きょうの料理 ニッポンおいしい手仕事「かす漬け」 2014.02.19

(後藤)
日本人の手に昔から伝わるおいしい手仕事。
自然の恵みの味わいが何倍にも増す驚きの知恵が詰まっています
ふだんの食卓を豊かにする知って得する知恵をじっくり手ほどきします
冬の寒さが厳しくなり日本酒の仕込みが最盛期を迎えています。
米と麹を微生物の力で発酵させる事で出来る日本酒。
香り高い新酒が搾り出されていく光景は日本の冬の風物詩です
その酒を搾ったあとに残るのが酒かす。
でもただの残りかすではないたっぷりの栄養とうまみを含む発酵食品なんです
先人たちはこの酒かすを「かす漬け」として野菜や魚介類の保存に利用。
発酵の力で素材の風味も豊かになるというおまけつきです。
平安時代から受け継がれてきたかす漬けの知恵。
酒かすが出回る季節にその芳じゅんなおいしさを味わってみませんか?今日は家庭で手軽にできるかす漬けを紹介します
「ニッポンおいしい手仕事」今日はかす漬けです。
日本料理店3代目店主の田村隆さんに教えて頂きます。
(2人)よろしくお願いします。
魚のかす漬け好きなんですけどもやっぱりあの芳じゅんな香り味わいといいましょうかねごちそうですよね。
体にもいいですしねとっても僕も大好きです。
ほんとに昔から日本の伝統的な料理として…。
日本の全てを集約したようなそんな冬の風物詩じゃないかなと思いますけどね。
それでは今日のラインナップご紹介しましょう。
まず前半は「さわらのかす漬け」ですね。
魚偏に春と書いて「さわら」と読みますけども今日はポリ袋を使って少量のかす床で短時間で味を回すというそういう工夫を見て頂こうかなと思います。
注目です。
そしてミニコーナーは酒かすを幅広い世代においしく食べてもらいたいとレシピの開発に励んでいる酒かすの料理名人を訪ねました。
そして後半は「鶏もも肉のパインかす漬け」。
おいしいんだこれがまた。
パインってあのパインですか?あのパイン。
どのパイン?果物のパインですよね。
はいそうです。
今日はオリジナルでパイナップルを使ってかす漬けがちょっと苦手だなと思う方でも召し上がって頂けるそんなのをご用意しました。
どうぞお楽しみに。
それではまず「さわらのかす漬け」。
まずかす床の作り方からお願いします。
先ほども搾ったかすの板が出てまいりましたけどこういうふうに切って売ってますよね。
これをちぎりますこういうふうに。
柔らかくなってたり堅くなってたりその酒蔵によって色も違いますけれども大体これはこんなふうに日によってまた条件がいろいろありますがそれぞれのかすを…。
それでちぎったらこれに大体1カップぐらいのお水を入れて頂きます。
板かす500gに対してカップ1の水という事ですね。
こうやって入れておいて頂きます。
これお酒入れちゃうと戻っちゃいますからまたね。
もったいないですよ。
これラップをしましてこれで冷蔵庫で一晩こうやっておきます。
ちょっともんで頂いてね。
大体どのぐらい柔らかくなればいいでしょう?耳たぶぐらいの柔らかさ。
耳たぶですね。
このぐらい。
ちょっと今日堅いかななんて…。
日によって変わりますけども。
耳たぶぐらいの柔らかさになるまでというとこんな具合。
そうです。
ジワーッとしますと水分がなじんできますのでここに入れてそのあとおみそ。
やっぱり酒かすは味が薄いですので。
もうお酒取っちゃってますから。
ここにおみそとおしょうゆと…。
それからお砂糖ですね。
入れて頂きます。
ず〜っと混ぜて頂きます。
これでかす床を作っていくわけですね。
しんなりしてきましたら全体をパックに入れてそれで保存します。
これでかす床が出来上がりました。
冷蔵庫で1週間ほどは保存が可能と…。
それ以上でも大丈夫ですけどね。
そのぐらい目安にしてお作り頂ければいいと思います。
かす床出来ましたので今度はかす床に魚を漬けるという事です。
今日さわらという事なのでさわらを2切れご用意しました。
これにおしょうゆとみりんと合わせて。
このぐらいこうずっとおいておきます。
大体5分ぐらい漬けておいて。
これ下味付けるといいんですか?下味付けますと中の水分がこの塩分と糖分で出てきます。
それと同時にこの味を逆に今度吸ってくれますので味が入ってきますのでこれに先ほど作りましたこのかすを混ぜるわけですね。
5分漬けたとしてかす床が200g入りました。
よくガーゼなんかでやって頂く事も…。
