ご機嫌いかがですか?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第三週の選者永田和宏さんです。
今日もよろしくお願い致します。
さて今日の歌は「らりるれろ」これはどんな背景の歌でしょう?酔っ払って家に電話すると女房が「あなた『らりるれろ』言ってごらん」っていつも言ってたんですよ。
言えないと「もうそれ以上飲んじゃ駄目」って。
それを聞いてて娘が小学校の頃かな僕が電話したら「お父さん『らりるれろ』言ってごらん」って。
まだね小さくてちょっと生意気になっていた頃ですね。
そんな事言われるとまたかわいかったでしょう?
(笑い)そうです。
永田さんが相好を崩されるそのかわいいお嬢様が今日のゲストでございます。
ご紹介致しましょう。
歌人の永田紅さんです。
ようこそお越し下さいました。
「らりるれろ」何か思い当たられますか?言ってましたね。
父親に対して。
最近は私の夫が酔っ払って電話かけてくると私が「らりるれろ」って言わせてます。
かわいそうやな。
そうやって酔っ払い度を測られる。
さあゲストにお迎えした永田紅さんでございますが歌人としてご活躍の一方で京都大学で細胞生物学という難しい分野を研究されていらっしゃるんですが私どもに分かるように一体どのような研究でしょうか?血液検査の項目なんかで善玉コレステロールとか悪玉コレステロール「HDL」「LDL」ってありますけれども私はその善玉コレステロールがどうやって作られるのかという事を調べてます。
その事はまだ分かってないんですか?詳しくはよく分かってないので。
それが明らかになってくると我々の健康には何か?動脈硬化症の予防とか治療につながればいいなと思ってやってます。
成果が上がってほしいですね。
頑張ります。
お父様ももちろん理科系でいらっしゃいますが分野は似ているんですか?そうですね。
対象は違うんだけど細胞生物学という意味では同じ分野で実は大学で僕が講義をしてた時に娘が教室の向こうにいて講義を受けてたんです。
やりにくかったですね。
そういう事を考えても非常に不思議な親子関係ですよね。
理科系同士そしてまた歌人でいらっしゃると。
不思議な家ですね。
さて短歌のこの番組にご出演頂くにあたって短歌とは何ですかというキーワードお考え頂きました。
どんな言葉になりましたでしょうか?錘ですか…さあどんな意味合いでしょうね?後ほどこのお話詳しくお聞かせ下さい。
どうぞよろしくお願い致します。
それでは今週の入選歌のご紹介にまいりましょう。
題が「指」または自由でございました。
永田和宏選入選九首です。
一首目。
若い作者なんですよ。
10代の作者なんですよね。
デートをすると。
いつかあなたのうなじに触りたいと思っていて手袋ではあまり触り心地というか直接的じゃないのでわざと忘れてきてさあどのタイミングで触ろうかなと考えている。
若い歌ですね。
ほんとですね。
青春ですね。
こういう時代がうらやましいですね。
何かおじさんたちが2人でうらやましがってもしょうがないという感じもありますがでは次の歌です。
二首目です。
おや?これも青春かな?実はねこれもっと若くて高校生の歌なんですよね。
ギター弾いてる男性って格好いいですよね。
それであなたが好きって言いたいんですよね彼女はね。
だけどそう言ってもきっと取り合ってもらえないからあなたじゃなくてその指が好きなのよと。
ギターを弾いてるあなたの指が好きなのよと言って自分に言い聞かせているという健気な歌だな〜。
これも若い歌ですね。
こういう時に歌を作れるのはとてもいいですよ。
この短歌の番組4週目胸キュンですがまさに胸キュンする歌ですね。
そうですね。
では三首目にまいります。
これは紅さんどう読まれましたか?ご高齢のお母さんでしょうね。
寝てらっしゃるところをベッドの周りから子供たちが家族がのぞき込んでいる。
お母さんももしかしたら子供たちの名前も年齢も顔もおぼろげになられてるかもしれないんですがそれでも自分の産んだ子供たちを一人ずつ数えて確かめているのがとてもいいなと思いました。
「ひいふうみい」。
ひょっとしたら臨終に近い時なのかも分からないしもう少し分からなくなってる時にみんな家族が子供たちが心配してのぞき込んでいる。
お母さんもお名前も分からなくなってるけど「ひいふうみい」って自分の子供の数だけ覚えてるって。
指の形がいいですね。
そうね。
「ひいふうみい」ってとてもいいよね。
では次四首目です。
