(テーマ曲)資源の多くを輸入する国日本。
しかしかつて日本は黄金に満ちあふれた国ジパングと呼ばれヨーロッパの人々にとって憧れの存在でした。
実は日本のあちこちで金銀銅などのお宝がどっさり産出されていたのです。
なぜ広くもない日本の土地にそんなに資源があったのか。
その鍵を意外なものが握っていました。
人類にとって過酷な環境が日本にたくさんの資源をもたらした事が最新の研究で明らかになってきたのです。
資源大国日本の姿に迫ります!
(南沢)日本が資源大国ですか。
ちょっと正直あんまり資源があるイメージはないんですけど。
まずそういうイメージ強いですよね。
はい。
でも日本というのは大昔から資源大国として有名だったんですよ!「日本は黄金に満ちあふれた国だ」とある書物に書かれているんですが…。
あ〜そうか!あのマルコ・ポーロの「東方見聞録」ですよね?そうです!ちなみにこれが「東方見聞録」なんですが…
(中村)そこには……と書かれているんです。
いや〜でもそれうわさですよね?その時代にそんな金ピカな建物があったとは思えないんですけど。
いやそれがあったんですよ。
え〜?東北の平泉に。
あっもしかして中尊寺金色堂ですか?そうですそうです!僕も修学旅行で行きましたが今や世界遺産。
そうですね!これが建ったのが12世紀という事でマルコ・ポーロが中国に行く前なんですよ。
じゃあ実際あったんですね!ですね!もっと古い金で出来たものもあります。
奈良時代8世紀に出来た東大寺の大仏です!あ〜。
今はですねこのような金色ではありませんが出来た当初は全身金で覆われていたそうです。
大仏が金って豪華ですね。
いやでもそうすると日本って金で出来たものって結構あったんですね。
だけど今は日本で金って採れないですよね?もしかして採り尽くしちゃったとか?いやいや実はですね今の日本でも金が採れる場所があるんです!一体どこで金が採掘されているのか。
それは鹿児島県伊佐市にある菱刈鉱山です。
採掘が始まったのは1985年。
世界でも新しい金鉱山です。
地下200mまで掘り進められた坑道の先で金が採掘されています。
ただの岩壁にしか見えませんよね?でも乳白色の部分が金鉱脈なんです。
この中に大量の金が含まれているのです。
(森本)ここのですねちょっと褐色を帯びたグレーの細い縞がありますけどもこちらが金を非常に高濃度に含んでいる縞になります。
こういったものが目で見えるような金鉱脈というのは世界的には非常に珍しいですね。
菱刈鉱山の最大の特徴と言えるかと思います。
掘り出した金鉱石はまばゆいばかりに輝いています!それもそのはず。
普通の金鉱石は1t当たりに含まれる金の量が平均5g。
それに比べて菱刈鉱山の金鉱石にはなんと300gも含まれているものもあるんです!どうしてこんなに大量の金が含まれているのか。
その秘密は坑道の更に奥にありました。
蛇口をひねると…。
出てきたのは…金はかつてこの温泉の中に大量に溶け込んでいたというのです。
菱刈鉱山の下にはマグマがあります。
このマグマやその上の地層に金などが含まれています。
地下に染み込んだ雨水がマグマで温められて熱水になるとそこに金が溶け込みます。
これが地下の割れ目に流れ込みます。
やがて熱水が冷めると金が固まって割れ目に沈殿するのです。
金がたくさん含まれた菱刈鉱山の金鉱脈はこのように温泉によってつくられたと考えられているのです。
へえ〜。
温泉によってまさか金の鉱脈がつくられていたなんてびっくりですね。
この菱刈鉱山の金鉱脈というのはホントにとても高品質で場所によっては1t当たり300gを超える金が含まれていると。
へえ〜。
そういえば金山といえば佐渡金山とか聞いた事があるんですけど。
有名ですよね。
うわ〜。
しかもですね2012年には新たな鉱脈がまた発見されたという事でどうもこの菱刈の地下にはまだまだ金のお宝が眠ってるらしい!すごい期待できますね。
でもこれが温泉のおかげだとしたら日本って結構温泉あちこちにあるじゃないですか。
だからほかにも金が採れる場所いっぱいあるんじゃないですか?…と思うでしょう?ところがねいろいろと条件が厳しいんですよ。
まず金を含んだ地層がなくてはいけない。
それはそんなそんじょそこらにあるもんじゃないと。
それから温泉の温度ですね。
あ〜。
菱刈の今の温泉の温度は65度。
…でほとんど金は溶け込んでいません。
地下の深い所で…へえ〜。
