かつてジャピーノと呼ばれ差別を受けた子どもたちが今大勢日本に来ている。
私たちの取材はフィリピンから来た人たちが多く働く大阪のある介護施設から始まりました。
５年前から増え始め現在２００人の職員のうち３０人。
介護施設では特別なサポートを行っています。
この女性は以前興行ビザで来日しその時日本人の男性との間に子どもをもうけた母親です。
父親が日本人である事が証明されれば子どもは日本国籍を取る事ができるのです。
フィリピンパブで働くために興行ビザで大勢の女性たちが来日していたのは１９８０年代から２０００年代の半ばまで。
最盛期には年間８万人にも及びました。
日本人男性との間に子どもをもうけた人も多くいました。
彼女たちがフィリピンに帰ったあとに生まれた…かつてジャピーノと呼ばれた子どもたちです。
日本人の父親に捨てられ貧困と差別に苦しむＪＦＣ。
その数は１０万人とも３０万人ともいわれています。
彼らは今母親と共に続々と日本に移住してきています。
なぜ今日本にやって来てどんな生活をしているのか。
取材を続けると日本での生活の面倒を見るという業者にだまされ望まない仕事をさせられているケースが多くある事が分かってきました。
女の子には値段がつけられフィリピンパブに売られているという実態も。
子どもたちの身に何が起きているのか。
日本人として生きる事を選んだＪＦＣを追いました。
日本の大学でホテルやレストランの経営を学びたいと２年前１７歳で来日。
しかし今はフィリピンパブの業者から逃れ身を隠して生活しています。
いつ見つけられ連れ戻されるか分からないとおびえる毎日です。
カオリさんの母親です。
２０年ほど前に３か月の興行ビザで来日。
地方都市のフィリピンパブで働いていました。
客として店に来ていた男性との間にカオリさんをみごもりフィリピンに帰国。
日本に残った父親は３回ほど仕送りをしてきただけでカオリさんに会いに来る事もありませんでした。
カオリさんは４年前に日本国籍を取りました。
父親の認知を求めて日本の裁判所に訴え認められたのです。
しかし別の家庭を持っていた父親からは日本で生きていくための協力を一切受けられませんでした。
日本での生活を始めるためカオリさんが頼ったのはフィリピンの業者。
住む場所を確保し学校に通いながらできる仕事を紹介するという約束でした。
ところが送り込まれたのはフィリピンパブ。
監視つきのアパートに住まわされ未成年にもかかわらず深夜まで酒を飲みながら接客させられました。
店ではＪＦＣの子どもたちが何人も働かされていたといいます。
当時のカオリさんの給与明細です。
夜８時から朝の３時まで３日続けて店に入り翌日は朝の８時から清掃です。
このままでは夢はかなえられない…。
カオリさんは監視の目を盗んで逃げ出しました。
窮状を聞いた母親が急きょ日本に来ました。
まだ大勢のＪＦＣが働かされているのではないか。
カオリさんがいたアパートを訪ねました。
夜８時。
（取材者）あっ出てきた！フィリピン人とも見える若い女性たち。
監視役の男が運転する車に乗り込みます。
店に向かうのか車は夜の街に消えていきました。
一体どれほどの数のＪＦＣが日本に来ているのかその統計はどこにもありません。
しかしその一端を示すデータが文部科学省にありました。
フィリピンから移住してきたと思われる日本語の指導が必要な小中高校生の人数を示したグラフです。
２０１２年度はおよそ４，５００人。
カオリさんのように高校卒業後に来日した子どもが入っていないため実際には日本に来たＪＦＣはその数倍いるとも考えられます。
ＪＦＣを取り巻く状況が大きく変わったのは２００８年度。
この年日本の国籍法が改正されました。
それまでは結婚している両親から生まれた子どもであれば日本国籍を取る事が認められていました。
それが結婚していなくても父親の認知があれば国籍が取れるようになったのです。
国籍法の改正を知り日本国籍を取らないまま日本に来たという女性に出会いました。
こんにちは。
初めまして。
こんにちは。
４年前に来日した…フィリピンの大学に通っていましたが自分も日本国籍が取れるようになった事を知り急きょ大学を中退して日本に来ました。
父親はマリコさんを自分の子どもとして認知してくれていました。
マリコさんがフィリピンの大学をやめてまで来日を急いだのには理由がありました。
国籍法の規定。
申請は二十歳までに行わなければならないと定められているのです。
１８歳で来日したマリコさんに残されていた期間はおよそ２年。
ところが書類をそろえさえすれば取れるはずの日本国籍を取得する事はできませんでした。
マリコさんは日本に渡る前日本で生活する方法についてある団体に相談しました。
団体から京都にある介護施設を紹介されました。
介護施設はマリコさんの住居と仕事を用意するだけでなく国籍取得の手続きも行ってくれると聞かされていたといいます。
しかし日本に来てみると国籍取得の手続きを一向に進めてくれる様子がありません。
