大変じゃ、大変じゃ!
鬼退治に豆は使わず、いわしの頭1000匹分。
開幕まで、あと4日に迫ったソチオリンピック。
スキーモーグル。
34歳の上村愛子選手です。
5回目のオリンピック。
悲願のメダル獲得はなるのか。
18歳で出場した長野オリンピックで7位。
鮮烈なデビューを飾りました。
しかし、メダルが期待されたその後の2大会は6位と5位。
そして前回のバンクーバー。
(実況)上村、メダルは見えたか?
結果は4位。
またもメダルに届きませんでした。
年齢からくる筋力の衰え。
これまでにない厳しいトレーニングをみずからに課してきました。
メダル獲得に向け挑戦を続ける上村選手の闘いを見つめます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
18歳で初出場したときもそして5回目となる今回もオリンピックは夢の舞台。
自分を成長させてくれるありがたい夢の舞台だと上村愛子選手は語っています。
オリンピックのこれまでの成績は7位、6位、5位、4位一段一段上がってきたのですがメダルに手が届かないということは技術、体力、メンタルのうえで何かが足りないから。
その足りない部分を克服しようという挑戦を上村選手は続けてきたわけです。
挑戦の原動力となっているのはまだ手にしていないメダルが欲しいという強い気持ちだとしているんですけども34歳になる今回が最後の挑戦になると覚悟しています。
こちらがスキーモーグルのコースです。
およそ250メートルあります。
こぶが無数にあるおよそ30度ほどの急斜面を一気に滑り降ります。
30秒ほどのタイムの間に滑りのテクニック2度にわたるエア、空中技そしてスピードを競う過酷な採点競技です。
長い間、世界のトップ選手として活躍してきた上村選手ですが今回は体力の衰えに直面しながら10代後半から20代の若いライバル選手たちと戦うオリンピックを目指してきました。
若かったころよりも、自分を客観的に見られるようになり自分の弱さとも向き合ってきた上村選手のオリンピックに向けた挑戦をご覧ください。
去年12月オリンピックの行方を占うワールドカップが開幕しました。
世界の強豪を相手に戦うことができるのか。
上村選手にとって大事な大会です。
3、2、1、ゴー!
体の軸がぶれない安定した滑り。
3位と、絶好のスタートを切りました。
世界選手権を制しメダルは確実と言われた4年前のバンクーバー。
上村、メダルは見えたか?
4位に終わりメダルを逃しました。
ソチへの挑戦は肉体的にも精神的にもぎりぎりの闘いになると覚悟しています。
上村選手はメダル獲得に向け3年をかけて肉体改造を行ってきました。
こぶを滑り降りるターンに磨きをかけるためです。
速く安定して滑るには体の軸が左右にぶれないことが重要です。
そのために欠かせないのが腹筋の強化です。
しかし30代を超えて筋肉がつきにくくなった上村選手。
ウエイトトレーニングの量を大幅に増やし1日3時間、週に5日行ってきました。
安定した滑りにもう一つ欠かせないのが股関節の柔らかさです。
その柔軟性も年齢とともに失われていきます。
上村選手は、股関節の可動域を広げるトレーニングをこれまでになく集中的に行ってきました。
厳しい肉体改造は上村選手の体を進化させていました。
腹筋は鍛えられ、腹回りは前回のオリンピック前よりも大きくなっています。
さらに、エアの練習にも妥協を許しませんでした。
夏場の合宿では1日2時間多い日には20本飛び続けました。
しかし厳しいトレーニングは34歳の体にとって負担となっていました。
年齢とともに体の調整が難しくなっています。
痛い、痛い、痛い、痛い。
オリンピックまで1か月を切ったワールドカップ第4戦。
肉体改造で目指してきた軸のぶれない滑りはできるのか。
上村選手はコース半ばを過ぎてバランスを崩します。
大会と移動の繰り返し。
体の調整が思うようにいきませんでした。
今シーズン初の予選落ち。
悔しさをこらえ仲間を応援していた上村選手。
しかし我慢しきれずスタッフのもとに駆け寄りました。
抱き合ったまま2分間泣き続けました。
オリンピックで何度も挫折を味わってきた上村選手。
バンクーバーのあとは引退も考えました。
そんな上村選手を支えてくれた人がいます。
(チャイム)もうね、ビデオ回ってるよ。
夫の皆川賢太郎さん。
スキーアルペンでオリンピックに4回出場したアスリートです。
ひどいよね。
10代のころから注目を浴び周囲に弱みを見せられなかった上村選手。
夫のアドバイスでした。
心の変化は練習に対する姿勢にも表れてきました。
これまで日本代表のコーチなどの指導をもとに主に1人で技術を磨いてきた上村選手。
この日、自分より10歳以上若い選手に助言を求める姿がありました。
練習が終わって部屋に戻ってからも繰り返しアドバイスを求めていました。
年齢の壁を乗り越えるための肉体改造。
自分の心の弱さに向き合った日々。
上村選手の心と体は強さを増していました。
