NHK短歌 題「顔」 2014.03.02

ご機嫌いかがですか?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第一週の選者小島ゆかりさんです。
今日もどうぞよろしくお願い致します。
今日の冒頭の一首は?春のぼんやりとしたいい気分の日です。
みんなどこへ行くのかな?私もどこへ行くのかな?そういう歌です。
このぼんやりとした感じが何かいいですね。
さあ今日のゲストをご紹介致します。
お迎え致しましたのは国文学者の藤原茂樹さんです。
ようこそお越し下さいました。
よろしくお願いします。
藤原さんをご紹介致しましょう。
「万葉集」をはじめとする古典文学がご専門ですがNHKテレビで2008〜2012年まで放送されました番組「日めくり万葉集」を覚えていらっしゃる方多い事でございましょう。
その監修もお務めになりました。
そして現在はこちらをご覧下さい。
NHKカルチャーラジオのテキストでございますが「藤原流万葉集の歩き方」という事で日本全国津々浦々お歩きになって万葉ゆかりの地を訪ねたりまたその暮らしぶりをお訪ねになっておられるという事で大変興味深い内容のお話またテキストなんですがどんな事をお感じになって歩いていらっしゃるんでしょう?長年旅をしてまして特に私は海辺が好きなようで島とか離島が多いですね。
それから半島部を歩いたりします。
そういう時古い昔の生活の名残のようなものを見つけだしてそれを万葉人を考える時の材料にして何か私たちの心の中に残っている古いものがないかというのを探していく。
そういう試みを行っております。
現代に通じるものも見つけたりされるんでしょうね。
例えば海辺でもって機織りをしているお年寄りに話を聞くとかですねこれ棚機つ女ですね。
海に潜る海女さんの話を伺ったりとかそんな事をしております。
今日はその一端を伺うのが楽しみですよね。
私は「万葉集」も大好きですけどすてきな藤原先生に一度は来て頂きたいと思っていたので大変今日はうれしいです。
そういう動機もおありなんですね。
下心いっぱいという事で…。
今日は3月ですので春の歌を一首ご紹介下さい。
はいこれはどういう歌ですか?桜の花は日本人が大好きな花ですけれども日本の文学に最初に桜の花が現れた時から華々しい繁栄の意味と同時にその裏にはかなさが込められている。
それを人麻呂がまた旅の途中でもって桜の花が咲いたかと思うともう散ってしまうと。
目の前に現れてくる人々一体誰だか分からないのだけれども見えてはちりぢりばらばらに別れていくと。
そういうものを結び付けた歌だと思います。
和歌短歌研究の専門家でいらっしゃる藤原さんに今日は和歌短歌どんなイメージですかってキーワードをお作り頂いたんですがこんな言葉になりました。
いいですね。
大変興味深いお話が伺えそうです。
後ほどどうぞよろしくお願い致します。
それでは今週の入選歌のご紹介にまいりましょう。
題が「顔」または自由でした。
小島ゆかり選入選九首です。
一首目。
奥様のお留守においしいお酒をこっそり飲んじゃうわけですね。
「そのときこの顔いかなる様か」なんていうわざと大仰な歌い方をなさっている。
そこに何とも言えないユーモアと男の方特有のちょっとした「てれ」みたいなものが感じられてなかなか人間味豊かな魅力的な歌だと思います。
お帰りになったら是非ご一緒に飲まれるといいと思いますね。
では二首目です。
藤原さんこの歌はどう読まれました?古代では体を清めるのはみそぎと言います。
そのみそぎの場合には神様にお会いするための準備ですけどこの方の歌は現代風で今日という新しい日に出会うために朝の冷たい水を浴びると。
まあ顔ですけれども。
冷たければ冷たいほどすばらしい日に会えるのだというように私には感じられました。
すばらしい鑑賞ですね。
私も明日からは温水ではなく水で顔を洗いたいと思います。
キリッとした前向きなはつらつとした心の向き方それがこの歌の良さですね。
では三首目です。
非常に静かに歌っておられますけどこれは恐らく長く教師をなさっていらした作者かと思います。
その記憶のどこかにポチッとまるで小さな宝石のように光る名前と顔がある。
そんな歌だと思います。
四首目です。
