(囃子)
(囃子)よっ日本一!お見事!あっぱれあっぱれ!いいぞ!お見事!あっぱれ!日本一!日本一!日本一!あっぱれあっぱれ!お代はこちらへ!お代はこちらだよ!はいはいどうも!はいどうもありがとう!はいどうもありがとう!はいどうも!久しぶりですね権一さん。
忘れました?俺ですよ。
次郎吉?お前次郎吉か?そうよ。
次郎吉だ。
まさかこんな所で見世物小屋を出しているなんて思わなかったな。
芝居はやめたんですか?お前やめるも何もあっしら下っ端には一座が無くなりゃ続ける理由がねえ。
大道芸でなんとか食いつないできたようなもんでさ。
大したもんだよ。
随分とはやってるようじゃないですか。
見事なもんだなあの2人は。
女の方はあっしの娘で。
えっそうかい!お糸ちゃんだったか!あの小さくてよく笑うお糸ちゃんがね。
きれいになったな。
あっつまんでくれ。
それより次郎吉俺はお前が生きてた事に驚いてるよ。
そうですか。
もしかして…あの娘も一緒なのか?やっぱりお前が連れて逃げたって事か…。
かわいい妹だからな。
妹って?あれはお前…。
まあかわいいならしかたねえけどな…。
あいつは俺のたった一人の妹だよ。
こんにちは。
こんにちは。
・
(男たちの悲鳴)あら徳五郎の親分。
どうかなさったんですか?そんな怖い顔して。
あっいつもそんな顔でしたっけ?甘酒屋の妹か。
はい。
お前の兄貴にも人から余計な疑いかけられねえよう…注意するよう言っとけ。
えっ?
(お染)あ〜小袖ちゃん。
兄さんがいるかと思って…。
今日はまだ来てないわね。
どこで何を食ってんだか。
どうかしたの?えっ?あ〜ひどい話よ。
今徳五郎親分から話を聞いてねこのバカタレどもがおびえてんのよ自分のした事に!ひでえ事言うなよ女将!俺たちだってなにも悪い事しようと思ってやった訳じゃねえんだよ!同じ長屋に住む者としてああするしか…。
なあ!あん時はしょうがなかった。
俺たちだけじゃねえ。
長屋中がそうなってたんだよ。
そうそうそう。
誰が言いだしたって訳じゃねえ!お…俺は違うんじゃねえかなってちょっと思ってたんだけどね〜!何言ってんだこの野郎!てめえ今更言い訳できねえぞ!やめとくれよ仲間割れは!全く!「善と悪は紙一重だ」っていうけどね人を疑う時にはそれが紙一重だって事を忘れちまうんだよ。
こっちは善であっちは悪だって決めつけちゃってさ。
あの〜話が全く分からないんだけど。
一体何をしたの?何にもしていない人間を悪いやつだと決めつけて親分に突き出したんだってさ!えっ?
