新・京都迷宮案内3 #10 2014.02.17

(支援者たち)最高裁は正しい判決を!逆転勝訴!
(歓声と拍手)
(橘つた子)「嫌煙家にモノ申す」?ボツ!
(杉浦恭介)やっぱりねぇ。
何回出したって同じ事よ。
世の中ね今健康志向なんだから。
そんな露骨な嫌煙権批判なんか載っけられるわけないでしょう。
世の中に合わせるばっかりが新聞社の仕事じゃないと思います。
あまあ社内でのデスクのお立場もよ−くわかりますけど。
ちょっと待ちなさいよ!
(田島孝一)会社の談合を公にしたとの理由で25年の長きに渡りミサキ製作所より不当な勤務を強いられて参りました。
本日最高裁判所より下された判決は正義を信じて今日まで戦ってきた私と片時も私の側を離れず応援してきてくれた妻緑にとって人生最大のプレゼントとなりました。
(田島)私は現在51歳であります。
勤続28年の私の給与は手取り21万8500円です。
お待ちどうさま。
(田島)「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし」
(杉浦・田島)「身捨つるほどの祖国はありや」「妻とともにこの歌がこの25年の裁判闘争を支えてくれました」「どうやら祖国はあったようです」
(レポーター)「以上最高裁で逆転勝訴した奈良市の田島孝一さんの喜びの声を東京司法会館からお伝えしました」アーッハ!おいおやじさんビールください!
(一同)カンパーイ!あぁ!いや25年前にね今の田島さんて人に私がねいの一番に取材したんですよ。
勝ったもんだからもううれしくて…。
(一同)バンザーイ!
(アナウンス)「奈良奈良終点奈良でございます」「車内にお忘れ物がございませんようご注意ください」
(田島緑)あねえお父さんお父さん。
今日ぐらいタクシーで帰りましょうよ。
25年のご褒美。
ね?
(鐘の音)
(鐘の音)あーっうまい。
お父さんやったね。
…ああ。
やったんだね。
(2人の笑い)
(2人の笑い)
(大洞浩次郎)おはよう。
気持ち悪ぃ。
ちょっと。
おいおい…吐くなよ!大丈夫大丈夫。
大丈夫か?ほらほら罰が当たったんだよ。
またね酒飲みすぎて人の悪口言ったんでしょ。
そうじゃない昨日はお祝い事だったんですよ。
お祝い事?おめでたい酒飲んでねだからついつい飲みすぎちゃって。
ああそう。
ちょっとよしなさいよ!冗談ですよ。
まったくもう。
な…冗談じゃないじゃない。
これは冗談じゃないかもしんない。
本気なの?ちょっとダメだって!
(もみ合う声)
(良成貞子)これ!ちょっとやめとくれやす。
何でもないです何でもないです。
(貞子)静かにしとくれやす!何すんだよ〜!ちょっと!これからまだ寝ようと思ってんだからさ。
大洞やめろ!
(悲鳴)女将さん!女将さん大丈夫?何でそういう意地悪な事すんだよあんたは!
(大洞)君が悪いんじゃないかよ!これ!あんたらもういくつどす!?いつまでも子供みたいに。
静かにおしやす!近所に格好悪おすがなホンマに。
(警備員)おはようございます。
来ましたよ。
あぁ来た来た。
(ノック)田島さん今日から部署が変わります。
(お昼のチャイム)取材は一切お断りします!取材じゃないんですよ。
昔一度会った事あるんでね。
お会いして一言おめでとうって言いたいだけ…。
ですから田島は今日出社してません!そんなわけないでしょう。
裁判に勝ったばっかりなんだから来てないわけないじゃないの。
杉浦さん!?あっ!ほらやっぱりいたいた!君さぁ…。
ちっとも変わってないなぁ大東新聞の杉浦さん。
あぁ今はね京都日報ってとこにいるんですよ。
そうなんですか。
はい。
京都にいるなら寄ってくれればよかったのに。
いやぁ申し訳ない。
テレビでニュース拝見してね25年前の事思い出したもんだから。
いやホント薄情者ですいません。
いえいえ。
そうそうこの後お時間大丈夫ですか?あ…はいはい。
会社を早退したと言ったら女房に叱られるけど味方になってくださいね杉浦さん。
そんな嫌がらせ怒って当然ですよ。
あ〜そうそう思い出した!ここでしたね。
どうぞ。
あはい失礼します。
あらお父さんどうしたの?会社に珍しい人がお祝いに来てくれたんでお母さんに一刻も早く会わせたくて。
覚えてますか緑さん。
25年前取材させていただいた…。
ああ!杉浦さん。
はい!あらまあ〜大東新聞の。
今は京都日報に。
よかった忘れられてなかった。
とんでもない忘れるもんですか!あらま!田島さん帰ってきはったよほらほら!田島さんおめでとうございます。
(石坂庄平)ここか…。
私1人の勝利ではありません。
会社から不当な雇用過酷な待遇で働かされている全国の仲間とともに勝ち取った勝利だと思っています。
会社に通いながらその会社と四半世紀奥様と2人で戦ってこられたなんて私はある種の感動すら覚えますよ。
じゃあ緑さんのちりめん山椒食べた事ない不幸な人やわ。
ちりめん山椒?緑さんがね毎年1回送ってくれはんの。
手作りのちりめん山椒。
私たちに何にもお礼ができひんからって。
ちょうど今頃やねぇ。
裁判始めた記念日なんよね。
ものごっついおいしいのよそのちりめん山椒。
ご飯ね何杯でも食べてしまうの。
私も!今日はないんですかね?ありません。
(電話)
(3人)残念でした!はい田島でございます。
ああ!どうもありがとうございます。
ええ。
私も主人もまさか最高裁でひっくり返るなんてとっても思ってなかったもんですから。
え?…手記ですか?出版…?うまい!
(野口啓子)京都の新聞社って言わはりましたやろ。
京日さん?デイリーさん?京日です。
あこちら野口啓子さん言いはって京都でお店やってはるんよ。
へえ〜。
気が向かはったらお寄りください。
ありがとうございます。
「詩音」?ぜひ寄らせていただきます。
田島さんのお祝いやのに私営業してしもうたわ!
