(笑い声)エミ!エミちょっとちょっと…。
あっお母さん!お母さん倒れちゃった。
ハハハ…。
お母さん行こう。
行くぞエミ!
(母親)エミ待ってー!エミ!エミ!エミ!ハハハ…!
(河野信子)熱い…。
悔しい…。
悲しい…。
《東京都大田区田園調布東稲村達也》《職業大学病院内科部長48》《妻春子45》《子供長男正一中一》《次男明次小学校5年》《三男健三郎6つ》《姑稲村繁子70》
(稲村春子)はい。
「おはようございます」「協栄家政婦会から参りました」まああなた家政婦さんなの?「はい河野と申します」家政婦のおばさんでございます。
(春子)どうぞお入りください。
「はい失礼致します」どうぞ。
失礼致します。
時々お庭を掃いてくださいね。
それから植木の手入れもお願いしますよ。
かしこまりました。
《契約外だけど文句を言わないでおこう》《あとで割り増しの請求をすればいい》《見えっ張りみたいだからお金は払うでしょう》《よくある事…》《美人の家政婦は夫を誘惑すると思ってる》仕事先でセクハラのような事は?いいえ全然。
そうですか。
どうぞ。
《ブラウスはエトロ時計はショパール》《ダイヤの指輪はハリー・ウィンストン》《オールブランド品》《なぜ家政婦にそんな高いものを見せつけなきゃいけないの?》時々靴を磨いてください。
あはい…。
《これも契約外》《あとで請求》よいしょ…。
あっ何?あっ…おぼっちゃま!返してくださいませ!
(稲村正一)なんだそれ?
(稲村健三郎)かつら!健三郎!かつらか。
うわ〜気持ち悪い。
おぼっちゃま返してくださいます!?ちょっと…。
やめなさいよ。
ウイッグ返しなさいよ!かつらを…。
(稲村明次)うぃーだ!ほらほーら!
(正一)いけいけ!おぼっちゃま!
(3人)バァー!キャーッ!!イッタ…。
イッタァ…。
あなたたち早くご飯食べなさい。
(3人)はーい。
あんたら!ブチ殺したろか!!山口県なの?広島出身かと思ったわ。
ええ方言がよく似てるんです。
申し訳ございません。
つい乱暴な口を…。
いいえ。
3人ともいたずらで前のお手伝いさんは結婚で故郷に帰るとか言ってましたけどね3人と気が合わなくてそれで辞めてしまったの。
こういう事をよそに言わないでくださいよ。
ええ。
勤務先の事は絶対に口外してはいけない事になっておりますから。
さっきウイッグをバッて外された事も家政婦会の方には内緒にしておきます。
一応弁護士もついておりますので。
弁護士?はい。
トラブルがあるんです。
セクハラとかものがなくなったとかペットに噛まれたとか…。
でも健三郎はあなたのウイッグ外しただけですよ。
あはい…。
ただのいたずらですよ。
人によっては大騒ぎをする人もいますから。
精神的虐待を受けたとかウイッグが壊れたとか…。
河野さん。
はい。
あなた脅してるんじゃないでしょうね。
とんでもございません。
脅すだなんて…。
私そんな女に見えますでしょうか?見えませんけどね。
主人は大学病院の内科部長です。
糖尿病の権威でテレビや新聞や雑誌によく顔を出す有名人です。
変な噂が立つと主人の名誉にかかわりますからね。
はい。
(稲村達也)行ってくるぞ。
あなた家政婦さんが来てくれましたよ。
ああよろしく。
《見た。
私の胸を》《危ない男だわ》《多分愛人がいる》
(自転車のベル)ねえ冷めちゃうよ。
あーっ!私のプリンがない!
