精神保健福祉士の資格を持ち障害のある若者の支援活動をしている島田雅章さん。
今から5年前自殺未遂に追い込まれました。
当時島田さんは都内の有名大学を卒業し大手の生命保険会社に入社。
目標は同期トップの営業マンになる事。
早く会社から評価されたいと意気込んでいました。
しかしリーマン・ショックで会社は経営が悪化。
他社に吸収合併されてしまいます。
新しい会社では満足な研修もなく新規の顧客開拓を命じられたといいます。
社員同士の競争も激しく思うように成績は上がりませんでした。
悩みを相談できる同僚や上司はなく島田さんは孤立感を深めていきました。
次第に自分を責めるようになっていった島田さん。
ある日上司と交わした何気ないやり取りから自殺を考えるようになりました。
上司を落胆させてしまった。
自分はもう価値のない人間だという思いが頭から離れなくなります。
で月曜の朝を迎えて…そして当時住んでいたマンションの屋上から飛び降りました。
幸い隣接していた木造住宅の屋根に落下し奇跡的に一命を取り留めました。
その時の事を思い出すと…飛び降りるっていうか……っていう仮説が後々立ったんですけど。
母親との関係に悩み生きるのが苦しいと番組にメールをくれた人がいます。
「母は私の悩みに関してあまり考えてはくれません。
両親ともこんな状態なのに過酷な現実に打ち勝てる自信がありません」。
メールを寄せてくれた秋田絵梨子さん21歳。
東京都内で1人暮らしをしています。
幼い頃から絵を描く事が得意だったという秋田さん。
去年4月からデザインの専門学校で教員補助として働いています。
(取材者)絵描くの好き?
(秋田)大好きです!秋田さんには幼い頃からほとんど母親に褒められた記憶がありません。
中学生の時いじめに遭っていると相談したところ「どうする事もできない」と言われました。
もっと自分を分かってほしいと今でも母親に相談をしますがかえって傷ついてしまうといいます。
秋田さんには趣味のイラストを通してネット上にたくさんの友人がいます。
しかし自分の悩みを打ち明けられません。
母親に認めてもらえないという気持ちにとらわれて前向きに生きていく自信が持てないと言います。
親に認められないというつらさ。
一番近い存在ですから何かホントは何も言わなくても分かってほしいぐらいの距離感だと思うんですよね。
家族だから何でこういう事言ってくれないんだってどんどん自分の中でつくり上げちゃって親の関係を。
何か全然私って何もかわいがってもらってないんだ愛してもらってないんだって何かそういう…私も時期ありましたね。
家族だからお互いの気持ちが分かって当然だとか家族っていうのはそういうもんだというふうな前提に立たない方がいいと思うんですよね。
僕も自分の知ってる親子で父親も息子もどっちも僕はすごく人間的に好きだけどその2人は絶望的に仲が悪くて一生和解しないままお父さんの方は亡くなっちゃったっていう…。
親子がうまくいってないケースはいっぱいあって。
それはどっちも責められないですよね。
親よりも自分の事を理解してくれてる人はいないはずだとかやっぱり言い過ぎててホントはそんな単純なものじゃないと思うんですね親子関係とか。
そっか。
みんなそうなんですね。
家族に受け入れられないと駄目とか島田さんみたいにお仕事で受け入れられないと駄目とかって1個に決めちゃうと何かホントに出口がなくなっちゃう時ってありますよね。
島田さんは飛び降りたんですね。
そうですね。
仕事できないやつは人にあらずぐらいの極端に言うとそのくらいの考えだったと思うので…。
自分そのものを消したいって消えたいっていう思いがすごい強くなってて二十数年生きてきた存在を消すそれを全く無にしちゃうのは無理だからしょうがないから死ぬしかないかなみたいな心境でした。
振り返ってみるとこれかなって思う事は中学3年生ぐらいの時に父親が多分リストラみたいな形で早期退職したんですね。
ちょっと格好悪いっていうか惨めだなっていう気持ちの方が強かったみたいで…。
こうなるまいっていうか自分は会社から必要とされる人になんなきゃいけないみたいな思いがちょっと強くなった時期だったのかなとは思います。
島田さん今はこうしてテレビにお出になってるしインタビューにもお答えになりますよね。
そうするとすごいたくさんの人の中に島田さんが見た人の数だけ生まれちゃう訳ですけどそれは大丈夫ですか?今はいいんじゃないですかね。
何て言うのかな分かるって簡単に言っちゃいけないけど分かる気がするのはみんな自殺する人は死のうって事をすごく自分の意思として決断して死んでるっていうようなイメージを抱きがちでだからそんな勇気があるんだったら何ができるとか命を粗末にしてるとか言うじゃないですか。
でも何か消えたいっていうかこの自分を今消してしまいたいっていう感じっていうのは結構普通の人も分かると思うんですね。
