沖縄の海は透き通るような青
日本屈指のマリンリゾートにもドクターヘリは配備されている
尾翼の文字は「命どぅ宝」
…という沖縄の方言だ
そしてこの日も出動要請
(ベル)
離島が多く医師や病院の数も十分とはいえない沖縄では空飛ぶ「ER」ドクターヘリの機動力が大きな武器となる
離陸して間もなくヘリに患者の状況が飛び込んで来た
医師は短時間のうちに応急処置の方針を固めなければならない
現場の畑には着陸できないためヘリは付近の消防署を目指す
・救急隊の電話番号伝わってる?・
連絡を受けてすでに車両が待機していた
(救急車のサイレン)
住宅地に隣接した小さな畑そこに男性が倒れていた
医師は素早く状況を把握する
男性の左足はまるで耕うん機にかみつかれたようだった
鋭い刃が深々と足に突き刺さっている
その上左腕にもおびただしい出血があった
この場で無理に…
医師は刃をそのまま残しまずは耕うん機本体を取り外すことを決断した
急を聞いて駆けつけたのは娘
男性は娘に答える力さえない
一刻も早く病院へ搬送しなければ切断の危険もあった
ようやく本体が外される
直ちにヘリに収容された男性は病院に運ばれ緊急手術
迅速な処置が功を奏し切断の悲劇は免れた
命の最前線ドクターヘリ
医師達の闘いがここにある
何といっても焼き肉が最高とその人は言う
肉食系女子の勤務先は岡山県の川崎医科大学附属病院
山田祥子医師は院内ただ一人の女性フライトドクターだ
運河が美しい倉敷で『川崎医大』がドクターヘリを導入したのは2001年のこと
それは全国初の試みだった
カバーするのは県内および周辺エリア
午後3時山田に出動要請が出た
(山田医師)今病院にいる人が情報をとって私達がヘリに乗ったら無線で飛んで来ます。
ヘリの乗務は今年で6年目すでにベテランの域にある
この時山田は待ち受けている患者の容体をまだ知らない
詳しい情報は離陸してから伝えられる
その時点で医師は初めてどんな処置が必要かを組み立てることになる
地上救急隊からの連絡によれば…
山田は応急処置の手順を想定し同乗のナースに指示を出した
離陸からおよそ10分
ヘリは地上の救急隊と合流するランデブーポイントに着陸した
救急車で運ばれて来たのは中学生の男の子
山田が少年にかけた声は驚くほど優しかった
(山田医師)今一番痛いとこどこかな?そこね。
お名前教えて。
意識こそしっかりしているが固定された左腕からは骨が露出している
(少年)はい。
住宅街の急な坂道で少年の自転車は加速したままT字路へ
そこで右側から走って来た乗用車と接触したという
跳ね飛ばされた少年は左腕を強く道路に打ちつけていた
(山田医師)なるほどちょっと橈骨触れさせてくださいね。
橈骨はしっかり振れるんだ。
(山田医師)そうだねOK。
やはり骨髄炎を防ぐためにも緊急手術が必要だった
(少年)はい。
(少年)はい。
(山田医師)お母さんちょっとだけいいですか?
(母親)体重は…。
分かりました。
子供は…
山田はためらうことなく少年の母親をヘリに乗せることを決めた
子供にとって一番心強いのは母親だ
離陸してからも山田は優しく少年に声をかけ続けた
だが…
(少年の泣き声)・ごめん…もうちょっとだけ・
(少年の泣き声)・ごめんごめん・
恐れていたことが起きてしまった
少年がパニック状態に陥ったのだ
少年を病院に搬送する途中恐れていたことが起きてしまった
(少年)あ〜!あ〜!
(少年の泣き声)・もうちょっとだけごめん…・
事故のショックと狭い機内の閉塞感からパニックを引き起こしたのだ
子供とはいえ体重60kg以上
無我夢中で暴れるとヘリの飛行にも影響を及ぼしかねない
機内は一瞬緊張に包まれた
だがフライトドクター山田は冷静だった
(山田医師)大丈夫。
(山田医師)ねぇ手握っててもらおう。
(山田医師)大丈夫大丈夫。
母親を同乗させた山田にはこんな狙いもあったに違いない
少年は次第に落ち着きを取り戻した
(山田医師)首あんまり動かさないで。
搬送先の病院に着陸すればあとは全てを担当医に託すことになる
(山田医師)ちょっと眩しいけどごめんね。
(山田医師)今落ち着きました受け答えしっかりされてます。
この固定が嫌みたいで…ええ。
ありがとうございました。
緊急手術を受けた少年は幸い元気に回復した
山田の実家は大阪の開業医
家族皆が医療関係という中でごく自然に医師を志したという
初めは形成外科医を志望していた
だが救命救急の現場に触れたことが転機になった
命の砦その奥の深さに引きつけられた
ハハハ…。
いつもこの辺でヘリの「ホット」が鳴るかな…っていう姿勢ではいます。
どんな処置してても。
トレードマークは…
患者を安心させるだけではない
その笑顔は同僚達の気持ちまで和ませる
「勉強しろ」っていっつも言われるんで勉強してるふりに教科書広げておくんです。
(椎野医師)ハハハ…。
今は仕事が恋人らしい
少しでも時間があると気になる患者の様子をのぞくのが山田の常だ
おはようございます。
(男性)おはようございます。
しんどかった?