意外と条件があったんですね。
更に大量の金を含むような鉱脈が出来るためには温泉だけじゃ駄目っていう事が最新の研究で分かってきたんですね。
あ〜そうなんですか?なんと日本人になじみ深いある現象が鍵を握っているんですよ。
日本でよく起きる自然現象が金を大量に含む鉱脈をつくった。
そんな研究成果を発表した人がオーストラリアにいます。
ここはオーストラリア南部のセントラル・デボラ鉱山です。
19世紀半ば巨大な金鉱脈が発見されゴールドラッシュの中心となりました。
坑道には乳白色の岩が帯のように走っています。
熱水によって出来た金の鉱脈です!地球物理学者のウェザリー博士は「こうした金鉱脈は今も日本列島の地下深くで毎日つくられている」と言います。
なんと災害を引き起こす地震が金の鉱脈をつくるというのです。
岩の割れ目を流れる熱水の中には金の元素が溶け込んでいます。
地震が起きこの割れ目が広がると圧力が急激に低下するため熱水が一瞬で蒸発します。
フラッシュ蒸発と呼ばれる現象です。
すると溶けていた金の元素がくっついて塊になり溶けにくくなります。
この割れ目にまた金が溶け込んだ熱水が入り込みます。
再び地震が発生するとフラッシュ蒸発で金の塊は更に成長。
地震ってねあんまり起きないでほしいって思うけどあったから金の塊が出来たんですね。
地震ってホントに災いだけじゃないですか。
ところがそれが金をつくってくれてたと…。
ウェザリーさんによりますと日本でよく起きているマグニチュード4程度の地震でも商業的に採算のとれる金鉱山が出来ているそうです。
そうすると結構日本のあちこちで金がつくられている可能性がありますよね。
ですよね。
じゃあここで日本の主な金鉱山の場所を見てみましょうか。
あ〜さっきの鹿児島のほかにあれは伊豆辺りですかね?伊豆と…東北も結構ありますね。
北海道も。
やっぱり何か温泉がありそうな場所に結構ありますね。
火山があって温泉がある。
そういう場所っていうのは地震も多いのでそこで金の鉱脈がつくられるとウェザリーさんは言っている訳ですね。
そっか。
黄金の国ジパングとなる条件がホントにそろってたんですね!そろってるんですね!そうなるとちょっと気になるんですけど金のほかに銀とかどうなんでしょうかね?気になりますよね。
その辺り専門家の方に伺っていきましょう。
東京大学名誉教授の浦辺徹郎さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
先生日本で金以外の資源ってあったんですか?そうですね。
世界遺産登録で有名になった島根県の石見銀山。
銀ですね。
ほかにもいくつか銀山があって…へえ〜。
日本って銀たくさんあったんですね。
そうですね。
その後メキシコから大量の銀が出てくるようになって日本は1位ではなくなったんですけれどもその後もっと重要な主役になってきたのが銅なんです。
銅ですか?ええ。
銅といえば十円玉のイメージなんですけど。
そうですね。
まずはじゃあ銅山がどこにあったのか見てみましょう。
あっ結構全国にありますね〜。
(浦辺)そうですね。
日本は昔から結構あちこちで銅は出ていたんですね。
ただ銅っていうのは最初はあまり使いみちがなくて金や銀の方が重宝されていたんですけれども…特によく電気を通すので電線とか何かにですね非常に重要な資源になってきてその銅の産出っていうのが日本の近代化を支えたという事が言えるんです。
へえ〜。
かなり大きな意味がありそうですね。
日本全国にあった銅山の中でも特に高品質なものを産出していたのが愛媛県の別子銅山です。
採掘が始まったのは江戸時代。
1691年の事です。
1973年に閉山するまで300年近くにわたって良質な銅を産出した世界有数の銅山でした。
これが別子銅山の銅鉱石。
金と見間違えるほどの輝きを放っています。
まるで金びょうぶのようだと伝えられるほど銅の含有率が高かったのです。
こうした銅山の開発から日本にはさまざまな産業が生まれました。
ここでは鉱石を運ぶために電気機関車を走らせました。
当初輸入品でしたがやがて日本の技術者が自分たちの手で造るようになりました。
その技術は新幹線へと発展。
世界に輸出するまでになったのです。
坑道の掘削に欠かせないのがドリルです。
こちらも当初は輸入品を使っていましたが日本人の体には大きく使いづらいものでした。
