ららら♪クラシック「メンデルスゾーンの“春の歌”」 2014.02.03

どこかで耳にしたあのクラシックをあなたのものに。
人生を豊かにしてくれる一曲を一緒に見つけませんか?今日の名曲はこちら。

(「春の歌」)ピアノが歌うように奏でるのは待ちわびた春の到来を喜ぶ気持ちです。
この曲が収められた作品集誕生の背景にはある女性の存在が…!更に「春」を感じさせる響きの謎も解き明かしていきます。
一体どんな秘密が隠されているのでしょうか?今日は音楽で春の風をお届けしま〜す!「ららら♪クラシック」今日はメンデルスゾーンの「春の歌」をご紹介します。
外はまだ寒いですが暦の上では間もなく立春という事で今日は一足先に音楽で春を味わってみたいと思います。
それでは本日のお客様をご紹介しましょう。
歌手の森口博子さんです。
(一同)よろしくお願いします。
メンデルスゾーンの「春の歌」という事なんですが。
曲名は知らなくても何となくこのメロディーはどこかで耳にした事のある。
そうですね。
特に出だしのメロディーとかなんか聴いた事あるなっていう感じがして…あと光が強くなったり弱くなったりってなんか緩急緩急をこのメロディーから感じるっていうのはありますよね。
春が来たなっていう感じですね。
それではまず最初のキーワードから。
音楽にはいろいろな春の描き方があるみたいですね。
「春の歌」を書いたのは19世紀にドイツで活躍した作曲家…彼にとって春は心の底から待ち焦がれる季節でした。
なぜなら…。
長く厳しいドイツやオーストリアの冬。
どんより曇った灰色の空からは冷たい雪が…。
気温はマイナス20度を下回る事もあるんです。
そんな厳しい冬を経てようやく訪れるのが春!昔も今もドイツの人たちにとって春は特別な季節です。
すてきな歌までありがとう!生命力あふれる春。
多くの作曲家が音楽で春を描いてきました。

