テレビ朝日開局55周年記念 2夜連続ドラマスペシャル「宮本武蔵」第一夜 2014.03.15

吉岡清十郎先生に試合を願いたい。
帰れ帰れ。
先生はお留守じゃ。
御舎弟の伝七郎殿も京にはおらん。
おう帰れ。
帰れ!
(植田良平)待て待て。
(植田)何流でどなたを師にしておられる?自分にはまだこれといった師はなく流派もありません。
ですが幼少の頃父について十手術を学びました。
それ以後は村に来る兵法者について誰彼となく道を問いそのあとは郷里を出樹木や山霊を師として勉強しました。
(門人たちの笑い声)死骸の引き取り人はあるのか?死骸の儀ならば万一の場合は鳥辺山にお捨てくださろうとも加茂川に芥と共にお流しくださろうとも決してお恨みには存じません。
(植田)よしならば我らが相手をしよう。
やあっ!次は私だ!大丈夫か!?ああっ!やあーっ!うっ…!うおーっ!やあっ!《なんだ…なんなんだ…この男は…》お名前は?作州吉野郷宮本村牢人…。
宮本武蔵。
(本位田又八)たけぞう…。
(床を蹴る音)
(門人たち)ああ…!
時は1600年10月21日
この日日本は東と西の二つに分かれて戦っていた
この戦いに勝った者が日本を手に入れる
俗に言う天下分け目の戦い
関ヶ原の戦いである
うわあーっ!ああっ!うっ!うわあーっ!なんじゃ?ありゃ…。
うっ!うわっ!うわあぁーっ!うっ…あぁ…!ああっ!小次郎!小次郎…?どけ!
立身出世を夢見て足軽となった「新免たけぞう」
後の宮本武蔵のいた西軍は惨敗したのである
負けた…。
畜生…。
畜生…。
畜生!
(又八)たけぞ〜う…。
たけぞう…。
又八!たけぞう…。
ああ痛え…痛い痛い…。
ほらしっかりせえ。
痛い痛い痛い痛い…。
どうした?斬られたか?ううん。
なんじゃ?肩貸せ肩貸せ肩貸せ…。
大将首とって秀吉のようになっちゃるつもりじゃったのにこのざまじゃ…。
俺だってそうじゃ。
天下とって村の奴ら見返してやるつもりじゃった。
たけぞう…。
ん?わしが死んだらお通を頼む。
お通?誰なんだ?それ。
わしの許嫁じゃ。
七宝寺に住んどるみなしごじゃがでぇれぇかわいい。
ああ…死ぬ前にもういっぺんお通に会いたかった…。
お通…。
あっ!何をするんじゃ!下り腹ぐらいで人が死ねるわけなかろうが!しっかりせえあほ!待て。
下り腹は本当じゃ。
だったらひねり出せ。
なんじゃこの雨は!知るか…。
たけぞう…肩貸せ肩!
(笛)
(笛)
(お杉)せがれの又八は本位田家にとって大事な大事な跡取り。
どうか無事に戻ってきますように。
そいで又八を戦に連れてったあくぞうは地獄に落ちますように!いたぞー!追え!待て!待て!
(笛)
(お杉)お通。
おばば様。
本位田家の嫁御がそぎゃんとこで何しよる?すみません…。
うおっ!うわあ!
(お杉)とにかく世間がうるせえしあんた七宝寺から本位田家のほうに身を移してもらいたいんじゃが。
又八さんが帰ってからでは…。
そりゃあいけん。
(青木丹左衛門)宮本村の者か?
(お杉)左様でござりますが…。
それがし青木丹左衛門と申す。
姫路城の主池田輝政公の命をおびて残党狩りをしていたところ宮本村のたけぞうと申す奴が木戸を破って逃げおった。
あくぞうが?はあ〜図々しくもまだ生きておったか…。
あくぞう?たけぞうの事じゃ。
お前まだ会うた事がないじゃろう。
はい。
さほどに村でもよく言わぬ男か?そりゃああなた様もう手のつけられん乱暴者でござりましてのう。
(お杉)ある時有馬なにがしかいう兵法者と試合をしたんじゃがすでに勝負は決まっておるのに樫の棒でいたぶり殺したんじゃ。
まるで飢えた獣のようじゃった…。
俺は強い!強いんじゃ!この世で俺より強え奴はおらんのじゃ!
(又八)わしとたけぞうより強え奴はおらんのじゃ!又八!いててて…!おふくろ耳がちぎれる!おふくろ耳がちぎれる!
(お杉)来い!
(お杉の声)それ以来村の者は誰もあくぞうに近づかんようになった。
せがれの又八があんな野蛮人と付き合うたためわしらまでどれほど泣きを見た事やら…。
関ヶ原もせがれが好んで行ったんじゃのうてあくぞうに騙されたのでござりまする。
ではおばばはたけぞうと共に関ヶ原へ戦に出た本位田又八の母か?はい杉と申します。
はぁ…気の毒に。
そちの息子は関ヶ原で死んだらしいな。
まさか…。
又八が?ほんまやろか?ほんまやろか?こっちだ!いたぞー!いくぞ!又八!又八は!?しかし悔やむなおばば。
息子の敵はとってやる!又八…又八…。
又八!又八!又八…!おばば様!?
(祭り囃子)
(村人たち)わっしょい!わっしょい!わっしょい!
(権叔父)お通!あっ!どこへ行くんなあ?権叔父様あの…本位田のおばば様が倒れて…。
なんと!お医者様を…。
それは大変じゃ!