(鳴き声)それはいつの事だ?1年ばかり前よ。
兄さんがまだあのそば屋に出入りする前じゃない?何があったんだ?あの3人と同じ長屋に魚屋の仁吉さんってのがいてねその仁吉さんはおかみさんを早くに亡くしてお浅さんっていう14になる娘さんと二人っきりで暮らしてたんですって。
そのお浅さんがねある日家に帰らなくて…。
お浅!仁吉さんは朝までお浅さんが通りそうな所を探し回ってたんですって。
そしたら…。
お浅!結局その古井戸からお浅さんは着物を剥ぎ取られたような姿で見つかったんですって。
ひでえ話だな。
手込めにされて殺されたのか。
殺されたかどうかは分からなかったって。
お浅さんが自分で飛び込んだのかもしれないって。
どっちにしろ死にたくなるような事を誰かにされたからだけど。
敵を取ってくれ。
その誰かを長屋の連中が突き止めたって事か。
そうらしいの。
で下手人と疑われたのが鉢助って人で兄さんみたいに昼間はブラブラして遊んでばっかりいて夜は博打場に出入りしてるような人だったって。
どこが俺みてえなんだ?昼はブラブラ夜は人に言えないような事をしてるのは一緒でしょ。
わざわざ比べる事ねえだろ俺と。
それで?それでその鉢助って人は前からお浅さんに気があったらしいの。
それだけの事でか…。
(仁吉)逃げたぞ!捕まえてくれ!鉢助〜!待て!待て!俺は何もしちゃいねえって!だったらなぜ逃げた?そんな物持ってこられたんじゃ誰だって逃げるだろ!俺は魚じゃねえぞ!鉢助!ホントにてめえじゃねえんだな?とぼけてんじゃねえぞ!博打で負けたってむしゃくしゃしてたんだろ?俺じゃねえって!嘘つけ!お浅にはな…いい縁談が来てたんだ。
それなのに…お前に付きまとわれて困るってお浅は嘆いてたんだ!お浅によくも!チクショー!ちょ…ちょっと待って待って!早まっちゃ駄目!そのままみんなで自身番に突き出したそうよ。
そこで厳しいお取り調べを受けて鉢助は白状したのか。
そう。
それで島流しになったらしいの。
ところが最近同じような事をして捕まった下手人が1年前のお浅さんの一件も白状したんだって。
その人は何人も殺しててどうせ死罪になるだろうからって開き直ったんじゃない?今更ながらに鉢助の疑いは晴れたって訳か。
そうなのよ。
い…今何て言いました?親分。
鉢助は赦免されて島から戻ってくる。
(太助)えっ!?お前らは何かされねえよう用心しとけ。
(3人の悲鳴)全く!「身から出た錆」よ。
その船がもうじき江戸に着く頃なんだって。
なるほどな。
親分。
うわ〜っ!あ〜!何でえお前か。
脅かすな鉢助かと思った…。
余計な事言うんじゃねえ!へい…。
鉢助のお取り調べをしたのは親分なんですね。
この野郎!その話もう知ってんのか?それで親分は自分に腹を立ててるんでしょ?違いますか?お浅〜!親分…お浅が何で死ななきゃならねえんだ?苦労してこれから幸せになるって時に…。
敵を取ってくれ。
親分…頼む!親分!
(仁吉の泣き声)やってねえって!お浅を殺めたのはてめえなんだろ?調べをしてる間あの娘の哀れな姿と仁吉の姿が頭から離れなかった…。
もっとどんどんやれってんだよ!へい!おりゃ〜!
(鉢助の悲鳴)おいらが鉢助を下手人に仕立てたようなもんなんでえ…。
調べていたのは同心の旦那じゃないんですか?いやあのころはまだ先代の旦那でな旦那は体の調子が悪い上鼠小僧追っかけてて足くじいて寝込んでたんでえ。
俺にも一端があるのか…。
うん?あっ?いや…。
おい徳五郎!あっ旦那いらしたんですか?鉢助の一件は聞いたよ。
全く親父もお前も困ったもんだ。
先代は何も悪くありやせんよ。
ほう〜。
ならお前が悪いんだな?いいかい?その鉢助とやらが現れたら言っておくれよ。
「今この町にいる同心は何も悪くないからくれぐれも恨んだりしないように」とな。
そんな言い方は…。
黙っとけ!けど!気に入らなきゃいつでもやめたっていいんだぞ。
大体鉢助みたいな小物にこだわってるからこういう事になるんだ。
私の下で目明かしを続けたいんだったらもっと大物を捕まえる事だな。
へい…。
な〜に徳五郎の旦那はそのうち大物を捕まえますよ。
何?黙ってろ!甘酒屋。
お前みたいな町の小物とつきあってたら一生そんな日はやって来ないだろうな。
ク〜ッ!いくら先代の伜だからって言われっ放しでいいんですか?親分!先代には恩があるんでえ。
町のごろつきだったおいらを見込んで下さり岡っ引きにしてくれたのは先代だ。
おかげでおいらいっぱしに家族も持てた。
先代のために今の旦那を立ててやるのが筋だ。
先代も子育てにはしくじりやしたね。
バカ野郎!痛っ!先代を悪く言うんじゃねえ!大物だか小物だか知らねえが鉢助が戻っても何もなきゃいいんですがね。
(与平)おい鉢助が住んでたこの家今空き家だろ?うん。
あれからここに住むやつはふた月もたたずになぜかみんな出てっちまうんだよな。
鉢助のたたりか?このままにしてていいのかよ?空いてりゃ鉢助がまた戻ってくるかもしれねえ。
それじゃどうするつもりだい?おい。
もしここにほかの誰かが住んでたら鉢助も諦めてどっかよそへ行くんじゃねえか?…なら大家に言って急いでここに誰か入れてもらうか!それじゃ間に合わねえ!俺たちの誰かがここに住んでるふりをするんだ。
それじゃかえって鉢助が怒りだすんじゃねえか?それに誰がここに入って鉢助を待つんだ?