これも紅さんいかがでしょう?合唱の時の指揮者と歌ってる人たちの息の合い方がとってもよく合ってるなという感じがあって指揮者が指を止めてスッとすると歌ってる人たちがピアニッシモになるという全体で一つの生き物のような一体感というかそれがとてもよく分かります。
ピッと止めてス〜ッとこうするとピアニッシモになるんですね。
それをみんなが一斉にピアニッシモになるという。
濱中さんは合唱でしょ?合唱してたんです。
「第九」歌っておられるんですよね?ピアニッシモで合唱はすごく難しいんですよ。
きれいなハーモニーでピアニッシモって本当に難しい。
指揮者が本当に心を込めてきれいにしてねっていうのが籠もってるんでしょうね。
「窄め」というところがね。
ス〜ッと小さくならないとね。
そこがよく出てますよね。
では次五首目です。
たばこを吸っている男性って格好よく見えた事がありますよね。
そういうたばこを持つ指が浮雲をふはりとつまんでいるやうな指先をしているというそれをあこがれて見ていた時代があったという。
今は喫煙ルームで吸うのでそんな感じじゃないんですけどはるか昔にそんな時代があったよというそういう歌ですよね。
そうして見るとご指摘のようにたばこ持つ風景も変わりましたね。
隔離されちゃってね。
浮雲じゃないですね今ねモゴモゴっとしてるからね。
では六首目を鑑賞致しましょう。
この歌です。
これは紅さんどう読まれました?最後まで読むと地球儀を回したって分かるんですけど初め読んでいくと真っ青な太平洋の水に指を浸したという鮮やかなイメージが広がってそこから地球儀にいくというこの転換も面白かったですね。
地球儀を回す歌って結構多いんですけど「右へ一回地球を回す」というこの「一回」というこの限定がとても面白いと思ったな〜。
自転の方向?そうですね右向いてね。
では次が七首目です。
僕はね五本指のというのは足袋を一年に一回ぐらい履くしかないんですけど普通にポッと足を突っ込むんじゃなくて一本一本指を入れないと駄目ですね。
その時にふだんやった事ないんだけど一本一本入れる時に水かきを広げるように足を入れていくというところでとても実感があっていい歌だと思いますね。
五本指靴下いいですよ。
濱中さん愛用してる?もうこれ以外履けませんね。
何でいいんですか?足の指と指の間が快適ですし夏の季節も汗あまり…。
僕なんか五本指の靴下履くとねこむら返りが起こっちゃう。
足の指もよく広げられた方がいいですよ。
健康のためにね。
何の話でしょう?失礼致しました。
では次の歌です。
これも面白い歌ですね。
「お願い一本」って。
お酒だったら1合お小遣いだったら1万円って言ってるのかも分からないけどその旦那さんがいつもそうしてお願いをすると。
指一本立てて拝まれるというのが面白いところでこの歌は結句の「その他いろいろ」が面白い。
何だろうな?「その他いろいろ」って何だろう?多分ねかなわないお願いの方が多いんだと思いますけどまあこれは家庭円満の秘けつですかね。
しかしこのご家庭は完全に作者が大蔵大臣。
そういう家ですよね。
紅さんのご家庭も同じ思想ですか?うちはもっと緩やかです。
どうかな?それでは最後の歌です。
これは懐かしいですね。
フレミングの右手の法則左手の法則ってあるんですね。
磁場の中を電流が動くと力を受けるっていうのかな。
そういう磁場の方向と電流の方向と力の方向というのはこういうふうにして覚えるんですけどね。
高校の時の物理の試験なんかでこれはこっちだったといって最後残り五分で入学試験でそれを確かめてるという歌ですね。
多分合格したんだと思いますけどこの人はね。
「フレミングの法則」がとてもよく利いていますね。
以上入選九首でした。
それではこの中から永田さんがお選びになった特選三首の発表です。
まずは三席からです。
三席は平田敬子さんの五本指の靴下ですね。
続いて二席です。
今田龍郎さんを選びました。
ではいよいよ一席です。
一席は熊谷純さんを選びました。
さっき紅が言いましたけど最初はとにかく「太平洋に指を置き」というところがとてもいいんですよね。
地球儀が最初に出てくると駄目なんだけどまず「太平洋に指を置いて右へ一回地球を回す」と。
地球儀を回してるだけなんだけどすごく大きな風景ですよね。
地球を回すという感じだし…。
今あるような地球儀のくすんだようなインテリアとしての地球儀じゃなくてペンキ塗りたてみたいな青い海が広がってる地球儀を思い出して大きないい歌になったと思いますね。
以上今週の特選でした。
今回ご紹介しました入選歌とその他の佳作の作品はこちら「NHK短歌」のテキストにも掲載されます。
是非ご覧下さい。
