美の壺・選「韓国家庭料理」 2014.02.16

(テーマ音楽)「アニョンハセヨ〜」「カムサムニダ〜」「マシッソヨォ〜」「マッコリ」!大好き!・
(チャイム)ピンポーン…はいはい〜!草刈さん何の荷物ですか?実は妻が韓流ファンなんです。
ちょっと時間ができると韓国へ「ブ〜ン」なんですよ。
韓国から荷物が送ってくるんですけどね。
うわぁトウガラシだ。
へえ真っ赤できれいだなぁ。

(チャイム)ピンポーン…お。
また妻からだと思いますよ。
はいはーい!炎に包まれた焼き肉!真っ赤なトウガラシ色に染まった食材。
韓国料理には刺激的で男性的なイメージを持っていませんか?でもそれだけではありません。
実は韓国料理の世界は手が込んで繊細。
こちらは大根しいたけ赤ピーマンやセリなどの野菜と牛肉を煮込んだ鍋です。
見た目は豪華ながらヘルシーなごちそうです。
彩りが豊かなのには理由があります。
韓国では…5色を食卓に整えると体にもいいし目にも美しいととても大事にされてきたんですね。
韓国料理が見た目にもあでやかな背景にはある伝統があります。
それは韓国の…さまざまな食材に野菜の彩りを組み合わせたカラフルな食卓です。
その伝統は一般の家庭にも浸透していき今に受け継がれています。
毎日食べる料理にも色彩を愛でる心が息づいています。
色には心や体を潤す力が宿ると考えられてきたのです。
きょうは韓国家庭料理の美の世界へご案内しましょう。
在日韓国人の人たちが集う教会です。
教会の地下室にはなんと山のような白菜。
何をしているのかというと…。
そう。
韓国のお母さんたちは冬になると皆で集まって大量のキムチを漬けるのです。
まずは白菜を塩漬けにします。
その量白菜100株あまり。
春まで食べる分のキムチです。
5〜6時間漬けます。
みずみずしくもしんなりしていますね。
次に塩漬けした白菜をトウガラシやにんにくが入った薬念と呼ばれる薬味で赤く染めます。
葉の間にくまなく薬味が行き届くよう1枚1枚ていねい塗っていきます。
幾重にも葉が重なっている白菜の形を生かした工夫です。
白かった白菜が見事な赤に染まりました。
時間の経過とともに赤い色にも変化が現れます。
鮮やかな色彩は発酵に伴ってより赤くそして深くなるのです。
白菜に限らずさまざまな野菜のキムチがあります。
材料によって彩りもさらに広がります。
今日一つ目の「壺」は…大阪市内に住む錦織さん一家の食卓にはたくさんのキムチが並びます。
そう「キムチ」とは野菜を漬けるという意味です。
ちょっと見慣れない物もあります。
赤くはないですが実はこれもキムチなんです。
水キムチ。
水キムチは塩水につけたシンプルな物。
薬念は使いません。
野菜の白が引き立ちます。
そもそもキムチは白い漬け物でした。
寒さが厳しい朝鮮半島では冬の間野菜を十分に採れません。
そのため塩漬けにして貯蔵したのです。
水キムチの漬け汁もおいしく頂きます。
この漬け汁。
さらに冷麺のスープとしても用いられるのです。
滋味あふれるこの白いスープで朝鮮半島の人たちはのどを潤してきました。
白菜本来の色を際立たせた白いキムチの美です。
ところが16世紀になり朝鮮半島に真っ赤なトウガラシが入ってきて白いキムチに革命を起こしました。
その後品種改良され韓国のトウガラシは日本の物と比べて大きさは3倍辛さは3分の1になりました。
日本ではトウガラシは主に薬味として使われてきました。
それに対し朝鮮半島では食材として料理に用いたり調味料の主役として広く活躍しました。
白を誇ったキムチの世界に深紅の美が生まれたのです。
実はそれは朝鮮半島の人たちの色彩感覚にもかなうものでした。