(村人たちの悲鳴)
(悲鳴)女を人質にとるとはどこまでも見下げた男だな。
たけぞう!たけぞう…?たけぞうお通を離せ!お通…?
(悲鳴)構わぬかかれ!うおーっ!うおーっ!
(木刀で殴る音)うっ!うっ!うっ…!おりゃあ!おらあ!やあっ!観念しろ!俺は本位田のおばばに一言告げにきただけじゃ!おばばに会わせろ!何!?
(沢庵)おお会わせてやるぞ。
会わせてやるからお通を離せ。
沢庵様…。
どうした?おばばに一言告げにきただけだと言ったのは嘘か?これ以上の殺生は無意味じゃろ。
さあ…。
約束だぞ。
ああ約束だ。
さあ…。
て…てめえ騙したな!ああ…!くっ…!捕まえないとは言ってないさ。
おばばに会わせてやる。
うわっ!この腐れ坊主が!うわっ!ああっ!おい!ざまあみい!おばば…。
あくぞうおぬしは又八だけ死なせて臆病風に吹かれおめおめと一人で帰ってきたんじゃろう?違う!おのれのせいで本位田家は大事な跡取りを失うたんじゃ!おばば又八は生きとる。
生きとる?おう生きとる。
俺はそれをおばばに伝えるために帰ってきたんじゃ。
それがほんまなら又八はどこにおる?なぜお前だけが帰ってきたんじゃ!又八を返せ!又八はどこじゃ!言えんのか?言えんのじゃろう。
見え透いた嘘じゃからのう。
嘘じゃねえ!又八は…女と他国で暮らしとる。
嘘じゃ。
大嘘じゃ。
ほんまじゃ!又八の無事をおばばに告げる事が自分の務めじゃ。
友達の信義じゃ。
そう思うたからこそ残党狩りに追われながらも無理に山木戸を越え村に帰ってきたんじゃ。
なら女の名前言うてみい。
どこへおる何いう女じゃ!関ヶ原の不破山におるお甲いう女じゃ。
朱実いう連れ子もおった。
(お杉)嘘じゃ!大嘘じゃ!あくぞうの言う事など誰が信じるか!お前なんかカラスに目ん玉ほじくられて死んでしまえ!おばば…。

(笛)
(せき)
(笛)
(雷鳴)
(笑い声)たとえ又八が死んどっても他に女がおってもお通お前は又八の嫁じゃ。
二心はなかろうな?
(沢庵)たけぞう。
(カラスの鳴き声)不憫。
返事をする元気も失せたのか?たけぞう。
たけぞう!なんじゃこの腐れ坊主。
エセ坊主の沢庵。
早う俺の首をはねえ!さっさとはねやがれ!惜しむべし惜しむべし。
おぬしせっかく人と生まれながら猪狼に等しい野生のまま一歩も人間らしゅう至らぬ間にここに終わろうとする。
うるせえ黙れ!聞けよたけぞう。
おぬしは自分の腕力に思い上がっていたろうが。
世の中には自分ほど強い人間はいないと慢じていたろうが。
それがどうじゃそのざまは。
俺は腕で貴様に負けたんじゃねえ。
たけぞうもう一晩そこで考えろ。
人間らしく生きる意味を。
そのうえで首をはねてやろう。
沢庵!沢庵和尚!助けてくれ。
のう?俺は今から生まれ直したい。
死にとうない。
沢庵和尚後生だ!のう?助けてくれ!いかん。
何事もやり直しが出来ぬのが人生だ。
世の中の事全て真剣勝負じゃ。
不憫じゃが沢庵はその縄を解いてはやれん。
せめて死に顔の見苦しくないように念仏でも唱えて静かに生死の境を噛み締めておくがよい。
待てこの腐れ坊主!おい!沢庵!
(笑い声)沢庵!たけぞうさん…。
たけぞうさん。
お通…。
又八さんの事ほんまですか?お甲いう女と他国で暮らしとる。
悔しい…。
悔しい…悔しい…。
悔しい!悔しい!やめえ!あほな事すな!私はもうこの村にはおられません。
たけぞうさん私を連れてって。
一緒に行ってくれるならたけぞうさんを助けます。
助ける…。
辛え。
あっすいません。
(権叔父)おばば!たけぞうめが逃げた。
何?お通も…おらん。
なんと!?
(役人)曲者だ!曲者!うぉー!来い!はい。
たけぞうさん追っ手が…追いつかれます!すまん!いたぞ!ハァ…ハァ…ハァ…。
ハァ…。
すみませんこれしかのうて…。
(お腹の鳴る音)いえいいんです。
食え。
はい。
今夜はここで休もう。
ここで…ですか?あ?どこでも同じや。
(いびき)はっ!ハァ…ハァ…ハァ…。

(笛)
(笛)あほ!見つかりてえんか!あっ…ごごめんなさい。
野宿初めてで眠れなくて…。
ここで別れよう。
足手まといになるだけじゃ。
それでは約束が違います!約束?一緒に行ってくれるならたけぞうさんを助けます。
おう一緒に行く。
だから早う…早う助けてくれ。
約束ですよ。
おう…約束する。
だから早う…。
いきますよ。
あほ!助ける代わりに連れてってくれるという約束です。
もう村から連れ出したじゃねえか。
連れてってとは言いましたがどこまでとは言ってません。
そ…そんな屁理屈…。
約束を違えるのですか?武士の道に背くのですか?