とってもきれいに…。
お店で買うとそういう状態で。
そういうふうにすると上と下しかなかなか漬きにくのでいっぱいかすが要りますからポリ袋に入れておくと大丈夫なんですね。
ポリ袋に入れて空気を抜くという事が大事なんですね。
そうすると全体がなじんで非常に少量のかすで漬きますので大丈夫ですね。
エコですね。
短時間で漬かりやすいという事ですが冷蔵庫で一晩以上漬けるという事ですね。
厚さにもよりますが一晩二晩そのぐらいで十分だと思います。
これ漬かったものですね。
ガーゼではないのでちょっと手で拭って頂いて。
焼く時にしなければいけないのはこの皮これを一回包丁目を入れて切るという事。
それから一回漬けたものはもう一回ぐらいは使えます。
漬けて頂いてもし味が薄くなったらみりんとしょうゆを加えて頂いても結構です。
皮はですねこういうふうに…。
包丁入れるんですか?細かく包丁目を入れて頂きます。
そうすると焼いた時って皮が縮むんですよ。
ですからこれを縮まないようにするためにこの包丁を入れる。
皮だけですよ皮目をね。
これから「さわらのかす漬け」焼いていきますけれども焼く前にこうして隠し包丁入れていく。
漬ける前にこれをやってしまいますとポリ袋の中でボロボロになっちゃいますから。
こうバラバラになって。
そうなんです。
こういうふうにして焼いていきます。
いよいよ焼きます。
この皮皮はこのまま焼くと焼けにくいのでまず皮だけ先にちょっとジュッと。
今弱火になってます。
弱火で温めてあるところに表面加工してあるフライパンでね。
油を敷かなくても焼けますでしょ。
皮だけ先に焼いておきますこうやって。
皮を先に焼くと…。
こんな感じで。
焼けます。
包丁が入っているので縮まない。
それで表になる方を先に焼きます。
表というのはお皿で盛りつけた時上になる方ですね。
そしてちょっとたまにチラチラッと中をのぞき見して頂いて。
どんな具合に焼けてるかな。
チラチラッとこう見て頂いて。
少し焼き色が付いてある程度したら裏返して。
それで…もうちょっとですね。
焼き色というのは?きつね色とよく言われますよね。
きつねがそういう色してるか分かりませんけどちょっとおいしそうな食欲をそそるような色合いを作って頂ければいいですね。
こんな感じで。
あ〜確かにおいしそう!そしてそこにお水を加えます。
えっ水ですか?水を加えてこうやって落としぶたをします。
アルミ箔を落として落としぶた代わりに。
それでここでゆっくりゆっくりお水で蒸し焼きにするというのが一つの…。
料理屋ですとどうしても炭火で焼いたりもしますけどフライパンで焼く時はこうするとジワーッと水分が抜けずに中に入っていきながら火が入っていきます。
3分ほどこの状態で蒸し焼きにする。
だから水は火を入れるための調味料だと思って頂ければいいです。
へえ〜火を入れるための調味料。
水がね。
そしてある程度してきましたらジワジワッと火が入っていきます。
そしてお水がなくなったら火から下ろして蒸して頂きます。
それで最後に盛りつけをして頂きます。
という事は余熱で最後は…。
そうです。
そうすると出てきたうまみも全部入っていきますので。
今日はあしらってべったら漬けを季節ですので紹介しましたけどね。
これで「さわらのかす漬け」が出来上がりましたね。
かす床の力ですごく柔らかくなりますから是非。
どうぞ一口。
一口ですよ一口。
ほんとにですか?何かこれ見たら二口でも三口でも…。
じゃ一口だけ。
う〜んうん!おっしゃるとおり。
これ柔らかいというかフワッとするというか。
ずっと焼いてると魚の水分がとんでしまいますからそれをお水で補ってそれで火を入れてフワッとさせておいてその水をとばすんですよ。
ですから風味は逃げないんです。
ほんとに豊かなうまみですね。
御飯頂きたいですね一緒に。
これもちょっといい感じですね。
ぴったり合いますね。
やっぱり酒つながりでね。
そうですね。
「さわらのかす漬け」材料はご覧のとおりです。
かす床は水で柔らかく戻した板かすと調味料を練り混ぜました。
さわらを漬ける時下味を付けてかす床をからめてポリ袋で密閉しました。
一晩でOKという事でした。
弱火で蒸し焼きをする。
この焼き方が…。
最初に焼いてから蒸し焼きにするという事ですね。
そうするとふっくらと焼けますよね。
続いてはミニコーナーです。
今回は酒かすのレシピ開発に励んでいる酒かす名人を訪ねました。