(笑い)私の城です。
いい書斎だな〜。
羨ましいなぁ。
あぁ…何の研究なさってらっしゃるんですか?
(田島)平城京の研究を。
あなるほどねぇ。
あでも失礼ですけどこういう古書の類って結構値が張るんじゃ?それでいつも女房と大喧嘩です。
裁判の費用もバカにならないし。
でも女房が生け花の師範の免状とってそれで教室を開いてるんで何とか。
あっ杉浦さん。
はい。
この寺山修司の本覚えてます?あっ…いやいやぁ。
そうでしたそうでした。
へえ〜!こりゃまた懐かしいなぁ。
杉浦さんがわざわざ東京から取材に来てくだすった時その本を置き土産に帰られた。
私たち杉浦さんから大きな勇気をもらったと思っています。
(田島)「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし」
(緑)「身捨つるほどの祖国はありや」だから記者会見の時にどうしてもその歌を口にしたくなったんです。
もしかすると裁判に勝って一番お目にかかりたかったのは杉浦さんかもしれません。
ねえお父さん。
そう思うよ。
あの今回お2人に何お祝いしようかと思って散々迷ったんですけどね。
これを。
え…ピー缶ですか?
(2人の笑い)あのーあの時確か会社に勝つまではタバコやめるっておっしゃってましたよね?覚えててくれたんですか?で禁煙は今も?ええ。
ずっと続けてるんです。
あぁ。
じゃあ吸ってくださいよ田島さん。
いやこの25年間でタバコの立場も随分悪くなりましたけども今日あなたが吸う分については誰も文句は言えません。
もう吸って蒸気機関車みたいに盛大に煙吐き出してください。
そうですか。
あぁ…。
あ…。
(むせる)
(笑い)
(むせる)いやぁ…。
(笑い)ご主人これからも会社へ?ええ。
定年まで勤めてしっかり退職金もらおうって2人で決めたんです。
まったくお2人には頭が下がります。
意地です…意地。
2人で頑張ったんだもの。
子供も作らないで頑張ったんだもん。
私一度子供ができたんです。
でも…堕ろしました。
子供がいたら裁判なんか戦えませんでしたから。
じゃあその頃からですか?お父さんお母さんて呼び合うようになったのは。
あぁそうかなぁ。
新聞記者さんて面白い事に気がつくんですね。
えっ?あそうですか…。
あっ!そうだ。
杉浦さんにお手伝いしていただこうかしら。
はい?まだお父さんには話してないんですけどさっき東京の出版社から電話があって手記を書かないかって。
あ…いいじゃないですかお書きになったら。
僕も読みたいし。
だけどお父さんも私も文章なんかとっても。
ねえ杉浦さんお手伝いしてくださいよ。
25年に一度のお手伝い。
いらっしゃいませ。
お母さん本日のブレンド。
ブレンド1つです。
はい。
あれ?遊軍長。
(円谷晋作)あ杉浦さん。
何どうしたの?地球最後の日みたいな顔しちゃって。
ええ…。
えっ?実は…。
女房が友人と輸入雑貨の店を始めたんですがそれがうまくいかなくて。
おまけに友人に逃げられて1人で借金を背負うはめになってしまって。
あららら…深刻な話だね。
会社のほうで少し都合してもらおうかなと思ってるんですけど。
ふーん。
ここだけの話ですよ内緒にしておいてくださいよ。
うん…。
あっ今晩久しぶりに一杯やるか。
俺の奢りだ。
ちょっと待ってね。
このお花は…。
これくらいで挿してみたらいかがかしら?はい。

(ピアノ演奏)へえ手記の話があんのどすか。
ええ。
杉浦さんそれはぜひ手伝うてあげるべきやわ。
あのご夫婦の苦労は並大抵やないんですから。
確かに25年は長いですよ。
ママいつから田島さんの応援してんの?私は新人です。
それでも10年にはなりますやろか。
逆転勝訴って連絡入った時一瞬胸が詰まって言葉が出ませんでした。
もううれしくてうれしくて。
杉浦さんママさんを取材第一号にしたらどうですか?あいいねえ!ママねこれからちょくちょくお話伺いに来ますけどもできたら割引料金で飲ましていただけると。
(笑い)このちりめん山椒絶品ですね。
私なんか話す事なんて何にも。
ママ!ちょっと。
はい。
ちょっと失礼します。
あぁどうぞどうぞ。
(電話)はい田島でございます。
あっ杉浦さん。
今ね京都の野口啓子さんのお店にお邪魔してんですよ。
それであのこの間の手記の話あれお手伝いします。
まあそれであの取材の第一号っていうか野口さんにいろいろお話聞こうかななんて思って。
私手記のお話なんかお願いした覚えは…。
それにその方支援者でも何でもありませんから。
失礼します。
(不通音)
(笑い声)
(チャイム)野口さーんお荷物ですよ。
野口さーん。
(チャイム)何ですか急用って。
杉浦さん詩音のママって野口啓子ですよね?野口啓子って田島孝一の支援者でしょ?杉浦さんこの間奈良に取材に行った時に野口啓子と会ったの?ママがどうかしたんですか?殺されたんです。
警察の発表です。
渚をとりあえず田島氏の会社に走らせました。
ねえ杉浦さん田島孝一のコメントとれないかな?杉浦さん知り合いでしょ。
知り合いったってこの前25年ぶりに会っただけですから。
田島孝一さんは出社されてるんですか?一言コメントいただけませんか?殺害された女性は田島さんの熱心な支援者だったんでしょ?田島さんに会わせてくださいよ。
(警備員)田島はただ今不在です!毎朝新聞の石坂です。
奥さん田島さんいるんでしょ?
(石坂)「出してくださいよ」田島は会社のほうへ。
京都にいないから言ってるんですよ。
ホントに田島はここにはおりません。
「あーでは奥さんで結構です」「野口啓子さんはどんな方でしたか?」「田島さんの支援者なら奥さんもよくご存じのはずだと」存じません!失礼します。
奥さーん!話せないのは何か後ろ暗い事があるからですか?