(役人)いたぞ!世話かけやがって!首を打てば田十枚だぞ。
やるか…。
後ろ向け。
うおー!お通…。
お通!おーい!
(せき)ハァ…ハァ…ハァ…。
ハァ…ハァ…ハァ…。
ん?さ…寒い…。
ああ…。
(青木)まだ見つからんのか?
(兵士)川岸を捜してますがどこまで流されたのやら…。
あるいはもう死んでいるのかもしれません。
ならば骸を捜してこい!
(一同)はっ!行くぞ!
(枯れ枝を踏む音)国境見てきた。
木戸を破るのは難しそうじゃ。
山を下りて医者行こう。
3日も熱が下がらん。
ここには薬も食うもんもねえ。
このままじゃ死んじまうわ。
山を下りても殺されてしまいます。
たけぞうさん私をここへ置いていってください。
あなた一人なら…逃げられます。
ここまで連れてきてくれてありがとう。
生まれて初めて自由になった気がしました。
でも約束が…。
あなたは約束を果たしました。
おおたけぞうやっと来たか。
おぬしも食べるか?う〜んうまいのう。
酒はどうじゃ?お通はどうした?沢庵…。
助けてくれ。
俺じゃあどうにもならん。
このままじゃお通が死んじまう。
だから…。
頼む助けてくれ。
お通を助けるという事はお前が捕らわれるという事じゃぞ。
構わねえ。
俺はそれでも構わん。
だからお通を…お通を早く助けてくれ…のう。
頼む。
お願いします!少しは人間に近づいたか。
(池田輝政)新免たけぞうとやら。
そちがここへ引かれてきたのも何かの縁。
しかしそのほうの所業…不埒であるぞ!沢庵坊。
はっ!この先の処分はおこと次第じゃ。
愚僧もそのつもりでおざる。
(池田)うむ。
ハァ…。
(沢庵)たけぞう。
愚僧が勘弁のなるまで幽閉を申しつける。
勘弁のなるまでか…。

(本阿弥光悦)お通さん加減はいかがかな?あっいかん。
そのままそのまま…。
ハハハ…しかしまあようまあここまで…。
光悦様妙秀尼様だいぶよくなりました。
もう少しすればたけぞうさんを捜しに旅立てるようになると思います。
でも沢庵和尚はそのたけぞうとやらの行方を教えてはくれないのですね?どのようにして捜すのです?わかりません。
でもこれからも行こうとする道は決まっている気がするのです。
(ハエの羽音)
(ハエの羽音)両手に物を持つ事左右共に自由には叶えがたし…。
皆の者わしは一族の敵たけぞうと嫁のお通を討つまでは何年でも巡礼をしてくるつもりじゃ。
留守中には分家の権叔父を家長とし田んぼや畑に草を生やすまいぞよ。
ええな皆の者!
(一同)へい。

(ハエの羽音)
(ハエの羽音)
(ハエの羽音)
(鍵を開ける音)
(池田)再び宮本村へ戻り郷士で終わるつもりか?流浪の望みでございます。
そうか。
彼に時服と路銀をやれ。
ご高恩沢庵からもありがたくお礼を申し上げます。
うむ。
若いうちは流浪もよかろう。
しかし何処へ参ろうとも身の生い立ちと郷土とは忘れぬよう以後姓も宮本と名乗るがよかろう。
うむ宮本と呼べ宮本と。
はっ!そう致します。
名も「たけぞう」よりは「むさし」と読まれたほうがよい。
暗黒蔵の胎内から今日こそ光明の世に生まれ変わった誕生の第一日。
全て新たになるのがよろしかろうと存じまするがいかがでござりましょうか?
(池田)うむうむ宮本武蔵か。
平戸左派盛広の作じゃ。
近う参れ。
(池田)大事にいたせ。
はっ!
(沢庵)流浪と言ったがその本心はどこにある?本心?
(沢庵)うむ。
本心は関ヶ原の時となんら変わらん。
立身出世だ。
だが今度は合戦ではなく剣の力でのし上がってやる。
剣の道で天下無双になれば徳川への仕官の道も開けるだろう。
いつかは柳生石舟斎のように一国一城の主になってやる。
野生の獣から人間になったと思えば今度はまた随分と人間臭くなったものよ。
まずその第一歩として京の吉岡清十郎を倒し俺の名を天下にとどろかせてやる。
宮本武蔵の名をか…。
ああ。
ハァ…。
また会おう。
また会おう。
西洞院西ノ辻に京の人々から剣術の家としてその名を知られる吉岡拳法流があった
足利家兵法指南役で足利将軍時代には天下一と言われていた
お寄りくださいませ。

(吉岡清十郎)あとでみんなまとめて遊んでやるから。
(女たちの歓声)
(朱実)清十郎様。
(清十郎)ん?煙草は近頃ご禁制じゃないですか?みんな隠れて吸うてるで。
朱実お前もどうや?