お〜!勉強させて頂きます。
どうぞ。
千葉県神崎町にある酒蔵。
創業340年の老舗です
(酒造り唄)
日本酒は今仕込みの最盛期。
蔵人たちが酒造りの唄を歌いながら江戸時代の技法で酒造りをしています
こちらは酒蔵の当主の妻…
新酒を搾ったあとに残る酒かすの魅力を幅広い世代に伝えたいと思っています
それではいただきます。
(一同)いただきます。
夕食の時間寺田家4代の家族がそろいます。
2歳から82歳まで総勢12人
ずらりと並んだ御飯は酒かすのおいしい効果を生かした料理ばかりです。
野菜のうまみが引き出された「酒かすラタトゥイユ煮」。
酒かすをチーズ代わりにふりかけたサラダ。
クリーミーでコクがある「酒かすグラタン」。
常識にとらわれず子供からお年寄りまで誰にでも食べやすい新しい酒かす料理を考え続けています
酒かすと油と塩を合わせるとチーズみたいな味がするのでそこを生かした洋風の料理にして頂けると苦手な方とかお子様にも召し上がって頂けるんじゃないかなと思います。
食後のお楽しみはこちらも酒かすを使ったクラッカーです。
子供のおやつとして大人気。
お父さんのおつまみにも最適なんです
作り方は簡単。
酒かすを小麦粉菜種油塩と合わせて水を加え練らないようにしてまとめます。
生地を5mm厚さにのばして適当な大きさに切り150℃のオーブンで25〜30分間カリカリになるまで焼けば出来上がり
子供たちも大好きでよく食べますしこのクラッカーの時はもう子供たちも一緒にママと手伝って作ったりだとか生地をこねたりだとかそういう作業も大好きでやってくれるんで。
みんながいつの間にか食べてるという感じでいつの間にかまた元気になっちゃうというふうになればうれしいなと思ってます。
酒かすって和の食材ですよね。
そうですね。
それが今拝見するとグラタンですって。
チーズみたいになるっていうのはちょっと食べたいなと思って。
サラダにもふりかけるというね。
ありますよねそういうの。
サラダね。
そうですよね。
酒かすも和の料理だけにとらわれずいろんな可能性をまた発見できそうですね。
やられちゃいましたねほんと。
いやいや。
次に田村さんにご紹介頂くのはちょっとやっちゃいますという。
出てこなくてよかったですね。
名人出てきたらどうしようかと。
後半は田村さんのオリジナルです。
酒かすが苦手な人でもパイナップルを混ぜてそれでパイナップルの酵素でやるというそういう構想を練ったんです。
ハハハ!酵素を使うという構想を。
そういう事ですね。
すばらしいですね。
ではちょっと…。
まずは酒かすパインペーストを作ります。
この酒かすなんですが先ほどと同じように500g。
それで今回はさっきと同じなんですがちょっとだけ水を減らしました。
気持ちちょっと減らしました。
なぜ減らしたのかと。
今日はパイナップルをミキサーにかけます。
これが要するに板かすと合わさるわけですね。
そうするとこれに水分ありますよね。
なるほど。
パイナップルの水分が出てきます。
そしたらここに先ほどのおみそとそれからおしょうゆをちょっと入れます。
そうすると…パイナップルジュースとみそとおしょうゆ。
不思議な取り合わせですけど。
どうですか?この香り。
パインの香りがみそと合いますね。
開けるとハワイアン?みたいな感じなんですけどでも実はこれをここに混ぜます。
混ぜて先ほどと同じように…。
ちゃんと取るんですけどね。
これを取って頂いて混ぜまして合わせますと床が出来ますので。
酵素が入ったパインの酒かすの床が出来ます。
これを保存容器に入れておきます。
そうすると大体1週間ぐらいもちます。
これは目安ですけどね。
これを今日は鶏のもも肉を皮の方からフォークで穴を開けてそれでみりんとおしょうゆ同割り。
先ほどのさわらもそうでしたがそれに漬けておいたもの約5分間おいたものですねそれにこれを入れます。
酒かすパインペーストにこれから漬けていくわけですけども今日は鶏もも肉1枚。
先生さっきおっしゃったようにフォークでつき刺して味が入りやすいように。
5分間おいたものをポリ袋に入れて…。
ここに酒かすパインペーストを入れていく。
そしてこれをここでモミモミモミモミ…。
このモミモミがいいですね。
柔らかくなれよっていう感じが。
しみこんで。
何とも言えないこのね…ちょっと触ってみて下さい。
いいですね。
何か癒やされますね。
そしてこれをビューッと空気を抜いてそれでズッとやって1回絞って冷蔵庫で保存します。