(「春へのあこがれ」)モーツァルトの「春へのあこがれ」。
花が咲き木々が緑の葉を茂らせる…。
そんな春の自然に憧れる気持ちを歌います。

(「春の声」)そして思わず踊りたくなる春のウキウキ気分が表れたシュトラウスのワルツ「春の声」。
作曲当時彼は新婚。
人生の春も謳歌していました。

(「交響曲第1番『春』」)交響曲で春を表現したのはシューマン。
彼はこの曲の第1楽章を「春の始まり」第4楽章を「たけなわの春」と呼んだんだそうです。

(「美しい五月に」)同じシューマンの春でもこちらはちょっと切なげ。
恋に揺れる青年の繊細な心情を歌っています。
春といえば恋の季節ですもんね。
そして…。

(「春の歌」)今日の一曲「春の歌」。
この曲はメンデルスゾーン33歳の春に書かれました。
順調な創作活動を続けていたメンデルスゾーン。
彼が描いた春は喜びに満ちた前向きな春でした。
なんかほんとに目の前がサーッとパステル色の世界に行くようなもうほんとに幸せな気持ちになりますよね。
春をテーマにすると。
でも今のいくつか挙がった曲を聴いただけでも何ていうんでしょうねつい口ずさみたくなるようなほのぼの伸び伸びした曲調が多いですよね。
一歩踏み出したくなるような…。
始めようみたいなね。
ドイツ人の春の待ち遠しさの感覚はちょっと違うんですかね。
そうですね。
でもそういう北国でずっと耐えてきた「来ないかな…」と思っていた春がようやく来た時の喜びをうまく音楽に乗せると逆にねみんなが圧倒的に支持してくれる名曲になるんじゃないですかね。
なんか日常で感じてる事と似てますよね。
人生の氷河期とかあるじゃないですか。
例えば厄年の時はもう八方塞がりな時もあるんだけど…。
人生の氷河期!?それどれぐらいありました?私は33の…まさにメンデルスゾーンと同じ時の後厄の時とかはもうすごい八方塞がりで行き場所がないみたいな時があったんですけどでもそれを越えると「生きてて良かった!」みたいな急に開ける感じ!だからドイツの方の冬っていうのも「寒いな大変だな。
でもやっぱり春が来たからまだ生きられる!」みたいなそういう日常と季節ってやっぱリンクしてるのかなって。
ありますよ。
ほんとに気分が変わりますからね。
光の感じ明るくなったりすると。
面白いなぁ。
音楽家だけではなくて文学の世界でも春を描いた作家は多くてメンデルスゾーンと交流のあった文豪ゲーテも「五月の歌」という作品を書いていますしハイネも春の歌をたくさん書いていますね。
それではここからはメンデルスゾーンの「春の歌」の誕生秘話に迫ろうと思います。
メンデルスゾーンといえば以前番組でもご紹介したんですが天才にして何でもできてしまうルネサンス人というかオールマイティーな人だったんですよね。
語学も堪能で何か国語もしゃべれるしお勉強もね。
もう一日に寝る時以外はとにかくずっと何かを…。
習い事をしているというアクティブな人で。
そしてこちらなんですけれども「春の歌」はこのメンデルスゾーンのピアノ曲集に収められているんですけれどもここに書いてあるようにタイトルが「無言歌集」と名付けられている作品集なんですね。
代表作になっていますけれども森口さん「無言歌」と聞いて一体どういう世界を思い浮かべますか?えっ何ですかね…ラブレター?すてきな解釈ですね。
「無言」って聞くと確かに無言電話みたいなイメージの悪いものもあるし…。
それは悪すぎるね。
無言で見つめ合うみたいななんかこうすてきなイメージも両方ありますよね。
この無言歌はメンデルスゾーンにとってとても大切な作品集でこの誕生に欠かせないのがメンデルスゾーンが生涯大事にし続けたある女性の存在。
う〜んある女性?誰だと思いますか?普通だったら彼女とかお母さん。
母性愛に包まれて…。
違う感じですか?さあ一体誰なんでしょう。
こちらをご覧下さい。
38年の短い生涯で700以上もの作品を残した…その創作を支え続けた女性とは?それはメンデルスゾーンより4歳上のお姉さん…2人はいつも一緒。
英才教育も共に受けました。
弟に劣らぬ音楽の才能に恵まれたファニー。
作曲もピアノも見事な腕前でした。
メンデルスゾーンはそんな姉を心から慕っていました。
2人が子供の頃夢中になったゲームがあります。
メンデルスゾーンが作った曲に歌詞をつけるという遊びです。
ゲームを続けるうちに2人は「言葉では表現しきれないものがある。
でも音でなら表せる」と感じるようになりました。
こうした体験がメンデルスゾーンの音楽を豊かにしていったのです。
大人になってもファニーに作曲の相談をし出来上がると真っ先に聴かせたメンデルスゾーン。
姉なくしては大作曲家メンデルスゾーンは存在しなかったのです。
ファニー23歳の誕生日の事。
メンデルスゾーンは彼女に小さなピアノ曲を贈りました。
この曲をとても気に入ったファニーはつぶやきました。
そしてこの曲を「言葉の無い歌曲」「無言歌」と名付けたのです。
ファニーに褒められたメンデルスゾーンはその後も多くの無言歌を作曲しました。
心の赴くまま浮かんだイメージをそのまま音にする。
無言歌は姉と弟を結ぶ温かい愛情と信頼から生まれたのでした。
なるほど。
無言歌お姉さんにプレゼントした曲から始まったんですね。
やっぱり感謝だったりとか愛とかそういうものが一音一音に込められていろんな曲が生まれていったって事なんですかね。
メンデルスゾーンは4人きょうだいの2番目。
森口さんも4人姉妹なんですよね。
そうなんです。
末っ子で。
私も2番目の姉とすっごい結び付きが強くて同じく4つ上の姉なんですけども…アドバイスがもうすっごく的を射てるんですよ。
例えば「そのまんまの自分をどう表現するかって事が一番ファンの人も見たいはずだよ」って姉はいつも言ってくれるんですよね。
いい関係ですよね。
ほんとですね。
メンデルスゾーン家にも負けてないんじゃないですかね。
ほんとにお美しいお姉様で憧れもあり信頼もしていたという事なんですけれどもファニーは弟の無言歌をモチーフにして自分でも歌曲を書いたりとか自身もいくつもの無言歌を残したりしていてそういうきょうだいで同じ音楽性に向かって共有して楽しめるっていうのはとってもすてきなきょうだい関係ですよね。
メンデルスゾーンは手紙の中で言葉の無い歌に対して…まあ〜かっこいい!「すてき〜!」と思いました。