(せき)ハハハ…。
お前にはまだ早かったか。
吉岡清十郎先生に試合を願いたい。
(朱実)嫌。
どこへ行くのや?まあいてや。
母さんに叱られます。
お甲はあっちで藤次と仲ようしてる。
(朱実)お酒…お酒を持ってきます。
酒はええ。
四条河原の阿国歌舞伎へ行こう。

(とっくりが割れる音)他にも客がいたのか?あとで…。
のぞいてたのかい?この穀潰し。
穀潰しとはなんだ!亭主つかまえて穀潰しとは。
出会ってから百文の金だってお前さんが稼いできた事があるかい?私と朱実で稼いできたんじゃないか。
嫁と義理の娘に働かせて酒飲んで毎日ぶらぶらして…。
どう文句言う筋があるんだ!こんな泥水稼業やめてしまえ!やめたら明日からどうやって食ってくのさ!お城の石担ぎしても俺が食わしてみせる。
なんだ二人や三人の暮らしぐらい。
そんなに石担ぎがしたいなら自分だけここを出て一人暮らしでもなんでもすればいいさ。
お前さんは根が作州の田舎者。
そのほうが性に合ってるのかもしれないねえ。
無理にここにいてくれとは言いませんからさどうか嫌ならいつでもご遠慮なく。
畜生…畜生め…!なぜ…なぜ俺はたけぞうと一緒に村に帰らなかったのか…。
しっかりせんか!しっかりしろ!まだ若先生の居所はわからんのか!いや今手分けをして方々を捜してはいるんだが…。
あっ…!大丈夫か!?金も…仕事も…出世も出来ないのは…みんな…みんな!お甲のせいだ!あいつがいたから駄目なんだ!出ていくぞ俺は!一人で生きていくぞ!御免!御免御免御免!四条の吉岡の使いでござるが若先生と藤次殿が参っておりませぬか?知らぬ。
いやいや…お取り次ぎでもよろしい。
作州の武者修行の者道場へ立ち寄り門弟たちに立ち向かえる者は一人もなくすぐお帰り願いたいと。
作州の者じゃと?誰じゃそいつは。
宮本武蔵という牢人だ。
あ…?作州の宮本だって?たけぞう…!
(門人たちのどよめき)
(門人たちのどよめき)
(藤次)どうしたこの体は!
(植田)どうしただと…?貴様こそ今までどこで何をしていた!?若先生は?知らん!どこかに消えてしまわれた。
吉岡清十郎が来ないのであればこれ以上は無益!帰らせて頂く。
(又八)やっぱりそうだった。
あれはたけぞうだ。
畜生…!俺だって…俺だって!俺は強い。
次はどうする?宝蔵院の日観か?柳生の石舟斎か?
(鈴の音)朱実?たけぞう?朱実どないした?危ないやないか。
《清十郎…》吉岡清十郎。
…なんや?それがしは作州牢人宮本武蔵。
試合を願いたい。
今はおなごを追わんならんさかい。
無理やな。
また同じ月の出る頃…。
ひと月後戌の刻三十三間堂に来い。
相手になってやる。
宮本武蔵…奴をこのまま野放しにしておいては我が吉岡道場の恥。
若!お待ちください!吉岡清十郎。
お前が女と遊んでる間に…。
俺はお前より…。
強くなってやる。
ハァハァ…。
おいどうした!すまないけど一刻ばかり休ませてくれ。
意気地のねえ野郎だな!畜生…たけぞうめ。
たけぞうに誘われて関ヶ原に行かなければ…。
誰か!頼む助けてくれ!
(お甲)朱実?誰だね?
(又八の声)俺はお甲とも会わずお通を嫁にし本位田家の当主となって人々がうらやむ身でいられたんだ。
ああ…どうやって生きていきゃあいいんだ。
うっ…!
(草薙天鬼)苦しいのか?
(草薙)薬だ。
飲め。
ありがとうございます。
見事な眺めだ。
武者修行ですか?ああ。
京に向かう途中だが後学のため諸国の地理築城を見学…。
ぐっ…!ああーっ!あ…!間者め!勝手に城内に入り込みおって!えっ…いやいや…。
こいつはただ絵を描いていただけで…。
城の地勢のご普請を写し取っておったかもしれん。
(工事目付)片づけておけ!えっ…。
(草薙)うっ…。
あっ!うわっ!ああ…!こ…これ…。
えっ?頼む…。
えっ?えっ?えっ…?えっ…?なんだろう?剣術の免許皆伝だ。
あいつ佐々木小次郎っていうのか。
かわいそうに修行の途中で…。

吉岡清十郎との試合をひと月後に控えた宮本武蔵は清十郎に勝つため奈良の宝蔵院へと向かっていた
(鐘)
(鐘)次!
(修行者たち)おう!
槍の宝蔵院と呼ばれ授業を受ける武芸者たちに死を招いても苦情は申し上げないと誓約を取るほど荒く激しい槍であった
あれが日観?
(修行者)いや彼は阿厳という高弟の一人で日観ではない。
だが大概な試合でも宝蔵院七足といわれる七人の弟子で間に合っているので師匠である日観が自身で立ち会うなどという例はまずない。
(修行者たち)うわああーっ!やあっ!うわーっ!たあっ!
(うめき声)次!次はおらんのか!?
(大坊主)そこもとは?いやそれがしは…どうぞ。
そこもとは?い…いずれまた…。
そちらの人は?いや気が冴えんので…。
おてまえはどうする?どうぞ。
どうぞとは?お願い申す。

(阿厳)おい!おらっ!うっ!ふん!いくぞ!待て!馬鹿よ阿厳坊の大たわけじゃ。
よーく見よ。
この相手ちと違うぞ。
その試合無駄じゃ。
何を言うか!よろしいか?おおーっ…たあっ!はっ!せいっ!せいっ!うらあっ!ぐっ…うわあーっ!