こんな時もやっぱり笑顔
(ベル)
またしても出動要請
焼き肉で培った体力でヘリポートまで全力疾走だ
やがて情報が飛び込んで来る
瀬戸内の海で海水浴客が事故に遭っていた
今のところ以上です。
季節は海難事故が多発する夏
ジェットスキーで遊んでいた男性が付近を走行していた船と接触頭を強く打って海に転落したもよう
事態は深刻だった
(男性)あ〜あ〜。
返って来るのは異様なうめき声ばかり
脳がダメージを受けているとすれば速やかな手術が必要になって来る
(山田医師)ごめんよごめんね。
・ヤダねヤダね・
山田は男性の顎にも大きな外傷を確認
船とぶつかった時の傷だろうか?
(山田医師)なるほどなるほど…。
(山田医師)そうですね。
一刻も早く精密検査ができる病院に運ばないと命にかかわる
山田は『川崎医大』への搬送を決めた
(男性)あ〜あ〜あ〜。
鎮静剤を投与しようとするのだが無意識に患者が暴れるためになかなか点滴のラインが確保できない
この状態ではヘリに乗せることすら困難だ
何とか腕を押さえ針を入れた
(山田医師)しっかり鎮静かけます。
これでしばらくは眠ってくれる
お口ごめんなさいごめんね。
(男性)あ〜あ〜あ〜。
搬送中の容体急変に備えて呼吸用の管を気管に送り込む
山田の動きに無駄はなかった
(山田医師)はい入れます。
着陸から15分搬送開始
男性は静かに眠っている
地上を走れば1時間の距離をヘリはわずか8分で病院に戻って来た
まずは精密検査
最も懸念されるのは脳の損傷だった
CTの画像にかたずをのむ
案の定外傷性のクモ膜下出血が認められた
その上胸もひどく骨折しており文字通り瀕死の重傷
ドクターヘリの速さが明暗を分けた
緊急手術は無事成功し男性はその後退院した
素晴らしい。
山田の笑顔がひときわ輝きを増すのはそんな知らせを聞いた時だ
世界遺産に登録された富士山
霊峰を間近に望む…
配備されたドクターヘリは…
乗務するドクター達は救急診療科のスペシャリスト達
そこに…
新米鶴田あゆみは研修医として配属された
医師になって4か月
はっきり言って頼りない
先輩立ち会いの下でエコー検査
超音波で内臓の状態を探る検査は救命救急の基本といってもいいのだが…
(医師)こういう感じじゃなくてさこういう感じでグッと…。
(医師)これでやってみて。
求められるのは早さそして正確さ
(鶴田研修医)はい。
鶴田は救急診療科の研修を自ら望んだ
期間は1か月
実践にもまれればいや応なく知識や技術が身につくから
研修最後のドクターヘリの乗務にも強い憧れがあった
(ベル)
出動要請を受け先輩ドクターがヘリに走る
少年が防波堤から落ちたという連絡だった
鶴田はまだ現場には出られない
患者の状態を想像し受け入れた時どのような対応が必要かただひたすら医学書に目を走らせる
ベテランは限られた情報を基に応急処置の方向を探っていた
やがて現場が見えて来る
レスキュー隊は懸命の救助活動を続けていた
機体は一気に高度を下げ始める
ヘリが着陸するのはなんと防波堤脇のこの狭いスペースらしい
腕利きのパイロットは私達の不安をよそに事もなくヘリを着陸させた
・お願いします・
(医師)あっちか…はいすいません。
「目下救出作業中」
ただそれだけの情報で医師は現場へ
少年が助け出されたのはまさに到着の直前だった
どうやら…
入り組んだコンクリートが罠のように少年を捕らえたのだ
・下いいですか?・・はい・・寝てていいよ力抜いて・
(医師)寝てていいよ。
(医師)しびれがある。
・グ〜パ〜グ〜パ〜して・
(医師)OK。
(医師)少しあったあっホント。
意識はしっかりしていた
だが気にかかるのは手足のしびれ
病院では新米研修医鶴田を含むチームが直ちに受け入れ態勢を整えた
連絡から10分足らずでヘリ到着
(医師)お願いします。
真っ先に声をかけたのが鶴田だった
(医師)これは?大丈夫?