「人を好きになった時の気持ちって何?」って言われたら説明つかないのってあるじゃないですか。
どういう気持ちってもうなんか「フンギュー!」っていう気持ち。
「『フンギュー!』って何?」って言われてもだからこう「フンギュー!」みたいな…。
すごく分かります。
まさにそんな感じですよね。
もう言葉では説明できない。
だから音ってすばらしいなって思います。
だって美濃さんの音楽だって歌詞が無くても何か人が感じたり涙を流したり幸せになったりまさに音ってメッセージですよね。
小説もほんとに全く同じなんですよ。
…っていうのが仕事なので全く変わらないと思いますね。
実際どんな楽器の人でもやっぱり「自分の楽器で歌いたい」ってみんな言うんですよね。
だから例えばチェロの人も「人間の声に一番近いと言われてるこの楽器で僕は歌いたい」みたいな感じでいつも演奏されてて。
なのでピアノで歌うという表現方法はほんとにまさに「声はこんなだけど僕はこうやってピアノで歌いたいんだよ」っていうメンデルスゾーンの気持ちが一番素直に表れている作品かもしれないなと思うんですよね。
で短い曲が多いのでほんとに自分の心の一番素直な部分が出せる作品ではないかなと。
メッセージがある。
お姉さんとの思い出もたくさん詰まっているのではないかという事なんですよね。
クラシックにまつわる素朴な疑問にお答えします!答えて下さるのは…NHK交響楽団首席コントラバス奏者の吉田秀さんです。
まずサン・サーンスっていう作曲家が「動物の謝肉祭」っていう曲の中でコントラバスに象の役割をさせてるんですね。
エレファント。
「象」という曲があります。
それはピアノの伴奏でコントラバスがソロを弾くと。
あとコントラバスにもコンチェルトがあるんですね。
それはクーセヴィツキーというその彼が書いたクーセヴィツキーのコンチェルトっていうのは我々コントラバスを演奏する人間にとっては絶対避けて通れないとても有名な曲です。
バス子さんよかったら探して聴いてみて下さい。
番組ではクラシックにまつわるあなたの疑問・質問をお待ちしていま〜す!今日の名曲はメンデルスゾーンの「春の歌」。
長く厳しい冬を経てようやくやって来た春の喜びに満ちあふれた作品です。
この「春の歌」が収められた作品集はメンデルスゾーンが心から尊敬する姉との強い絆から生まれました。
それではこの曲がピアノ曲なのに歌曲っぽく聴こえるポイントそれからこの曲に漂っている春らしさの秘密というのをひもといていきたいと思います。
まずはメロディーに注目して歌っぽさの秘密を見ていきます。
有名な出だしのメロディー。
ちょっとメロディーだけを抜き出して弾いてみます。
いかがでしょうか?ほんと軽やかな。
こういう気持ちになりますね。
メロディーだけでも春らしさというのは感じるんですけれどもポイントは次の音に移る時の16分音符という細かな音符なんですね。
ここ。
タタタ。
そうなんです。
これほんとは芯になっているメロディーは…。
ドミラなんですけれども…。
こんなふうにして16分音符という細かい音を入れる事で雰囲気が変わりませんか?そうですね。
ないとアーアアアアアアーアアー…ってこうのびた感じですけどタタタっていうのが入るとアーアアアアアアアアーアアー…って。
上に上がりやすいというかニュアンスが一気に…。
変わりますね。
何ていうかしゃくりとかアーアアア…っていった方が上に上がりやすいみたいな。
それがドミラだとちょっと器楽的になるけどもアーアアアアー…っていうこのニュアンスが歌っぽさ。
気持ちよく歌ってる時の声の揺れというかこぶしというのが出てますよね。
すごく歌っぽく聴こえます。
こんなふうにして無言歌はあくまでもやはり歌ですのでピアノで歌曲を表現するというのがこんなところに出ているんですね。
さあ次は「春らしさ」。
これも大事なキーワードになっています。
これを感じる秘密を見ていきたいと思います。
それが今のメロディーと同じ部分なんですがここに隠れているのでちょっとご紹介します。
こちらの旋律というか部分。
フフーンフフーン…。
なんかちょうちょがピョンピョンピョンピョンみたいな。
・「芽吹く命…」みたいなそんな感じを。
生き生きしてますね確かに。
これもしこのポロロンがないとどうなるのか聴いて頂きたいと思います。
ちょっと重い感じしますね。
空気が重くなりますよね。
ちょっとなんか寂しい感じかな。
そうですね。
メロディーには歌っぽさとか春らしさは残っているんだけれども何か物足りない部分がありますよね。
それをポロロンが入るとどうなるか。
うれしい。
どうですか?この軽やかさ。
自然に気持ちもポロロンポロロン…って乗っかりますね。
新しい命が次々と芽吹いてくる雰囲気ありますもんね。
これが人によってちょうちょに感じたり鳥のさえずりに感じたりハトの鳴き声に感じたり水面の輝きに感じたり自由にこの曲は聴いていいんではないかという。
このメロディーに乗せて動いている内声が歌の気分を盛り上げている重要な役割を担っているんですね。
なるほど!ポロロンですね。
ポロロンを是非注目して聴いて頂きたいなと思います。
ですから歌詞が無い歌でこれだけ季節春らしさを感じさせるのはそれだけメンデルスゾーンの作曲の技がぎゅっと詰まってるって事だったんですね。
秘密が隠れているんですよね。
ここからはすてきな演奏ゲストが登場!ドイツの巨匠ピアニストの…スタジオにはピアニストのゲアハルト・オピッツさんにお越し頂きました。
オピッツさんよろしくお願いします。
こんにちは。
よろしくお願いします。
(森口)日本語お上手ですね!いいえ恥ずかしい。
私の日本語足らない。
イントネーションすばらしいですね。
オピッツさんにとって春の訪れはどういうものなんですか?メンデルスゾーンのこの曲を聴いてると私はちょうちょの飛んでる高低だったり光が強くなったり弱くなったりっていう緩急が浮かんでくるんですけどオピッツさんはこの曲を演奏されててどんな春の情景が見えてきますか?オピッツさんのお話されてる声を聞いてるだけでいろんなメロディーが浮かんでくるここにも音楽があるっていうね。
もうすてきですね。
お話されてるところから。
これから演奏して頂くんですけれどどういう気持ちでお弾き頂けますかね?すごい今日楽しみです。
そうですね!ゲアハルト・オピッツさんの演奏でメンデルスゾーン「春の歌」です。
お聴き下さい。

