Eテレセレクション・アーカイブス「ETV特集 ひとりと一匹たち 多摩川」 2014.03.16

(中野)・「りんごの花ほころび川面にかすみたち」・「君なき里にも春は忍び寄りぬ」・「君なき里にも春は忍び寄りぬ」
(中野)ローラ!ローラちゃん。
そこに入ってるの?ローラ!おいで。
(小西修)ここにですねおじさんがいたんですよ。
去年の台風で飼い猫と一緒に流された方なんですけど。
飼い猫3匹いまして2匹の猫と一緒に流された所です。
(大森淳郎)ここにお住まいだった?そうなんです。
随分ね…。
もうお年も多いしさみしがってて。
猫を大切にかわいがってたんですけど。
親子の猫とあと目の不自由な猫といたんですけども流されてね亡くなったんですね。

おととし9月台風9号が関東地方を直撃しました。
多摩川の下流域では身元不明の男性4人の遺体が発見されています。
河川敷に暮らす人たちだったと思われます
この橋の下でミエコと暮らしていたおじさんも姿を消しました。
台風9号で何人が犠牲になったのかその数さえも正確には分かってはいません
私は不思議な気持ちにとらわれました。
まるで彼らが初めからどこにもいなかったかのようです
一体多摩川にはどんな人たちが暮らしているのか私はずっと気になっていました。
やがて彼らとのつきあいが長い小西さんを知り一緒に多摩川を歩いてみる事にしたのです
カンタ君とかねあとヨウコでしょ。
ヨウコにタラコにスジコなんですよ。
これ名前は小西さんが付けたんですか?いえこれはホームレスさんが付けてるんですよ。
多摩川の猫は大抵河川敷のおじさんたちから餌をもらっています。
猫とつきあう事は同時におじさんたちとつきあう事です。
小西さんは行きずりの猫は撮りません。
おじさんたちに話を聞きながら一匹一匹の運命を知りいとおしいと思った瞬間にシャッターを切るのだと言います
思いを込めてこっちも対面していると猫の方が「撮っていいよ」って言ってくれたような気がする時があるんですねたまに。
そういう時には自分が思ったような写真が撮れるんですね。
いるかもしれないですね?行ってみましょうかとりあえず。
東京で暮らす私にとって多摩川は時折土手を散歩する場所でした。
河川敷に並ぶテント小屋が見えても今までそこに近づこうとはしませんでした。
何かバリアーのようなものを感じていました
私が小西さんに手を引かれるようにして河川敷の奧に分け入ったのは去年の秋の事でした
正直に言えば初めはおっかなびっくりだったのです
こんにちは。
(犬のほえる声)アッコちゃんはいますか?
(佐藤晋治)アッコちゃんいますよ。
そこにいたでしょ今。
あれいたっけか?アッコはいる。
ただピーターがいなくなっちゃったんですよ。
1匹だけで今クシュンクシュンってくしゃみしちゃってるの。
薬あげましょうじゃあ。
餌に混ぜて食べさせて下さい。
小西さんがこの日訪ねたのはもう3年のつきあいになるおじさんの所でした
佐藤晋治さんは16匹の猫と1匹の犬と暮らしていました
サクラ食べなよ。
もうないよ。
ほら。
もうないんだからねこれで。
おしまい。
ほらサクラ食べよ。
もうないよ。
こんなに猫が増えたのは番犬としてもらってきた犬のモモが段ボール箱に捨てられていた子猫をくわえてきて自分のおっぱいで育てたのが始まりだったそうです
ウメおいで。
おいでおいで。
この子を私のワンコがくわえてねそれで連れて。
もうむしゃぶってましたよこの子は。
おっぱい。
犬がこの子を連れてきたんですか?そうですよ。
これくわえてきたんですよ。
とにかくこれおっぱい見た時にはね私はびっくりしましたよ。
もう愛情を。
今まで自分の人生の中でなかったものをねこの自分の目で見てね驚きましたよ。
驚いたなんてもんじゃないですよね。
自分が情けなくなっちゃったよね。
自分は家族は捨てるわね。
この子たち捨てられたのまた拾ってきてうちのワンコが必死になってこの子を子育てしたっていう事は大したもんですよね。
立派ですよ。
感動。
自分が寂しさにねそういう体験しちゃったもんですから。
でもやっぱり自分も家族を捨てちゃって。
まあ捨てられたのかな?
