ビデオ。
ガイ者が映ってるところはメモしといたから。
おっ!頼んでおいたエキサイティングなやつだね。
意味がわかんない。
どうもありがとうね。
さてと…。
(横山)エキサイティングになりますか!うん…たまらんよ。
ガイ者が映ってたんですか?そうみたいだねえ。
あっ来た。
よいしょ。
これだけ?次は…よっ。
(横山)すっごい大量買いしてますよ。
なんだろう?もちろんあわびの釜めしだよ?え?自分の会社の商品を?うん。
昨日別のヤマで運河さらってた鑑識が偶然引っかかったって。
通行証なり社員証なりは見つからなかったのか?ええこのストラップ以外は流れちまったようですね。
おはようございます!遅くなりました。
(曽根)糸村は?あ…すいませんなんか今日は外回りするって…。
何やってんだ?あいつ。
とにかくこいつを科捜研に回せ。
凶器の可能性がある。
(横山)はい!お前らは関係者のDNAサンプルを集めろ!美味しいわよねこの釜めし。
うちの旦那もね大好きなのよ。
国産あわび使ってる割に安いと思わない?ですよね〜。
(村木)へえ〜。
でもよく見つかったね。
別件捜査でたまたま見つかったんですよね。
でもさそういう時の方がいい結果出たりするんだよね。
ですよね。
これすぐ出来る?はい。
次やっておきます。
うんよろしく。
よろしく。
はい。
はい…。
ありがとうございます!
(荒い息)ああ失敗した。
走るんじゃなかった。
(宮下)恐れ入ります。
あっ。
あっすいません。
領収書って頂けますか?はい。
ああ…。
まだ7000かよ…。
はい。
この前もらったこれうまかった。
またあるかね?また持ってくるよ。
はい。
ありがとう。
あっ…ちょっとすいません。
ちょっと!ちょっとすいま…!ありがたいねいつも。
すいません。
あの…ちょっとすいません。
あの…お話を聞かせて頂きたいんですけど。
いいですか?お取り込み中すいません。
あっこのあわびのこのお弁当の包み…。
ストラップからガイ者のDNAが検出されました。
殺害に使用された凶器と見て間違いありません。
犯人のものと思われるDNAも検出されまして性別は男性でした。
(曽根)サンプルとの照合には?
(横山)早くても4日は…。
(曽根)とにかく急がせろ。
(横山)はい。
お疲れさまです〜。
お疲れさまです。
遅くまでご苦労さまです。
よいしょと…。
なんですか?それ。
え?あこれ?今日スーパーで買ってきた釜めしです。
え?差し入れですか?いやでもこんなには食えないですよ。
それでこれは事件の現場にあった遺留品です。
えっちょっ…!ちょっと…腐ってんでしょそれ!当たり前じゃないですか。
あっあわび入ってますからね。
いやじゃあ特にですよ。
ちょっと調べてもらいたい事がありまして。
はい。
は?じゃあここ置いていきますね。
なんなんですか?急に。
あ記者さんと話がしたくてさ。
担当君だって聞いたから。
DNAは男性のものでした。
彼女はシロです。
まあそうなんだけどね。
どうでした?5階でございます。
すいません。
じゃあ行こうか。
私も?あっちょっとこちらに…。
なんでしょう?もう容疑は晴れたはずです。
でも織田君は彼女がまだ何か隠してるって思ってるんでしょ?何を言ってるんですか!それって…。
これに関する事じゃないですか?失礼します。
あれ?糸村さんは?知りません。
俺もうあの人の事諦めましたから。
なんすか?これ。
あわびの鑑定結果だ。
驚いたよ。
新しい弁当は正真正銘のあわび使ってるけど古い方は全くのまがいもん。
まがいもの?食品偽装って事ですか?殺された瀧博久さんはその事に気づいてた。
タキ食品は国産原材料だけを使用している会社です。
ですが瀧さんはそこに疑問を持ったみたいで私に調査を依頼してきたんです。
調査の結果は?偽装が行われていた事は間違いないと思います。
でもまだ完全には…。