(石坂)ねえ!奥さんお願いしますよ。
少しだけ話聞かせてください!
(大洞)杉浦さん何飲んでんの?僕の酒黙って!だってあなたこの間から全然酒飲んでなかったじゃない。
今探したらないんだもん。
だいたいあなた私の大吟醸を…。
(貞子)杉浦はん!お客さんでっせ。
お客?
(貞子)さどうぞどうぞ。
お邪魔します。
緑さん!どうなさったんですか?あまあまあどうぞ。
どうぞどうぞ。
大洞さん何してる…あなた邪魔!ハウスハウス!何だよ…。
(大洞)行きましょう!女将さん。
田島が警察に呼ばれたんです。
えっ?任意の取り調べなんだそうですが心配になってとりあえず京都に出てきたんです。
まあどうぞお入りください。
どうぞどうぞ。
あすいません。
あの私たちが最高裁に勝訴したんで警察の嫌がらせじゃないかって言う人もいて…。
そんなバカな。
何あなた立ち聞きしてるのよ。
いやいや…忘れ物を取りに来ようと思ったら聞こえたんですよそこで。
ちょっといい?京都府警の人間ですから。
はあ。
7年前からねこの向かいの部屋に勝手に住みついてんですよ。
勝手って事は…。
いいから自己紹介!京都府警総務部長の大洞と言います。
初めまして。
田島緑さん。
事件は承知してます。
あの今岡崎署のほうに呼ばれてるんですけど主人はこれからどうなるんでしょうか。
任意でしょ?ま心配いりませんね。
恐らくあの簡単に事情を訊かれるだけでね。
でもタイミングが悪いね。
ご主人マスコミに追っかけ回されるかも…。
毎朝の記者がしつこいんです。
まるで私たち夫婦が悪い事でもしたみたいに。
まったくねぇ悪質だよねマスコミは。
とっとけよ。
杉浦さんにこんな事してもらっちゃ。
遊軍長じゃないよ。
遊軍長の奥さんにだから。
杉浦さん。
ありがたく。
(曽ヶ端渚)「野口啓子は田島孝一の愛人だった」「2人の関係は10年前に始まり裁判の原告と支援者という立場を越えた深い仲だった」「噂によると彼女のマンションで田島孝一らしき人物が出入りするところを目撃した人がいるらしい」うーん…野口啓子愛人説か。
このネタが正しければ田島が痴話喧嘩の末に殺したというセンも出てきますね。
無駄足踏んでみる価値はありそうね。
そんなネット情報なんか真に受けてどうすんだお前。
そんなもんはどっかのクソガキが暇潰しと憂さ晴らしのために垂れ流した嘘八百ですよ。
いやいや私もね最初はそう思ってたのよ。
でもこれがなかなか侮れない。
橘デスク!はい今行く。
ねえ野口啓子の身辺に田島孝一の影がなかったか大至急探ってみて。
わかりました。
バカバカしい!田島さんはもう任意の取り調べから解放されてんですよ?下衆の勘ぐりですよ。
田島さんが独身ならともかくあの2人はね25年間ともに裁判を戦ってきた絆の固い夫婦なんですから。
フフ…へえ〜。
アナーキーな杉浦さんにしちゃ随分常識的な事言うじゃない。
まったくだ。
奈良漬の話してあげな。
はーい。
何だよ奈良漬って。
野口啓子さんの死体を発見したのは宅配便のドライバーだったんですがそのお届け物が奈良の田島夫婦からの奈良漬だったんです。
どこがおかしいんだよ?それはだから支援者に対するお礼の意味を込めて…。
あそうかあれはちりめん山椒か。
支援者にはちりめん山椒だったんですか!?だったらやっぱり奈良漬はおかしいですよ!だから最高裁で勝ったからさお礼が奈良漬に昇格したんだろ。
田島夫妻もしくはどちらか一方が殺された野口啓子さんと支援者以上の付き合いがあったとは考えられませんか?考えられません。
(携帯電話)噂をすればだ田島さんだよ。
はいもしもし杉浦。
田島さん?はい…ええいいですよ。
はいそれじゃあ。
明日奈良行きです。
明日会うんだったら頼んでもらえませんか?私田島孝一さんに直接インタビューしたいんです。
田島さんを犯人扱いするんだったらお断りします。
犯人はまだ見つかってないんですよ?田島さんのアリバイだって京都の会社から奈良の自宅に戻る電車の中だったって曖昧だし。
(携帯電話)すいません。
あ…先生だ。
ん?曽ヶ端です。
先生いつもお世話になっております。
えっ…?はいわかりましたすぐに行きます。
どうしよう…。
あっ?うちの子がいじめっ子に殴られたって。
私行かなきゃ…。
インタビューの件よろしくお願いします。
(渚)杉浦さん洗濯物取り込んどいて!京都の野口様には毎年この時期に送るように田島様のほうから言われてましたんでそれで今年も。
この前警察の方が突然来られたんでビックリしました。
それって何年ぐらい前から送ってました?調べましたら8年前からでした。
8年前…?どうぞ。
あぁはい。
主人ももうすぐ帰ってくると思います。
いつも6時12分の電車ですから。
早く着きすぎちゃって。
それであの奈良漬屋寄ってきたんですけどね亡くなった野口啓子さんに毎年奈良漬を送ってらしたみたいですね。
それが…心当たりがないんですよ。
えっ?野口さんのお宅のお届け物でしょ?刑事さんたちにも訊かれたんですけど主人も私もちょっと覚えがなくって…。
いやでも奈良漬屋のほうでも…。
あお茶淹れましょうね。
(柱時計の音)すみませんお呼び立てしまして。
警察のほう何ともなくてよかったですね。
お陰さまで。
今日は何か?あのーこの前お話しした手記の件なんですが…。
私が話す。
緑がつまらぬ事をお願いしたようで。
手記の出版の話あれもう結構ですんで。