(阿厳)ああっ!お客。
は…?宮本武蔵と申されたの。
ええ。
御身は強すぎる。
あまりに強い。
いやそれほどでも…。
それじゃによってもっと弱くならにゃいかん。
は…?わしが菜畑におった時そばを通ったじゃろう?ええ。
その折わしのそばより九尺も飛びのいてそこを通りすぎた。
なぜあのような振る舞いをした?それはあんたが恐ろしい殺気で鍬で俺の足を横なぎにするような気がしたから。
それにあんた畑の土を堀りながら俺の隙探してたろ?あべこべじゃ。
あべこべ?お前が十間も先から歩いてくるとなお前のその殺気がわしの鍬の先にびりっと感じておった。
それほどにお前の一歩一歩には争気がある覇気がある。
もしあの時わしのそばを通った者がただの百姓かなんぞであったならばわしもただ鍬を持って菜を作る老いぼれに過ぎんであったろう。
あの殺気は影法師よ。
お前は自分の影法師に驚いて自分で飛びのいた。
ハハハ…!あんた宝蔵院の誰だ?わしか?わしは宝蔵院とは背中合わせの奥蔵院住持日観という者じゃ。
あんたが日観?宝蔵院の槍の師匠か?そうじゃ。
失礼した。
なら俺と試合をしてくれ。
お前と?せっかく宝蔵院を訪れたのなら宝蔵院の槍を一手でも見てみたい。
やめておけ。
いらぬ事じゃ。
なぜ?宝蔵院の槍がどんなものか今日の阿厳の技でお前は大概見たはずじゃ。
あれ以上何を見る必要がある?じゃがさらにもっと知りたくばこのわしを見ろ。
わしの目を見ろ。
ふん!柳生に行け。
石舟斎ならばお前に足りぬものを見せてくれるじゃろう。
(笑い声)
(赤壁八十馬)やあいい飲みっぷりですな。
ご一緒しても?どうぞ。
それがしは蒲生牢人の赤壁八十馬という者。
ご存じないか?塙団右衛門。
あれとは刎頸の友で共に他日を期している仲。
また今大坂城でのそうそうたるひと方の将薄田隼人兼相とはあの男が漂泊時代に共に諸国を歩いた事もある。
ところで貴公は?冨田流の開祖冨田入道勢源先生をご存じか?名だけは聞いておる。
その道統を受け中条流の一流をひらかれた無欲無私の大隠鐘捲自斎といわれる人は私の恩師でござる。
では貴公は剣術を?左様。
…して中条流でなんと仰せられるか?差し支えなくばご姓名を。
ご姓名を…。
お教えくだされ。
中条流免許皆伝…。
佐々木小次郎という者です。
えっ!?というのは冗…。
お見それ申して!佐々木小次郎殿と申せばとくより耳にしておるその道の達人。
(佐々木小次郎)よし…じっとしてろ。
いい子だいい子だ。
いいものを持っている。
都でもあまり見ない。
よい刀だな。
家に伝来のもので。
(吉岡伝七郎)あれを自由に扱えれば偉いが…。
(伝七郎)大太刀は見た目は伊達でええがそういう人物に限って逃げる時には刀を肩へ担ぐ奴や。
(笑い声)失礼やが貴公は何流を学ばれたか?よし…いけ。
中条流です。
つばめを斬り柳を斬り…一人で工夫してきました。
あなたは大坂ですか?いや京都やが柳生へ赴く途中や。
京都…京都ですか。
京都には吉岡清十郎という人がいるそうですが今も道場をやってますか?ぜひ一度は立ち合ってみたいと存じてますが。
もっぱら諸国の武芸者の噂ですがまず吉岡ももうおしまいだという事はよく聞く事ですね。
なるほど…。
この頃は天狗が多いそうやからそういう評判もあるやろうな。
ところで貴公は先ほどつばめを斬っていたと言っておったな。
ええ言いましたよ。
ではこの船の上で海鳥を斬り落とす事も容易であろう。
いやいや…。
そんな芸をやる気にはなりませんよ。
生兵法ということわざを知っているか?やれ中条流だのつばめを斬ったというほらはよせ。
よいか。
ほらを吹くなら相手を見て吹くんだな!私がほらを吹いてると?拙者吉岡清十郎の弟吉岡伝七郎という者や。
以後吉岡の悪評を言いふらすとただではおかんぞ。
この頃の田舎者は生意気でいかん。
伝七郎先生。
なんや?海鳥を斬ってお目にかけたらホラでない事になりますか?ああ。
ならば…。
斬りましょう。
伝七郎先生恐れ入ります。
海鳥を私の目の前へ呼び下ろしてください。
何羽でも斬ってみせましょう。
黙れ!海鳥を思いのまま呼び寄せられるもんなら誰でも斬れるわ!海は千万里刀は三尺。
そばへ来ないものは私には斬れませんよ。
出来ひんのやったら出来ませんと素直に謝れ。
それでは海鳥の代わりに別なものを斬ってご覧にいれましょう。
今日はこれくらいで勘弁してください。
おのれ…!貴様…!おっいたいた。
よし捕まえた。
捕まえた。
よーしよしよし…。
ほら遊ぶぞ遊ぶぞ。
よしそうだそうだ。
ほらいい風だ。
お通…。
お通!すまん…人違いだ。
この時代の天下一武芸者の頂点である柳生石舟斎宗厳
多くの武芸者が教えを乞おうまたは倒して名を上げようと柳生を訪れていたが当の石舟斎はすでに隠居
家人に稽古をつけるのは柳生四天王であった
(庄田喜左衛門)おらあ!腰を入れろ腰を!腕を伸ばせ!気合入れろ!太刀先ではない!腹!腹!腹!これを持って吉岡の小せがれの挨拶を受けてこい。
よいな?お通。
はい。
石舟斎殿は何か我々が茶事のお手前でも所望したように受け取っておられるらしい。
お望み申したのはご指南であるが…。
よくご承知でございます。
ですが近頃は風月を友にして余生をお送りあそばしてるお体何かにつけ茶事に託してものをおっしゃるのが癖なんでございます。
仕方がない。
ではいずれまた再遊の節にはぜひともお目にかかるとお伝えくだされ。
(石舟斎)あの菊は捨ててきたか?宿の女の子にあげました。
うむ…。
吉岡の小せがれ…伝七郎とかいう者あの菊を手にとって見たろうな?はい。
うむ…それで?そのまま突き戻しました。
枝の切り口を見たろうな?いえ別に…。
どうすれば石舟斎に会える…。
どうすれば吉岡清十郎に勝てる…?