(仁吉)私が入ろう。
(太助)仁吉さん。
私がここで鉢助を待つよ。
私が一番鉢助に謝らなければならないんだ。
もし会えたらみんなの事は許してもらうように頼むつもりだ。
謝ってそれで殺されても文句は言えねえ。
仁吉さん…。
この家でお浅と一緒に鉢助を待つよ。
ごめんよ。
あ〜千草先生来てたんですか。
ええ。
患者さんの家を回った帰りにお豊ちゃんと一緒に腹ごしらえに寄ったんです。
あ〜そうですか。
次郎吉さんついてましたね。
ここで千草先生と会えるなんて。
おいバカ野郎!変にからかうな!
(せきばらい)あ〜女将。
あっ俺も盛りにしてくれ。
あいよ。
わざわざ千草先生と同じもんが食べたいのね。
わざわざじゃねえよ!たまたまだよ!またまた!あ〜そんな事よりいつもの連中は今日は来てないのかい?さあね。
商いそっちのけで今頃首洗って待ってるんじゃないのかい?きっついな…。
何かあったの?いや何でもないです。
お豊。
それ着てるとすっかり一人前に見えるぜ。
見えるだけじゃしょうがありませんよ。
私なんてまだまだ何も先生のお役に立ちませんから。
そんな事ないわよ。
お豊ちゃんは手先も器用で覚えも早いし頑張ればよい医者にだってなれますよ。
先生それ本当ですか?お豊ちゃんにその気があれば見込みはあると思うよ。
頑張れば私も千草先生みたいになれるんですか?お豊頑張れよ。
次郎吉さんちょっとケガをしてくれませんか?私に包帯を巻かせて下さい!おいおいそこまで張り切るなよ。
女将!あっどうしたんです!?何か食わせてくれ…。
心配はいらねえ。
金ならある。
どこかケガをなさってますね?診せて下さい。
何だ?お前は。
この人は医者だ。
ひょっとしてあんた鉢助さんじゃないのかい?この人!?誰だ?てめえ。
甘酒屋の次郎吉って者だ。
ちょっとごめんなさいね。
何するんだ!?