佐藤さんがここに暮らすようになったのは6年前の事です。
人を使って建設の仕事をしていましたがバブル崩壊後仕事を失いその後家族とも別れました。
自暴自棄になっていました
そうですよこれ。
これそうですよ。
これ首掛けてね。
ここへ引っ掛けてね。
これ当時生木だったんですよね。
ここに椅子を載っけてこれを首へ抱えてねここへ入れようとした。
だから何が何だか分かんない。
死のうとかそういうんじゃないんだよね。
分かんないけどもやっぱり疲れてきたんでしょうね。
当時佐藤さんはここで傷ついたカラスのひなを保護していました
首をつろうとする佐藤さんを救ったのがそのカラスと猫のウメでした
この辺はつっつくわねそれで離さないんですよ。
これが痛くてね。
それで目が覚めたっていうか。
それで猫がね子猫がねちょうどサクラとウメですよ。
ここへ来てかくんですよね。
それで痛くてね。
何をやってんだろうって俺は。
ここに椅子があってこれで…。
そういう時ありましたよね。
やっぱりこういう生活ですから。
何で私がこういう生活しなきゃいけないのかなと思ったけど。
もうしょうがないですよね。
自業自得で。
努力がないからこういう事になっちゃった。
だからしょうがないですよ。
なんとか…。
なんとか復帰したいなと思ってますけどね。
これです。
まだぶら下がってますから。
私が佐藤さんの所を辞する頃にはもうバリアーのようなものは消えていました。
こんなふうに私は河川敷を歩き始めたのです
トントン!どうした?線香代わりに。
このトントンとかこれからどうなっちゃいますかね?だから愛護センターとかねそういう場所に行くと殺処分になりますのでそれだけは避けたいですよね。
なんとかいい方法考えないと。
この犬どうなっちゃうんでしょうか?今保健所に頼んであるの。
保健所?そこに駐在所があるんだけどそこに頼んであるから。
でもそしたら殺されちゃうんじゃないですか?そう。
飼う人いないから。
でもしょうがないわね。
かわいそうだけど。
トントンは元いた場所から34km下流の河川敷にいました。
飼い主が見つかるまでの間小西さんの知り合いのおじさんにトントンを一時的に預かってもらう事になったのです。
偶然が重なって私は中野さんを知る事になりました
今日こいつ引っ張って歩いてグルッと回ったんだけどくたびれたくたびれた。
引っ張ってグッグッて。
これをね逃がさないようにして下さい。
大丈夫。
逃げないよな?チッチ!チッチ!
中野さんは6匹の猫と暮らしていました。
いきなりだったので取材に応じてもらえるか心配だったのですが中野さんは挨拶に持っていった缶ビールを快く受け取ってくれました
(中野)チッチおいで!