(平田牧子)それから?あっ2階の書斎を見せられました。
詳しい事はあとでレポートに書いて出しますから。
(ため息)ごめん。
ふう…相変わらずきれいだからさうっとりしちゃう。
フフッ…。
銀座や六本木で働いてたらその顔なんだからすっごく稼げてたのに家政婦が好きっつうんだからね。
ふぅ…。
(咳)ほらシズちゃんが…。
悪い悪い。
シズさんしっかりしてもらわないとねここから出てもらわなきゃいけなくなるんだよね。
(加藤シズ)すみません会長さん。
心配する事ないからね。
同情する事ないわよ。
シズさんね若い頃総理大臣の愛人やってたからずーっといい思いしてたんだもんね。
風邪治ったらデパートに買い物に行こうね。
ありがとうございます。
(小林ヒロミ)クビになっちゃった!また?何?セクハラ?高い花瓶を割っちゃってじいさん泡ふいてうう〜…って白目むいて倒れちゃった!
(家政婦たちの笑い声)アハハハ!
(細川寿子)家政婦って1日1万8千円もするの?もったいない。
えっじゃあ姉さん月に60万近くも払うの?月決めだと20パーセント引きだから50万くらいね。
でもお金の問題じゃないわよ。
ご飯作ったりお洗濯したり3人の子供でしょ人の悪い姑。
真面目にやってたら何も出来ないわよ。
整形しようかな私。
韓国って整形の上手な医者がたくさんいるらしいのよ。
日本の女優って韓国で整形してるらしいわよ。
(寿子)姉さん好きな人いるの?もちろんよ。
フフフ…。
(2人の笑い声)コーヒーください。
(店員)かしこまりました。
セフレなの?そんないやらしい関係じゃないわよ。
ちょっといいなと思ってるだけよ。
ふーん。
《やっぱりいた》《お金のある主婦はデパートが遊び場》
(携帯電話)はい。
今?いつものところ。
どこってデパートの喫茶。
ヒィちゃんとデート。
フフフ…。
家政婦?今日から来てもらえるか?急に出張になった。
ちょちょちょっ…。
本当に出張なんだよ。
ああ。
そうそうだ…何?馬鹿!血糖値が上がってるぞ。
相変わらず不節制してんだろ。
明日からってお願いしてあるんだけど。
ええ…わかったわ。
聞いてみるわ。
はーい。
家政婦がどうしたの?うちの人ピンチヒッターで講演頼まれたんですって。
一番の新幹線だから家政婦に来てもらってくれって言うのよ。
ふーんそうなの。
朝食なんて駅弁食べればいいのに。
(寿子)姉さん作ってあげればいいのに。
河野信子河野信子…あった。
女優かなぁ?モデルじゃない?本当きれいな人ね。
きっと整形よ。
(店員)ありがとうございました。
はい河野です。
ああこんにちは。
今夜からですか。
あっ…スケジュールの方は大丈夫です。
家政婦会の方には私から報告をしておきますので。
かしこまりました。
はい失礼致します。
河野様こんにちは!こんにちは。
春夏物の新作が入ったばっかりなんです。
どうぞご覧くださいませ。
今日は時間がないの。
仕事なの。
じゃあ。
オホホホ…。
(店員)稲村様いらっしゃいませ。
どうも。
あとでね。
フフフフ…ホホホホホ…!《知らないわよ》《そんなふうに人を馬鹿にすると…》わっ!