一晩たつとすっかりまた状態が変わってくる。
ちょっとこれ触ってみて下さい。
あっ!柔らかい。
パイナップルの分解酵素が肉をしっとりと柔らかくしてくれます。
キウイとかパイナップルとかそういう効果があるんですね。
これを漬け込んだこのかす。
「かす」といってもほんとにかすじゃないですよね。
これをまた使えるんですよ。
今日鶏ですから生では食べられないのでジャーッとこのようにしちゃって。
パインかす漬けを焼いていきます。
今弱火になってますが今回も油は敷かず加工のしてあるフライパンを使うと。
厚い部分と薄い部分がありますがこれでゆっくりゆっくり焼いて頂きまして10分ぐらいして頂いて…。
この手順は先ほどの魚と同じですね。
そうするとこんな感じに。
おお〜!うまそうですね。
鶏のうまみと水分とが出まして脂も出てきます。
それからかすの香りもしますのでこれをこう照りを出していきます。
ほんと照り照りですね。
これだけでもおいしい。
特にパインの香りがワーッとたつわけではないんですね。
パインが入ってるっていうふうに思わせちゃいけないんですね。
それで火を止めましてもう一回落としぶたをして蒸らしていきます。
火から下ろして2〜3分蒸らす。
その余熱がまたポイントでしたね。
そして出来上がった「鶏もも肉のパインかす漬け」です。
この鶏肉もおいしそうですけどその周りは?せりを塩炒めしたものです。
今おいしいでしょせりが。
このせりの根っここれがまたおいしいんですよ。
せりのひげのような根っこ。
そうそう。
それを昆布だしでゆでてそこに先ほどの漬けたあとのかすを入れるんです。
そうするとせりのかす汁が。
これもおいしそうですね。
一口また。
一口ね。
ご無体な。
さあ鶏をじゃあ。
う〜んうん!柔らかいですね鶏。
しかも味がしっかりとしみこんでます。
かもうとしたらもういなくなっちゃうみたいな。
パインの香りがどうなのかなって。
かす漬けだけにかすかにパインの香りがするかしないかぐらいで。
隠し味ですからこれは。
おいしいですね。
だから変えずに変えるというのも大事な事だと思うんですよね。
変えないけど変わっている。
すごいですね。
材料をご覧下さい。
酒かすパインペースト。
水で柔らかくした酒かすとそれからパイナップルそれに調味料をミキサーでペーストにしてから残りの酒かすに合わせて作りました。
この酒かすパインペーストなかなか優秀ですね。
というか酒かす自体が優秀だし日本古来のものでしょ。
健康にもいいし全て使っておいしく保存もできてそして体にもいいし。
全てが日本の代表選手ですね。
「かす」なんて言えないですね。
宝!日本の宝ですよ。
「かす」と言ってましたけどね我々。
酒の宝と書いて「酒宝」と言いたいぐらいですけどもね。
ほんとそんな感じです。
日本の誇るべき発酵食品の一つ今日はかす漬けをご紹介しました。
どうもごちそうさまでした。
どういたしまして。
(2人)ありがとうございました。
今日教えて頂いた料理はテキスト2月号にも作り方詳しく掲載しています。

(テーマ音楽)2014/02/19(水) 11:00〜11:25
NHKEテレ1大阪
きょうの料理 ニッポンおいしい手仕事「かす漬け」[字]

日本酒の仕込みは今が最盛期。酒を搾ったあとに残るの「酒かす」は、古くから漬物の床として重宝されてきた。日本料理の田村隆さんが、かす漬けの作り方を丁寧に紹介する。

詳細情報
番組内容
かす漬けの「かす床」は、軟らかく戻した酒かすに、みそ、砂糖、しょうゆを練り混ぜるだけで完成。ここに魚介や肉、野菜などをつけ込むと、保存性が増すだけでなく、風味が格段にアップする。今回は、日本料理店店主・田村隆さんが、さわらのかす漬けを例に紹介。さらに、誰にでも食べやすいようにと田村さんが考案した、パイナップル入りのかす床も紹介する。ミニコーナーでは酒かすを使ったアイデアレシピを考案する女性が登場。
出演者
【講師】日本料理店店主…田村隆,【司会】後藤繁榮

ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
趣味/教育 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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