ご機嫌いかがでしょう?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第三週の選者永田和宏さんです。
今日もよろしくお願い致します。
今日の冒頭の選者の一首はどういう背景でしょうか?上田三四二さんという歌人が昭和天皇とほぼ同時に亡くなられたんですけどその追悼文を求められて書いてたんだけどあの当時のパソコンって「みよじ」と打っても「三四二」って出てこないんですよ。
しょうがないから数字で「342」と打って「三四二」と直す。
追悼文を書いてるんですけど何となくパソコンの機能がほほ笑ましくて作った歌なんです。
(「異邦人」)今日はいきなり歌が流れてまいりましたが別の番組ではございません。
「NHK短歌」の番組でこの永田さんのプロフィールをご覧下さい。
好きな曲に「異邦人」と書かれておりますね。
大変お好きな歌「異邦人」なんですが今流れている「異邦人」の作者をゲストとしてお迎え致しました。
久米小百合さんです。
ようこそお越し下さいました。
久米小百合さんはかつて久保田早紀のお名前で大ヒット曲「異邦人」を発表され現在はミュージックミッショナリーとして活動を続けていらっしゃるという事ですがミュージックミッショナリーどんな活動なんでしょうか?日本語だと「音楽宣教師」というんですけど音楽を用いてキリスト教の福音をお伝えするというミッションスクールとか幼稚園とか教会とかでコンサートをさせて頂いて被災地にも行かせて頂いてます。
永田さんわざわざプロフィールにこの曲が好きだと載せてくれという事でございますが「異邦人」それほどお好き?昔から好きなんですけどねとても懐かしい気がして子供たちがだんだんと大きくなって取り返しのつかない時間が自分から去っていくというそういうある種の悲しみなんだけどメロディーもとてもいいので。
ありがとうございます。
メロディーと共に歌われてる歌詞の世界も何か惹かれるものがあるわけですよね。
そんな久米さんに短歌の番組にお迎えするにあたって短歌のイメージを言葉にして頂きました。
どういう言葉でしょうか?こんな感じになりました。
謎めいてますね。
「異邦人」も賛美歌もこんな感じなんです。
では後ほどそのお話をたっぷりと伺いますのでどうぞよろしくお願い致します。
それでは今週の入選歌ご紹介致しましょう。
題が「打つ」または自由でした。
永田和宏選入選九首です。
一首目。
早速久米さんに伺いましょう。
懐かしいというか子供の頃遊んだ原風景って感じです。
あき地今なくなりましたね。
棒も落ちてませんし。
そうですよね。
三角ベースって日本独特じゃないですかね。
我々もよくやったし場所もあって棒が落ちてたなんて本当にある種の戦後風景で同世代の方の歌だと思いますけど懐かしい歌ですよね。
ああそうだったなと私も…。
濱中さんもやられた?そういうふうに思いますよ。
こんな風景でしたね。
棒が落ちてて今ほんとに見つかりませんね。
棒でチャンバラごっこやったりね。
では二首目にまいりましょう。
久米さん。
これ毎日息子に言ってます。
返事来ませんか?来ませんねなぜか。
読んでるみたいですけど来ませんねあんまり。
これ実は私の息子もそうなんですね。
なぜこの世代は親に返信をしないんでしょうね。
お母さん子供を怒ってるわけですよね。
諦めてるわけですメールの返事は。
でも「読むだけはよめ」っていう結句はすごいですね。
返事はいいけど読むだけはよめってここがお母さんなかなか。
ちょっと怒ってらっしゃいますね。
では三首目です。
さっきの歌もそうなんですけど今回「打つ」という題で「打つ」は実際に打つんじゃなくてメールを打つというのがすごく多くてやっぱり時代を感じましたよね。
この三首目の歌もメールでさよならと打つ。
そろそろ別れる時期かなという相手の気持ちも何となく分かるし自分からもそういう気持ち。
でも「さよなら」って打ちかけてやっぱり彼からさよならって言われるのを待つ。
それまで私からさよならと言わないというところがなかなか不思議な女心というか微妙なところですね。
「さよなら」が3回使われてるんですけど「さよなら」ってとても字面が美しい字だなと改めて思いましたね。
これを見ているとね。
この「さよなら」の連呼の。
何か歌になっちゃいそうな…。
歌詞になりそうな。
ほんとですね。