(鳴き声)動物はかわいいでしょ?かわいいですね猫も犬もね。
俺はまして独りで生きてるもんだからね。
犬猫はね。
多摩川はもう長いんですか?来てからまだ2〜3年。
2年前だったかな?その前はどんな暮らしなさってたんですか?建築関係でずっと。
飯場とかそういう所で。
飯場でもないんだけどいろんな仕事やって。
建築関係の仕事やって。
どうしてそういうお仕事やって多摩川来る事になっちゃったんですか?結局雇ってもらえなくなったの。
体が動かなくなって一時期ね。
だからこういうの集めて…。
飯食ってるんだよね。
いろいろ福祉の方とかご相談とかなさらないんですか?まだやってない。
まだ俺一人で生きていける。
できるだけ世話にならないで生きていく…。
生きたいとは思ってるの。
できるだけ。
どうしてもできなくなった時に初めて福祉とか役所へ行って…。
生きようかなと思ってんだけど。
それまではねまだ目が見える。
最近目がやばいの。
医者にはかからないんですか?かかれないの。
銭がない。
銭持たなきゃ何もできないんですよ俺たちの世界。
中野さんはこの日空き缶集めの仕事を終えて一休みしているところでした。
ビール1本で眠くなってしまったようです
中野さんにはまたゆっくり話を聞こう。
トントンの縁で中野さんに会えてよかった。
そう思っていました
この人は小西さんご存じだった方ですか?この人はねお話した事はないんですけど何度かここで猫とかを撮影してる時に何度も姿を見かけた人なんでお顔だけはよく見てましたね。
ここに小屋があったんですか?その辺に段ボールが斜面にありましてねそこに寝ておられたんですよね。
この辺のスポンジ見た事あるんですよ。
恐らくマットだと思うんですけどねこれも使っておられたようです。
当時のあれだと思うんです。
マットですねこれは。
顔映らない方がいいですよね?はいもちろん。
3か月じゃまだ慣れないでしょ?覚悟?うん。
あそこで殺された方の事は全く知らないわけですか?不安ですね?「だから殺されていい」って事にはならないじゃないですか。
都心に近く景観にも恵まれた多摩川周辺には高級マンションが建ち並んでいます。
その河川敷に今30〜40代のホームレスが増えています。
青森県出身39歳の男性が声だけの取材に応じてくれました。
多摩川に暮らすようになったのは1年前の事だと言います
こっちの方がほっとするみたいなとこあるんですかね?もう一度普通の社会の暮らしに戻ろうっていう気持ちはもうないんですか?
(サイレン)
ある日の取材の途中でした。
河原で事件があったようです
(サイレン)
飛び降り自殺でした
後日警察に聞いてみると亡くなったのは64歳無職の男性でした。
遺書はなく動機は不明です。
この時以外にも多摩川沿いを歩いていて河原に新しい花が置かれているのを幾度か目にしました。
そこで誰かが自ら命を絶ったのでした
多摩川に暮らすようになった人たちとそこで命を絶った人たち。
その間には僅かな距離しかないのかもしれません
ユズ!ユズ!よく食べますね?食べるなんてもんじゃないですよ。
半端じゃないですよ。
戦争だよ。
戦争だ食べ物。
いや〜もう半端じゃないですね。
食欲倍増ですよね。
アッコ!ほらリンダ!おいで。
まあ半端じゃないこれじゃ。
この猫の傷は痛そうですね?蚊にやられて自分でこれやっちゃってね。
あっここありましたね。
ええ。
私は大体こういう方に断ってねもらってますので。
もらえるとこはもらって。
「くれない」って言うとこはやっぱり入らないよねくれないですから。
これで朝までやって一日いくらぐらいになります?60kgまでいかないですよ。
30kgぐらいじゃないですかね。
30kg。
お金にすると?3,000円ぐらいですかね。
3,000円ちょいか?3,000円ぐらいですね。
今100円安いですからね。
お金というよりも猫の餌が心配だからね。
アルミの空き缶は同じ缶に再加工されるほか自動車や家電製品の部品になります。
世界金融危機が起こる前までは1kg170円前後で売れたのですが去年10月下旬には100円ほどにまで下がっていました。
私は取材を始めるまではグローバル化も金融危機も河川敷に暮らす人たちには関係ないだろうと思っていました。
とんでもない間違いでした。
今世界不況は佐藤さんたちの生活を直撃しています
そこ段差が危ないですから気を付けて下さい。