(少年)うん。
(医師)これは?大丈夫ね。
(少年)うん。
体中にあざやすり傷が出来ていた
問題は骨盤と背骨
CTによる精密検査でも幸いなことに…
少年は照れくさそうにして両親を待つことになった
・座っててもいいよ・
緊張が解けたのだろう
鶴田はどこか呆然としていた
だが救急診療科に心休まる時はない
(鶴田研修医)ちょっと痛い?
事故直後から小さな声しか出ないという
念のためCTでチェックしたが特に問題はなさそうだ
(鶴田研修医)目つぶっててね痛い?染みる?
声が出ないのは事故の精神的なショックによるものか
少年を安心させようと鶴田が明るく話しかける
(鶴田研修医)初めて遠出するの?
(鶴田研修医)フフフ…そうだね。
少年の顔に笑顔が戻り鶴田も胸をなで下ろした
この夜は1年先輩の研修医達に誘われて遅めの夕食
あれは…。
着るとやっぱり何て言うのかな…。
先輩達は皆ヘリ乗務の経験者
脅かされた
よちよち歩きの研修医にもいつか必ずその日がやって来る
鶴田は研修に明け暮れた
さまざまな症例に向き合い対応のすべを学ぶこと
救命救急の現場では迷うこともためらうことも許されない
いつの間にか苦手だった超音波検査も何とかこなせるようになっていた
1か月の研修が終わりに近づいた頃
ついに鶴田はヘリへの乗務を言い渡された
じゃあ明後日ですね。
はい体調整えて。
(鶴田研修医)はい。
夢にまで見たフライトスーツ
当日は穏やかな晴天に恵まれた
おはようございます。
無論出動要請が出るかどうかは誰にも分からない
本来ならばドクターヘリが活躍する機会などないほうがいいのだ
いざ現場に出た時うまくやれるだろうか…とふと思う
(スタッフ)どうですか?着てみて。
ありがとうございます。
はいありがとうございます。
腕につけるワッペンはフライトドクターの証し
何だかちょっと舞い上がっている
だがこれで準備が整ったわけではなかった
フライトドクターには7つ道具ともいえる装備が必要だ
出発前には必ずその中身を確認する
酸素マスクをはじめとする50種類の医療器具
麻酔薬など20種類の医薬品
それらの全てがどこに収められているかを頭に入れておかなければならない
ヘリならではの道具もあった
携帯型の超音波検査機は病院内で慣れて来たタイプとはかなり勝手が違う
この日先輩と共に現場に出れば超音波検査は鶴田の仕事だった
(スタッフ)イメトレは十分?
午前中は何事もなく過ぎた
定食でフフフ…。
いつでも飛び立てるよう昼食は病院の食堂で
それではいただきます。
その時…
片付けを先輩に頼み鶴田はヘリポートへ走った
状況はまだ不明
その顔が緊張に震えていた
研修医鶴田の初フライト
先輩医師と共にうなりを上げるヘリに乗り込んだ
救急診療科での研修を選んだのもドクターヘリの乗務に憧れて来たからだ
(鶴田研修医)2本はい。
できれば18以上で。
(鶴田研修医)はい。
はいはい分かりましたはい。
揺れる機内で冷静に点滴を用意する
離陸から数分でヘリは現場の中学校に達した
作業員の男性が2階から1階に転落
頭からコンクリートの床に落ちたという
男性は駆けつけた救急車に収容されていた
首のタオルが大量の血に染まっている
点滴は基本中の基本
それでも鶴田の表情はこわばっていた
患者の状態を見る余裕さえない
(大森医師)足どうですかね?・これ痛くないですか?・・大丈夫ね・
何もかも先輩に頼りきりだった
(鶴田研修医)はいはい。
準備しといて。
(鶴田研修医)はい。
搬送中ヘリの機内で超音波検査
朝確かめたあの小型検査機の出番だ
・点滴お腹の上ね・はいOKです。
・はいどうぞゆっくり・
離陸と同時に検査開始
ところがなぜか画像が現れない
一刻を争う現場でいつまでも悩んでいるわけにはいかなかった
先輩は苦もなくスイッチを入れ直しそのまま検査に取りかかる
与えられた使命を果たせなかった
新米研修医が唇をかむ
機内での超音波検査は鶴田がこなすべき仕事だった
それなのに痛恨のミス
数分のフライトが彼女には何時間にも感じられたことだろう
精密検査によって…
…していることが判明
一命は取り留めたが入院生活を余儀なくされた
いいところなしで終わったヘリ乗務
だがその悔しさを糧に研修医は一歩ずつ一人前のドクターへと成長する
そこに近道などありはしない
通勤の足は高級スポーツカー『ポルシェ』
(スタッフ)おはようございます。
(五十嵐医師)おはようございます。
五十嵐一憲はいささか変わったドクターかもしれない
例えば朝のカンファレンス
周囲が手書きでメモをとる中五十嵐1人しきりに『iPad』を操作している
実はこの『iPad』が彼にとってはノート代わりなのだ
ファイルっていうか…ファイルにまぁ患者さんのカルテっていうか…。
中には80冊を超える医学書も収められていた
院内にいる時彼は片時もこの文明の利器を手放さない
上司にあたる君津中央病院の救命救急センター長北村伸哉医師は言う
お前そんなもん使ってたら…。
(スタッフ)どうですか?