・「さよならと打ちかけて」ああいいですね。
こんなメロディーにもしかしたらなるかもしれません。
では次四首目です。
これ一人で闘病しておられる病室に一人でいると本当に世界から隔絶した孤島のような気持ちがすると。
それとてもよく分かりますよね。
誰かが来てくれてカーテンを引き開けてくれると初めて人の世界とつながってる気がするという。
それがよく分かる歌でこの歌古典和歌でいう「縁語」というのが使われてると思います。
孤島ひとりとみんなの島とその周りに波が寄せてきている。
「波打つ」と「孤島」は縁語になると思うんですがあまり使いすぎると煩わしくなりますけどうまく使われてると思いますね。
では次です。
いい歌ですね面白い歌です。
面白いですね。
やった〜と思うわけですよ。
彼女をついにゲットしたと思って大喜びで結婚してそれから三十五年試合は永遠と続いた。
どういう試合でしょうね?どう見ても形勢不利ですよね。
いまだにでも続いてる。
まあほほ笑ましい歌ですね。
しかし延長戦に次ぐ延長戦です。
お互いしぶといですね。
では次六首目です。
自由題で頂きました。
上の句はどういう深刻な事なのかなと思ったんですが下の句「わたしパパみたいな人が好き」これはとても明るくていいですね。
そんなに深刻な不幸な味ではないんだろう。
たとえお父さんがどんな不幸な経歴を持ってたり不幸な幼い頃があってもでも私今のパパが大好きよと言っている。
こういう事言ってもらえるといいですよねお互いにね。
うらやましいですね。
本当ですね。
では七首目です。
久米さん。
ほっぺた打たれちゃったりとか廊下立たされちゃったりするようなそういう先生も生徒もいたような小中高を過ごしているのでやっぱり懐かしい感じがすごくしました。
ご自身も見た風景という事ですね。
きかんぼうな男の子とか。
「立っとれ」と言って立たされてたやつがいましたけどね。
先生が一番気にしてた子供でそれが今になると一番悲しそうにしていると。
いいですね。
先生は自分の事を思ってくれてたんだなという事が分かるわけですね。
では八首目です。
これもねいい歌だと思うんですよ。
海で釣りをしていた。
そうすると荒れ始めてきて早く帰らなきゃって気持ちはとても帰る方に急ぐんですよね。
波が高くなってきて舟が海面から上がってバタンと落ちる。
その時に舟底が海面を打つ。
この2句3句の「海面に底を打ちつけて」というのがすごくリアルで迫力のある歌になったと思いますね。
では次がおしまいの歌です。
九首目。
若い人はヘルメットなんてなかなか被りたがらないと。
だけど被れ被れと言ってもなかなか聞いてくれないんですね。
見てみろ俺のヘルメットはこんなに傷がある。
打ち傷や擦り傷いっぱいある。
被らなかったら君らの頭がこうなるんだよって言って実際に示している。
「だから」ってこれがいいですね。
「だから被れ」というところがこの歌の中でポイントになってますね。
いい先輩ですよね。
本当にいい先輩ですね。
先輩の言う事は聞かなきゃいけませんね。
以上入選九首でした。
それでは今週の特選歌永田さんが選んだ特選三首の発表です。
まず三席から。
向井正さんの歌を選びました。
二席の発表です。
桑島芳弘さんですね。
何回読んでもいいですよね。
では一席です。
加藤武朗さんを選びました。
さっきも言ったように先生から厳しく怒られてたやつがほっぺた打たれたりもしたんですよね。
それが今や誰よりも悲しそうであると。
そこがとてもよくて「打たれし奴が」の「奴」という言葉とそれから「通夜」がいいですね。
葬式だったらこういう歌はできないんですよ。
通夜で親しい者だけが集まって過ごしている。
そこで一番悲しそうな顔をしてるやつが実は先生にほっぺたを打たれたりしてたというそこがとても歌としていい歌になったと思いますね。
以上が今週の特選でした。
それでは「うた人のことば」です。
モダニズム短歌の旗手として走ってきた青春時代を顧みて歌いました。
昭和14年前川佐美雄36歳の時発行人を務める短歌雑誌「日本歌人」で新古典主義を提唱。
口語を中心としたモダニズム短歌を進化させ文語のゆったりとした韻律を重視するようになります。
それらの作品は佐美雄が37歳で出版した歌集「大和」に収められています。
新古典主義を代表する一首です。
歴史的な時間と文化をたたえ大和の土地の奥深さを歌いました。