ワールドカップ第6戦。
オリンピック前の最後の大会です。
コースコンディションが悪い中でもバランスを崩しません。
滑りの点数は2位。
追い求めてきた軸の安定した滑りを取り戻しつつあります。
今夜は4大会オリンピック連続で、スキーモーグルにご出場されました附田雄剛さん。
そしてオリンピック3回出場で、5つのメダルを獲得されていらっしゃいますシンクロナイズドスイマーでいらっしゃった、現在は、選手たちのモチベーション設定、そして目標設定などにお詳しい三重大学特任教授を務めていらっしゃいます武田美保さんです。
どうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
5回目ですよ。
3大会出られた経験をお持ちなんですけれども。
一大会ずつに身を削る思いで出場してるので、それを5回連続っていうのは、本当に並大抵のことではないなと、本当に驚がくぐらいの感じで、私は見ております。
トレーニングをこの3年間、積んできたわけですけど、今の状態、附田さん、どう見ていらっしゃいますか?
そうですね。
十分なトレーニングを積んできているようですし、彼女のトレーナーとも先日、お話ししましたけれども、過去の彼女の筋力と遜色ないかそれ以上ぐらいに出来上がってるっていうことなので、十分、戦っていけるんじゃないかと思っています。
そのよい状態ってどこで分かるんですか?
そうですね。
彼女の技術で、よくないときっていうのは、ひざ下がターンの中で割れて、離れてしまうということがあるんですけども、今回、いろいろトレーニングしてきた中で、股関節に重視を置いて、トレーニングをしてきたということで、そのへんも改善されてきてますし、彼女のいいターンというのが、出てきてるんじゃないかなと思います。
モーグルでいい滑りというのは、上半身が動かないということですよね?
そうですね、立ってちょっとご説明させてもらっていいですか?彼女がトレーニングしてきた股関節っていうのは、モーグルですと、股関節から上を常に進行方向に向けて、滑りたいんですね。
ただ、スキーは必ず横を向く時間帯がありますので、股関節が硬いと、横を向いてしまう。
ただ、股関節が柔らかいと、上半身を向けたままスキーが横を向いても、常にずっと前を向いていられるということが、彼女の強みになっていると思います。
想像するのがなかなか難しいんですけど、トップアスリートが5回目のチャレンジする。
そして、その間に1回、1年間休養してまた戻ってこようという中で、体力面では戻れる、どこまで戻れるのか、あるいはその難しさって一番どこにあるのか。
武田さん、またモーグルとは種目は別ですけれども、どのように思われますか?
私のシンクロの世界では、1日練習を休むと、その感覚を取り戻すのに3日かかるっていわれてたんですね。
上村選手は、1年間少しお休みをされて、復帰となると、もう、すごい感覚の狂いなども生じていたと思うんです。
一番、私は選手として苦労されているのが、ピークパフォーマンスの記憶がすごく鮮明に残っておられると思うんですね。
そのできていた感覚が、今、できないっていう。
選手にとっては、一番の恐怖だと思うんですけれども、そこと向き合って、それをまた上回る自分に持っていくって、すごい取り組みになると思うんですけども、そのあたり、でも、なんかやっぱり今までの経験で、それも確かめながら、なんか、やっていらっしゃるのかな、なんかそんなふうに感じます。
できていたことがなぜできないのかということが、体で敏感に分かるだけに、つらいんじゃないだろうかということなんですけれども、附田さんはどう思われますか?
そうですね、今はトレーニングの技術もすごく上がってきてますし、進んでいるので、体力的には戻すことは可能だと思うんですね、年齢に対して。
ただ、そのトレーニングの量がすごいので、精神的なほうがすごく大変なんじゃないかと。
そのトレーニングを維持していくメンタルの強さが、必ず必要になってくるので、そのへんのクリアが、すごく大切なんじゃないかなと思っています。
そしてどんどん若い選手がまた難しい技をマスターして、追いかけてくるわけですよね。
あるいは先に行っている場合もありますし。
そうですね。
上村選手がモーグルを始めたときっていうのは、もう少しエアのルールが違いまして、簡単なエアだったんですね。
今、すごく難度の高いエアを飛ばなきゃいけなくなってきましたし、彼女にとっても、それはすごく難しいことだと思います。
ただ彼女は、若い選手に教わりながらも今、そういう課題をクリアしつつあるので、僕としてはすごく期待しています。
若い選手に教えを請う姿というのが、今のVTRにも、遠藤選手に聞いていましたけれども、なかなか前はできなかったことが、彼女は行うようになっているということですけれども、最後のオリンピックだというふうに決めて、そういう姿勢が出てきたっていうのは、武田さんはどう見ていらっしゃいますか?
