最高時速は150キロに達します。
(実況)あ〜危ない!転倒だ。
スピードの源それは…より強くより速く。
力自慢の男たちがボブスレーのエンジンとなります。
そこに世界で最も小柄ともいわれる一人の日本人が挑んでいます。
(黒岩)OK!ゴー!武器は100m10秒7で走るスピードです。
日本史上初のオリンピック入賞を目指しています。
日本で一番になるのはもちろんですし…重心を極限まで下げて一気に加速。
小さな体で世界と戦うために。
黒岩俊喜選手の挑戦を追いました。
先月上旬…代わります。
黒岩俊喜選手はオリンピックシーズン開幕を前に最終合宿に臨んでいました。
アメリカやロシアなどソチオリンピックのメダル候補も顔をそろえていました。
(掛け声)ライバルのスタートを食い入るように見つめる黒岩選手。
ボブスレーではスタートダッシュが勝負の鍵を握っています。
日本はここで世界に差をつけられてきました。
(歓声)
(実況)日本のスタート。
前回のバンクーバーオリンピック。
日本は21位に終わりました。
1位はアメリカ。
そこには100分の1秒を争うスタートダッシュの差がありました。
アメリカは4秒75。
0秒25の差をつけられます。
ここから徐々に差が開いていきます。
アメリカがゴール。
そして日本。
その差は1秒20。
15m以上の差をつけられていました。
入賞した上位8チームと日本。
そのスタートタイムを並べてみると入賞チームはいずれもスタートタイムでも上位に入っています。
しかも0秒11の間にひしめき合っています。
スタートダッシュでいかに100分の1秒単位で差を縮めていけるか。
それが日本チームの最大の課題なのです。
カモン!レッツゴー!オ〜!速い加速を生み出すために各国とも体格のいい選手がそろっています。
身長1m80cm以上体重100kgの選手が一般的です。
黒岩選手は…世界最小の選手ともいわれています。
ソチオリンピックでメダル候補のロシア。
パワーを生かし力強くソリを押し出します。
一方の黒岩選手。
1歩目の時点でロシアに比べてソリが進んでいません。
パワーの差がスタートの鍵を握る1歩目に現れてしまいます。
体格のハンディをどう乗り越えるのか。
それが黒岩選手が挑み続けている戦いなのです。
海外の選手にはやっぱり体ではかなわないのでホントはもっと背中を…腰をしっかり入れて1歩目からグッと押していきたいんですけど…。
黒岩選手は宮城県の大学に練習の拠点を置いています。
おはようございます。
仙台大学2年生の黒岩選手。
ボブスレー部に所属しています。
ボブスレーは転倒して骨折するなど危険を伴うため18歳以上しか競技をする事ができません。
黒岩選手も高校卒業後ボブスレーの世界に飛び込みました。
もともと陸上100mのスプリンターとしてオリンピック出場を目指していました。
よ〜い!
(スタートの合図の音)50mまでは負けない自信がありましたが後半失速してしまうのが悩みでした。
自己ベストは10秒77。
オリンピックには力及ばず諦めざるをえませんでした。
転機となったのは高校時代の恩師の言葉でした。
「ボブスレーのスタートダッシュは50m。
君の才能を生かせる」。
そう言われたのです。
過去10回のオリンピックでは入賞が一度もなく15位が最高の日本。
7月ほかの競技で活躍した選手など12人が集まりました。
アメリカンフットボールや砲丸投げなどパワーがある選手。
陸上短距離などスピードに優れた選手。
体格のいいアスリートがそろう中ひときわ小柄な黒岩選手。
この中から本番までに3人が選び出されます。
この日競うのはスタート15mのタイム。
2秒を切るかが焦点でした。
打撲した。
黒岩選手より12歳年上…200mで世界選手権に出場した経験を持つ陸上界の先輩です。
お願いしま〜す!