雰囲気からして決して押しの強いタイプではなさそうだ
けれど外見からは推し量れない熱さを五十嵐は秘めていた
地元愛知の病院に勤務していた時東日本大震災の災害派遣チームに志願
救急医療の重要さを痛感して北村医師率いるドクターヘリのチームに加わった
そういうところは…。
その五十嵐に出動要請
(ベル)ただいまドクターヘリ要請となります。
はい。
ヘリポートまでの200mはキツい上り坂だった
残念ながら『ポルシェ』ほど速くはない
それでも全力でヘリへ
フライトドクターの経験こそまだ浅いが修羅場にも動じない冷静さには定評があるという
現場と情報をやりとりする表情は打って変わって精悍だった
君津ドクターヘリどうぞ。
(五十嵐医師)はい君津ドクターヘリです。
(五十嵐医師)以上君津ドクターヘリ。
左目が動かない
考えられる可能性は顔面もしくは頭部の骨折それとも頸椎損傷か
頭の中の『iPad』で症例を探す
まずは意識レベルの確認だ
脳が傷ついていれば何らかの意識障害が出るはずだった
付き添っていた母親は青ざめている
五十嵐は真っ先に現場の救急隊員に尋ねた
滑り台から落ち頭を強く打ったという男の子
フライトドクター五十嵐は真っ先に意識レベルを確認した
意識レベルがやや低くその上動かない左目
それでも呼びかけにはかすかに反応があった
手グ〜パ〜できる?グ〜。
(五十嵐医師)グ〜こっちは?こっちグ〜してごらん。
小さな体の中で一体何が起きているのか?
五十嵐は懸命に手掛かりを探した
(五十嵐医師)腕…腕手伝ってもらっていいですか?
心因性のショックが左目の動きを止めているとも考えられる
目立った外傷はなく内臓にもダメージは認められない
お母さんお母さんは?あの一緒に行っていただいて…。
・すいません救急車移動お願いします・
後の精密検査で判明するのだがこの時男の子の左目周辺に小さな骨折が起きていた
幸い大事には至らず手術によって骨折を治療した男の子は目下リハビリに励んでいる
一刻一秒を争う救命救急の現場で日々空を駆けるドクターヘリ
命の砦を守る医師達は熱い使命感を胸に今日もフライトに臨む
そこに救いを求める人がいる限り
2014/02/18(火) 15:50〜16:47
読売テレビ1
リアル×ワールド「THE命のヒーローズ緊急出動!ドクターヘリ Season2」[字]
第2弾の今回も空飛ぶ医師たちが大奮闘!1分1秒でも早く患者と医師が接触するために常に出動態勢のドクターヘリチーム、汗と涙の感動ドキュメント。
詳細情報
番組内容
▽岡山・倉敷で交通事故にあった少年がヘリで搬送中に突然暴れだした!騒然とする中、美人医師はどう乗り切るのか!?▽静岡・順天堂病院、ドクターヘリに憧れて配属された“いまどき”の新人女性医師の奮闘に密着!初めての現場で大ピンチ!▽千葉・君津の病院に肌身離さずiPadを持つ若きドクターがいた。そのクールな姿とは裏腹に、熱い思いを秘めた彼が向かった先には左眼球が動かない幼児。一体何が起こっているのか!?
おしらせ
※日本テレビ、2013年10月5日放送分です。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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