さて今日はこの一年永田和宏さんが一席にお選びになった中から特に年間大賞を選んで発表となります。
さてどの歌が年間大賞になりましたでしょう?今回は松瀬詩子さんの作品を選びました。
この作品です。
年間大賞。
松瀬詩子さん年間大賞です。
おめでとうございます。
なぜ選ばれたでしょう?とても駄目な犬だったんだけどその犬が死んでから花なんか買った事がない人が花を買う。
自分にも買ってくれないのにという思いもあるんだと思うんだけどこれは犬の事を歌ってるんだけど旦那をほれ直した歌なんですね。
こんないい所あったんだいいじゃんと思ってる歌ですね。
いい歌だと思いますね。
年間大賞でした。
それでは続いて「うた人のことば」ご覧頂きましょう。
(春日井)夜の国際空港での即興の一首です。
はるばるとした気分を写してみたくて都市的な素材を書きたいなという事をしきりに思っていた当時の一首です。
平成11年春日井建が60歳の時喉に治療の難しい腫瘍が見つかりました。
病に立ち向かう静かな闘いの日々をこんこんと歌に詠み発表していきました。
若さに対する憧憬というのは僕の中で今もなお強くあるものですしテーマの一つでもあるかと思います。
時代に敏感でありたいというとかそういう事というのが若さに通じていってくれたらいいなと思います。
水鳥の習性でしょうか一羽が立つと次々と仲間たちも飛び立っていきます。
では続いて入選への道のコーナーです。
たくさん頂戴するご投稿歌の中で少し手を入れるととても良くなるという歌がたくさんあるんですね。
今日は一首永田さんに取り上げて頂きます。
入院しておられる方でしょうね。
ベッドの上で手をかざして退院したら今度この指に合う指輪を買おうと思って指を見ている。
とても切ない歌でよく気持ちが分かる歌なんですけど歌として見ると初句から順番に続いていく順接で続いていって説明をされてるわけだよね。
一番言いたい「今度指輪を買おうと思う」というところがちょっと霞んじゃうので思い切って順序を換えてこんなふうにしてみます。
「今度指輪を買おうと思う病院のベッドの上で手をかざし見る」。
こうしてまず指輪を買おうと思う。
そうすると何だろうと思うわけですよね。
それでその時にあとでベッドの上で手をかざして見るという事になると作者が置かれてる状況もそこでよく分かって作者の切ない願いというのがよく出てくる歌になると思います。
一番言いたい事をまず言うという事でしょうかね。
どうぞ皆さんも歌作りの参考になさって下さい。
では投稿のご案内を致しましょう。
では選者のお話永田さんの「時の断面あの日、あの時、あの一首」今日は「卒業」の2回目のお話です。
卒業の歌を探してますと結構自分の卒業って少ないんですよ。
歌人自身の卒業というのは。
考えてみると当然の事でまだ卒業する頃は歌を作ってない人が多い。
それだけの事だと思うんですけどねそれに比べて先生の歌が結構多かったですね。
自分の教え子を送り出すとか志垣さんも高校の先生なんですが卒業写真に撮られている時の歌ですね。
もう自分の定年も近くてあと何回こういう写真を撮られるんだろうと思いながら写真を撮っていると。
「背をのばしていまし撮られつ」というところがもうあと何回もないんだからちゃんと背中を伸ばして年取ってくるとだんだん背も曲がってくるんだけどのばして撮られようとそんなふうに撮っている写真で高校生にとっては一生に一回の卒業写真なんだけど先生にとっては何度もあるけれどもやっぱりそれが少なくなっていく時のある種の思いというのがその中によく出てるんじゃないかなとそんな気がしますよね。
卒業の一コマの「背を伸ばして」というところがピシッとしますね。
選者のお話でした。
それではゲストにお迎えしている永田紅さんにもいろいろと伺ってまいりましょう。
まず冒頭短歌のイメージを言葉にして頂いたのをもう一度お見せ下さい。
「時間の錘」この意味合いはどういう事でしょうか?歌を作り始めて25年くらいになるんですけども。
もうそんなになるの?中学1年生の時からで。
何もしないと日常の時間ってどんどん流れ去ってしまってなくなってしまうんですが歌を作る事でその時々の時間一つ一つに錘を付けて自分の中に沈めていくような歌を作る事はそういう事だなと思っています。
今6年ぶりぐらいに歌集をまとめてるんですけど自分の歌を読み返しているとあの時あんな事を悩んでたんだなとかいろいろ思い出すんです。
鮮やかによみがえってきて改めて時間の錘だなというふうに思っています。
逆に言うと歌を作っていない時はあの時何をしていたのかしらという事にもなりかねない。