(本が落ちる音)《やっぱり…》《これは女の手紙に違いない》《「先日は愉しかったわ」》《「とても愉しくてあれから興奮してしばらく眠れなかった」》《「先生があんなに女に慣れているなんて…」》
(足音)《「本当にびっくりだわ」》あっ…!おお…家政婦さんご苦労さま。
おかえりなさいませ。
あっ…ああ…。
一番上の本のホコリを拭いていたら落としてしまいましてあの…。
大事なお手紙が…。
恋文ですよ。
バーのホステスの。
ああ…。
どうしましょう申し訳ございません。
ラブレターなんてめったにもらえないからね隠しといたんです。
もちろん妻には内緒だよ。
ええ。
もちろんでございますはい。
(足音)来た。
頼むよ。
旦那様セクハラでございます。
あっ失礼。
ごめんなさい。
ねえわたくし女性の編集者は連れてこないでって本田さんに言ったのにどうしてあんな若い人を!ノーブラですよあの子。
失礼だわ。
原稿取りに来る時に水商売の女みたいな格好しててもうやだわ…。
すぐにお引き取り願うから。
ねえもう…。
ねえ机の上の本や原稿は絶対に触らないでくださいね。
主人は几帳面ですからね。
私でも触ると叱られますから。
あはい…。
(本田純夫)渡辺が先生のファンだと言うので一緒に連れてきたんですがこいつこんな格好して…。
教育が悪いのよ。
本田さんの。
(本田)はあ恐縮です。
じゃあ僕は講演をしなくちゃいけないんで調べなくちゃいけない事があるから。
ありがとうございました。
あっ原稿今持ってくるから。
(渡辺真佐子)先生握手してください。
ああ握手ね。
(真佐子)嬉しい!感激だわ!馬鹿たれ。
ほらもう帰っていいぞ。
はい。
では私お先に失礼します。
はいご苦労さまでした。
あっ…。
新しい家政婦さんですか?ごまかさないの。
二度と今の子家に来させないでちょうだい。
あなたも!何も握手なんかしてやらなくたっていいのよ!嬉しそうな顔をして。
嬉しそうな顔してたかい?僕はああいう若いチャラチャラした子は好きじゃないんだけどね。
嘘ばっかり!お送りして参りました。
いいのに送らなくたって。
この人美人ですよね。
美人?河野さんが?ええ。
いやメガネ取った顔絶対に美人だと思うなぁ。
《余計な事を言う男だわ》美人?あの人。
かなりの美人でしょう。
やめてもらおうかしら。
ハハハ…本田君君趣味が悪いよ。
…ですか?あれで美人だなんて言われて妻にクビになったら河野さん気の毒だよ。
そうよお馬鹿さん。
《旦那様は私に浮気の証拠を握られているから…》御用聞きが来るけど食事の材料はスーパーで買ってください。
御用聞きから買うと高いのよ。
あはい…。
それと…宮本町の外れの八百屋さんあそこ安いわ。
野菜や果物はあそこで買うといいわ。
わかりました。
はいおかわり。
あっはい。
いらないいらない!しょっぱいんだよこの肉じゃが!そうですか…ごめんなさい。
少し味が濃いわねぇ。
うちは医者の家でしょ。
薄味にしてるから。
はい注意します。
母親を呼んでください。
あっはい。
料理下手ね。
まずい!ブス!最低!おばあちゃん…お…お食事ですって…。
(稲村繁子)うぅ〜…うぅ…痛い…。
(繁子)頭が痛い…!おばあちゃん!