(小茶)旦那はん。
(小茶)花お好き?花?おう好きだ。
じゃあ花瓶持ってくる。
ああ。
駄目だ旦那はん枝が長すぎる。
じゃあ持ってろ。
ちょうどいいぐらいに切ってやる。
地面に咲いてるみたいに…。
そうそうそう。
キャーッ!
(泣き声)なんでお城へなど入ってきた?ん?宿に泊まっているお客様から文があります。
ああ…渡さんでいい。
同じ道を志す後輩のために一手のご授業を賜りたい…。
まあそんなところだろう。
あっ忘れてた。
あとこれ…渡してくれって。
ん…?
(庄田)お客殿こんな山家の事ゆえ何もないのです。
ただくつろいでどうぞ。
ちょうだいする。
《どうしたら石舟斎に近づける…》お強いと見える。
貴君から文でどなたがお切りになったかとお尋ねになった菊ですが…。
これは…当家の大殿が切ったもの。
やはりそうでしたか。
《どうしたら石舟斎に近づける…》しかしですなどうしてこんな柔軟な細枝の切り口を見て非凡な切り手という事が貴君にはわかりましたか?
(庄田)我々にはどちらが大殿の切り口かすらわかりません。
《今夜をおいて二度と石舟斎へ近づく機会はない》左様でござろうか?
(木村)そうですとも。
(村田)我々にはわからん。
(出淵)やはり非凡は非凡を知るという事か。
そこのところを後学のために今宵お一つ説明して頂きたいと思うのですが…。
《二度とない》あなた方のような凡人には決してわからぬ事。
何…!?感覚は感覚。
どう言ってもそれ以外説きようがござらぬ。
強いて目に見たく思し召すなら太刀を取って私をお試しくださる他ない。
どこへ行く?当城の主石舟斎に会いに参る。
大殿に会ってなんとする気じゃ?それがしは兵法修行中の若輩者。
生涯の心得に柳生流の生みの親より一手の教えを乞わんためでござる。
しかし石舟斎は一切人とは会わず修行者への授業はせぬと承った。
それゆえ拙者は…。
まずこの城を相手にとって合戦を申し込む。
よし…面白い。
合戦とは面白い。
陣鼓陣鐘を鳴らさんまでもその心得に応えて応戦してやる。
聞いたか!?皆の者!
(木村)大殿には会わせん。
斬り殺せ!!
(木村)逃がすな!待て!待て!
(一同)おおっ…!でやーっ!ぐわっ…!うっ…!ぐわっ!ああーっ!逃がすな!この合戦は貴様の負けじゃ。
死ね!死ね!死ね!死ね…!死ね…!死ね!死ね!死ね…!死ね…!小太刀を抜いたところで…。
でやーっ!二刀流…!
(笛)でやーっ!待て!逃がすな!追えー!お通…!
(笛)今日もいい笛であった。
逃がすな!追えー!母屋のほうが騒がしいようですが…。
ん…?頭の黒いネズミでも紛れ込んだのであろう。
捜せ。
お前らも捜すんだ。
はっ!ここを見張れ。
はっ!ここか…。
御免。
お通…!たけぞうさん!?たけぞうさん…!ずっと捜していました。
あの洞窟で別れてからいつかまた再び会う事が出来ると信じていました。
それが私の運命なら必ず会えると信じていました。
ゆうべの笛の音はやはりお通だったのか。
嬉しい…。
覚えていてくれたんですね。
私もあの日からたけぞうさんの事を忘れた時はありません。
いえ本当はたけぞうさんが村に戻ってきたあの日から…。
武者修行をなさってるんですか?そうだ。
今はたけぞうではなく宮本武蔵と名乗ってる。
宮本武蔵様…。
お通は今ここに住んでるのか?ええご縁があって。
武蔵様は?俺はこの菊の枝を切った人に会いに来た。
あっこれは…。
(石舟斎)わしにか?大殿様。
大殿…?柳生石舟斎!それがしは宮本武蔵と申す。
一手の教えを…。
わしはすでに隠居の身じゃ。
試合はせぬ。
だがその菊の切り口に気づいた褒美だ。
教えてやろう。
で一体…何が知りたい?吉岡清十郎に勝つにはどうしたらいい?教えてくれ。
うむ…。
(石舟斎)その菊を切ってみよ。
お通。
はい。
目はいい。
…が耳が悪い。
は…?音を聞け。
聞こえるはずのないその音を聞け。
どういう事だ?武蔵様お聞きになりたいのなら大殿様を呼び戻してきます。
待て!…すまん。
いいんだ。
待って!私も連れて行ってください。
私は…武蔵様と共に生きたいのです。
無理だ。
今は修行の毎日…。
お通と過ごす時間などない。
武蔵様…。
私はこの世の中でたった一人の人を見つけたと思っております。
武蔵様です!なんと言おうが…連れては行かれぬ。
ここ柳生の里で過ごした時間無駄には致しません。
大殿様にお仕えし武者修行の事少しはわかったつもりです。
ご修行の邪魔は致しません。
決して邪魔にならないようにしますから…!ここで待っていてくださいね。
すぐ参りますから。
嫌ですよ…行っては。
あっ旦那お勘定をまだ頂いてございませんが。
何?うっかりお忘れになったんでございましょう?忘れ物はねえが…。
お代を…お酒のお代をまだ頂いてはございませぬ。
ああ勘定か…。
恐れ入ります。
金はねえや。
えっ…?おい…。
(又八)困ったなあ。
ついこの間まであったんだが全部飲んじまった!おい!先生!それじゃあてめえははなっから文なしで飲みやがったんだな?貴様俺を誰だと思ってるんだ。
意気地がなくて盗人よりも太えゴミだめ牢人だと思ってるがそれがどうした。
言ったな!