「入選への道」のコーナーです。
ご投稿作品の中には少し手を入れるととても良くなるという歌がたくさんございます。
永田さんに一首取り上げて頂いて手を入れて頂きましょう。
お願いします。
ペンダコの歌ですね。
ペンダコができる事なくなりましたけれども。
みんなパソコンで打っちゃいますからね。
これ面白い歌なんですが全体がザワザワしているというか文脈がストレートにこちらに伝わってこないので今日は思い切ってかなり大きく添削をしてみました。
まず一つのポイントは文字を消しました。
「書くよりも打つものとなる」「ペンダコ」なんて言葉があるので文字である事は言わなくても分かるので「書くよりも打つものとなり」で止めてしまいました。
それと「なりつつあらむ」でもいいんですが「あらむか今は」というふうにして今とペンダコがあった時期の事をちょっと対比するのも面白いかなと思いました。
ちょっと参考にして頂ければと思います。
「なりつつあらむか今は」という結句がかっこいいですね。
かっこいいですか?ええ。
これなかなかできないと思いますけどどうぞ皆さんも参考になさって下さい。
それでは投稿のご案内を致しましょう。
では選者のお話です。
永田さんのテーマは「時の断面あの日、あの時、あの一首」。
今日は「卒業」をテーマにお話を頂きます。
栗木さんは私よりも少し若い実は同じ大学の後輩なんですがこれは栗木さんが大学卒業する時の歌なんですね。
上の句の方は「退屈をかくも素直に愛しゐし」学生時代は結構忙しくいろんな事をやって動いてるんですけどもどっかで自分の精神はとても退屈だ。
退屈である事を誇るというような感じがあってこの歌も「退屈をかくも素直に愛しゐし」退屈を愛していたそんな時期そんな学生時代ある種のモラトリアムそういう日々が今日でおしまいになって卒業して京都から出て行くという歌ですよね。
京都はほんとに学生の町ですから学生たちはみんな学生時代が終わると京都から出て行っちゃう。
「さよなら京都」がとてもよく利いている歌だと思いますね。
他の地名ではちょっと代替が利かない。
大阪でも東京でもちょっと違うと思いますね。
京都ならではの歌でそれがうまく出た卒業の歌になってると思いました。
学生時代を過ごした京都よさようならという事なんですかね。
僕らはいつも取り残される方なんですよね。
京都に残される。
そう。
選者のお話でした。
ここからはゲストにお迎えしている久米小百合さんにもいろいろお話を伺っていきたいと思いますがまずはお好きな歌を一首挙げて頂けますか?紹介させて頂きます。
この歌を挙げて頂いたのは?ちょうど去年の桜の頃に母を天国に見送ったんですけどまだ間に合うんじゃないかと思って車をすごく走らせたんですね。
その急いでいた車のフロントガラスに桜の花びらがハラハラと舞いまして何か寂しいような誠実な悲しさみたいなそんな感じがしてすごくこの歌が自分の気持ちと寄り添ってくれるようなそんな感じがしました。
桜って不思議な花ですごく華やかな花で咲いてる時は華やかなんですけど夕暮れに散ってるのを見ると非常に寂しい花でもありますよね。
薄い花びらをずっと見ていると目の奥に焼き付いてしまって別な所で何か見た時にそれがパッとよみがえってくるようなそれが雨宮さんにとっては「死より甦りしごとくひらく」という言葉になったと思います。
さあそれでは冒頭短歌のイメージを短い言葉にして頂きましたね。
もう一度お見せ頂きましょうか。
こういう言葉になりました。
さあこれはどういう意味なのか?短歌の「五七五七七」という決まり事の中で言葉を減らしていきながら世界を作らなきゃいけないという究極の定型の難しいけど魅力があると思うんですけど歌を作っていくのもメロディーがあってリズムがあってそこにピッタリはまる言葉を見つけてこなければいけなくて決まった時には気持ちがいいという何か似てるんじゃないかなと思いました。
そこがシンクロという事なんですよね。
久米さんの場合は曲が先なんですか?ほとんど久保田早紀の時は曲が先だったんですけれども作ってしまうとやっぱり歌いたいので言葉を持ってこなきゃいけないという事で。
メロディーが湧いてくる時には自分のある種の思いというのは先にあるんですか?そうですね。
何となくメロディーで降りてくるというか出てきてしまうものなんですけど。