(宮崎)あ〜!まだまだ!いや誰にも負けたくないです。
今日は1位目指して…。
行ってきます。
(一同)お〜!この日の最速。
強さを見せつけました。
強いですね。
もう強い。
そのひと言に尽きます。
やっぱり学ぶべき事はいっぱいあるかな。
だから黒岩君がやる時こっそりのぞいて…。
出しの練習とか。
小さな体で世界と戦うために黒岩選手がこの2年間ずっと続けてきた事があります。
パワーをつけるための体作りです。
180kgぐらい挙げるつもりで動かすんだぞ。
12。
もっと深く。
挙げているのは150kgのバーベル。
最初は80kgを挙げるのがやっとでした。
155。
4。
負けんなよ〜。
体重は15kg増え85kgになりました。
全く足りないですね。
世界はやはり100kgとか95kgとかなんでまだプラス10kgは欲しいですね。
4人乗りボブスレーではパイロット1人とソリを押す3人でチームを組みます。
ソリと選手の重量の合計は630kgまでと決められています。
平均体重が100kgの海外チームではソリの重さは230kgとなります。
一方昨シーズンの日本チームの平均体重は85kg。
重さが足りないと下りでスピードが伸びないため30kgのおもりを載せて出場していました。
軽い選手が重いソリを押すという不利な戦いを強いられていたのです。
この日黒岩選手は久しぶりに横浜に帰省しました。
ちょっと盛り過ぎじゃない?このぐらい食べるんじゃない?普通にいつも。
お代わりしてるからね。
(一同)頂きま〜す。
両親と妹2人の5人家族の黒岩選手。
食事などさまざまな面で家族に支えられてきました。
一日5,000キロカロリー成人男性2人分の食事をとっています。
親子丼ももう4日分ぐらい作ったしな。
さすがに…。
普通に1回の食事で2合ぐらい食べるんでやっぱり向こうにいる時は…。
それで一日3食とか食べると普通のお釜だと無くなりますよね?完全に。
ふだんから食事と練習同じぐらいつらい時あるんでホントに。
高校3年生の春か。
確か担任の先生と進路のだよね。
三者面談の前の日だったんですよ。
その夜に言われたんだよね。
「ボブスレーやりたいんで仙台大学に行きたい」って言われたんですよ。
…で聞いて「え〜!」つって「何?ボブスレーって」っていうのが第一声ですよね。
突然宮城の大学行っちゃったし…。
お兄ちゃん行っちゃうんだってね。
お兄ちゃんが琴美一番かわいがってたからね。
寂しくなっちゃったよね。
代表候補を絞るためソリを押す測定会が開かれました。
この日思いも寄らぬ試練が訪れます。
お願いします!これまでのベストタイム3秒68を下回りました。
陸上界の先輩宮崎選手。
行きます!ライバルたちが次々と上回っていきます。
お願いします。
2回目。
体重を急激に増やした結果武器であるスピードが奪われていました。
黒岩選手のタイムは4番目。
このままでは代表3人の枠に入れません。
いや〜こんなに差をつけられると何か…。
正直今自分の中でもだいぶ分からない状況で…。
何をどうしたらいいかというのはホントに今日あまりにも惨敗し過ぎて今はまだ考えられない状況ですかね。
オリンピックの入賞はおろか出場すら危うくなった黒岩選手。
必死にもがいていました。
こんにちは。
こんにちは。
よろしくお願いします。
この日黒岩選手の姿が母校にありました。
いきま〜す!123…。
後輩との200m走。
はあはあ…。
全くついていけませんでした。
ファイト!体が全然動かなくて…。
高校時代の恩師が声をかけました。
ストライドが広がっておらず地面を強く蹴っていないというのです。
黒ちゃんここからこうなってる。
これだけこれがもっと…後ろから後ろから後ろから。
ストライドを広げるトレーニングが必要だとアドバイスをもらいました。
これまでの筋力トレーニングに加え股関節を柔らかくするストレッチが黒岩選手の日課となりました。
オリンピックシーズン開幕まであと2か月に迫っていました。
これが下町ボブスレー2号機です。
どうぞ!
(拍手)どうもすいません。
よろしくお願いします。
ここはここがいい。
これがいいこれがいいって言ってくれれば…。
…という気持ちは変わらないと思います。
日本チームはラトビアを訪れ合同強化合宿に臨みました。
強えこいつ!ボブスレーの強豪国ラトビア。
オリンピックでは金メダル3個の実績を誇ります。
ソチでも優勝候補の一角です。
そのトレーニング方法を取り入れようと考えていました。
黒岩選手にとっては驚きの連続でした。
下半身のバネを鍛える両足でのジャンプ。
123!重い石を投げソリを一気に押し出す力をつけます。
ソリを押す時と同じように重心を低く保つ。
強豪国ラトビアにはボブスレーに特化したトレーニングがありました。
どうしたら体格に劣る自分が世界と戦えるのか。
仙台大学ボブスレー部の監督でスポーツ科学が専門の鈴木省三教授と戦略を練りました。
外国人っていうのは背が高い訳だ。
そうすると押すっていう事は全部ベクトル下になる訳だろ。
外国人というのは力をソリに…重心に対して平行に伝えるっていうのはどうだ?やりづらい。
やりづらいだろ。
ああなるほど。
ソリの重心がここにあって背が小さいという事はどういう事だ?伝えやすいというかまっすぐに伝わりますよね。
体格のいい外国人選手。
高い重心からソリを一旦斜め下に押し出すため力のロスが生じやすいといいます。
一方黒岩選手。
身長が低いため無駄なくソリに力を伝えられるというのです。
背の低い選手がボブスレーで勝負をするという一つのポイントはやはり効率ですからそのためには重心が低いというそのメリットを伝えやすいというメリットを使うという事が非常に重要で。