第四句までは本当に何でもない内容であり何でもない歌い方なんですが結句に来てパッと「雀の顔に」というので一首全体を生かすんですね。
見えてきますでしょ?あっち向いたりこっち向いたりそして頭に日が当たってるようなのどかな感じ。
穏やかな休日の雰囲気がよく出ていますね。
では五首目です。
多分おなじみの床屋さんなんだろうと思うんですけど「顔預け聞く」ここがすばらしいです。
なかなかこういう表現って出てこないんですよね。
それと美容院ですと「顔預け」という表現はぴったりこない。
床屋さんだからこそお顔を剃って頂くひげを剃って頂くという事で顔を預けるという表現が生きるんですよね。
なかなかこれも題が生きていると思います。
では六首目です。
藤原さんいかがですか?カジカといいますと文学の上では河鹿蛙で清流に住む美しい声の持ち主です。
どうもこれはそのような大人の文学の作品の対象であるカエルではなくて魚のようです。
その顔が懐かしいというのは近づいていきたいというかそういう子供時代の捕獲作業といいますかそういうものを思い出してるのでよい歌だと思います。
「身延線」「鰍沢口」とか固有名詞が大変よく生きてると思うんですね。
甲府盆地のかつての宿場町だった鰍沢ですけども「いかつきあの顔」というのがいかにも懐かしさをよく出していると思います。
それでは七首目です。
夫婦ってあまりお互いの顔を見ないと思うんですけれども…。
そうですね。
年月を経ると。
しかしお二人とも目を患われて意外に近くにあるものを改めて見てみようとするんですね。
その時に互いにああこんな顔であったかと。
何かヘンテコな歌なんですけど妙に心に残る魅力のある一首です。
小島さんもお連れ合いの顔あまりご覧にならない?見ないですね。
どういう顔だったかなって。
でも確かにそうだなと思われる歌かもしれませんね。
では八首目です。
雪の日というのは手持ちぶさたな気分にもなりますが一方でちょっと子供っぽい幼い心にも返るんですね。
そんな気持ちがオムライスに顔を描くという自然な行為によく表れていると思います。
ちょっと童画的ないい歌だと思います。
では最後です。
九首目です。
藤原さんいかがでしょう?古代では「火の国」というと海の火の…不知火のちょうど昔景行天皇がお出かけになった時に不知火の怪しい火を見たというような事があってこの歌の場合は多分阿蘇の山の火山の火で赤いトマトに顔をほっこりさせてるというそういう歌なんだなというふうに感じております。
火の国というと肥前国肥後国という事になりますね。
これは肥後の方だと思いますがごくありふれた日何の記念日でもないこういう日に意外と人はいい顔をする。
そんな事も感じましたね。
これは真っ赤に熟したおいしいトマトだと思われますね。
以上入選九首でした。
ではこの中から小島さんが選んだ特選三首の発表です。
まず三席です。
三席は工藤章さんの作品です。
二席の発表です。
二席は細野良成さんの作品です。
ではいよいよ一席の発表です。
一席は古山智子さんの作品です。
この歌は題詠でありながら作者の掛けがえのない人生の中の一つの真実のような事その事が自然に歌われていて大変奥行きのある歌だと思いました。
以上今週の特選でした。
今回ご紹介しました入選歌とその他の佳作の作品は…さあそれではここで年間大賞この一年に選ばれました小島ゆかりさんの一席の中から特にこの一首という年間大賞が選ばれました。
発表して頂きましょう。
どなたの作品でしょうか?大変迷いましたけれども齋藤恭司さんの作品に決めました。
はいこちらです。
年間大賞です。
おめでとうございます。
おめでとうございます。
ひと言お願い致します。
「食器」という題だったんですね。
その時に上の句から下の句へ意外な展開をしていく。
リアルでありシュールである何とも謎めいた斬新な一首だったと思います。
それでは続いて「うた人のことば」をご覧下さい。
祭りの輪を抜けてきたその青年がそこで心を投げ出してしまったというのか魂を吐き出してしまったようで真っ青な顔をしている。
まるで死に顔を持っているようだというそういう歌です。
昭和35年春日井建が21歳で発表した第一歌集の一首です。
序文は作家三島由紀夫若き歌人の華やかな登場でした。