自分の弱さとも向き合わないといけないので、しかもそれを知ってしまうと、向かう心の強さって、揺らいでしまうんじゃないかなと思うかもしれないんですが、たぶん私、今の上村選手を見ていて、なんか共感できる部分がたくさんあったんです。
新しい自分を、実は覚悟が決まると、どんどん発見できるようになってるんじゃないかなと思うんです。
例えば、前までプライドが邪魔して聞けなかったこととか、そういうことを今までやってなかったこと、全部やってやろうって。
そのターゲット、ゴールが決まると、やらなかったこと全部やってみようって。
やっている取り組みのうちに、どんどんどんどん記憶に刻み込まれていって、おもしろくなってくるんです。
私、こんなところが嫌だったのかとか、こういうところが自分の弱さだったのかって、発見できて、しかも引き出しがそれで増えることによって、弱気に勝る自分のデータが、自分に蓄積されるので、私は逆に強さになって、選手として、オリンピックを思いっ切り、楽しめるんじゃないかなって思います。
ただ、いろんな不安も、さっきおっしゃったみたいにできたことがちょっとなんかできなくなってる自分に気がついたり、懸念の部分も心の中では、ざわざわとしたものが出てくると思うんですね。
そういったものに向き合えるようになるんですか?
最終的には、自分がこうでありたい、選手としてはこうでありたいっていうものが、たぶんだんだんだんだん、鮮明になっていくと思うんです。
そこに向かって、やっていく、持っていき方っていうのは、どんどんどんどん身についていくので、私は。
経験からですか?
経験から。
どんどんそれができるようになってくるので、本当にテトリスがぱかっぱかっとはまるように、これもできた、あれもできたってどんどんコントロールできるようになっていって、すごく最終的には絶対に今まで、最初に辞めるってタイミングはあったと思うんですけども、やっててよかったなって、そういう記憶に残ると思います。
自分の感情がコントロールできる、そんな世界が見えてくるんですかね?このモーグルですけれども、開会式の前日にまず予選があって、それで本当に決勝というのは、開会式の次の日の、現地時間の8日に開かれるんですけれども、最近のワールドカップで、ちょっと、本当に、成績が振るわない、一番最後が14位で終わっていて、彼女の心の中のもようっていうのを考えると、不安もあるんではないかと思うんですけれども、附田さん、どうですか?
いや、全く問題ないと思いますね。
彼女は世界一のターンを持っていますし、映像を見ても、予選と決勝とスーパーファイナルっていう中で、1本うまくいかなかったりとかそういうことはあるんですけども、必ずその中で、1本いい滑りを出してますので、技術的には高いものを持っていると思うんですね。
ですので、彼女の理想とする滑りっていうのは、現在できてるんです。
その課題を一つずつ、ワールドカップでクリアしてきているので、オリンピックまでには必ず調整して、いい滑りをしてくれると思います。
本当に彼女にとっては、もう5回目、悲願のメダル、期待したいと思います。
きょうはお二方、どうもありがとうございました。
附田雄剛さんと、武田美保さんと共に上村愛子さんの挑戦をお届けしました。
あしたのクローズアップ現代ですけれども、スノーボードハーフパイプの平野歩夢選手です。
2014/02/03(月) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「今度こそメダルを〜上村愛子 34歳の挑戦〜」[字]
スキー・モーグルの上村愛子は5回目となる五輪で悲願のメダルを目指す。1年のブランクを埋める徹底的な肉体改造。新たな大技への挑戦。集大成に臨む34歳の姿を見つめる
詳細情報
番組内容
【ゲスト】シンクロナイズドスイミング シドニー・アテネ五輪銀メダル、三重大学特任教授…武田美保,モーグル解説者、五輪4大会連続出場…附田雄剛,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】シンクロナイズドスイミング シドニー・アテネ五輪銀メダル、三重大学特任教授…武田美保,モーグル解説者、五輪4大会連続出場…附田雄剛,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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