例えば衣服でいうと国王が執務のときに着た赤い服を…赤は邪気をはらうと考えられ男子が誕生するとトウガラシを玄関につるす風習も生まれました。
天然痘などの伝染病がはやると家の前に置くこともありました。
朝鮮半島の人たちにとって赤は無病息災の祈りも込められた色。
キムチの赤も広く受け入れられたのです。
今ではキムチの色彩はさまざま。
こちらはきゅうりの緑を存分に生かした水キムチです。
ピンクや黄色。
野菜本来の色みが際立ちます。
とっておきのキムチもご紹介しましょう。
塩漬けにした春キャベツのキムチ。
軟らかい葉に赤ピーマンや緑のセリを包み込んだものです。
春らしいカラフルな彩りです。
ボートのような冬瓜の器。
中に色とりどりのレンコンを浮かべてまるでアートですね。
白赤緑歴史の中でキムチは無限の色や形を手に入れたのです。
何でこれ…。
でもこれ大きなたらいだな。
韓国からそれが届いたんですか?妻がね「大きな荷物を送るからよろしくねあなた」って今朝電話があったんですけどね。
これ何…洗濯するのかなぁ。
え?産湯?どういうこと?韓国料理店へ行くとまず始めに色とりどりのおかずが出てきますよね。
韓国の家庭ではキムチやナムルなどを小さな皿に盛って食卓をにぎわします。
たくさんの小皿を並べるのが様式美なのです。
これはスラサンといわれる王様だけに許されたごちそう。
皿一つ一つに全国各地の食材が盛られました。
料理の出来栄えを見ればどの地域が不作なのか国や民の状況が把握できたといいます。
もう一つ宮中の洋式に料理を高く積むコベサンがあります。
身分が高い人ほど高く積まれました。
この様式は民間にも広がり先祖を敬う儀式に受け継がれています。
今日二つ目の「壺」は…横浜市内のイ・フニルさんのお宅です。
この日はフニルさんのお父さんの17年目の命日。
チェサと呼ばれる法事が行われます。
フニルさんがチェサを取り仕切ります。
法事のごちそうを作るのは女性たちです。
これはチヂミですね。
お母さんのイルヒョンさんがチヂミを重ねて切っています。
端を切り落として器の大きさに整え重ねます。
妻のオッキさんはゆで卵に飾り包丁を入れやはり高く積みます。
ナツメ。
ズッキーニ。
ごま菓子。
どれも積み上げるのはなぜなのでしょうか。
一般の家庭でのおまつりなどで…儒教では「親孝行」がいわれその親孝行の気持ちを…朝鮮半島の人たちは命日には料理を高く積みそれをたくさん並べて先祖を敬います。
ごちそうを積むことで孝を積むことを表現するのです。
フニルさんが祭壇に器を並べていきます。
すべてが膳の上に収められます。
先祖から見て手前に主菜奥に小皿一番遠くに果物が置かれ食べる順番にも配慮しています。
さらに配膳にはそれぞれの家で伝えられているルールがあります。
テーブルの輪郭というんですかそちらの方に…先祖を敬う気持ちを表現するために高くたくさん並べられたごちそう。
一番大切な人をもてなす究極の様式です。
先祖の魂が戻ってくると考えられているのは深夜です。
魂を迎え入れるため玄関の扉を開けます。
(御鈴の音)チェサの締めくくりには祭壇にあがったお膳を皆で分かち合うといいます。
法事のときのお膳は…またそれをする人間自身も自分たちも宇宙の一部と考えています。
森羅万象が宿る食卓の小宇宙。
子孫と先祖を結ぶ固い絆の結晶です。
朝鮮王朝時代の様式美はもてなす心を通して現代の家庭にも息づいているのです。
そうなの?あはいわかった。
…はい。
ええ〜!?どうしたんですか草刈さん。
「私より先に韓国で知り合った友達がそちらに行くんでよろしくね」って言うんだけどええ〜…。
いやこれ困っちゃったな。