モモただいま。
モモただいま。
ただいま。
はいはい。
いいんだよ。
はいはい。
ああいたいた。
はいただいま。
ああ猫なめてあげてる。
傷ついてる所をペロペロなめてるんですよ。
こういう優しいね心を持ってるんですよ。
佐藤さんは福島県に生まれ育ちました。
両親の離婚を機に14歳で母親と上京。
定時制高校を中退して鉄工所や建設現場で働いてきました。
母は既に亡く失業してからは妻と一人娘とも別れました
こんな感動的な事ないですよ。
だから一生懸命やってんですよ。
・「いつまでも絶えることなく友だちでいよう」・「明日の日を夢みて希望の道を」・「空を飛ぶ鳥のように自由に生きる」・「今日の日はさようならまた会う日まで」・「信じあうよろこびを大切にしよう」・「今日の日はさようならまた会う日まで」・「また会う日まで」
小西さんの妻美智子さんはおじさんたちと協力しながら19年間一日も欠かさず河川敷の猫を世話してきました
この日1匹の猫がいつもと違う様子でした
(美智子)チャアカチャアカ!チャアカチャアカ!チャアカ大丈夫か?チャアカ。
呼吸が荒いですよね。
呼吸がすごく荒いです。
そしてかなり痩せましたね。
こういう呼吸は普通しませんから猫の場合は。
だからもうかなり…。
チャアカの飼い主はおととしの台風で行方不明になりました。
以来美智子さんが世話をしてきました
ここどんなふうに小屋建ってたんですか?そこに看板ありますよね。
その真後ろ辺りに3軒ず〜っとあったんですよ。
台風はこの場所にあった3軒の小屋を押し流しました。
3人のおじさんは行方不明のままです。
数日後おじさんたちが飼っていた7匹の猫のうち3匹が帰ってきました。
そのリーダーがチャアカでした
チャアカ大丈夫か?チャアカ。
トッチトッチ!おいで。
帰ってきた3匹のうち1匹は間もなく死に以来チャアカとこのトッチが寄り添うように生きてきました
トッチ!
(鳴き声)ニャーって鳴いてる。
今2匹でくっついてねいつもいるんですよ離れないで。
それまではそんな仲のいい猫同士じゃなかったのにああいう大きなあれに遭ったら2匹で今は一緒に。
かわいがられてたんでしょうね。
ええそうですね。
何だかんだ言いながらもかわいがってましたよ。
「トラ!チャアカ!」とか言いながらね。
「こいつはよく食う」とかねよくそういう会話を思い出しますけどね。
でもホームレスさんも寂しがり屋ですからねやっぱり独りで暮らしてると捨てられてる動物見てねやっぱり何かこう自分のような気がするんじゃないですか?亡くなった方々はどういう方々でした?そうですね。
みんな気持ち的には明るい方たちですよね。
やっぱり仕事を見つけようという気持ちはすごくあった方たちでしたよ。
だから缶拾いとかはね一応生活していかなきゃいけないから缶拾いとかいろいろ集めてお金に換えられるものそれはやってらっしゃったけど。
でもやっぱりこういう所から抜け出したいという事はおっしゃってました。
こうやって今はいてもこの子も死んでいけば誰も知りませんからね。
こんな所でホームレスさんが暮らしてて猫たちがいたなんて事は何もなかったような感じで過ぎていきますからね。
名もない人たち名もない猫たちがこうやって何の因果でこんな生活をさせられてるのか知らないけど。
せめてね記録に残してあげたいと思う時ありますよ。
同じ人間だし。
猫もね。
(美智子)チャアカ。
ねえ。
明日もあさっても生きなきゃ。
ねえチャアカ。
いなくなると寂しいよチャアカ。
チャアカ。
佐藤さんが2日がかりで集めた空き缶を売りに行きます
アルミ缶の相場は下がり続けていました。
佐藤さんは限界を感じハローワークに出向きましたが仕事を見つける事はできませんでした。
つてをたどってタクシー会社にも電話してみましたが連帯保証人が2人必要だと言われました。
とても無理な話でした。
当面空き缶集めを続けるしかありません
2回。
2回でないと。
50kgぐらいか?ほら!こんなもんだね。
何kgぐらいありますか?50ちょいですね。
56ぐらいか。
ここだから。
567…。
まだこれ以上下がるんですか?こうです。
キロいくらですか?50円です。
2,950円。
もうやってらんない。
これが野菜入ってない…これ入ってる。
(店員)726円頂きます。
もう一缶買っていくか。
これも。
あ〜あ疲れましたよ。
今何時だろ?