例えば「異邦人」の時は曲詞どちらが先?曲が先だったんですけども曲に言葉は最初の2行ぐらい乗ってましたけどあとは曲が残ってしまったので言葉を探してきてという感じでした。
それは我々がさっきおっしゃったように定型に言葉を当てはめていくのとわりと似てますよね。
リズムとかイントネーションもピッタリはまった時がいい曲だと思うんですけども。
イントネーションとおっしゃいましたが言葉のアクセントとメロディーの高低音の高い低いと合わせるのも大変難しい事かと思いますが。
今あまりそういう事を考えないでも曲がたくさん出来ているようですけどもやっぱり「わたし」というのと「わたし」って歌うのと違うように大体心に残る曲というのはそれがはまっているように思うんですけど。
久米さんとしてはやはり詞がしっかり入ってくるというまたメロディーに言葉が乗っているというのがやっぱりいいという。
今賛美歌を歌ったり作ったりしてるのでそこもはまった時が気持ちがいいし伝わる言葉というのはそこが決まってるんじゃないかなと思うんですけど。
曲が先できてくるっていうと曲ができて言葉に当てはめるまでどっかで書き留めるんですか?そうですね。
音符を作って音符を書いてる段階で曲のメモみたいなものはあります。
曲のメモ。
その風景だったりとか熱いとか温かいとか冷たいとか。
メロディーの他に言葉で書くわけ?そうです。
音符のところにちょっと隣に海とか風とか。
我々も町歩いてるでしょ?何か面白いフレーズが出ると言葉ってその場で書き留めないとすぐどっか行っちゃうんですね。
僕なんか特に忘れっぽくなってるからしばらく歩いて曲がり角曲がるともう忘れちゃうっていうどっかで書かないと困るんですけど。
音符もそうです。
音もそうです。
音痴だから曲ができるって事自体分からないけどできたのは次に再現できないですよね。
五七五七七の世界がすごく私は五七五七七というオーケストラというか小さな曲だと思うのでそこがすごく似ているなと思います。
一曲って感じです。
短歌は短い詩型の中で言葉の吟味というのはもちろんなされているわけですが歌を歌詞としてお作りになる時もどのようにして選んでいかれるという。
やっぱり最終的には歌ってしまうので流れてしまわないようにとか何かひと言残るようにとかあとは韻を踏んで気持ちのいい音とか言葉とかって選ぶようにはしています。
感情を遠回しに言うという事もあるんでしょうか?あまりじかに好きよとか愛してるわとかって言うよりもベタな言葉は使うのは苦手だと思います。
風景とか歌った方が歌いやすいですね。
これは短歌の番組なんだけど僕らが歌を作ってる人に口を酸っぱくして言うのは形容詞と形容動詞で自分の心気持ちを表そうと思わない。
ものを描く事でその気持ちが表れるのがベストだと思います。
難しいけど一番すてきな歌の世界になると思うので…。
「異邦人」が好きなのもそういう感じですね。
あなたと届かなくなってる心その事によって自分が大人になっていくという歌なんだけどそういう自分の気持ちが直接には歌われてない。
それがすばらしいと思いますけどね。
我々の世代の永遠の歌ですね。
今度一緒に歌いましょう。
今日はミュージックミッショナリーとして活動を続けておられる久米小百合さんをお迎え致しました。
どうもお話ありがとうございました。
永田さん来月もどうぞよろしくお願い致します。
では「NHK短歌」時間でございます。
ごきげんよう。
2014/02/16(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「打つ」[字]
選者は永田和宏さん。ゲストは久米小百合さん。永田さんの愛唱歌は「異邦人」。久米さんはかつて久保田早紀の名前で「異邦人」を大ヒットさせた経験を持つ。題「打つ」
詳細情報
番組内容
選者は、永田和宏さん。ゲストは、久米小百合さん。永田さんの愛唱歌は「異邦人」。久米さんはかつて久保田早紀の名前で「異邦人」を大ヒットさせた経験を持つ。題「打つ」。【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】久米小百合,永田和宏,【司会】濱中博久
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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