事件があった日あなたが岡山へ行ったのはあわびの出荷元を調べるため…ですね?はい。
でも複数の漁業関係者に取材してもそんな出荷元は見つからなくって…。
架空の業者か…。
そんな大事な事どうして取り調べの時に言わなかったんですか?瀧さんはお父さんも偽装に加担していると疑ってました。
タキ食品の社長が?もしそうだとしたら瀧さんは自分の家族を訴える事になります。
だから自分の責任で真相を究明したい調査の事は公表しないでくれって頼まれて…。
でも瀧さんは亡くなったんですよ。
私だって悩みました!公表すべきかどうか…。
中途半端な情報を公表して遺族につらい思いをさせては絶対にならないって…。
だからちゃんと事実確認が出来るまでは警察にも話せなかったんです。
私は瀧さんから教え込まれたジャーナリストですから。
米山水産?「はい。
タキ食品で扱っていたあわびは国産じゃなかったようです」ガイ者はその事を調査中に殺害された可能性があります。
けど確か米山水産は卸業者だろ。
「国産と偽ったあわびを食品会社に卸していたようです」糸村さんが言うには事件後米山水産が国産のあわびに切り替えた可能性があるようです。
証拠隠滅のために。
失礼致します。
今日はこれをお返しに伺いました。
どうぞ。
(由利枝)わざわざどうもありがとうございます。
あっ今お茶入れますね。
ああ…。
あどうぞお構いなく。
隆太ママね刑事さんたちとお話があるからおうちに先に帰ってなさい。
やだよ〜。
わがまま言わないの。
どうしたの?これ。
パパの大事なものじゃない。
パパがくれたんだもん。
パパが?どうかしました?ああ…主人が初めて取った一面記事で大切に記念に持ってたんですけど…。
あの…。
すいません。
僕に3分だけ時間を頂けませんか?なんでしょう?どうも。
誠に恐縮ですがDNAの採取にご協力願えますか?私がですか?ええ。
警察です。
これより作業場の捜索を執行致します。
一歩下がってください。
ごめんなさいね。
一歩下がってください。
ごめんなさいね。
博久さんは看板商品であるあわびの釜めしのあわびが外国産の別の種類の貝に差し替えられていた事に気づきました。
博久さんは誰よりも一番に社長に相談したはずです。
じゃあ口論をしていたっていうのは…。
(瀧博久)このあわびの違いに気づいていないはずないじゃないですか!うちはずっと米山水産に世話になってきた。
あの社長が国産だって言うんだったら俺は信じる。
お前が口を出す事じゃない!博久さんは元ジャーナリストです。
相当悩んだはずです。
もし偽装を公表すればこの会社を潰しかねない。
悩んだ末に博久さんは都内中のスーパーを歩いて回る事にしました。
その一歩一歩があの歩数計に残されていました。
どういう事ですか?自社製品を回収するためだよ。
そんな事をしても意味がない事ぐらい博久さんだってわかっていたはずです。
売り上げが伸びてかえって注文が増えてしまうぐらいの事です。
でも博久さんは目の前にある偽装を何もせずに黙認する事は出来なかった。
銀行からまとまったお金を頻繁に引き出していたのは商品を買うため?そうなんだね。
営業車だと目立つからコインパーキングに置いて歩いてスーパーを回ったんだ。
ゴルフに行った日曜日だけ歩数が少なかったのはプレーそっちのけで米山社長に偽装の真相を問いただしていたからです。
しかし米山社長は偽装を認めなかった。
そこで博久さんは新聞社の後輩である町山千尋さんを出荷元の確認に行かせたんです。
そして出荷元は全くの架空だという事がわかった。
その証拠を手に博久さんはもう一度米山社長を高架下に呼び出した。
(米山の声)全部公表するって言ってきたんです。
そんな事したら親の会社潰す事になるぞって言い返したんだけどそれでも構わない。
不正を見逃すわけにはいかないって…。
だからついカッとなって…。
うわあーっ!!