ものすごく遠い存在の人たちが自殺してるというんじゃなくて結構やっぱり普通に生きてる自殺してない人たちとそんなに遠くないところで紙一重のところで起こってしまうんじゃないかなというのを今ちょっとお話を伺っててすごく感じましたね。
自分を消したいと思った時どうすればいいのか。
今生きづらさに悩む若者に平野さんが提唱する生き方が支持されています。
それが今日お話しする分人というような考え方を中心としたお話なんですけども。
小説「空白を満たしなさい」の中に登場する分人という概念。
人には対人関係ごとにいろんな自分がいる。
それを分人という言葉で表現しました。
例えば恋人といる自分。
両親との自分。
仕事をする自分。
趣味を楽しむ自分など誰しもさまざまな顔を持っています。
平野さんはこれらを分人と名付け人間は一つの個人ではなく複数の分人の集合体だと考えています。
例えば職場での悩みで行き詰まった時こんな自分を消してしまいたいと全ての分人を否定してしまう。
これが自殺です。
しかしたとえ職場での分人を消したくなっても家族との分人や趣味の分人は生きようと思っている。
そう考えれば死ぬのを思いとどまれるというのです。
何よりも例えば中学校とかでいじめられていてすごく嫌な分人というのがあると。
一方で家族といる時は例えばお母さんといる時は結構楽しくてってなった時にいじめられてる分人を消そうとして丸ごと全部消してしまおうとするとホントは生きたかったはずの生きてて楽しい分人まで消してしまう事になるしまずは対人関係ごとの自分というのを1回分けて考えてその上でどうしようかなという事を考える事で自分の人生をちょっと整理するすべができるんじゃないのかなという事を考えたんですよね。
今島田さんちょっと笑顔になってましたけど。
仕事で行き詰まった時というのはやっぱり職場での自分の分人しか見えてなかった状態で。
飛び降りて実家に帰ったあとからいろんな仲間と出会う中で改めて自分の中の分人を発掘してくれたっていうか。
そういう過程があったのかなっていうのを…。
そうかもね。
自分で欠点だと思ってた事を面白がってくれる人とか出てきたりすると「あれ?」って。
確かに発掘ね。
発掘されて今日ここにも…。
はるなさんの場合は女だよなって思ってるけど周りは「男でしょ?」って言う訳じゃない。
「女の分人があるんです」とかって仮に言ったとしても「何言ってるのよあなた男じゃない」って言う人ばっかり周りにいたりっていうのは苦しくなかったですか。
男の子なので男からどうやって女の子に近づけるんだろうという存在しない分人をとにかくつくり上げたかったんです。
その当時はでも正直分人を探せる余裕もなくて今考えたら。
やっぱり結局今こうやって私テレビに出れるのも男が女の子になっているはるな愛だから呼んでもらったりみんなから愛ちゃんって知ってもらえて人との距離がすごく縮まったんですよね。
だから女の子になった時に分人の大西賢示を消しちゃったら今ここにはいなかったと思うしもう一度その分人を呼び寄せてやっぱり全てすごい時間かかったんですよ。
その全て全部受け入れるまでは。
でもやっぱり賢示もすごく必要だったのかなって。
消すっていう考えじゃなくて自分の中にいろんな分人があるんだけど見守り合うっていうのがいいんじゃないかという事にしたんですよね。
自分の生きてて楽しいなってその時思える分人とつらいなって思う分人とがあるんですけど消そうとするとやっぱり何かの時にそれがグッて暴走してしまうと危ないしやっぱり見守りつつという発想の方がいいんじゃないかと思ったんですね。
今死にたいと悩む友人や知人を支える取り組みが同じ20代の中で始まっています。
東京都内のNPOが主催した勉強会に学生や会社員主婦などさまざまな立場の若者が集まりました。
この会では具体的なケースを想定しグループごとに対応方法を考えます。
この日は深夜2時に「疲れた」と親友からメールがきたというテーマ。
一人一人自分ならこうするという方法を提案し議論します。
2時に?マジ?本当に?翌朝メールですね。
宮城県から参加したジェームズさん。
恋人が自殺で亡くなるというつらい体験をしています。
それは今回のケースによく似た状況でした。
亡くなる前日の夜彼女からの電話を早々に切り上げてしまったのです。
ジェームズさんが出した答えは…。
こんばんはジェームズです。
グループを代表して発表したジェームズさん。
参加者全員に自らの体験を語り始めました。
同じ20代だからこそ分かり合える気持ちがある。
同世代で支え合おうという試みが静かに広がっています。
でも何かああやって温度を感じるというか人の温度を感じてしっかり話すのって大切ですよね。
20代の人同士だからこそっていうよさってありますかね。
すごくそういうところを大事にしたいなと思っていてあの場で出てきた案というのは今すぐ行って会いに行くというのもあったんですけど例えばLINEで「大丈夫だよ」みたいなマークを1つ送ってあとは寝るみたいな…。