そこで技術者が改良し小型で高い能力を持つドリルを開発したのです。
このドリルが更に進化を遂げてトンネルの掘削機になりました。
こうした技術があったからこそ山が多い日本でも鉄道や道路が整備されたのです。
日本の産業の礎それは銅山にあったのです!別子銅山で採掘された銅鉱石をお借りしました!うわ〜!すごい輝いてますね!何か金みたいですよね。
そうですね。
これは黄銅鉱という銅の鉱物なんですけれども別子であるとかほかの銅山がたくさん開発されて…その後チリからたくさん銅が出てきて1位ではなくなったんですけどもそういう意味で日本は金銀銅と本当の大きな資源国だった。
この銅鉱石なんですけれども銅が20%近くも含まれているんですよね。
南米のチリなど今多く銅鉱石が採れている所では銅の含有率1%程度なんですよ。
だからホントに世界的に見ても高品質!このスタジオとか見てみても銅線だらけですもんね。
銅って重要ですよね。
そうですね。
例えばマイクのこのケーブルの中にも。
至る所に実はあるんですよね。
隠れてるんですよね。
ホントですね〜。
やっぱりホントに近代には銅っていうものが必要で金や銀以上に必要になってそういうものがちょうど明治の頃に出てきたっていう非常にラッキーな事だったんですね。
銅山の開発って複合事業で産業の母って呼ばれるんですよね。
そうですね。
まず山を開くために林業。
それから穴を掘るための土木工事さまざまな機械類。
それから電機。
鉱石を運ぶための鉄道とかそういうものがそれぞれ鉱山では全部必要なので鉱山のそれぞれのセクションが独立してそれぞれの企業になっていってそしてその産業グループが出来てきたという事なんですね。
日本の大企業の多くも銅山の開発によって成長したんですよね。
そうですね。
住友グループが別子JX日立グループが日立古河が足尾それ以外にも三菱三井DOWAといった企業がこういう銅山の開発から発達してきたという事ですね。
こういう銅鉱石ってどうやって出来るんですか?えっ海底で?さあそれではこちらご覧下さい。
(浦辺)これは海底で300度ぐらいのお湯が勢いよく噴き出しているところなんですね。
熱水噴出孔というふうにいいます。
これが世界の海底にたくさんあるんです。
出来た鉱床がプレートに乗っかってず〜っと日本までやって来て日本にくっついて出来たのが日立鉱山や別子鉱山なんです。
今でも海底では銅の鉱石がつくられているって事ですか?そうですね。
ただ今の海水は少し難しいんです。
そうなんですか。
酸化してボロボロになって溶けてしまうんですね。
なので長い間プレートで運ばれているうちになくなってしまうという事なんです。
じゃあ何で日本には銅山がいっぱいあるんですかね?そう。
そこ不思議ですよね。
その謎に迫った研究者がいます。
銅の鉱床が溶けずに残ったのはなぜなのか。
海洋研究開発機構の野崎達生さんは銅鉱床が出来た年代が鍵を握っていると考えました。
野崎さんは別子銅山周辺で採取された銅鉱石を100個以上集めて年代を測定しました。
この銅鉱石の中に含まれているレニウムとオスミウムという元素の同位体の量から年代が分かるというのです。
レニウムは不安定な物質で少しずつオスミウムに変化します。
半分が置き換わるには416億年かかります。
その変化した割合が分かれば銅鉱床が出来た年代が分かるのです。
砕いた鉱石を試薬に溶かすとレニウムとオスミウムが分離します。
これを分析装置で詳しく調べました。
すると…この結果から計算すると別子銅山の鉱石はおよそ1億5千万年前に出来た事が分かりました。
同様にほかの鉱山で採取された銅鉱石も全て同じ年代につくられていました。
ではなぜこの鉱床は海水の酸素で溶けずに残ったのでしょうか?そう。
1億5,000万年前は地球がかなり温暖化していた時代だったのです。
そのため南極や北極には氷がなかったと考えられています。
今の地球では赤道付近で温められた海水が北極と南極の氷で冷やされて沈み込む海洋大循環によって酸素が海底まで運ばれています。
ところが温暖化によって海水が冷やされなくなると循環が止まり酸素が海底まで届きません。
海洋無酸素事変と呼ばれる現象が起きていたのです。
このため海底の銅は溶けずに残ったと考えられています。
日本の近代化に重要な役割を果たした銅は極端な地球温暖化がもたらしてくれたものだったのです。
銅を残してくれたのは温暖化だったんですね。