(米山)わあーっ!!タキ食品の連中だって国産じゃない事くらい気づいてたはずだ。
けどみんなどうにか利益出すために必死だったんだよ。
だから俺が泥被ってやったんだよ。
お父さんも知ってたの?
(隆一郎)とっくに気づいてたさ。
この業界ひと筋でずっと飯食ってきたんだから。
けどこんだけ不景気が続いたら見てみぬ振りせざるを得なかった…。
どうしてそんな事を…。
わかってる。
全部俺が悪いんだ。
でもお前の旦那の事を考えたらやめたくてもやめられなかった。
せっかく憧れてたジャーナリストになったのにその道諦めてこんな借金だらけの会社の後継ぎになるって言ってくれたんだ。
そんな男に会社傾いたまま渡すわけにはいかなかったんだよ。
(すすり泣き)主人は家族を捨てる覚悟だったんですね。
偽装を告発して養子に入った瀧の家と決別してまたジャーナリストに戻るつもりだったんです。
だからこの記事を息子に託したんですね。
そんな事ありませんよ。
僕も歩いたんです。
博久さんと同じ道を。
歩きながら思ったんですよね…。
博久さんは毎日スーパーから大量に買い込んだこの釜めしを一体どうしたんだろうって。
(糸村の声)先日フードシェアという施設に話を聞きに行ってきました。
(糸村の声)フードシェアというのはスーパーなどで売れ残った食品をホームレスなど生活困窮者に配給する団体です。
博久さんはその互助精神に感銘を受けて自分がいつかタキ食品の社長になった暁には会社としてそのフードシェア運動に参加させてもらいたいとおっしゃっていたそうです。
つまり博久さんは食品偽装を公表したあともこのタキ食品を去る気はなかったんです。
その記事を隆太君に渡したのは別れという意味じゃなくてジャーナリストとしての自分の過去にけりをつけて家族と一緒に生きていくという覚悟を決めたからじゃないでしょうか。
それともう一つ気がついた事があるんです。
それは博久さんが歩いた歩数の想像以上の多さなんです。
僕も歩いたんですよ。
でも1万歩どころか8000にも届かなかった。
でも博久さんはほぼ毎日1万歩以上の距離を歩いてるんです。
これどう考えても不自然なんですよ。
つまり博久さんはあえて遠回りに遠回りを重ねて歩数を増やしていたんです。
どういう事ですか?偽装の告発をすればあなたが悲しむかもしれない。
その事に悩んでいた博久さんはあなたと交わした約束だけは守ろうとしていたんです。
約束?毎日1万歩歩いてやるって約束したんでしょ?家族との将来に思い悩んでいた博久さんにとって歩く事は罪滅ぼしのようなものだったのかもしれません。
偽装の相談をしてあなたに心配をかけたくない。
だったら自分は夫として何が出来るのか?そう思った時あなたにもらった歩数計をろくに使っていない事を思い出したんです。
毎日スーパーを回りながら博久さんはあなたと交わした小さな約束だけは守ろうとしてた。
もう少しで1万歩に届く。
だったら今日はあとちょっとだけ遠回りをしていこう。
自分に出来る事はこれぐらいしかない。
そうやって歩数を伸ばしながら博久さんは夫としての責任を果たそうとしていたんじゃないでしょうか。
ふう…。
よっ…!ああ…。
博久さんが残した一歩一歩はあなたへの愛の証しだった。
僕はそう思います。
いただきます。
うまい。
2014/03/19(水) 15:55〜16:50
ABCテレビ1
遺留捜査[再][字]
「12402歩」
詳細情報
◇番組内容
警視庁捜査一課・科学捜査係を舞台に、遺留品から真実に迫る新たな刑事ドラマ誕生!主演・上川隆也演じる刑事・糸村が明らかにする被害者たちの伝えられなかった想いとは?
◇出演者
上川隆也、貫地谷しほり、佐野史郎 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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