(又八)俺の名を聞いて驚くな。
(牢人)誰が驚くものか。
佐々木小次郎とは俺の事だぞ。
中条流の使い手小次郎を知らねえか?あの佐々木小次郎?あの…?佐々木小次郎?うわっ!おうよ!なんだ?お前は。
私は一介の牢人です。
しかし本物の佐々木小次郎であれば印可をお持ちのはず。
フン…俺を疑ってるのか。
これがその印可だ。
これはこれは佐々木小次郎殿…。
こんなところでお会い出来たとは何かの縁。
ここの飲み代は私が払いましょう。
おーっ!いい心がけじゃねえか。
ちょいちょいちょいちょい…兄さんよ払っちゃいけませんぜ。
癖になるよ。
おい!え?佐々木だかなんだか知んねえけどなてめえのような奴は大方年中その手で飲み屋を飲み倒してんだろう!金がねえんだったらな俺に頭を一つ殴らせろ!あ〜もう…!いいから…!なんだ?俺を殴る?面白い。
殴ってみろ!ハハハハ!笑わしやがる…!うわーっ!おのれ…!いけませんこのような場所で殺生など。
(又八)今日はありがとよ。
色々と助かったぜ。
お前名をなんと言うんだ?名乗るほどの者じゃありません。
いいじゃねえかよ。
俺とお前の仲だ。
なあほら言っちまいなよ。
偶然なんですが…私も佐々木小次郎と申します。
その腰の印籠を持っていた男はどうしました?その印可を持っていた男はどうしました?伏見城で間者に間違われて殺された…。
すいません!すいません!すいません!すいません…。
すいません…。
なるほど。
兄弟子草薙天鬼から受け取るはずの中条流の印可をまさか佐々木小次郎から受け取る事になるとは…。
佐々木小次郎殿。
同姓同名…これも何かの縁。
以後お見知りおきを。
やい小次郎!俺はお前より強い奴を知ってるぞ!作州宮本村のたけぞう。
今の名を宮本武蔵。
宮本武蔵という男だ!宮本武蔵…。
覚えておこう。
うむ…そうだな。
巌流…。
…とでも名乗るか。
吉岡清十郎との試合の当日
宮本武蔵は京にたどり着いた
《負けた…》《負けた!》《負けた…》《負けた!》《負けた!!》未熟者…。
未熟者…!未熟者!!お前や。
いや〜ん嬉しい!若先生。
ほな行こう。
先生〜。
先生〜。
かわいらしいなあ。
先生。
先生。
(清十郎)こそばゆいって。
酒。
どうぞ。
(お甲)あんまりよその女連れ込まれんの好きじゃないんですけどね。
まあそう言うなよ。
そういやあんたのヒモどこ行った?出て行った…。
みんないなくなっていく。
(又八)お通やおふくろには悪いが決めたんじゃ。
宮本村には戻らん。
又八…。
又八!
(鈴の音)たけぞう…。
(女)清十郎様…。
光悦や!あいたたた…。
いたたたた…。
あっ痛い痛い…。
大丈夫ですか?具合が悪いのですか?ええ急に差し込みがきて…。
お通!おばば様!
(お杉)あいた!いたたたた…!先ほどは誠にすまん事じゃったが武蔵殿をひと目見た時何か血生臭いものが目の前に来たようで怖かったのじゃ。
血生臭い…。
今こうして見るとなんの事もないお人じゃがのう。
ハハハ…いやいやおわびと言うてはなんじゃが武蔵殿朱雀の細道というのをご存じですかな?朱雀の細道?六条の郭です。
郭というと…遊女のいるところですか?はい。
ちょうど今誘い状が参りましてな…。
よろしかったら武蔵殿一緒にその六条の遊び町を見に行きませんか?今日は約束がありますゆえ。
ああそれは何時の事ですか?戌の刻です。
ああだったらまだ存分に…暇はございます。
大事な約束なので。
(妙秀尼)武蔵殿年寄りの言う事は素直に聞くものですよ。
その前に着替えをせねばならぬのう。
着替え?
