一緒に移動お願いします。
ホスピスに新たな患者が入院しました。
がんが骨に転移し余命僅かと診断された男性。
吐き気が続き食事がとれません。
ちょっと吐きそう。
この男性を外来の頃から担当してきた看護師がいます。
(ノック)・はい。
(木之元)フフフ…!一日2回も。
かき氷を運んできた木之元和美さん63歳。
自らもがんを抱えながら週に2日看護を続けています。
ああ〜!それはすごい!へえ〜。
そりゃあうれしい。
よかった。
喜んでもらえて。
うまいうまい。
こんな事しかできない。
いやホント生き返る。
ここへ来てよかったね。
そうですね。
パチンコも来ますよ。
長生きすればいい事もあるから。
そう思ったね。
簡単にくたばっちゃもったいないと思ったね。
うん。
くたばらないで。
ねっ?
(すすり泣き)私も泣きたくなっちゃうわ。
フフフ…。
私も同じ昭和25年生まれだし。
さっき話したけどね。
もっとね俺も早めに気が付けばよかった。
そうだね。
そうだね。
そうですね。
初めて聞いた。
初めて聞いた…。
そういう事はないと思ってたからね。
うん。
仲間だから。
山梨県にあるホスピス玉穂ふれあい診療所。
大丈夫?入院してくる人の多くは末期のがん患者です。
がんの痛みを和らげ穏やかに過ごせるよう麻酔などを使った治療が行われています。
看護師の木之元和美さんはここで患者の面接や聞き取りを担当しています。
暖かくなった?まだ寒い?自らもがんの治療を続ける木之元さん。
勤め始めたのは2年前の事です。
木之元さんは20代から一般病院の産婦人科やリハビリ科で看護を担当してきました。
では頭がこちらに来るように寝て下さい。
がんの告知を受けたのは10年前。
胆管のがんは肺に転移。
治療に専念するため一旦仕事は諦めました。
肺の片方は切除しもう片方は放射線で治療。
経過観察を続けています。
がんを患い患者として感じた不安。
看護の現場で支えたいと考えるようになりました。
心が痛いなんていうのは経験しないと分からないから。
「ああ私は心を救ってほしかったんだ」ってのはすごい何回か体験してるのでね。
ごはん食べるね。
11月ホスピスに50代の女性が入院しました。
愛犬と部屋で過ごし治療の時以外ほとんど外に出ません。
3年前まぶたにがんが見つかりました。
放射線治療で右目を失明。
がんは消えましたが顔の傷と後遺症の激しい痛みに苦しんでいます。
増田さんは30代から一人で飲食店を経営。
持ち前の明るさで店は軌道に乗っていました。
しかしがんの治療による顔の傷と痛みを理由に店を閉店。
自宅に引きこもるようになりました。
誰も見てないのかもしれないけど買い物も誰かに見られてるんじゃないかと思うと…どうも。
こんにちは。
こんにちは。
久しぶりに話に来た。
ありがとう。
木之元さんは自分の体験が気持ちのはけ口になればと闘病を告白し寄り添います。
痛みってのはねもうホントにこう…嫌。
嫌ね。
ホントに嫌だよね。
嫌です。
一生懸命病院に行って…。
でも先生は…痛みは治してくれなかったし心は折ってしまうし。
電話すら…出たくない。
でもね人と会うと…うっかり会ってしまった時は「痛いの?」って聞かれると「ううん。
大丈夫。
痛いけど大丈夫」。
長く一人で店を切り盛りしてきた増田さん。
自分の弱さを見せられずにいました。
そうですね。
あいつ病気らしいぞとかあいつがんらしいぞ。
下手すればまだ生きてるらしいぞとかよく生きてるよなとか何か悪い方に考えるんですけどそういう事だよね。
そういう…何かプライド。
一緒。
一緒ですよね。
嫌ですよね。
だから笑ってるの。
あのね心の痛みは分かるよ。
うん。
やっぱり人に言いたくない人に会いたくないっていう…。
それがねすごいよく分かるの。
痛みの度合いとかはそれぞれじゃない?痛いの。
何しろ痛いの。
痛くて痛くて痛くて痛くて…。
でも誰にも言えなくて…。
先生の前でも泣けなくて…。
こうやってくれるとホントに心が収まるの。
木之元さん分かる?分かるでしょ?分かるよ。
分かる分かる。
ホントに分かる。
分かるでしょ?がんを患って3年。
親にも友人にも伝えられず抱えてきた思いです。
木之元さんは25年前に離婚し独り暮らしです。
がんの告知を受けたあと子どもたちから同居を誘われました。
しかし病状が悪化した時の事を考え断りました。
3年前がんが肺に転移してからは毎晩悪夢にうなされるようになりました。
精神安定剤を使わないと眠れない夜が続いています。
どう?大丈夫ですよ。
大丈夫?ええ。
12月東京から独り暮らしの女性が入院しました。
よかった。
ホント心配してた。
ありがとうございます。
66歳。
1年前に見つかった卵巣がんが進行し余命僅かと告げられました。
こんなんだもんね…。
足に血栓が出来歩けなくなった上條さん。
兄弟から同居を誘われましたが断り一人病と闘ってきました。
あの部屋で団地で…。
町田でね。
こっくり…こっくり…IT企業に勤め兄弟との時間も惜しんで働いてきた上條さん。
最期も一人で迎えようと考えていました。
心にしまい込んだ思いは木之元さんと同じでした。