(拍手)
(森口)すてき!何ですかねもうほんとに寒い冬を知っているオピッツさんだからこそあの柔らかいタッチの音が出せるんだなあの厳しい冬を知ってるメンデルスゾーンだからこんな曲が生まれたんだなっていうなんかいろんな背景とか環境とかいろんなものがあってこういう作品って生まれるんだなって改めて感じました。
僕ちょっと家のそばの目黒川の桜の事を思いながらずっと聴いてましたね。
今年も散歩するんだなと思って。
いかがでした?こういうすばらしい演奏で聴くと春だけでいいっていうか春の中に四季があるっていうんですか。
いろんな移ろいっていうかいろんな色が見えてきて四季はありがたいと思ったけど春だけでもいろんなものが感じられるんだなっていう。
すばらしかったですね。
確かに春だけで奥深いものがありましたね。
ほんとにオピッツさんの演奏とメンデルスゾーンのいろんな背景でハッピーになれました。
そういえばあの無言歌はまだまだ40曲以上あるのでお気に召した方は是非聴いてもらいたいですね。
音楽で春の風感じて頂けましたか?間もなく立春。
今年もきっとすてきな春がやって来ますよ。
2014/02/03(月) 10:25〜10:55
NHKEテレ1大阪
ららら♪クラシック「メンデルスゾーンの“春の歌”」[字][再]

今回ご紹介するのは、かろやかな旋律で春らしい雰囲気が漂う「春の歌」。メンデルスゾーンの代表的なピアノ曲です。作品誕生のエピソードとともにこの曲の魅力に迫ります。

詳細情報
番組内容
まもなく立春。そろそろ春の訪れが待ち遠しい気分では? そこで、春らしい雰囲気が漂う「春の歌」を紹介する。メンデルスゾーンのピアノ作品集<無言歌集>の中でも有名な1曲。この作品集誕生の背景には、ある女性の存在があった。知られざるエピソードとともに作品の魅力に迫る。演奏は、ドイツ人ピアニストのゲアハルト・オピッツ。「春の歌」のほか、春のクラシック曲としてモーツァルトやシューマンの楽曲も紹介する。
出演者
【ゲスト】森口博子,【出演】ピアノ…ゲアハルト・オピッツ,【司会】石田衣良,加羽沢美濃

ジャンル :
音楽 – クラシック・オペラ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
劇場/公演 – ダンス・バレエ

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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