焦ったマリコさんは自分で手続きをしようとしました。
申請のためには父親に書いてもらう書類が必要でした。
しかし書けないと断られてしまいました。
実はその場合協力が得られなかったという理由書を書けば申請が認められる事があります。
しかし日本語が不自由な上に身近に頼る人もいなかったマリコさんはその方法を知る事ができなかったのです。
日本国籍を取るためのサポートをしなかった事について介護施設とフィリピンの団体は取材に対し…国籍を取れないまま二十歳を過ぎてしまったマリコさん。
日本への渡航費用など３０万円ほどの借金だけが残りました。
日本人として生きる権利がありながら誰にも相談できず途方に暮れるＪＦＣたち。
国籍取得やＪＦＣの身の安全を守る立場にある法務省はこうした状況の把握さえしていません。
本来ダンスなどを行うエンターテイナーの仕事に限定されるべき興行ビザ。
しかし日本では厳格な運用が行われず多くの女性が接客や店の清掃までさせられました。
逃げられないように監視され売春を行うよう強要されるケースも相次ぎました。
重大な人権侵害が行われていると国際社会から度々問題視されてきましたが２００５年に見直されるまで興行ビザの問題は長年放置されました。
ＪＦＣジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレンはその結果として生まれたのです。
・は〜い。
生まれ育ったフィリピンにも生きる場所はないという親子がいます。
去年日本に来て大阪の介護施設で働き始めた…１４歳になる娘のしょうこさんには国籍を取って勉強し日本で就職してほしいと考えています。
チョナさんがしょうこさんの父親となる男性と知り合ったのは当時働いていたフィリピンパブでの事でした。
「チョナさんが働いてためたお金でフィリピンで暮らそう」と言われフィリピンで結婚式を挙げました。
しょうこさんが生まれたあと１年ほど一緒に暮らしました。
ところが貯金が底をつくと父親は日本に帰国。
連絡が取れなくなりました。
チョナさんはマニラ郊外で小さな雑貨店をしながらしょうこさんを育てました。
収入は月に３万円。
食べるのがやっとの苦しい生活でした。
しかし誰にも助けを求められません。
日本人の父親に逃げられたと分かれば蔑まれ余計にみじめな思いをする事になるからです。
チョナさんはしょうこさんに「日本はすばらしい国だ。
日本に行けば幸せになれる」とずっと言い聞かせてきました。
２人はもうフィリピンに戻るつもりはありません。
フィリピンパブで働かされていた…身を隠していた場所を突き止められ車で連れ戻されそうになりました。
この時は一緒にいた母親が警察に通報し事なきを得ました。
しかし再び乗り込まれる事を恐れまた別の土地に移り住む事になりました。
執ように追いかける背景に何があるのか。
フィリピンから日本に女性を送り込んでいたという元ブローカーの男と接触する事ができました。
日本で水商売をしている経営者がフィリピンに来て直接女性に値をつけるのだといいます。
更に女性を働かせている店側の事情をよく知る人物にも話を聞く事ができました。
かつて興行ビザで日本に来た女性たちと同じ事が繰り返されているのではないか。
人身取り引きの被害者の保護を行う国際機関を訪ねました。
ＪＦＣの救出を行っている橋本直子さん。
国籍法を改正して表向きＪＦＣの受け入れをできるようにしただけでは何も解決しないと指摘します。
日本国籍があるにもかかわらずカオリさんは今フィリピンに帰るしかないと考え始めています。
国籍法が改正され未来を見つけるために日本に来て２年。
取材の最後にカオリさんは日本人の事をこう言いました。
2014/02/19(水) 11:05〜11:28
ＮＨＫ総合１・神戸
目撃！日本列島「日本人のはずなのに　狙われる“ＪＦＣ”」[字]

かつて興行ビザで来日したフィリピン人女性と、日本人男性との子どもが、日本国籍を求めて続々と来日。その裏で、悪徳業者が暗躍しているとの被害報告も…。いったい何が？

詳細情報
番組内容
かつて興行ビザで来日したフィリピン人女性と、日本人男性の間に生まれた子どもたちが、続々と来日している。５年前に国籍法が改正され、日本国籍取得の道が広がったのだ。日本人の父親に逃げられ、極貧の中、我が子を女手一つで育ててきた母親たち。ようやく子どもが日本人として生きていけると来日しているのだ。ＮＰＯなどの支援を受け、国籍取得する人がいる一方で、悪徳業者が暗躍しているとの被害報告も。何が起きているか？
出演者
【語り】杉浦圭子

ジャンル :
ドキュメンタリー／教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード（ステレオ）
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:55849(0xDA29)