(繁子)ああ〜!おばあちゃん!大変です!おばあちゃんが!奥様!奥様ーっ!おばあちゃん…。
呼んだって来やしませんよ。
ハッハッ!アーッ!!頭が痛い!割れるように痛ーい!ねっ来ないでしょ。
(ため息)あなたも大変ねぇ。
あんなひどい嫁に雇われて。
早く辞めた方が身のためよ。
ウフフフ…。
私が大嫌いなものだから頭痛がするなんて嘘ついて困らせようとするんですからね。
騙されないようにして。
お年寄りは寂しがりですから。
あなたが親切にすると一日中私の悪口言いますからね。
あれは被害妄想ですからね。
そう被害妄想なんだよ。
年寄りというものは家の者に相手にされないから知らない人が来るとすぐに甘える。
放っておいてください。
かわいそうですね。
怖い顔をするな河野さんは。
(時計のチャイム)あなたどこに行くの?休ませて頂きます。
8時までの契約になっておりますので。
何か弱みでも握られてるの?弱み?馬鹿何を言うんだ。
《どこの家にも不幸の種がある》《この家の人たちも幸福だと思っているかもしれないけど実は家族はバラバラになっている》《出来れば私の事を不器量で男に愛された事のないかわいそうな家政婦だって思っていたわって優しく接してほしい》《もしそうでなくて意地悪や冷たい仕打ちをしたら私は許さない》《悪魔になってこの家に不幸な黒い花を咲かせる》《そんな事にならないように私はいつも心から願っているのだけど…》ああご苦労さま。
こんにちはー!アハハッ!山田クリーニングでございます!あいにくだわねぇ。
働き者の家政婦さんが来てくれたから結構よ。
アハハハハ…。
(繁子)アハハハ…。
イタッ!健ちゃん駄目でしょ!そんな事しちゃ!ブスの家政婦!春子に似て根性が悪い。
春子好き?あなた。
えっ?いい奥様だと思いますけど。
おきれいでお上品ですわ。
私春子の顔見るのも嫌ですよ。
わがままで冷たくて自分勝手で。
死んでもあの嫁の世話にはなりたくないわ。
せがれもせがれですよ。
結婚する前は優しい子だったのに結婚した途端にもう春子の言いなり。
大学病院の内科部長なのに偉いのにあの嫁の前に出ると借りてきた猫みたいでもう私本当情けなくて…。
立派なご主人様ですよね。
あなたせがれ誘惑しなさいよ。
誘惑?まあすごい事言って…。
妊娠しちゃって春子を追い出してちょうだい。
妊娠…わぁ大変だ…。
熱あるんじゃないの?熱があるとか頭が痛いとかよく嘘つきますからねぇ。
騙されないで。
おかえりなさいませ。
ちょっと汚れてるわ!洗濯する時はもみ洗いしてちょうだい!子供たちよく汚しますからね!はい申し訳ございません!あとでタバコ買ってきてよ。
タバコ買ってきてくれとおっしゃってますけど…。
ご近所に聞こえるじゃないの!正くん!今日学校で先生に叱られたばかりじゃないの!ママ必死に先生にお詫びしたのあなた見てたでしょ?馬鹿野郎。
あなた外聞って事も考えてください。
まるで嫌がらせみたいに大きな声出して!はい申し訳ございません!でもタバコ買って来いだなんてそんな…。
シーッ!シーッ!シッ!あ〜バーゲンのしゃぶしゃぶ肉は売り切れになってます。
松阪牛や高いお肉ですとお預かりしているお金が足りません。
あっ私のお金で立て替えておきましょうか?どこかよそのお店で安いお肉探してください。
かしこまりました。
あっ奥様。
あのもしなかったらどう致しましょう?知らないわよ。
それを探すのが家政婦のあなたの仕事でしょ?
(通話が切れる音)知るもんか。
高いお肉買ってやるからな〜。
アハハハ!こんにちは!山田クリーニングです!ああ…。
大変でしょう?お洗濯は。
いいえ全然。
失礼致しました。
あの…前のお手伝いさんは田舎にお帰りになったんですか?妊娠してたんでしょ?ご主人様の子をですか?噂ですよ噂。
私が言ったなんて言わないでくださいね。
そりゃ言いますよ!言うに決まってるじゃないですか!家政婦さん?家政婦さーん!