(千草)これはひどい。
すぐに診療所に行って手当てしないと。
ほっといてくれ!俺には行く所があるんだ!このまま放っておけば足を切り落とさなくてはならなくなるかもしれませんよ。
それでもいいんですか?その前に熱が上がって気を失うかもしれないわね。
「命あっての物種」だろ。
そうよ。
仕返しするにも命がなくちゃ!女将!あっごめんなさい!分かった…。
分かったからその前に何か食わせてくれ。
私のでよかったら…。
それじゃその鉢助って人は今千草先生の所にいるの?そうだ。
まあ不幸中の幸いというかこれで妙な事を考える事も当分はできないだろう。
そんなにひどいの?ケガ。
ああ。
島を出る時に転んだと言っていたがあれは誰かに斬られた傷だな。
刀傷?…だと思うが。
鉢助さんが命を狙われるなんておかしいじゃないの。
うん…まあな。
・
(足音)誰だ?・ここは鉢助さんのお宅ではござらぬか?そうだが…。
おい!誰か!おい!はい!あっ目が覚めたんですね。
熱はどうですか?痛い!何をするんですか!?お前のような子どもに何が分かるんだ?えっ?どうでもいいって事か?俺なんか。
子どもにでも見させときゃいいって事か?バカにしやがって!千草先生でしたらすぐに呼んできますよ。
うるせえ!それより水だ!水持ってこい!はい…。
(千草)その必要はないよ。
千草先生…。
その前にお豊ちゃんに謝って下さい。
何?ここへ運ばれてきた事は覚えていますか?覚えてるよ。
それからあなたは熱で気を失ったんです。
その間に私が傷の手当てをしました。
お豊ちゃんはそのあともあなたから片ときも離れずに熱を下げようと一晩中井戸の冷たい水をくんではあなたの額に当てていたんです。
熱ですぐ布が乾いてしまうから寝る間もなくあなたの面倒を見ていたんですよ。
大丈夫です。
先生もう熱は下がったみたいです。
謝って下さい。
まずはお豊ちゃんに謝って下さい。
いいんです!喉が渇いたんでしょ?当然ですよ。
すぐに水を持ってきます。
謝ったってな取り返しのつかねえ事もあるんだ。
俺がどんなひどい目に遭ってきたか…お前らに分かるもんか!あなたの話は聞きました。
けどそれとお豊ちゃんの事は…。
・おうこっちだこっちだ!こんなとこに隠れてやがった!何です!?あなたたちは。
先生鉢助がここにいるとそば屋で聞いてきたんだ。
鉢助!貴様よくも仁吉さんを!待ちなさい!一体何があったんです!?鉢助!昨夜仁吉さんをやったのお前だな?仁吉さんはなお前に謝りたくてお前の家で待ってたんだ。
謝って…謝って謝ってそれで殺されたってしょうがないって言ってたんだ!ホントに殺す事はねえだろ!待って下さい!昨夜は鉢助さんにそんな事ができるはずがありません。
先生!先生は何で鉢助をかばうんですか?かばっていません。
一晩中ここで眠っていたんです。
一晩中!?先生は見てた訳じゃねえだろ!私が見ていました!とにかく鉢助はこっちに渡してもらいます。
どうする気ですか?自身番に連れていきます。
あなた方はまた同じ過ちを繰り返す気ですか?まず鉢助さんに謝って下さい。
謝るべきでしょう!千草先生の言うとおりだ。
(太助)甘酒屋。
鉢助さんは仁吉さんを殺せる訳がねえ。
足をケガして一歩も動けねえんだ。
徳五郎親分も鉢助さんを疑っていないわよ。
そのとおりだ。
親分…。
仁吉を殺したのは侍だ。
鉢助にあんな殺し方ができるはずもねえ。
鉢助…すまなかった!このとおりだ!勘弁してくれ!すまねえ!勘弁してくれ!親分…。
だけどそれなら仁吉さんを殺したのは誰なのかしら?鉢助さんひょっとしてそれはあんたの足のケガと関わりがあるんじゃありませんか?どういう事でえ?仁吉さんはもしかしたら鉢助さんと間違えられて殺されたような気がしたもんで…。
鉢助…お前誰かに命狙われてんのか?島で赦免されて船に乗る前に誰かに殺されかけたんだ。
誰に!?分かんねえ。
島の役人だと思うが俺は足を斬られて山の中に逃げ込み船が出る寸前に飛び乗ったんだ。
何で狙われてんのか心当たりあんのか?俺が罪人となって流されてきた侍からある話を聞いたからかもしれねえ。
ある話?どんな話だい?そいつは浜崎藩松林家の下級武士だと言っていた。
松林家?その松林家に関わる書状がある所に隠されてると。