しかし春日井建は25歳で歌から離れます。
歌壇に戻ったのは40歳の時でした。
当時の気持ちとしてはこれで歌の別れだという感じで舞台とかラジオやテレビの仕事とかやってきました。
たまたま僕が歌へ入ったもう一度書き始めたというのは父の死という事が原因してるんですけれどもやっぱりそれだけではない魅力というのがあって…戻ってきてから「葦」という歌集を出したんですけれどもその中の一首で…続いては「入選への道」のコーナーです。
たくさんお寄せ頂くご投稿歌の中からちょっと手を入れるととても良くなるものがございます。
では今日は一首お願いします。
はいこの作品です。
今少し私読むのに迷いましたが「亡父」と読むとやや堅くそして字余りになるんですね。
しかしそうかといってここでこのまま「亡父」と読むのもいくらか無理があるかと思います。
それで思い切ってこんなふうにしました。
よく分かるようになりましたね。
こういう事ありますね。
この歌も本当に「ああそういう事あるな」という共感を呼ぶ歌でございますね。
どうぞ皆さんも参考になさって下さい。
それではご投稿のご案内を致します。
葉書をお使い下さい。
未発表作品をお願いします。
たくさんのご投稿をお待ちしております。
では選者のお話です。
小島ゆかりさんの年間のテーマは「歌を読む楽しみ」ですが今日は「朧月夜」というお話です。
照るわけでもなくそうかといってすっかり曇りはててしまうわけでもない。
そんなぼんやりかすんだ朧な春の月の美しさよ。
これに勝るものはないなこういう歌ですね。
注目すべきは「朧月夜」という言葉です。
これは私たち普通に知っている言葉ですがなんと初めてこの言葉を使ったのがこの一首。
ですから記念碑的な一首なんですね。
大江千里という人は漢学者でありました。
この歌は「白氏文集」の中の一句「明らかならず暗からず朧々たる月」この句を題として作ったいわば句題和歌というものだったんです。
秋の月ばかりが古典の中では話題になりがちですがこんな春の月の情緒どうでしょうか。
「朧月夜」ね。
美しい響きの言葉ですよね。
選者のお話でした。
さあそれではゲストにもさまざまにお話を伺ってまいりましょう。
今日は国文学者の藤原茂樹さんをお迎えしておりますが改めて先ほど書いて頂きましたキーワードをお見せ頂きましょう。
短歌和歌にこんなイメージをお持ちです。
さあどういう意味合いでしょうか。
2つ意味を考えました。
歌は言葉でもって相手の胸の中に飛び込む力を持っていて相手の心を開いていくという大変すばらしいものだと思うんですけれども万葉の時代はそれが全く実用で使われていたという事が非常にその機能が効果を現してるんだと思います。
そういう意味で万葉の時代の歌の主体は相聞の歌ですが相聞は恋人同士の歌ももちろん多いんですけれども母親と娘とかあるいは友人同士男同士とかも相聞の中に入ります。
そういう意味で歌が2人の存在を心を開かせていくというそういうのを結ぶというふうにまず考えました。
「相聞こえ」ですね。
そうですね。
今のメールみたいなものだと。
それからもう一つは非常に古い時代の歌ですけれどもそれがその中にその当時の暮らしとか人々の心とか感受性みたいなものが残っていてそれを今読んでいる私たちが何となく分かるというのはそれは歌が私たちにそういうものを伝えてくれているというそんな意味で「橋」というふうに言ってみました。
冒頭ご紹介させて頂きましたNHKのカルチャーラジオでお話頂いている「万葉集」のゆかりの地を歩いていらっしゃるという事ですがどういうものが伝わってくるのかというお話を伺うために一首ご披露頂けませんか?これは鵜が出てまいりますね。
大伴家持はこれは越中での作ですけれども北陸に行ってもちろんいろんな仕事をしてると思いますけれど楽しみも見つけまして例えば鷹狩りですね。
鷹を飼育して…相当いい鷹が手に入ったそうですね。
まあ失ってしまうんですけれども。
それともう一つは鵜を潜けて遊ぶという事を2つ覚えたみたいです。
これは大変活動的な作業でしてとても面白いですね。
これは楽しみでやっていると考えれば?もちろん実益もあると思います。
鮎が捕れますので。
先生はね当時と同じような事を体験なさってるんですよ。