(清十郎)今何時やろ?酉の下刻。
そうか…。
出かけるの?野暮用や。
すぐに戻ってくる。
ではまた。
ありがとうございました。
「ありゃりゃんありゃりゃんありゃりゃんりゃん」「ありゃりゃんりゅうといありゃりゃんりゃん」「ありゃりゃんりゅうといありゃりゃんりゃん」おばば様お宿…お宿はまだですか?すまんのう。
もう少し先じゃ。
おばば様…。
これまでの事お許しください。
もう今となっては何も言い訳は致しませぬ。
何を言う。
いつまでもそなたの心変わりを恨んどらんわ。
一時は憎き嫁じゃと思ったがもう今では水に流しとる。
では堪忍してくださいますか?私のわがままを…。
痛い痛い痛い…!おばば様?お通ここで下ろしてくれぬか。
…というのは嘘じゃ!このアマ!逃がすか!おばば様お許しください!許さん!ああー…!
(唄と三味線)
(食器をひっくり返す音)
(紹由老人)やめ!やめ!やめ!もうまもなくまもなくと申しておったが一体いつになったら吉野太夫は参るのじゃ!?
(光悦)まあ紹由殿…。
(紹由)離せ!離せ!
(光悦)待つのも遊びじゃ。
今今今今…。
(紹由)わしが行って吉野太夫を連れて参る…!まさか助太刀ではないやろな?武蔵一人を討つのに助太刀なんかいらん。
(伝七郎)しかし兄上…!兄の言う事が聞かれへんのか。
(植田)若先生…。
あの日…あの武蔵が道場にやって来た日そこにいた我々こそが武蔵に仇討ちをしたいのです!先生のお邪魔をするつもりは毛頭ありません。
せめて…せめて試合を…!武蔵が倒れるさまを見届けさせてください!そうです兄上。
皆そう望んでおります。
そんなら伝七郎だけ来たら?伝七郎が皆の代わりに見届けよ。
他の者の立ち会い一切認めぬ。
(植田)先生!私も…!植田…。
お前の守ってきた吉岡拳法流はなんや?天下一の剣です。
案ずるな。
(りん弥)お客様どこへ行かんす?すぐに帰ってくる。
ほんまですか?もし戻らんせんなら私が叱られんすかもしれんして…。
なら…この道服を預かってくれ。
もし俺が亥の下刻までにここに帰ってこられなかったらその道服を光悦殿に届けてもらいたい。
きっとお戻りくださんせ。
主様のお相手の太夫さんは私のついてる吉野太夫さんでござんすゆえ。

(吉野太夫)どうぞさんしたか?
(りん弥)吉野太夫様!目はいいが耳が悪い…。
耳…。
(猫の鳴き声)
(猫の鳴き声)ん?どうした?怖かったか?よーしよしよしいい子だ…。
音を聞け…。
聞こえるはずのないその音を聞け。
吉岡清十郎いくぞ。
(清十郎)早うこい。
ついに吉岡清十郎との決戦の時が来た
命をかけた勝負の行方は?
(藤次)武蔵を遊郭から出すな!捜せー!
(吉野)今にも斬られて死なんすお人のように見えてなりんせん。
(朱実)私も連れてって。
愛し合う二人を翻弄する過酷な運命
武蔵様と一緒にいたいだけなんです!
(又八)武蔵の事など思いませんとここで誓え!又八!
(又八)おふくろ!やれ。
吉岡方は七十六名…。
まるで合戦だな。
勝って天下無双になってやる。
復讐に燃える吉岡一門との無謀な戦いに挑む武蔵
そしてついに…
剣で日本の頂点を目指した宮本武蔵の物語が感動のクライマックスを迎える
いくぞ。
いざ…。
2014/03/15(土) 21:00〜23:21
ABCテレビ1
テレビ朝日開局55周年記念 2夜連続ドラマスペシャル「宮本武蔵」第一夜[デ][字]

日本に、こんな強い男が実在した!日本人に愛され続ける剣豪・宮本武蔵。宿敵・佐々木小次郎との死闘。お通との悲恋…。等身大のヒーロー、宮本武蔵に木村拓哉が挑む!

詳細情報
◇番組内容
木村拓哉が剣豪・宮本武蔵の真の姿に挑む、大型時代劇!
第一夜では、吉岡一門との死闘、槍の宝蔵院での試合など大スペクタクルな展開!!武蔵の内なる苦悩、お通との悲恋も描かれていく。
◇番組内容2
1600年、新免武蔵(木村拓哉)は立身出世を夢見て関ケ原の戦いに挑み、後に宿敵となる佐々木小次郎(沢村一樹)の戦いぶりに圧倒される。
親友・又八(ユースケ・サンタマリア)の無事を知らせるため関所を破って帰郷し、運命の女性・お通(真木よう子)と出会う。
◇出演者
木村拓哉、沢村一樹、真木よう子、松田翔太、中谷美紀、倍賞美津子、武田鉄矢、八千草薫、西田敏行、ユースケ・サンタマリア、香川照之
◇出演者2
※以下、出演者五十音順
青木崇高、東幹久、宇梶剛士、ガダルカナル・タカ、夏帆、笹野高史、篠塚勝、高岡早紀、高杉亘、鶴見辰吾、デビット伊東、袴田吉彦、比留間由哲、森本レオ
◇スタッフ
【原作】吉川英治『宮本武蔵』(講談社刊)
【脚本】佐藤嗣麻子
【音楽】服部隆之
【ナレーション】市原悦子
【監督】兼