(韓国語で)もう?韓国料理の食卓には箸の隣にスッカラと呼ばれる平たいスプーンが並べられます。
料理家の瀬尾幸子さんはスッカラに魅せられ調理器具として愛用しています。
特にお気に入りは先が平らなアンティークのもの。
みそ汁を作るときにも使います。
みそを鍋肌で溶かすのってお玉じゃできないんです。
この薄さと平らな形だからできる。
そうスッカラは混ぜるために平らな形をしているといわれます。
混ぜることは韓国料理の美と深くかかわっています。
例えば調味料の薬念もそうです。
調味料は日本だと「さしすせそ」といいますが砂糖塩と順番に入れていく文化があるなかで韓国の…それを料理に使う。
そういう違いがあります。
料理に味や香りを付ける薬念は韓国料理の中心的存在。
家ごとにさまざまな作り方や工夫があります。
料理家のジョン・キョンファさんはおいしくて美しい薬念を作るために彩り豊かな食材をやや大きめに切りそろえます。
材料を混ぜ合わせるために登場するのはスッカラ。
スッカラが平らなおかげでさまざまな野菜が渾然一体となりまったく違った姿に生まれ変わりました。
独特の風合いですね。
薬念はさまざまな料理で活躍し食卓をより美しくします。
今日三つ目の「壺」は…韓国料理レストランの料理長小向実さんです。
その数々の美しい料理は世界的にも評価を受けています。
混ぜる料理といえばご存じ…小向さんはビビンバをどう作るのでしょう。
材料一つ一つをどれも同じ大きさに切りそろえていきます。
もやし。
ぜんまい。
そしてにんじん。
小向さんは用いる9種類の食材のすべてをそれぞれ個別に下ごしらえします。
お客さまがビビンバをスッカラですくったときスッカラからこぼれない大きさにカットしてあります。
ていねいに仕込んだ材料をいよいよ盛りつけ。
暗い色と明るい色を交互にのせていきます。
中国の陰陽思想になぞらえた盛りつけです。
それは韓国の美意識にもつながっているといいます。
韓国の旗の…2つに分かれてるんじゃなくてあれははためいて1つなんです。
そういう…そして客前に出されたビビンバは目の前でスッカラで混ぜられるのです。
美しく盛りつけられたビビンバがみるみる姿を変えていきます。
これが韓国料理のもう一つの美です。
一瞬にしてグチャグチャにしちゃう。
それを食べることによって一瞬にしてその美しかったものを破壊と創造が同時に起ってるわけですね。
そういう食べ物だと思う。
混ざりあって生まれた新たな調和。
スッカラによるダイナミックな演出です。
そんな美意識を体現する工芸もあります。
韓国のパッチワーク…ポジャギとはチマチョゴリなどを作った時の切れ端を1枚の布に縫い合わせたのが始まりです。
朝鮮王朝時代女性たちが布を再利用して風呂敷などにしました。
すべて手で縫い合わせますが前もって図案は作りません。
隣り合った布同士が生み出す色や柄の取り合わせの妙が魅力です。
偶然が生む繊細にして大胆な美しさ。
どこかビビンバの美と響き合うような気がしませんか?コレデイイカナ。
イイ?イイ?
(韓国語で)モットツケルノ?
(韓国語で)根元ヨクツケルネ。
(韓国語)コレイイ?
(韓国語で)スミダ?アヌル?
(韓国語)コセヨ?
(韓国語)何言ってるか分からない!ママ早く帰ってきて!・
(チャイム)ピンポーン…え?また!?
(テーマ曲)2014/02/16(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「韓国家庭料理」[字]

身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「韓国家庭料理」。案内役:草刈正雄

詳細情報
番組内容
真っ赤で辛いだけじゃない! 韓国料理の固定観念をひっくり返す。そう、実は韓国家庭料理は、野菜本来の色彩を大切にしてきたため、彩り豊かで美しい。取り上げるのは「キムチ」「ビビンバ」「ごちそう」。3つの観点から韓国家庭料理の奥深い美の世界を鑑賞する。キムチは赤くなかった?! たくさん並べる「ごちそう」の極意とは? 一流シェフの作るビビンバとは?!…目が離せない30分間!
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – グルメ・料理

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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