(犬の鳴き声)はいはいじゃあはい。
首もんでくれって。
首もんでくれってもうほんと生意気なんだからお前は。
トントンと中野さんの別れの日が来ました。
新しい飼い主が見つかったのです。
この日動物愛護の活動をしている小西さんの仲間がトントンを迎えに来ました
ここへ置いとこう。
多分ね2時ぐらいに帰ってくるかなと思う。
分かんない。
小西さんは中野さんが空き缶集めに行ってる間にトントンを連れ出そうと決めていました。
中野さんがトントンを離そうとしないかもしれないと心配したからでした
トントンは老人介護施設で飼われる事になりました。
人懐こいトントンの事です。
きっとお年寄りたちの人気者になるはずです
トントンを見送って戻ってみると中野さんは既に空き缶集めから帰っていました
ああおじさんこんにちは。
ああどうも。
ちょうどタッチの差で今トントンを。
あああれしてくれたんだ。
帰ってきたらいなかったからさ心配しちゃったよ。
あそこ貼り紙読みました?まだ読んでない。
食事を作ろうかと思ってこういうの買ってきたの。
少し分けてやろうと思ったらいないんだもん。
あ〜トントンのも買ってきたんだ?いや分までとは言わないけど。
これちょっと色悪いけど。
これ色悪いけどタマネギのスープなんです。
へえ〜!おじさん結構料理好きなんですか?料理するの結構好きですか?うん若い時からね結構食べるの自分で作ってたから。
おふくろが早くからいなかったから。
ちっちゃい時から兄弟が順番で飯炊きやってたもんだから。
俺も順番回ってきた。
お父さんは?親父もおふくろも早く死んだんだ。
兄貴が俺を育ててくれたのよ。
おふくろが小学校6年親父が中学3年かな。
あとは兄貴が俺を育ててくれたようなもんだよ。
一番上がまだその時に22〜23です。
22〜23までいかねえかな。
それでなんとか俺たち兄弟5人もいるのに。
全部で5人いたから。
あとの3人働いてない。
学校行ってんだよ。
ひどかったしさ。
地獄の生活。
今の方がいいぐらいですよ。
だって食う物ねえんだもん。
ほんとに芋の葉っぱの雑炊まで食ったよ。
冗談抜きにして。
ご兄弟は皆さんお元気ですか?知らねえ。
知らない。
ほんとに。
兄弟捜したら一人も見つからなかった。
一番上の兄貴のとこはおいっ子がいるんだけどそこ捜しに…会いに行ったらもう住所どこ行ったか分かんないの。
他の兄弟はもう俺が兄貴と連絡取ってる時から分かんなかったの。
むちゃくちゃうちの兄弟。
全員行方不明。
遠い昔の物語ですよ。
もう20年ぐらい前から誰も分かんなくなった。
自己責任という言い方があります。
私が多摩川で出会ったおじさんたちは大抵ここに住むようになったのは自分のせいだと語りました。
でも話を聞いてみれば皆恵まれない境遇を懸命に生きてきたのです。
そうなのに自己責任という言葉はおじさんたち自身の心に刷り込まれてしまっているのでした
佐藤さんの小屋の隣にあるテントがもう3か月も空いたままになっていました
この日国土交通省から委託された解体業者がテントの撤去作業に来ていました
ここへ新聞紙なんか見れば分かるけどもこの中でうんちしてねおしっこはペットボトルにして。
向こうの方にありましたよペットボトル。
テントの持ち主は中をごみだらけにしたあげく他の場所に移っていきました。
佐藤さんとは反りが合わない人でした
でも作業員の一人がこんな暮らしをするぐらいなら首をつってしまった方がましだろうとつぶやいた時佐藤さんの顔色が変わりました
人はな事情があるの。
ねえ人は事情があって住んでるの。
すき好んでしてんじゃないの。
ねえ分かる?誰も好き勝手にこういう所に住んでるんじゃねえんだ。
住めるだけ立派なんだよ。
住んで生活できるって事は立派なんだよ。
ねえ!誰も好き勝手にね。
事情があって住んでんだ。
俺も立派に住んでんだよ今。
もう2003年から住んでんだ。
こうやって立派に住んでんじゃねえかよ。
それだけでも感心しろよ。
あんたが言うの間違ってるよ。
もう少し理解しなさいよ。