(足音)安いお肉あった?いいえ。
お肉屋さんが稲村先生のところだろ安い肉なんて食うもんかって言われて勝手にカゴの中に入れられて…。
あっいいです私ごちそうしますから。
あなたにお肉の代金払ってもらうわけにいかないでしょ。
どうして私の言ったとおりにしてくれないのかしらねぇ?聞いてるの?河野さん!えっ?あっはい申し訳ございません。
《「十八日午後三時に東京駅東海道新幹線改札口に来てください」》《「私は先に行ってお待ちしています」》《「おうちのほうに都合よく言ってぜひ一晩泊まってください。
富美子」》大変…女と浮気旅行だわ。
河野さんどうしたの?申し訳ありません病院までお電話して。
春子と何かトラブルでもあったの?あっいいえ…申し訳ございませんご主人様。
千代田製薬からの封筒が破れていて…。
封が破れてる?はい。
誰かが破ったのかもしれません。
ご主人様この封筒どう致しましょう?奥様の目の触れるところに置いても…。
君はその手紙の文面見たのか?いいえ!決してそのような事は…。
でもご主人様書斎の本の中に隠してあったお手紙も千代田製薬の封筒でございましたから秘密になさった方がよろしいんじゃございませんか?《「一条さんが先生と私と真名さんと4人で熱海に梅を見に行こうって言ってるの」》《「学会があると言って奥様を騙して梅を見に行かないかしら」》
(ドアが開く音)何してるんだよ?本が落ちたの。
へえ〜。
下りろよ!おい!下りろって!ちょっと…あっ…。
わーっ!コラッ!やめろよ!おい!お前も…!
(明次)うう…やめろよ!うう…!何してるの?逃げろ!勝手に主人の書斎に入らないでくださいね。
申し訳ございません。
あの…覗きましたら本が散らかっていたもので整理しておりました。
言い訳しないでいいんです!ちょっと…外出して参ります…。
あなた覗き見の趣味があるんじゃないでしょうね?
(牧子)どうしてもっておっしゃるんでしたら河野以外の者をお探ししますけど…。
盗癖?ああ…。
ものを盗むって事ですか?奥様それはねいくらなんでも失礼だと思いますよ。
まあなんですか?居直るんですか?あなた。
ああわかりました。
うちとの契約は白紙に戻させて頂きます。
ええ結構でございます。
河野さんがもう戻ってこないかと思って…。
おかえり。
あなたもかりんとうとチョコレート食べなさいよ。
ほら。
じゃあお茶淹れてきますね。
ありがとう。
あなたみたいな人がお嫁さんだったらよかったのに。
もう戻らないわ。
クビにしたから。
勝手にあなたの書斎に入って何かしているのよ。
本の整理を頼んだんだよ。
明次と健三郎があの家政婦怪しいパパの書斎で何かしていたって言うのよ。
ふーん。
正一もあの人が大嫌いだって言うし。
おばあちゃんと2人で私の悪口を言ってるのよ。
(足音)河野さん…家政婦会の方にお話ししてあるんですけど…。
先生の書斎に入ったのは先生に本の整理を頼まれたからです。
勝手に入ったのではありません。
まして私が何かを盗んだりしたのではありません。
明次くんと健三郎くんは脚立に乗って本の整理をしているのに脚立を揺すって私を落とそうとしました。
そのうえ私のウイッグを奪おうとしたんです。
長く家政婦をしてますけどそのようなお子様に会った事はございません。
正一さんは私にタバコを買って来いと命令なさいました。
そんな事は出来ないので奥様に申し上げました。
それで私を嫌ってるんだと思います。
おばあちゃんはお寂しいので私に色々な事をおっしゃいますけど前のお手伝いさんの事は何も言いません。
お手伝いさんがどうしてこの家を辞めたのかご近所で噂は聞きました。
河野さん誰から聞いたの?そうよ。
誰がなんて言ったんですか?妊娠して田舎へ帰ったと聞いたんですけど。
えっ…。
そんな事はどうでもいいんです。
私はこの家の皆さんと働かせて頂きたいんです。
かわいがってくれとは申しません。
信じてほしいんです。
手に職のない家政婦をするしか生きていく事の出来ない女です。