と言いますと出版が中止になったとか。
(田島)そういったところで。
あそれは残念だな…。
何でしたらうちにも出版局ありますからそちらのほうへ話持っていきましょうか?結構だって言ってるじゃありませんか!すいません…。
コーヒーでもお淹れしたら。
はい。
(田島)最高裁からこっちいろんな事がありすぎて女房も私もくたびれてしまって。
どうやら僕はこの家には出入り禁止みたいですね。
そんな事ありません。
だからと言っちゃ何なんですけどもうちに曽ヶ端っていう女性記者がいるんですが田島さんに直接会ってインタビューしたいから頼んでくれって言われまして。
今度の土曜日にでも来ていただくとありがたい。
3時くらいに。
ちょうど女房が買い物に出ますんで。
奥さんご一緒じゃなくていいんですか?一緒じゃないほうが。
あーあーあああー。
(携帯電話のバイブレーション)先生だ。
嘘でしょ先生!?うちの子が相手傷つけるだなんて。
無理です行けません!今から仕事で奈良に行く途中なんです。
え…?相手の子入院したんですか!?「大和は国のまほろば」…。
遅いな…。
(電話)もしもし。
あぁ曽ヶ端さん?遅いですよ。
今どこに?申し訳ありません。
プライベートで突発的な事が起こりまして…。
急に京都に戻る事に。
無理を言ってお願いしたのに申し訳ありませんが今日そちらに伺う事ができなくなりました。
えっ?来られないんですか。
本当にお詫びのしようもありません。
もし田島さんさえよろしければこのままインタビューをさせていただけないでしょうか。
(田島)「えっ電話で?」あくまで田島さんのお気持ちを尊重させていただきます。
わかりました。
構いません。
(渚)次に亡くなられた野口啓子さんについてお伺いしたんですが。
「最初からその話が聞きたかったんでしょ」「曽ヶ端さん」野口啓子さんとはどういうご関係だったんですか?2人は愛人関係にあったという噂がありますが。
「噂ではありません本当です」もう一度お伺いします。
それは田島さんが野口啓子さんを死に至らしめたという意味ですか?「そうとってもらっても構わない」もう一度お伺いします。
遊軍長曽ヶ端何か言ってきた?いいえこっちにはまだ何も。
はぁ…。
奈良出る時に連絡くれるって言ったのに。
(チャイム)
(緑)私が出ます。
はい。
(石坂)「毎朝の石坂です」石坂さんあなたしつこいわよ!ご主人と死んだ野口啓子さんの間に何かあったから今回の事件に結びついたって噂があるんですが。
失礼な事おっしゃらないでください!田島は野口啓子さんと愛人関係にあった事はっきりと認めました。
しょっちゅう京都にある野口さんのマンションに泊まっていた事も。
(城戸剛史)犯行当夜のアリバイについては?聞きました。
重大な結果を招いてしまった事に責任を感じているとだけ。
よしいけるな。
いやぁちょっとこれだけじゃ弱いですよ。
何かもっとはっきりした言質とらなかったの?野口啓子さんを殺害したかどうか何度も訊きました。
最初田島は沈黙をしていたんですが最後には「そうとってもらっても構わない」とはっきりと言いました!ホント!?はい。
(城戸)決まりだよ橘君。
はぁ。
曽ヶ端君は直接田島に会ってその言葉を引き出したんだ。
その相手の表情を見ればその言葉が何を意味するかはわかる!確かに。
あのーその事ですが…。
デスク!奈良の田島宅の前に報道陣が集まってるそうですよ。
えっ!橘君!大至急紙面の差し替え。
わかりました。
曽ヶ端君原稿原稿!君の一世一代のスクープだぞ頑張れ!はい!よし!杉浦さん!ねえ京日の朝刊これ見なさいよ!奈良の田島孝一がね殺しを認めたってほら。
これですよこれ!見なさいよ。
「被害者の知人殺害認める」「『ミサキ裁判』の原告事件に関与」「裁判闘争25年支援者と不倫に」「本紙記者に告白『死に責任感じる』」うちの本部じゃね田島はシロって言ってたんだがなぁ。
こりゃ大騒ぎになるな。
(電話)はい田島です。
あら…石坂さんもういい加減にしてください!京都日報?うちとってませんそんな。
えっ?
(緑)その記事ファクスで送っていただけませんか。
お願いします。
お父さん…。
何か京都日報にお話になったんですか?お父さん!田島孝一から厳重抗議の電話があった。
曽ヶ端記者は奈良の自宅には来てない。
取材も受けていない。
今朝のこの記事は捏造だと…。
私はちゃんと取材をしました!田島は野口啓子さんの殺害を認めました!あなた奈良へは行ったの?行かなかったの?田島は…野口さんの事件に関して重大な結果を招いてしまった事に責任を感じていると間違いなく…。
渚。
渚。
奈良の田島氏の家を訪ねて直接彼を取材したか…。
私は!私は取材しました!曽ヶ端!田島に直接会ったかどうかを聞いてるんだ。
田島氏はね曽ヶ端記者からは簡単な電話取材を受けただけだって言ってるの。
間違いない?
(城戸)田島の後口うるさそうな女房が電話に出て「法的手段に訴えるから覚悟しておけ」と言ったそうだ。
渚正直に話せ。
奈良に…行けなかったんです。
どうしても行けなかったんです。
たち…橘君…。
大変な事になったよ…。
大変な事になったよ!
(騒ぎ声)社会部長か誰か責任者を出したまえ!捏造が事実なら会見開いて…。
ジャーナリストとしてあるまじき行為だ!記者の信頼を裏切ってよく平気な顔でいられるね。
本社内に入りたい方は記者証または入館証を見せてください!