あんたら今そうやって土方やってるか分かんないけど仕事失ったらどうなるの?年金生活でやっていけるか?やっていけねえだろ?ホームレス状態だろうに。
それこそおめえ自殺しろなんて言うけどてめえが自殺しなきゃいけねえじゃねえか。
みんなそうだよ。
みんな大変なんだよこれからの日本は。
小西さん好きだったんですね?そうですね。
そこまでの…。
そこまでしてやっぱりグループを守るっていう猫は珍しいんじゃないですか。
だからず〜っとこの猫を追っかけてたんですよ。
もう夏の暑い時も冬の寒い時も。
3年間ぐらいですかね僕が撮ってたの。
どうしてそういう事するのかね。
寒い夜猫たちとおじさんたちが一つ小屋の中で温め合うように眠っています
しかしここも安心できる居場所ではありません
多摩川流域ではホームレス襲撃事件が続発しています。
そのうち2つの事件では被害者が死亡しています。
現場周辺のおじさんたちは不安な夜を過ごしています
ホームレスの方の襲撃事件続いてるじゃないですか。
おじさんもそういう怖い目に遭った事ありますか?あるよ。
何回もあるよ。
どんな目に遭いました?消火器かけられた。
うん息できなくなった。
相手は1人だったんですか?連中は4人。
もう完全な不良だね。
1人は背でかかった。
4人来てた。
それは苦しかったでしょう?いや〜苦しいなんてもんじゃないよ。
そういう時どんな気持ちしますか?どんな気持ちったって…。
警戒するしかないでしょ。
だからこれしかないよ。
入ってきたら。
何ですか?だからこれしかないって。
ここへ来たらこれで。
いつやられるか分かんないもん。
もう一回見せてもらえますか?金属バット。
いざとなったら?いざとじゃないよ。
ここへ入ってきておよそ分かるからさ。
これしかないもんだって。
いやしょうがねえって。
いや守れねえかも分かんねえけどさある程度。
だってしょうがねえもん。
連続襲撃事件の一部については容疑者が逮捕されました。
36歳の軽い知的障害がある男性でした。
男性は7年前東京でホームレスが中学生らに殺害される事件があった時職場の上司に「ホームレスは悪い人なのか」と尋ねていたそうです
やりきれない思いです
冷たくないですか?いやいや冷たいもなんも。
カミソリが切れないから痛くて痛くて。

(「いとしのクレメンタイン」)駄目だね。
いやいや。
何が嫌だって昔の中学時代の全部好きなんだけどさ思い出せないんですよ。
いつごろから好きだったんですか?もう親父にね小学校3年ごろからかな東京に出稼ぎに来てたからその時にハーモニカ欲しいって。
なかなか送ってこない。
でもね送ってきたんですよミヤタのハーモニカ。
お父さんが?ええ小学校3年か4年ぐらいの時です。
それからず〜っとね自己流で吹いてたんですよ。
だからハーモニカだけはなんとか。
でももう歯がないからね駄目なんですよ。
リズムから何からできないんですよね。

(「夕焼け小焼け」)こんなもんですよ。
(券売機)「ただいま発券中です。
ありがとうございます。
お釣り切符をお取り下さい」。
じゃあいってきます。
いってらっしゃい!頑張って下さい。
(中野)いるんですよ商売敵が。
みんなお正月前必死なんじゃないですか?みんな必死ですよ。
あっいたいた。
ああ大きくなって。
かわいいね。
ちっちゃい頃から知ってるもんね。
小西さんと一緒に多摩川を歩く日々も3か月目に入っていました。
私は随分たくさんのおじさんたちに出会いました。
いろいろな猫を知りました
小西さんほどではないにしろ私には河川敷の猫が何だかとてもいとおしく思えるようになっていました
壊れたおもちゃみたいに猫を捨てていく社会はおじさんたちの目に一体どう映っているのでしょうか
トッチ!チャアカいるか?チャアカは?チャアカいるか?
(鳴き声)チャアカは?チャアカいないの?チャアカ!チャアカはどうした?トッチ。
チャアカ!チャアカ!チャアカ!いないですね。
チャアカいないですね。
珍しい。
普通出てくるんですよ餌の時だから。
トッチ!チャアカは?