それを老中の水島出羽守様に持っていけばいくらでも金を出してくれると。
老中だと!?幕府の老中にお前みてえな者が会えるはずがねえだろう!ちょっと待った。
その松林家の主松林壱岐守も確か今は老中だ。
次郎吉さんよく知ってるわねそんな事。
まあたまたま…。
つまりどういう事なんでえ?松林家にとって同じ老中に見られたくない書状があるっていう事だろうか。
その隠し場所を俺は教えてもらったんだ。
それじゃそれがもう一人の老中に伝わるだけで松林家は困るって訳ね。
…って事は何か仁吉を殺したのもその松林家か…。
親分大物を捕まえる好機ですね。
大物すぎらあ!老中だぞ!そもそも俺たちは武家には手出せねえ!鉢助さんあんた行く所があると言っていたがその隠し場所か?まあ…。
そいつはどこでえ?浜崎藩の上屋敷。
大名の上屋敷!?そんな所に入れる訳ないじゃない!そうよ!鼠小僧じゃあるまいし!はあ…。
全くだ。
山崎。
島から戻った流人は始末したか?それがしくじりましてございます。
人違いをしたようです。
まあよい…。
相手にするほどの者でもなかろう。
念のため見つけ次第始末致します。
うむ…。
万が一にもそのような書状が出てくるような事があらば今度こそこの浜崎藩松林家はしまいとなろう。
浜崎藩主の松林家?松林家と小袖殿は何かご縁でもあるんですか?ある訳ないじゃない。
ちょっと気になっただけよ。
どのように気になったんですか?「どのように」って…。
例えばそこの家来が島流しになるなんて事があったりするのかなって…。
島流し?今度は何を調べてるんですか?何も調べてないわよ。
ちょっと聞いてみただけ。
ありますよ。
あるの?まあ「あった」と言う方が正しいでしょうか…。
何があったの?抜け荷です。
抜け荷!?その事で少し前まで武家の間では大変な騒ぎだったんです。
浜崎藩が抜け荷をしていたの?そうです。
朝鮮国の船と交易してたんです。
それが幕府老中の放った隠密によって明るみに出たんです。
その老中というのは水島出羽守様?
(広之進)よくご存じですね。
浜崎藩の松林壱岐守も老中だと聞いたけど。
そのとおりです。
同じ老中として水島殿は松林殿まで手を伸ばす事はできなかったんです。
松林壱岐守は抜け荷の責めを負わなかったという事?
(広之進)そういう事です。
抜け荷を指示したのは国元家老でその国元家老が自刃したため松林殿が関わっていたという証しはつかめなくなったんです。
そんなの…関わっていないはずがないじゃない!証しがなければどうにもなりませんよ。
結局捕まったのは国元の廻船問屋と自刃した国元家老の家来でそれらは死罪となりその下の家来たちは島流しとなったんです。
なるほど。
下を切り捨てて上は首をつないだって訳か。
死罪となった家来のそのまた下の家来が島流しになったのよ。
そこで鉢助に会った。
そして江戸に戻る事になった鉢助に藩を転覆させるような事を吹き込んだ。
きっと島の役人には松林家の息のかかった者がいてそれを阻止しようとしたのね。
よほどの用心だわ松林家も。
ねえ。
前にその名を聞いた事がない?うん?松林家。
昔どこかで聞いた事があるような気がする。
さあ。
俺は聞いた事ねえな。
(お豊)おなかすきましたか?すかなくても食べないといけませんよ。
さっきは…すまなかったな。
えっ?このとおりだ。
勘弁してくれ!いいですよそんな事はもう。
俺は人に親切にされるなんて事はすっかり忘れちまってたんだ。
人を恨み過ぎたんだ。
しかたありませんよ。
ひどい目に遭ったんですもの。
昔から博打ばかりして人に疑われてもしょうがねえような生き方してきたからな。
私のお父っつぁんも博打ばかりして殺されたんです。
もう博打はしないで下さい。
しねえよ。
お前に助けてもらった命だ。
粗末にはしねえ。
それがせめてもの恩返しだろ。
一生お前への恩は忘れねえよ。
ありがとうな。
どうしたの?お豊ちゃん。
何かされた?先生…私医者になります!たくさんたくさん学んで必ず先生みたいに医者になりたいです!分かった。
ほう〜。
これが浜崎藩松林家の上屋敷か。
へい。
ここに何があるんです?あん?いや…。
あん?あ〜鼠!定逃がすな!へい!さすが親分!