今日は是非そのお話を伺いたいなと思って。
和歌山県の有田川という川がありまして当時の万葉時代の鵜飼いは今の私たちが知っているような舟の鵜飼いというよりもむしろ徒歩鵜飼いといいましてえっ?歩いて?はい。
鵜の体にひもを結び付けましてそれを主に夜なんですけれども犬の散歩のように川中を。
ちょっと待って下さいよ。
川にジャブジャブ入ってという事ですね?それで歌が「川瀬」なんです。
「川瀬尋ねむ」。
でも「瀬」というからには随分流れがあるところですよね。
でも浅瀬ですので。
「瀬」というのは浅瀬ですから。
こんなところまでだとちょっと無理ですから胸かあるいは腰ぐらいまでのところを川瀬を下流から追っていくんです。
もちろん1人でする場合もあるでしょうが基本的には「八つ」と書いてますのでたくさんの方たちが川に横一列でよ〜いどんで行きながら。
もちろん鵜がまっすぐ行くとは限りません。
いわば犬を引くような様子で鵜を前にしてシュッシュッシュッと。
鵜は目がよろしいんですね。
「鵜の目鷹の目」というので。
それで夜でも見つけます。
片手に長いたいまつを持たなきゃいけない。
左の場合もありますけど右手に持って鵜を左手にこうして鵜が見つけるとどこへ行くか分かりませんのでこう行くのでその勘でもって鵜のいそうなところにかがり火をすると鮎が驚いて瞬間どうも止まるらしいんですね。
それを鵜が捕まえてくるという。
鮎が驚いた隙で鵜がパクッと。
らしいですね。
随分俊敏に動かなければならないじゃないですか。
私も本当にありがたく体験させて頂きましたけど初めどこへ行っていいか分からなかったんです。
あれも鵜匠さんに伺うと俊敏な方のほうがよく捕れるんだそうです。
しかし家持がしたのと同じような事を追体験されたという気分はいかがなものでございましょう?これ以上ないぐらい楽しかったですね。
夏ですので夜の川に黒いものを着て行くんですね。
それでこの辺までつかって鵜を追っていくわけです。
かがり火が長い方がより長く45分とか1時間ぐらいもちますのでそれを追うのがちょっと大変ですけどね爽快そのもの。
初めて家持はああこういう楽しみを知ってたんだという事を。
さっきおっしゃった桜の歌もそうですけども今の私たちと同じ気持ちが詠まれているし先生がおっしゃったこの鵜の体験も本当に1,000年以上の時間を感じさせないような人間と人間の心の出会いというのやっぱり「万葉集」はありますよね。
鵜飼いの場合は庶民もしますので。
ですから家持も庶民の心に触れたんだろうと。
それを私たちがまた触れる事ができたという事だと。
まさに体験されたわけですがその他にもいろんな事が今日はお話して頂く時間ありませんけど体験されるんでしょうね万葉の心を。
触れる程度ですね。
そのままじゃありませんから万葉の人たちの持っている気持ちとそれから私が地方でもって感じるような心というのを何とか結び付けていけたらいいなというふうには考えております。
いわばフィールドワークと体験型ってとても楽しそうですね。
皆さんどうぞラジオの方もお聴き下さいませ。
今日は国文学者藤原茂樹さんをお迎えして興味深いお話を伺いました。
どうもありがとうございました。
では小島さん来月もどうぞよろしくお願い致します。
「NHK短歌」時間でございます。
ご機嫌よう。
2014/03/02(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「顔」[字]

選者は小島ゆかりさん。ゲストは国文学者の藤原茂樹さん。藤原さんは、万葉集の舞台となった土地を実際に歩き、動植物やモノから当時の人々の心を探ろうとしている。

詳細情報
番組内容
選者は、小島ゆかりさん。ゲストは、国文学者の藤原茂樹さん。藤原さんは、万葉集の舞台となった土地を実際に歩き、動植物やモノから当時の人々の心を探ろうとしている。題「顔」。【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】藤原茂樹,小島ゆかり,【司会】濱中博久

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0×0808)
EventID:15788(0x3DAC)