(騒ぎ声)
(城戸)杉浦君。
君奈良の田島孝一さんと親しいんだってね。
奥さんとも親しく話をする仲だとか。
奈良へ部長のお供をしろって事ですか?私は行かん。
私が出ると大事になる。
この3人が行く。
杉浦さん。
よろしくお願いします。
みみずく。
お前そんな情けない顔すんな。
1つ確認しとくけども田島孝一が殺しを認めたってのは間違いないだろうな。
そういう事は問題じゃないだろう。
奈良へ行かなかったうえに取材の中身までデタラメだったらぶん殴ってやろうかと思って。
デタラメじゃありません。
田島孝一は殺害を認めました!ああそうか。
だったらいいんだよ。
いいですよ奈良へ付き合いますよ。
そうか。
そう言ってくれると思ったよ。
ありがとう!部長もデスクも遊軍長も。
渚の取材の成果は認めてやってください。
まあやり方はまずかったが中身は値打ちがある。
田島夫婦に頭を下げた後は…渚を守ってやる。
味方になってやるって約束してください。
もちろん。
はい。
わかってる。
ありがとうございます。
どうぞ。
(カメラのシャッター音)この謝罪の席には各社お1人ずつお出でいただいています。
何突っ立ってんださっさと謝れ。
お前らはジャーナリストの面汚しだ!
(石坂)早く謝れ。
この度は電話で取材させていただいたにも関わらず直接お会いしてお話を伺ったと書いてしまいました。
記事を書いた本人はもちろんその記事をチェックすべき我々もその機能を十分に果たす事ができず田島様奥様そしてお2人を支援されてこられた関係者の皆様に大変ご迷惑をおかけいたしました。
京都日報を代表致しまして謹んでお詫び申し上げます。
(カメラのシャッター音)裁判に関する電話取材がああいうふうに捻じ曲げられてしまった事に私は大変驚いております。
京都日報ではああいう捏造記事が日常茶飯事になってるのではありませんか?いえ決してそのような事は…。
田島さん。
私に言いましたよね。
はっきりあの時私に言いましたよね?黙れ!お前に発言する権利なんかないんだよ。
何考えてんだ。
ったく。
お前は何様なんだよ!杉浦さんちょっと…。
杉浦さん!杉浦さん!
(緑)それじゃどうも。
おおきにありがとうございます。
緑さん。
杉浦さん!?先程はどうも。
京都に戻られたんじゃ…。
直接お話ししたくて。
電話取材だとまた言った言わないになるでしょ?うちの曽ヶ端に何度訊いても田島さんは野口啓子さん殺しを認めたって言うんですよ。
その点についてはどう思われますか?ありもしない事をあった事にしてしまうのがあなた方のやり方なんでしょう?あなたがご主人を信じたい気持ちはわかります。
同じように僕も曽ヶ端を信じてやりたいんです。
どうぞご自由に。
会話になんねぇな。
じゃあ奈良漬の話しますか?さっきまた奈良漬屋さんに寄ってきました。
京都の野口啓子さんに毎年送ってくれって頼まれたって。
それも田島さんじゃなくあなたに。
お金も緑さんあなたが支払ってた。
とやかく言われたくないからあの時はとぼけましたけど彼女に頼まれたんです。
奈良漬が好きだから送ってくれって。
あ何だそんな事か。
だったら早くおっしゃってくだされば。
二度も奈良漬屋に行かなくて済んだのに。
杉浦さん。
正直杉浦さんとこれ以上いがみ合いたくないんです。
どうかそっとしておいてくれませんか。
その点では僕も同じです。
田島さんとはわだかまりなくお付き合いしたい。
今日のとこは戻ります。
また折を見て。
ふーっ。
杉浦さん。
ありがとうございました。
へっ?お借りした…。
もういいの?ええ何とか店続けられそうなんです。
女房が杉浦さんにはくれぐれもよろしくと。
お借りしたお金渡した時女房泣きました。
まあそれはお役に立てて何よりでした。
これから先女房の店が軌道に乗るまで僕が京日からもらう給料は絶対不可欠です。
そう考えると京日に辞表を叩きつけるという選択肢はなくなりました。
まあ宮仕えがまっとうできればそんな幸せな事はありませんよ。
あぁそうそう。
捜査本部が田島孝一を洗い直し始めました。
渚の記事に刺激されたらしくて。
僕も追ってみます。
渚が田島氏の殺しを認める発言を聞いたのは確かだと思う。
ただしその発言が真実かどうかは別問題だけどね。
と言いますと?いやね…。
わからんからこんなタバコ吸ってんだけどさ。
(うがいする音)
(携帯電話)あれ?俺かな。
(携帯電話)あぁ俺だ。
(携帯電話)はい大洞。
(携帯電話)あれ?俺もだ。
何か緊急の用かね?…えっ!?どうしたんですか?デスクこんな朝っぱらから。
毎朝の朝刊?新聞なんかとってませんよ。
出てるのよ毎朝に杉浦さんと大洞さんの事が!どういう事ですか?ですから今事実関係を調べていますが…。
まだ会見の予定はありません。
とにかく大至急出社して。
あ表はダメよ裏から入って。
わかった?橘君!橘君!杉浦に電話電話!連絡!もうしました。
大洞さん…!杉浦さん…!お2人さんおみおつけ何がよろしいおす?わかめどっしゃろお大根それからお豆腐…。
今日はいい!え?だってみんな知ってた事でしょ?僕と大洞さんが同じ下宿にいるって。
この7年間ずっと一緒だった。
社会部はおろか京日のほとんどの人間が知ってましたよ。
毎朝だって他の記者だって府警本部の連中だって同じでしょ!?今までの状態がおかしかったの。
もっと早く正すべきだったのよ。
デスク。
デスクだってしょっちゅう僕の下宿に来て…。
だから私ももっときちんと忠告すればよかったのよ。
大洞さんにも杉浦さんにももっとちゃんと話すべきだった。
冗談でしょ?大の大人に下宿を出て別々に暮らしなさいって…?僕はあの下宿じゃなきゃ考えられませんよ。
それは大洞さんだって同じですよ。
このタイミングでなぜ毎朝は同居話をオープンにしたのか。
京都日報はズタズタボロボロだ。
もう立ち上がれん。
捏造騒ぎの検証特集予定どおり明日の朝刊に出すんですか?わからんよ!!今重役会議でもめてるよ。
火に油っていうか今日の一件も含めて我が社のマイナスイメージを増幅させるんじゃないかとも言われたよ私は!部長。
何だ?渚と同様僕も謹慎ですか?当たり前じゃないか!えっ?どうしたの?ねえ君たちさ…。
大洞さん。
あなたどういう事ですか?大洞はんが急に出て行くて言わはって。
え…?出て行くって…。
あのしばらくビジネスホテルにいはるそうですわ。
ビジネスホテルだったら荷物置いてきゃいいじゃない。
それがけじめつけたいって言わはって。
けじめ!?…バカ!それにあの部屋空けといたらまた誰か他の人に貸せるやろう言うて。
私の事も気にして…。
女将さんあの部屋貸すんですか?誰が貸しますかいな大洞はん以外に!