うんうん。
すごいある。
そうだね…。
今まで一人で生きてきたからね…。
そうだね。
入院から4日後上條さんは駆けつけた兄弟に見守られながら息を引き取りました。
葬儀を終えた上條さんの兄弟がホスピスを訪れました。
もう何か…。
ありがとうございました。
その後どうしてらっしゃるかなって…。
一人で最期を迎えようとした上條さん。
兄弟がどんな思いでいるか木之元さんは気にかかっていました。
そこが難しいところがあるんですけどね…。
…というところもあるような気がしますね。
最期の時を十分に支えられなかった後悔。
木之元さんは上條さんの選択が家族を思ってのものだったと伝えました。
この6月までいろいろ…4月5月6月っていろいろやってて…。
それってやっぱりこう何て言うのかな…。
そういった形で乱してほしくないという思いはすごくあって…だから…その思いがあるのかなって思ってね…。
精いっぱいやったんだっていう気持ちでいればね。
あとはね忘れないでいてもらえればいいなって。
よかったと思う。
よかった笑顔が出た。
笑顔が出た。
笑って下さい。
分かってるんだね。
それは一緒。
お元気で。
ありがとうございました。
家族に迷惑をかけず一人で最期を迎えるか。
家族と最期を迎えるか問い続けます。
その時は娘は「何か月でも来るよ」なんて言ってくれてるけれどもそうでなくてそういうとこじゃなくてうちで好きなように最期まで…うちでバタッと倒れるかなとか最期の最期までどんなにつらくてもここでバタッと倒れるまで息が途絶えるまでここで働ける限り働いてもいいかなとか…。
いい?こんにちは。
こんにちはオッケーです。
木之元さんは愛犬と部屋で過ごす増田さんを訪ねました。
こんにちは。
こんにちは。
治療で目の痛みは改善しましたが顔の傷へのショックは癒えません。
「先生大丈夫?よくなる?」って言ったらそしたらね…。
ふだん持ち歩いてない。
今日ね…。
すごい顔。
見たい。
見せて下さい。
肺の手術したあとだったんだけど。
見て。
本当?木之元さんじゃない。
この顔でね。
目も潰れちゃってプクプクプクプクっと…。
闘病中に膨れ上がった自分の顔。
痛みと周囲の視線に苦しみました。
きつい。
きつかったよ。
ごめんね私の方が…。
心臓が…ちょっと待って。
心臓が…ちょっと待って。
よくない。
怖かった!これでも生きていけれるんだよ。
怖かった〜。
これでも生きていけれるんだ。
(泣き声)怖かった〜。
怖かった。
泣かないで。
怖かったの?怖かったの?怖かったよ。
怖かったの?怖かったの…?でもいつか元気になれるから。
怖かった〜。
怖かった〜。
よかった治って。
生きてきたんだよね!どんな心の痛みもいつかは癒える。
木之元さんが闘病の支えにしてきた思いです。
(増田)私も少しよくなったら木之元さんの話もっとちゃんと聞いてこんな体験もあったって事をもうちょっと痛くなくなって私が我慢できるようになったら教えて頂きたい。
そうだね。
私自分だけが痛いってすごい勘違いをしていた。
だからここに来てよかった。
そうじゃなければ人を恨むだけとか閉じ籠もるだけで終わってた…人生自体が終わってたかもしれない。
はいお願いします。
すごいなどうしたんだろう。
クリスマスが近づいたこの日。
閉じ籠もりがちだった増田さんが病室から出てきました。
何か個人的にはやっぱり…サンタさん来てくれないと困っちゃうね。
どうかな?「いい子にだけ来るんですよ」とか言って。
じゃ来るな。
じゃ来る。
今までの分たくさんもらいたい。
入院から3週間。
増田さんはこの翌日ホスピスを退院しました。
こんな幸せな気持ちになれたっていうのはやっぱり看護の現場にいるからかなって思うかな。
がんを患った時誰もが抱える心の痛み。
本年もよろしくお願いします。
そこには家族を思い自分を誇り口に出せなくなる思いがあります。
互いに支え支えられる日々です。
2014/03/05(水) 11:05〜11:29
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「仲間だから〜がんと生きる看護師〜」[字]
自らがんと闘病しながら、終末期のがん患者と向き合う看護師がいる。残された時間を、どう自分らしく生きるのか。本音で向き合う患者と看護師の日々を見つめていく。
詳細情報
番組内容
山梨県にあるホスピス診療所「玉穂ふれあい診療所」に、自らもがんと闘病しながら患者と向き合う看護師がいる。木之元和美さん、63歳。10年前、がんの告知を受けた。一度は勤務していた病院を辞めたが、2年前にこのホスピス診療所で週2回の勤務を始めた。残された時間をどう生きるか。患者の中には同じ病と闘う木之元さんだからこそ本音を語る人もいる。自分らしい最期とは? 家族に何を伝えるのか? 集大成の日々を追う。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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