ですからいつもは仕事先のご家族の皆さんが私みたいな女を家族の一員のように思ってくれたらどんなに嬉しいかと思って働くんですけど…。
知らない者同士が会うんだから色々と誤解はあるよね。
とにかくよろしくよろしく…。
河野さんあとでわたくしが洗いますから今日はゆっくり休んでくださいね。
はあ…私怖くなったわ。
あの人の言い分ってまるで脅迫だわ。
彼女は喧嘩に慣れてるよ。
あの人もしかしたら昔事件でも起こしてるんじゃないかしら?事件ってなんの事件?殺人事件とか…。
えっ?《その日ご主人様は愛人との不倫旅行のために東京駅に向かった》《お昼過ぎに奥様がブランドで着飾って外出した》《もしかすると奥様にも愛人がいるのかもしれない》河野さん。
はーい。
マッチないかしら?マッチですか?耳掘りたいんだけどこの耳掘りだとうまくいかないのよ。
マッチの方がいいんだけど。
マッチですか?マッチですか…。
えっ?ああ…ありがとうねあんた。
うん。
ありました。
ハハハ…。
(チャイム)あっはーい。
いらっしゃいませ。
あの今ご主人様も奥様もいらっしゃいません。
知ってますよ。
座りませんか?仕事があるんで…。
単刀直入に言いますよ。
10万払いますから出て行ってもらいたいんですよ。
どうしてでしょうか?あなたが嫌いだからでしょう。
10万じゃ不足ですか?それなら相談しましょうよ。
お断りします。
あなたなぜここにいるの?なぜ?この家の弱みでも握って脅迫でもするつもりですか?私は家政婦です。
このおうちのお役に立ちたいだけです。
黒い家政婦だろ?今までも随分悪い事してきたんじゃないのか?警察に行ったらいいじゃないですか。
悪い家政婦につきまとわれてるって言ったらいいじゃないですか。
そうか。
じゃあそうしよう。
警察に訴えるぞ。
いいんだな?どうぞ。
あっ…。
うわっ!あっ水かかりますよ。
何するんだおい!警察は困るわ。
何を言うかわからないもの。
(本田)ええ。
先生に誘惑されたなんて言いかねません。
あっ前のお手伝いさんの事を知ってるっておっしゃいましたね。
そうなの。
噂を聞いたって言うのよ。
妊娠して田舎へ帰ったって。
まあでも噂ですからね。
でも噂でも悪質だわ。
主人は有名人ですからね。
ええ。
あの家政婦そのあたりも計算してますね。
そうなのよ。
たちが悪いわ。
メンズに行きましょうよ。
そのスーツ似合わないわなんだか。
嬉しいなぁ。
買ってもらえるんですか?今日は主人が学会で出張なのよ。
つまんないから夕飯付き合ってよ。
ああ…。
それって…。
さっき健三郎くんの渡したマッチですか?知らないよ。
これは僕のだぜ。
おばあちゃん…!ああ…。
おっ…。
アッチーッ!!アチッ!あーっ!!おばあちゃん!あーっ!!マッチで耳を掘ったの?ねえ!いやーっ!ちょっと待っててね!待ってて!あーっ!!あーっ!!ちょっとこれは?ああきれいですね。
(携帯電話)あっごめん。
(携帯電話)はい。
大変って?何が大変なの?健三郎さんからもらったすぐ火がつくマッチでおばあちゃんが耳を掃除してそのマッチに突然火がついて…。
どうして健三郎にマッチ箱を渡させたりするの!あなたちゃんと留守を頼んだはずですよ。
(通話が切れる音)もしもし?もしもし?
(不通音)どうして勝手に切ったりするの?耳の中が相当なやけどで鼓膜がやられてると思います。
あとで家の人に必ず病院に来てもらってください。
はい…。
(ドアをたたく音)何隠れてんの!どうしておばあちゃんと一緒に病院行かないの!コラッ!どうも。
おかえりなさいませ。
健三郎は?上のお兄ちゃんたちと一緒にいらっしゃいます。
正一さんまたタバコを吸ってました。
ええ。
うるさい人ねぇ。
健ちゃん!ちょっといらっしゃい!えっ?一応そのままにされた方が…。
どうして?救急車の方が事情を知ってますし警察が来るかもしれませんから…。
事故ですから。
事故なのよ。
ねえ河野さん。
私は何も見てませんからおばあちゃまがなんとおっしゃるか…。
自分で耳掃除をしていてうっかり火がついたって言いますよ。
はい…。
あれっ?健三郎は?逃げた。
逃げた?