(戸の閉まる音)終わったんやろか。
大洞さん。
杉浦さん。
女将さん。
長い間お世話になりました。
こちらこそ。
世話なんかしてないよ。
杉浦さん…私が悪かった。
全面的に悪い。
新聞社の人間との同居の是非にもう少し早く気づくべきだった。
違う!それを言うなら俺も同罪だ。
いや杉浦さんは悪くない。
私は警察官だ。
だから私が気がつかなきゃいけなかった。
責任は私1人にある。
(大洞)だから私は出て行きます。
杉浦さんここに残ってあげてほしいんだ。
杉浦さんまで出て行ってしまうと女将さんが悲しむ。
いつまでもぐだぐだ言ってないでさっさと消えちまえ。
杉浦さん。
あのーお酒。
飲み残しですけど置いていきます。
飲んでください。
僕はもう取った盗んだなんて言いませんから。
お元気で。
「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし」「身捨つるほどの祖国はありや」デスク30分後に記者会見あるみたいです。
OK!
(激しいやりとり)何やってんのよ杉浦さん!何かあったんですか?え?あ…あぁ行方不明だった金融業者がね死体で見つかったのよ。
(ため息)杉浦さんあなた謹慎中でしょ?部長に見つかったら大変な事になるわよ。
大洞さん…出て行きました。
え…?用はそれだけ?考えてたんですけど僕と大洞さんが同居してたって事はみんな知ってた。
だから漏らしたのは最近その事を知った人間じゃないかと…。
あのねえ言ったでしょ?殺しがあったの。
私たちみんなてんてこ舞いしてんの忙しいの!野口啓子はもういいんですか?えっ…?何?杉浦さん何かつかんでんの?フッ…。
犯人探しでしたら僕はお手上げです。
(ため息)とにかく部長に見つからないうちに早く帰りなさいよ。
おかわり。
はい。
やっぱりここか。
いらっしゃい。
おじさん私も同じもん。
はい。
おでんだ。
いただき。
お前少し太ったか?フフンかもね。
毎日ダラダラ怠惰に生きてるからさ。
でもね子供と一緒にいる時間ができて子供も私も大喜びさ。
いじめどうしたんだよ?いじめ。
父ちゃんとさ相手の子供んち行ったんだけど…。
やめようこの話酒がまずくなる。
くはぁっ!テレビ観てたらさ「ヤミ金社長死体で発見」なんてやってるでしょう?
(笑い)観てたらさ血が騒いじゃって。
フン。
フラフラ出てきちゃった。
(笑い)おかわり。
はい。
「ここかと思えばまたまたあちら」「浮気な人ね〜」だ。
殺しがあった誘拐があった今度は死体が見つかった。
交通事故があったって1年中振り回されてさ新聞なんてのはまったく「浮気な人ね〜」だ。
ハハハハ…。
このところさぁずっと家にいるでしょう?子供たちと遊んでるとふと考えるんだよね。
謹慎解けたら思い切って会社辞めちゃおうかなって。
面倒くさい事しなくて済むし子供と遊んでるほうが楽だし。
辞めちゃダメだよ。
意地でも辞めんな。
(笑い)杉浦さんにプレゼントがあるんだ。
ん?これ俺か?うん。
(笑い)ほら似てるでしょ。
子供たちにさ杉浦さんの話したらこんな絵ができちゃった。
アハハ!ヘッタクソな絵だなこれ〜。
まあでもありがたくいただいておくよ。
(笑い)杉浦!田島孝一の支援者リスト手に入れてさ野口啓子殺しもう一回調べ直してみよう。
こんなところでさ2人でブー垂れてても…。
しょうがないっしょ!この期に及んで何を嗅ぎ回ろうとしてるんです?そうじゃなくて田島さんの…。
帰ってくれ。
あんたには話す事ない。
帰ってください。
京日さんには田島夫妻も私たち支援者も大いに迷惑してるんです!今後一切取材はお断りします。
ちょっとすいません。
いらっしゃいませ!何…。
何や京日さん何の用ですの?田島さんと野口さんの…。
ああもう!帰って!!私用事があるので。
あすいません。
はい。
取材受けてもらえません。
京都日報はまったく反省をしてませんよ!あの女性記者も杉浦って記者も謹慎中でしょう?何で田島さんの事をコソコソ嗅ぎ回ってるわけ?きちんと抗議しなあきませんよ!記者会見を開いて世間に京都日報の実態を知らしめるべきですよ!そうですよね?そうしましょう!お父さんどうしましょう?
(携帯電話)大洞さん?おぉ…もしもし杉浦。

(貞子)来てはりまっせ!どうも。
わざわざ何か電話いただいたみたいでありがとうございました。
どうしたんですか?いや特別用はなかったけども自然とね足がこっちのほうへフラフラと…。
じゃまあとりあえず駆けつけ三杯。
まだお天道様があなた…。
お天道様なんてお互い謹慎中の身の上なんですからくそくらえですよ。
あ女将さん!何か酒の肴見繕ってください。
(貞子)はーい今用意してますさかい。
じゃまず一杯。
あ…じゃ一杯だけ。

(2人)「ここかと思えばまたまたあちら浮気な人ね〜」「サーフィンボード小脇にかかえ美女から美女へ」ツンツン!「セクシーあなたはセクシー」「もうあなたにあなたに溺れる〜」
(貞子の笑い)ん〜うまいなぁ!僕はねこの下宿で用意されたさ女将さんの手料理がね他のどんなところで食べるよりもさ楽しくてね。
もううまいんだよ!ああ〜!杉浦の顔見て飲み食いすんのが一番うまいんでしょ?