あの時間どこ行っちゃったんだろうって不安になったりしますから歌作ると自分が安心できるんでしょうね。
娘が二十歳ぐらいの時だったかな何かのインタビュー受けててその時にポロッと言った言葉なんですよ。
とても僕はいい言葉だと思って我が娘ながらあっぱれと思ってあちこちでクレジットを付けながら紹介してるんですけどね。
我々の日常時間ってのんべんだらりと過ぎていって歌でも作らないとその他大勢の時間になっちゃうんだけど歌一首作るとその時間だけが自分にとっては特別な時間になっちゃうのね。
それでは紅さん最近錘のついた自作を一つご披露頂きましょう。
これは?昨年初めての妊娠と出産をしたんですが病院に行くと…これ妊娠初期の歌ですね。
病院に行くと今何センチくらいってエコー検査で見てくれるんですがそれを家に帰って夫とか父親とかに今このくらいの大きさ二センチくらいらしいよって報告している歌です。
挟んでいるの空気なんですけどこうやる事で何かこのぐらいのものがいるんだなという不思議な実感が湧いてきた感じですね。
「空気を挟む」っていいよね。
なるほどそう言われれば我々これぐらいって言われたらここに赤ちゃんを見るんだけど挟んでるのは空気だけだというそんな歌ですね。
やはり最近妊娠出産そして育児という今ご自身の置かれておられる立場そういった事に関心の向く歌が多くなりましたか?母でこんな歌があるんですけども…。
これは短歌として私も知ってたんですけど自分が産んでみると今まさに私はこの状況で24時間赤ちゃんと一緒にいてだっこしてお風呂入ってってやっぱりお母さんもこうやって育てたんだなって改めて実感しています。
やっぱ歌があるから感じられるんでしょうね。
ご家族みんなに歌があるわけですね。
お兄様もご両親も歌人でいらっしゃるとそれぞれの作品があるというのはどういう事でしょうね?ふだん歌の事をしゃべってるわけじゃないんでばかな事ばかりしゃべってるんだけど相手が何を考えてるのか何悩んでるのかという事は言わなくても結構分かるみたいなところがあって前置きなしにしゃべれるところはあって言ってもいいかな?昔ね紅が恋に悩んでた時に一晩紅が泣き明かすのにつきあった事ありますね。
普通はどうか知らないけど女の子がお父さんに恋の悩みを打ち明けるってそんなないよね。
打ち明けてもらった事ないですよ。
そうなんですか?それがね変じゃなくてよく分かってて本当に一晩僕はビール飲みながらでしたけどつきあった事がありましたね。
やはりそれは紅さんの歌作品をいつも読んでらっしゃるから?そうですね。
恋の進行具合はどうなってるのか大体何も聞かなくても分かるとか。
家族が歌を読んでくれてるっていうのは安心感ありますね。
分かってくれてるっていうのが感じられて…。
紅さん先ほど25年前から歌作ってますという事で新しい歌集もおまとめ中でございますがこれから歌人としてはどんな方向性に?これから子育てがすごく大きく位置を占めてくるので子供の歌を作りたいなと思って今私が母の歌を読んでああこうだったんだってうれしいように子供も大きくなって私の歌を読んでくれたらそれはそれでうれしいなって思います。
僕は河野が子供の歌をずっと作ってたでしょ?さっきの歌もそうだけど…。
それを見ていて紅がこれからどんな歌を作っていくのかというのが興味があるね。
お互いこれからどんな歌が生まれるかほんとに楽しみなご家族ですね。
あのころの河野の姿が紅に重なるところもあるし…。
今日は歌人の永田紅さんをお迎えして楽しいお話伺いました。
どうもありがとうございました。
では来月もどうぞよろしくお願い致します。
「NHK短歌」時間でございます。
ごきげんよう。
2014/03/16(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「指」[字]
選者は永田和宏さん。ゲストは歌人の永田紅さん。和宏さんと紅さんは父娘。永田家は亡くなった母 河野裕子さん、兄の淳さんも歌人という短歌一家。題「指」司会 濱中博久
詳細情報
番組内容
選者は、永田和宏さん。ゲストは、歌人・永田紅さん。和宏さんと紅さんは父娘。永田家は、紅さんの母・河野裕子さん(故人)、兄・淳さんも歌人という短歌一家だ。題「指」。【司会】濱中博久
出演者
【出演】永田紅,永田和宏,【司会】濱中博久
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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