頑張り過ぎなくていいよね身近な人ってっていう感覚もそこで共有したいなって思ってるんですよね。
そんなに自分の生活を犠牲にしてまで身近な人として頑張るっていうのって自分も傷つけてしまうので自分ができる範囲でできる事をするにはどこがラインかなっていうのをあの場で話し合ってほしかったなというのが作った側の意図としてあって。
掛けがえのない人にならなきゃいけないみたいに思っちゃうとなかなか人生で掛けがえのない人って数人だったりする。
1人いてもラッキーぐらいの事だから。
誰かにとって掛けがえのない人になるってすごいハードル高いけど「また会おうね」とか「元気ないけど大丈夫?」とか「会えてうれしいよ」って社交辞令みたいなひと言でも結構受け取る側にとってはすごいそれで命がつながったりするんだなと思って。
解決しようって思わない方がいいですよね悩んでる人の。
聞くだけとかアドバイスしても別にそれを求めてる訳じゃない事があるし。
例えば失恋の話とか僕相談とか昔よく受けてましたけど。
僕のアドバイスはほとんど意味がなかった。
別れた方がいいって言うと別れないし別れない方がいいと言っても別れるし。
だけどその時は2時間も3時間も話聞いて意味ないなと思ったんだけどでも結局また考えを改めて聞くっていう事が大事だったんだなと思って。
何かいいアイデアを出してこの状況をどうかしなきゃって思うと大変ですけどとりあえず「うんうん」と言って聞く。
向こうもしゃべってる間にだんだん少し考えがまとまったり落ち着いたりというような事ぐらいから始めないとなかなか難しいかなって気がしますよね。
振り返ってはるなさんどんな事を感じましたか。
さっき助ける方が助けられるっていう。
やっぱりみんなそういうどの仕事もどの環境もみんなその立場だと思うしだからこそ自分の発する発言が人の命を救う事もあったり人の命を失う事もあったりするんだなって。
生きていく議論するっていう事は生きないといけないので生きていって議論していきたいなと思いました。
亡くなってしまった人も亡くならずにまだ生きていこうと思えた人もほんのちょっとした事なんだと思うの。
人から見たらほんのちょっとした事で人って死んでしまいたいって思う事もあるし見たいテレビがあるから1日だけって思う事だってはたから見たら笑っちゃうけどその人にとったら生きる理由になると思うのね。
その人が苦しい事その人がうれしい事その人が今生きてる事に十分その人なりに全部価値がある訳で。
なんとか若い人にはもっと自由な余白の中で生きてほしいって思うな。
どうしたらいいんだろうって答えは出ないけど…。
この2日間ホントそれを考えた。
最後にこれから20代になる子どもたちへのある取り組みも実は始まっているんです。
徳島県の小学校が始めた生きる力を育む授業です。
「よかったことをさがしてみよう!」というふうにやります。
ねらいは自分を大切に思う心を育てる事です。
この日は子どもたちに楽しいと感じた出来事を自由に書いてもらいます。
そしてみんなの前で発表します。
ボウリングでストライクを出した事。
ストライク出した?すごいね!
(拍手)初めて2重跳びが6回跳べたからうれしかったです。
初めて跳べたんやなすごい。
よく頑張ったね。
はい拍手!
(拍手)先生は発表した子どもを必ず褒めクラス全員で拍手を送ります。
よく思い出す事ができました。
拍手!
(拍手)先生や仲間たちから褒められ認められる体験の積み重ね。
それが自分を大切にする心を育み困難を乗り越える力となるのです。
(一同)はい。
ありがとうございました!
(一同)は〜い!2014/03/05(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ増える20代の自殺(2)わたしたちが生き抜くために[字][再]
シリーズ「増える20代の自殺」。第2回は、番組にメールをくれた20代がスタジオに集合。どうしたら自殺に追い込まれず生き抜くことができるのか、処方箋を話し合う。
詳細情報
番組内容
増加傾向にある「20代の自殺」。どうしたら自殺に追い込まれずに生き抜くことができるのか。シリーズ第2回は、就職して間もなく自殺未遂に追い込まれた男性や、母親との関係に悩み続ける女性など、番組にメールを寄せた20代がスタジオに集い、処方箋を話し合う。芥川賞作家の平野啓一郎さんは、生きづらさを生き抜くすべとして“分人主義”という考え方を提案。20代の本音に耳を傾けながら、生きぬくヒントを探っていく。
出演者
【出演】小島慶子,はるな愛,平野啓一郎,【キャスター】山田賢治
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
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