(笑い)今日のところはそうしときましょう。
大洞さん。
我々の事チクったの奈良の田島夫妻ですよ。
何か証拠でもあるんですか?ありません。
ただ心当たりがある。
(大洞)京都府警総務部長の大洞と言います。
奈良へ謝罪に行った後緑さんに探りを入れた。
それが裏目に出た。
杉浦さん。
野口啓子殺しの捜査本部はね田島夫妻に手を出しかねてます。
何せ25年間裁判闘争して最高裁で勝訴したっていう話題の人ってわけですから。
例え2人のアリバイが曖昧であってもまあそれ以上なかなか突っ込めずにね。
大洞さん!それ以上しゃべんないほうがいい。
また情報を漏らしたとかとやかく言う連中が。
私はね独り言言ってるんですよ。
独り言聞いたって罪にはならんでしょうが。
大洞さんあなたね!殺された野口啓子サイドの話が1つあります。
2年前に中絶をしてます。
相手は!?残念ながら。
大洞はんちりめん山椒食べはりますか?いやぁもちろんいただきます。
うん。
今年のは特別うまいわ。
いやおおきに。
えっ?そのちりめん山椒って女将さんの手作り?へえそうどす。
毎年どっかから買ってんじゃ?アホらしい。
京都ではどこでもちりめん山椒自分とこの家で作らはんのですわ。
ちょっと余計めに作ってご近所や親しい人にお配りするんですがな。
それだ!そ…。
ちりめん山椒の出どこは野口啓子だったんだ。
支援者の連中はちりめん山椒が送られてきたのは7〜8年前からって言ってたんですよ。
一方野口啓子のところに奈良漬が届くようになったのもやっぱり8年前。
つまり…。
野口啓子のところから支援者にちりめん山椒が配られてそのお礼に奈良漬が野口啓子のところへ田島家から送られた。
ところが今年はまだこのちりめん山椒は支援者のどこにも送られてない。
それも当然ですよ。
野口啓子は…死んじゃったんだから。
いやだけど野口啓子さんはどうしてそんな事までして…。
そうどすなぁ。
ん?…ん?デスク。
ん?奈良の田島夫妻から。
記者会見開くそうです。
えっ?「京都日報の犯罪体質を糾弾する」?先程送られてきたそうです。
恐らくマスコミ各社に送られてるかと。
何で今さら?ちょっといいですか?え?何?実は杉浦さんと渚が支援者の間を再取材してるそうなんです。
えっ!?それで田島夫妻の逆鱗に触れて…。
ったく何やってんだあのスットコドッコイホントに。
まあいずれにしてもこんなものは出る必要なし。
はい!京都日報という新聞社の犯罪体質は杉浦恭介記者に代表される強引な取材理不尽とも思える誘導尋問暴力も辞さない言動に顕著に表れていると思います。
(緑)杉浦記者と曽ヶ端記者は未だに我々を犯人扱いし支援者の皆さんの迷惑も顧みず無意味な取材活動を続けているのです。
ご夫妻は京都日報に対して法的手段に訴えるおつもりですか。
(携帯電話)はい木村。
銀行強盗!?犯人は?2人組で逃走中!?拳銃を持ってる!?携帯のご使用はおやめください!お願いします!会見中なんです!静かにしてください!やめてください!まだ終わってません!戻ってきてください!一時中断という事で。
(田島)ええ。
質問があります!田島さん。
お2人どうしてこんな記者会見開いたんですか?もう誰も戻ってきやしませんよ。
答えてください僕だけに。
今から各社銀行強盗の取材で忙殺されます。
こんな意味不明の記者会見なんか明日の新聞には載りませんよ。
僕のせいですか?野口啓子さん死んだのは。
僕が軽はずみに京都の彼女の店に顔出したから。
田島さん。
会社へ辞表を出したって本当ですか。
(田島の声)「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし」
(緑の声)「身捨つるほどの祖国はありや」お父さんもう終わりにしなきゃ。
…ね?杉浦さん。
(田島)お返しします。
杉浦さん。
私たち明日山の辺の道に行きます。
そうですか。
本当なら…ここにいるのは杉浦さんじゃなくて啓子さんのはずでした。
裁判に勝ったら3人でこの山の辺の道を歩こうって約束してましたから。

(田島)地裁と高裁で負けた時お母さんと私と2人でここを歩いた。
だから誰ともなく勝ったら3人でここを歩こうって話に…。
1つ訊いていいですか。
野口啓子さんは…それほど深くあなたたちに関わってたんですか?近所の神社に願かけに通ったり支援者に配るちりめん山椒を作ってくれたり。
お返しに8年間奈良漬を啓子さんに送ってましたよね。
(田島)ご存じでしたか。
緑さんあなた2人の関係を見て見ぬ振りしてたの?お父さんが逃げたから…。
(緑)私と裁判から啓子さんに逃げたから。
初めはつらかったわ。
でも許してあげた。
それでお父さんが裁判続けられるならって。
それがなぜあんな事に。
(緑)裁判に勝ったからです。
…えっ?勝った喜びを噛みしめているうちに私たち夫婦に戻ったんです。
(緑)25年前裁判を戦い始めた頃の私たちに…。
それでつまり邪魔になったんですか啓子さんが。
(田島)あの日啓子の部屋で3人で話し合ったんです。
3人のこれからについて。
(田島)終わりにしよう。
これからやないの。
裁判に勝ったんやもんこれからですやろ。
私…赤ちゃんができたんえ。
(緑)私は子供のできない体になっていた…。
私は25年間裁判に勝つ事だけを考えてきたのに啓子さんは卑怯だと思った。
(啓子)緑さん。
代わりに私が産むわ。
3人の子え。
(緑)カーッと頭に血が昇って気がついたら…。
ううっあぁ…。
(田島)啓子は妊娠していなかった。
自分の居場所がなくなると思って必死に…。
(田島)僕が悪かったんだ。
情けなく…僕が弱かったから…!それでうちの曽ヶ端に嘘の告白を?