さっきは地震が金をつくり今度は温暖化が銅をつくるってね〜。
でもず〜っと無酸素の状態が続いた訳じゃないんですよね?そうですね。
また地球が寒冷化してくると海洋大循環がまた起こってそして酸素が海底に供給される。
そうすると普通は鉱床は溶けてしまうんですけども…1億5,000万年前っていうとちょうど石油も出来た時期ですか?そうですね。
普通は酸化されてしまうんですけれど…へえ〜。
という事は何か温暖化って生物にとっては過酷な状況ですけどそれが私たちにとって大切なものというか恵みを残してくれていたんですね。
地球の仕組みっていうのはホントにいい事悪い事がさまざまに絡まり合っているという事ですよね。
特に日本は4枚のプレートが折り重なっている世界でも非常に特殊な所なんです。
そのために地震が起こったり火山活動があったり大変な災害が日本には多い訳ですけれどもそういうふうな地震だとか火山だとかっていう現象が実は資源ももたらしてくれているんだというところもあるんです。
そうですね。
その熱水噴出孔があるのがこちらですね。
はい。
一つは沖縄周辺の海ですね。
もう一つは伊豆小笠原の海大体2か所にまとまって20か所近く知られています。
ここはですね海底火山がある所に伴って熱水活動があるという事ですね。
実はこの日本の排他的経済水域という日本が主権的な権利を持って開発できる場所というのは日本の陸上の国土の10倍以上あるんです。
しかもそこのこういう鉱物資源があるポテンシャルというのが世界で一番高いのでうまく探す事ができてそしてそれをまた海底から持ち上げるそういう技術がうまく開発できれば日本はまた世界一の海底資源国になれる可能性がある訳ですね。
でもこれって水深数千mの所から掘るんですよね?それって技術的に何か難しそうなんですけど。
そうですね。
ただ日本は明治時代に新しい鉱山の技術そういうものを入れて瞬く間に世界一の産銅国になった。
その前は手掘りでですね何百mも別子鉱山だとか佐渡鉱山というのは掘っていた。
そういうふうな国民性というかそういうものがありますので海の底でもやはりやり方は難しいんですけれども今まで誰も世界中でやった事がない誰も開発した事がない技術なものですからだからそれは日本が世界で最初にやっていく必要があるだろうというふうに考えています。
新幹線とかトンネルを掘るドリルが今あるようにまたその技術が何か新しい技術につながっていくかもしれないですよね。
そうですね。
海底の鉱山というものも21世紀22世紀の新しい産業のもとになるという事があると一番いいですね。
そうですね。
金銀銅といった資源を掘ろうという何か意欲というか執念というかそこから日本の産業が花開いていったって何か壮大ですよね。
いや〜普通に身近に乗っている新幹線だったり鉄道だったりがそういうところから生まれたというのを知ってびっくりしました。
でも日本にいっぱい資源があったという事を知ってちょっとうれしくなりました。
アッハッハ…そうですね。
浦辺さん今夜はどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2014/02/01(土) 12:30〜13:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「“黄金の国 ジパング”の謎に迫る」[字][再]
かつて黄金の国・ジパングと呼ばれた日本。なぜ金銀銅など豊富な鉱物資源が日本の大地に作られたのか。近代化の礎となった鉱山開発の歴史をひもときながら、その謎に迫る。
詳細情報
番組内容
かつて黄金の国・ジパングと呼ばれた日本。金銀銅の鉱山が全国各地に存在し、世界有数の産出量を誇っていた。プレートの沈み込みに伴う火山や地震活動が、地下に豊富な鉱物資源を作り出していたのだ。さらに最新研究から、太古の時代に起きた地球温暖化が、なんと巨大な銅山をもたらしていたことも明らかになってきた。人類にとって過酷な自然現象が、どのようにして近代化の礎となった銅山を日本に作り出したのか。その謎に迫る。
出演者
【ゲスト】東京大学大学院教授…浦辺徹郎,【司会】南沢奈央,竹内薫,中村慶子,【語り】土田大
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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