(鳴き声)チャアカ!あっ嫌だ!嫌だ…。
嫌だ…。
チャアカ死んでる。
チャアカ死んでる。
嫌だ嫌だもう…。
嫌だチャアカ。
あそこにいます。
あそこに。
チャアカが…。
チャアカチャアカ…。
チャアカ悪かったね。
苦しかったか?チャアカ悪かった。
チャアカチャアカ…。
悪かったね。
1人で死んじゃった。
ねえごめんね。
寂しかったろう?ねえ。
あんまりいい事なかったね生きててね。
この子もこんな所に捨てられて。
ここで生きていくしかなかったから。
ほんとかわいそうな子でしたよね。
台風の時も流されてひどい目に遭って。
でも一生懸命ここに戻ってきたんですからね。
でも最後までよく頑張りました。
ねえよかったね大森さんに撮ってもらって。
生きてたっていう証拠だよチャアカが。
チャアカ明日埋めてあげます。
今日は無理なんで。
(子猫の鳴き声)
ある日の取材の帰り道河川敷脇の公園で1匹の子猫に出会いました
(子猫の鳴き声)
捨てられてしまったのでしょう。
助けを求めるように私に身をすり寄せてきます
(子猫の鳴き声)
どうしたらいいか思案に暮れていた時公園に水をくみに来ていたホームレスのおじさんに会いました。
以前話を聞いた事がある人でした
ハハハハハ。
おいで。
よしよしよし。
お前連れていってやろうか。
もう一人のおじさんが来ました。
おじさんたちは2人で相談し子猫を連れて帰る事にしました
おじさん育てます?育てる。
ハコ。
お前の友達連れてきたからな。
面倒見てくれよ。
あれも捨てられたの。
お前の友達だ。
こっちも捨てられてたんですか?これも捨てられてた。
約1か月になったから太ったけど…。
歩くのもやっとだった。
おなかすいてたんですね。
随分食い込みいいな。
お前。
きっとおじさんたちは優しすぎるのです。
優しすぎてこの社会になじめなかったのです。
河川敷を歩きながら私に見えてきたのは効率を追い求め競争ばかりで息苦しくなってしまった私たちの社会の姿そのものだったのです
こんにちは。
お買い物ですか?とうとう今年も終わりですね。
片目がおかしくなっちゃった。
目が?お医者さんに行った方がいいかもしれませんね。
行くには金もねえし…。
すいません。
熱っぽくて。
そうですか。
入らせてもらう。
はい。
お弁当買ってきて。
食う物だけは買ってこないと…。
ずっとここんところ風邪っぽくて…。
鼻水出てますね。
水っぱなは出るし…。
じゃあおじさんよいお年を。
よいお年を。
今年はいろいろお世話になりました。
こちらこそ。
来年はどんな年にしたいですか?そりゃ分かんねえや。
飯食えればそれでいいや。
飯食うだけが大事。
佐藤さん明けましておめでとうございます。
明けましておめでとうございます。
5時ちょいまで起きてたんだけどね。
佐藤さん今年はどんな年にしたいですか?脱出したいとは思うんだけどなかなかやっぱり…。
まあ今行ってる所結局4月か5月あって6月まであるかないかそういう感じの所ですから。
あとは何て言うんですかお金をためて次の段階のステップ踏んでやるほかないですね。
よし!あ〜!よ〜し!浅いからね。
本当は終わりにしたかったんですけどね。
しかたないですね。
やむをえず…。
しょうがないですよね。
でも何となく寂しいね。
猫と別れるのがね。
あいつこんな小さい時から…産まれた時からいたからさ。
何となく寂しい。

(ラジオ)それじゃ。
どうも。
中野さんお元気で。
ありがとうございました。
2014/03/16(日) 00:00〜01:30
NHKEテレ1大阪
Eテレセレクション・アーカイブス「ETV特集 ひとりと一匹たち 多摩川」[字]

ETV特集「ひとりと一匹たち 多摩川・河川敷の物語」(2009年放送)をアンコール放送する。

詳細情報
番組内容
ETV特集「ひとりと一匹たち 多摩川・河川敷の物語」(2009年放送)をアンコール放送する。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸

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