(田島)25年かかってやっと…それなのに…。
京都日報を悪者にしてしまえばいいのよ。
(緑)また2人で戦えると思った。
そうやって戦っていれば啓子さんが死んだ事もなかった事になるかもしれないって。
裁判が終わってお父さんと私の居場所が戻ってきた。
もう一度2人だけの祖国を作れるような気がしたのに…。
あの下宿で僕は7年間大洞さんと女将さんと一緒に暮らしてきました。
いわばあの下宿が僕にとっては祖国だったんです。
緑さんあなた啓子さんや僕たちを踏み潰してでも自分の国作りたかったんですか?田島さん。
緑さん。
僕はこれからあなたたちと啓子さんの25年間を書いてみるつもりです。
いやぜひとも…。
書かせてくれますよね?付き合います警察へ。
杉浦さん。
タバコ1本いただけます?あ…はい。
「大和は国のまほろば」「たたなづく青がき山ごもれる」「大和し美し」人気者の象さんが倒れたからってこんな文量いらないでしょ。
10行削ってはい。
わかりました。
それで犯人の銀行からの逃走ルートもっと詳しく大きく載せる。
杉浦さん。
デスク話あります。
田島夫妻が自首したんでしょ?知ってるわよそのくらい。
何よ?野口啓子を含めた3人の関係は奇妙でちょっぴり物悲しい。
3人は裁判に勝つために生きてきたがちょっとしたボタンの掛け違いで不幸を招いてしまった。
杉浦さんちょっといい加減にしてよ。
銀行強盗の2人組が捕まって今大忙しなの!田島夫妻は逮捕されました。
25年間の裁判を戦い抜いてきた夫婦のスキャンダルは面白がられ新聞や週刊誌ワイドショーをにぎわすでしょう。
しかしすぐ忘れられるし田島さんや緑さん啓子さんの本当の思いは誰にも届かない。
杉浦さんには届いたの?そんな不遜な事は言いません。
ただ少しでも3人の心に近づくためにこんな企画連載始めたいんですけど。
わかった一応預かっとく。
部長と相談する。
あぁ…。
でもあんまり私に期待しないでね。
私は杉浦恭介じゃないから。
(水音)
(杉浦の声)「夫のピクリとも上がらぬ給与と妻の生け花教室のささやかな月謝収入で長く過酷な裁判を戦い抜こうとした田島夫妻は子供を断念するしかなかった」「啓子は自分を避け始めた田島夫妻に子供ができたと嘘をついた」「しかし啓子は田島夫妻との関係を継続したかったにすぎない」「25年前の会社の理不尽が3人の男女の人生を狂わせた」「裁判に勝って3人で山の辺の道を歩こうという彼らのささやかな夢を壊したのはいったい何だったのだろう」「身捨つるほどの祖国はありや」…。
橘君。
…橘君!あ…はい。
曽ヶ端の今後の処遇について相談したい。
あ…あっ部長。
杉浦さんが今日出してきた企画があるんですけど。
部長が言うにはね面白い企画が目白押しだからこんな犯罪者の言い訳みたいな企画は載せられませんだって。
(笑い)一番の目玉企画が人気者の象さんの話ってのは笑えますよね。
(笑い)あぁ〜あ。
まったくね世の中どうにかしてるよね。
昨日倒れた人気者の象さんていうのはほんっとにえらい人気だったんだって。
キャラクターグッズも売れるし。
そうそうあるお役所がねどうしてもうちの戸籍に入れたいって言い出した…。
(笑い)ねえ!だけどさ…何も京日もそんな尻馬に乗っかって「人気者象さん一代記」なんての10回も連載する事ないじゃないのよね。
あっ橘デスク。
ああ。
あぁ…じゃあね私ちょっと一足先帰る。
えっ?これ以上飲むとさ悪酔いしそうだから。
(笑い)これ力になれなくてごめんね。
あぁいえいえ。
それじゃねえーと…。
ちょっとはずんでこれで曽ヶ端慰めてやって。
あぁすいませんねぇ。
よっデスク!じゃ板さんご馳走さま。
おおきに。
つた子さん。
シケた顔しないの。
美人が台なしだぞ。
おまっとうさん。
仕事の話だったんですか?ん?うん。
久しぶりにね企画出したんだけどあえなく沈没だ。
奈良の田島夫妻絡み…。
久しぶりに書きたかった。
杉浦さん私の事聞いてますか?あぁ整理部に飛ばされたんだってな。
おめでとう。
杉浦さんに慰めてもらおうとは思ってませんけどもう少し優しい言い方ありませんか?
(笑い)まったくひどいですよ渚の今回の処分。
あの時杉浦さん部長とデスクに念押ししましたよね。
取材成果を評価して渚を守ってやってくれ味方になってやってくれって。
え?俺そんな事言ったか?言いました!私ちゃんと覚えてる。
涙が出るほどうれしかった。
「象さん象さんお鼻が長いのね」「そうよ母さんも長いのよ〜」渚。
辞めんじゃねえぞ。
おおきに。

(笑い)そうか「象さんの一代記」か。
そんな企画逆立ちしたって思いつかねぇや。
フン。
「象さん象さん」いなくなったってどういう事ですか!?いやそれが昨日私出かけてて遅なりましてなそのまま寝てしもうたんですがな。
あ…キャップ。
会社の私の机の上にこの本が置いてあったの。
ここに挟んであったの。
(大洞)辞表…。
女将さんホントに置き手紙もなかったですか。
へえ。
あの絵しかありまへんでしたわ。
杉浦の…裏切り者!1人で逃げ出しやがって。
帰ってきます。
杉浦さんはきっと帰ってきますよ。
あのバカ…。
大バカ者!バカーっ!
(杉浦の声)「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし」「身捨つるほどの祖国はありや」バイバーイだ。
2014/02/17(月) 13:55〜15:46
ABCテレビ1
新・京都迷宮案内3 #10[再][字]

「杉浦恭介最後の事件 殺意を呼ぶ逆転勝訴!京都〜奈良、25年の絆を試された熟年夫婦」

詳細情報
◇出演者
橋爪功、国生さゆり、小木茂光、市田ひろみ、西田健、北村総一朗、野際陽子 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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