(呼び子の音)何だよ。
親分も気にしてたのか。
あっ!おっとっとっと!チクショー!屋敷内に逃げ込まれちゃ手出しできねえ!クソ!いたぞ!くせ者だ!寒いな…。
あっ!い…いたぞ!
(呼び子の音)あ〜お前ら!こっちだこっちだ!あ〜!あ〜!早く行きやがれ!
(呼び子の音)次郎吉さん。
書状は厠の天井に隠してあるそうよ。
「臭いものには蓋」ってか…。
(鉢助)うわっ!うわ〜っ!小袖ちゃん!?早く鉢助さんを連れて逃げて!小袖ちゃん大丈夫?大丈夫です…。
こいつは松林家が血眼になる訳だ。
(囃子)いいぞ!よっ日本一!一体どうしたっていうんだ?思い出したの。
何を?松林家。
えっ?どこかで聞いた名だと思った。
私たちのお父っつぁんとおっ母さんを殺した武家の名よね?あの時と同じ目を見たような気がしたの…。
キャ〜ッ!嫌!嫌!キャ〜ッ!うわっ。
お前はまだ6つだったのに覚えているのか?どこまで覚えてるんだ?あれは…私の本当のお父っつぁんとおっ母さんではなかった。
あれは兄さんのお父っつぁんとおっ母さんで…私はそこに預けられていたんでしょ?小袖…。
だけど兄さんも私も芝居小屋で育ったのは同じでしょ?芝居小屋の人たちが「松林家」とよく口にしているのを思い出した。
兄さん!私の本当の親は誰なの?まさか…。
私を消すためにその役者と一座を殺したとは考えられない?小袖!強いだけでは人らしくありません。
大名家がお取り潰しになるような証しを親分が握ったとしたらどうします?弱き者を助けるのが鼠小僧だもの。
俺もまさか松林家と関わり合いになるとは思いも寄らなかった。
殿様が宴で芸をご覧になりたいと仰せになったか。
駆け回る犬を射ぬけと言ったお殿様もいたと聞きます。
小袖殺すな!鼠小僧に初めに恵んでもらったのは私だから。
・「傷を負った瞳そこに安らぎはないのか」・「涙のそばで生きるのか」・「ひとりで抱えながら」・「終わらない悲しみひととき忘れてみないか」・「その闇を切り裂いてやる」・「俺の胸で眠れ」・「千年恋慕咲き乱れよう」・「散りゆくとて悔いなどない」・「尽き果てるまでともに生きよう」・「あらがうほど運命は無情」・「ゆえに固く結ぶ絆」・「腕に抱いて交わす契りは」・「とこしえの愛」2014/03/19(水) 00:40〜01:25
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 鼠(ねずみ)、江戸を疾(はし)る(8)「宿命の兄妹(前編)」[解][字][再]
次郎吉と小袖、闇を生きる兄妹の秘密がついに明かされる!果たして、彼らは血のつながった本当の兄妹なのか…。そして二人の秘密が明かされる発端となるある事件が…。
詳細情報
番組内容
次郎吉(滝沢秀明)と小袖(忽那汐里)、闇を生きる兄妹の秘密がついに明かされる! 果たして、2人は血のつながった本当の兄妹なのか。その秘密が明かされる発端となる、ある事件のキーパーソンが、流された島から戻る。21世紀滝沢版鼠小僧、怒とうのクライマックス前編! 兄妹の秘密が明かされるとき、江戸の町に衝撃が走る。徳五郎(