ドキュメント72時間・選「“広島太郎”を探して」 2014.03.19

この街ではその男の事を知らない者はいない。
人呼んで太郎こと広島太郎。
全身にぬいぐるみという一度見たら忘れられない異様ないでたち。
時に不思議な言動で人々の心を癒し励ます。
神出鬼没の路上生活者。
現在も過去も一切が謎だけどなぜか街じゅうの人がいつも彼の事を気にかける。
太郎とは一体何者か。
3日間だけその後ろ姿を追ってみた。
秋が始まり大勢の観光客でにぎわいを見せる広島。
まずは目撃情報が相次ぐ市内最大のアーケードで聞き込みをしながら待ち構える事にした。
(取材者)広島太郎さんってご存じですかね?更に別の説も。
この若者たちも何か知ってるかな?何でですか?ところで彼はみんなにとってどんな存在なの?とうとう神様説まで。
まさに歩く都市伝説といった感じ。
今度は少し年配の女性。
いつごろから太郎は目撃されるようになったんだろう。
分かりません。
でも私の年齢からしたらきっと…。
不思議な噂とともにずっと人々を引き付けてきた広島太郎。
でもなかなか現れない。
少し移動しながら彼の姿を捜してみる事にした。
サヨナラ!サヨナラ!じっと同じ場所に座り込んで道行く人を見つめる男性。
「ここで見た事があるか?」と尋ねるといきなりすごい体験を語りだした。
そうですか。
秘密に?なんとつい最近一対一で飲んだという。
でも何で誘う気になったんだろう?働く意味を見失って会社を辞めたばかり。
失意のどん底にいた時目の前に現れたのが太郎だった。
人通りが少なくなったアーケード。
どこからともなく歌が流れてきた。
・「明け方の夜明け前」・「始まりの朝焼けが」結局この日広島太郎には会えなかった。
翌朝前の日に聞き取った目撃ポイントを潰していく事にした。
オフィスや商店がひしめく街の中心部。
ここも目撃が相次ぐ場所だ。
今調べている事があって。
お仕事中すみません。
ちょっと待って下さいね。
放置自転車の指導員。
仕事柄よく広島太郎を見かけるという。
お話しになったんですね。
何で話しかけるんですか?次の場所へ移動中急に声をかけられた。
えっ?いきなり宝くじの話?何の事?僕ら今何でここにいるかというとですね。
広島太郎さんてご存じですか?おっ!またもや有力情報。
心当たりがあるのかな?道中独り身である事や亡くした家族の事などをポツリポツリと話してくれる。
7年前に他界したお母さんは被爆者だったそうだ。
「人生いろいろ」の?うんそう。
ちょっと待ってよ。
たどりついたのはなぜか原爆ドーム。
広島太郎と会ったのは去年。
借金を抱え人生を悲観していた時だった。
路上生活をしながら泣き言を一切言わない太郎はまるでこの街のように不屈の存在に思えたという。
さいなら!ありがとうございました。
いや〜ホンマ俺も勇気湧いた。
さようなら。
ありがとうございました。
体気ぃ付けて。
宝くじ当たるといいですね。
そうね。
不思議と太郎はこの街の人々の心に何かを残していくのだろうか。
この人除いたら皆いい人なんじゃ。
チャブチャブ言うな!チャブチャブ言うな!暗くなってからやって来たのは繁華街の中心にある公園。
いろんな人が集まる有名な待ち合わせ場所でここもまた有力な目撃ポイントだ。
早速広島太郎に人生相談した事があるという人がいた。
声をかけたんですか?それは人間関係のもつれで心のバランスを崩し会社を辞めて実家に籠もりがちになっている時だった。
胸の中で膨らむ不安や孤独を洗いざらいぶつけた。
太郎は黙ってうなずくだけだったけど不思議と気持ちは軽くなった。
結局ここにも姿を見せなかった広島太郎。
ネットにはこの日も彼の存在を求める無数の声があふれていた。
ついに3日目。
なぜかこの街で太郎の事を話題にすると自分たちの生き方にたどりつく気がする。
さて今日は…。
おはようございます。
おはようございます。
うちゲームセンターなんですけど。
太郎さんはゲームセンターには来ないですか?両替?さすがにちょっとね。
更に重要な話を教えてくれた。
話では老舗スナックの中には太郎を招き入れるほど深い関係の店もあるという。
その店を探す事にした。
この飲み屋街の生き字引といわれている人に話を聞く事にした。
すいません急に。
はい。
大丈夫ですか?大丈夫です。
え〜そらないでしょ。
誰がそんなバカ言いました?あ〜ただの噂なのかな?そんな話聞いた?聞かんねえ。
それはないですよ。
戦後?昭和21年からあるんですよ。
ここは原爆投下の1年後焼け野原のバラック小屋から始まったお店なんだって。
亡くなったご主人と二人三脚。
歯を食いしばって頑張った。
ネオンがにぎやかになってきた。
撮影終了まで残り14時間。
夜の女性たちへの聞き込みを急ぐ。
広島太郎と仲のいいママさんを知りませんか?噂を聞いたんですけど。
してないですか。
すみません。
ありがとうございました。
そして老舗のお店を重点的に回っていた時だった。
あっすみません。
広島太郎さんの事今調べているんですけども太郎さんとすごく仲良くしている…。
お店?はい。
仲良しのママは実在していた。
ただしママは数年前に他界。
本当の胸の内はもう分からないという。
じゃあここで失礼致します。
ありがとうございました。
でもここには確かに一人の路上生活者の事を気にかける不思議な人情が存在した。
えっそっち。
今日いないんですか。
あっ見ました?あそこにいるんですか?そうなんですか。
はい。
心配するんですか。
さんざん歩き回った夜明け前。
最後に繁華街の中心にある公園に行ってみた。
残っていたのは店が終わったクラブの従業員と工事関係の男性。
一つ聞いてみた。
この街にとって広島太郎とはどんな存在なのか。
僕はまあそういう言葉にかえさせてもらったらと思います。
きっといろんな人を懐深く受け入れながらこの街はずっと呼吸してきたんだ。
この辺りで広島太郎さんは見かけませんでしたか?NHKの者なんですけど今日どこかで広島太郎さん見かけませんでしたか?ありがとうございます。
2014/03/19(水) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
ドキュメント72時間・選「“広島太郎”を探して」[字]

毎回さまざまな場所や人に密着するドキュメント72時間。今回は多くの人たちから「都市伝説」のように語りつがれる一人の路上生活者の足跡を追うちょっと不思議な3日間。

詳細情報
番組内容
広島の中心街で知らない人はいないとさえいわれる一人の路上生活者がいる。その名は「広島太郎」。神出鬼没。派手な衣装を身にまといさっそうと自転車で街を駆け抜けてゆく。その不思議なたたずまいや言動によって多くの人が「癒やし」や「励まし」を与えられているともいう。広島太郎とはどんな人物なのか。なぜ広島の人たちは彼に惹かれるのか。一人の人物の足跡を追いながら地方都市に暮らす人々の胸の内に耳を傾けてみた。
出演者
【語り】濱田岳

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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