恐らくそれが日本人が身長の低い選手でも世界で戦うための一つの利点になるというふうに考えています。
今のフォームに改善点はないのか。
ここの1歩目のこの足の着き方だ。
ちょっと今外向いちゃっている。
ガニ股になっちゃっているので。
ソリを押し出す1歩目。
ソリの重さに負け爪先と膝が左に傾いています。
上から見ると左肩が下がりバランスが崩れていました。
はい片足キープ!黒岩選手は均等に力を加えるフォーム作りを始めました。
ほらねじれてる。
キープキープ。
しっかりと重心構えたらピタッと止まらないと。
ここから構えたら前に。
こうだろう?重心制御して。
まっすぐ来い。
この重心というのは左右にも揺れますし上下にも揺れますし。
ですから技術が悪いとエネルギーをいろいろとロスしちゃう訳です。
だから黒岩はエネルギーは常に進行方向に対して無駄なくぶつけてあげる。
そういう事を意識させる。
もう一つ力を入れたのが体幹づくりです。
重いソリを押してもフォームが崩れないようにするためです。
水の抵抗を体全体で受け止めながらまっすぐ進みます。
不安定な足場で水を前に押し出すように歩きます。
よ〜いゴー!少しずつ以前のスピードを取り戻していきました。
10月。
復調してきた黒岩選手は代表の最終候補に残り海外遠征メンバーに選ばれました。
任される事になったのがセカンドと呼ばれるポジションです。
セカンドはパイロットの次にソリに乗り込むポジションです。
4人の中で最もパワーが求められるといわれています。
斜面がなだらかなおよそ20m。
セカンドがいわばローギヤで勢いをつけソリを加速させます。
そこから残りの選手がトップギヤでソリを押しスピードを上げていくのです。
低い姿勢で力強いスタートが切れる黒岩選手の持ち味が生かせるとこのポジションを任されました。
自分の20mのトップスピードはほかの方に負けてないと思うので。
すごいいいタイムが出ると思うので生かされると思います。
いよいよオリンピックシーズン開幕です。
カナダ・カルガリーに19か国の選手たちが集まりました。
(掛け声)
(声援)オリンピックの前哨戦今シーズン最初のレースが幕を開けました。
黒岩選手は今シーズン初めて氷の上でのレースに挑みます。
言ってないです。
言ってないです。
言ってないです。
これどうやって拭くの?そのままサ〜ッて。
そうですね。
前から?はい。
サ〜ッと。
結構しっかりギュ〜ッとやって大丈夫ですよ。
ライバルとして競い合ってきた…これからは仲間としてオリンピック入賞を目指します。
パワーとスピードの両立を図ってきた黒岩選手。
股関節を念入りにほぐしていました。
無駄なくソリを押すために体の左右のバランスを整えます。
レースは2回の合計タイムで争われます。
スタートの目標は5秒3台。
(掛け声)目標に及びません。
ゴールタイムは入賞圏内に0秒8届かず13位でした。
理想のスタートダッシュはできていたのか…。
黒岩選手は自らのフォームを分析していました。
課題の1歩目。
ソリに無駄なく力を伝える事ができたと手応えを感じていました。
このまま精度を上げられれば。
あとは4人が押すタイミングを合わせる事ができればタイムは更に伸ばせる。
タイミングがずれてしまうとゆるゆるっと出てしまうのでまずそこをしっかりタイミングを合わせる。
OK!OK!
(手を打つ音)代表の座を争ってきた選手たちが一つのチームとして戦います。
OK!OK!
(手を打つ音)あ〜遅れちゃったごめんなさい。
全員で息を合わせて初めて最速のエンジンになれる。
OK!OK!
(手を打つ音)2回目に全てを懸けます。
(気合いを入れる声)
(掛け声と声援)1回目より一気に100分の5秒縮めました。
目標どおりのスタートでゴールタイムは入賞まで0秒3に縮めました。
パワーとスピードの両立に苦しんできた黒岩選手。
確かな手応えを感じたレースでした。
まず走りの方はだいぶ自分の中ではいい感じになってきたのかなと思います。
やっぱり世界で通用するエンジンにならなければいけないなと思っています。
日本チームからお前ならいけるぞっていうぐらいやっぱり任せて頂けるぐらいのエンジンになれればなと思っています。
日本がかつてなしえなかったオリンピック入賞。
うわ〜っ!
(笑い声)最速のエンジンに挑む黒岩俊喜選手。
小さな体で大きな夢に突き進んでいます。
(気合いを入れる声)2014/02/16(日) 13:05〜13:50
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「最速エンジンになる ボブスレー 黒岩俊喜」[字][再]
ボブスレー日本代表最年少、20歳の黒岩俊喜選手の挑戦を追う。体格に勝る欧米の強豪を相手に、体格のハンデを逆手にとった日本流でソチ五輪に挑む日々に密着する。
詳細情報
番組内容
体格差が勝敗を決めるといわれるボブスレー。体格のハンデを逆手にとった日本流でソチ五輪に挑むのが黒岩俊喜選手だ。身長172センチと小柄だが100メートルを10秒台で走る俊足。陸上で五輪を目指した逸材は、低さこそ最大の武器になると、重心を極限まで下げる走法を生み出そうとしている。「目標は世界最速のエンジンになること」。知恵と工夫で日本ボブスレー初の五輪入賞に挑む闘いの日々を見つめる。【語り】山本耕史
出演者
【語り】山本耕史
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
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