(携帯電話)救急隊員の方です!はい先ほどは…。
はい…。
はいわかりました。
ありがとうございます。
病院は駅前の谷沢病院だそうです。
おうちの方に来てもらってくれって言ってます。
谷沢病院ね。
はい…。
本当にもうこんな事になって…。
ご主人様にお電話なさってはいかがでしょうか?そうね。
(携帯電話の操作音)
(アナウンス)「電波の届かない場所にあるか電源が入っていないため…」駄目だわ電源が入ってないって。
今日はどちらに?水戸医科大学です。
(携帯電話の操作音)水戸医科大学です。
消さないでね。
いい?恐れ入ります。
稲村達也の家内でございます。
稲村はそちらの方に伺っているはずなんですが…。
ええ急用が出来ましてねお呼び出し願えませんでしょうか。
稲村ですけれど。
東都大学医学部の内科部長の稲村でございますけれど。
えっ?ない?そちらで会合はない?そうですか…ひっ!もしもし家の者でございます。
もしそちらに先生の方から連絡がありましたら至急家に帰るか電話をくれるようにご伝言をお願い致します。
おかしいですね。
こちらには稲村教授に来て頂くような会合はないんですけどね。
《何も知らない稲村達也は今も女と一緒にいるに違いない》《春子は水戸の大学に夫が行っていない事を知ったがまさか夫が女と密会をしているとは想像もしていないだろう》あれっ?ママは?病院です。
駅前の谷沢病院。
皆さんもお見舞いにいらっしゃるといいわ。
家政婦のくせに。
そのカップはすごい高いんだ!申し訳ございません。
手がすべって高いコーヒーカップを割ってしまいました。
あっ奥様。
あなたマイセンのカップ割ったそうね。
申し訳ございません。
あの正一様にひどい事を言われて混乱してあっ洗おうとして手がすべりました。
怖い人でしょう?稲村の教室の学生さんたち。
わたくし一人じゃ心細いから来てもらったのよ。
フフフ…。
頭の悪そうな顔してる…。
あっ…。
どこ行くのあなた。
おばあちゃん見てきます。
意外とかわゆいね。
スタイルいい!俺好み!あなたたちみんな落第!馬鹿。
あんな女のどこがかわいいのよ。
鼓膜が駄目でやけどの方は大した事はないんですけどね。
そこから内科的な病気を起こす可能性があるので…。
健三郎は…。
警察は来ていません。
大丈夫です。
うちにいます。
あの子…火がつくかもしれないって知っててあのマッチを私に渡したのね…。
「あと1にちかいぎのびる」「あすのよるかえる」先生お帰りは明日になるんですね。
この電報どこから来て…。
水戸なのよ。
水戸ですね。
水戸の大学では主人は来ていないって言ってたのに水戸のどこで会合してるのかしら。
携帯にも出ないし…。
電報じゃなくたって電話してくれればいいのに。
もう…。
ああ…。
《夫は東海道新幹線で恋人と西の方例えば熱海や京都の方へ行ったはずだ》《すると水戸からは誰が電報を打ったのだろう?》あっもしもし星野先生のお宅でございますか?稲村の家内でございます。
あっどうもこちらこそ。
お世話になっております。
はいお願いします。
はい。
あっち行って!はい…。
食事の支度してちょうだい。
あなた味濃いからもっと薄くしてよ!何をお作りすれば…材料のお買い物が…。
いいからなんか作りなさいよ!あっはい星野先生。
今日稲村が水戸の方で会合があると言って出て行ったんですけれどねわたくしついうっかりして宿泊先聞き忘れてしまったんですの。
ええ。
姑がケガしましてね。
今日はカレーを作る。
思いっきりしょっぱいカレーを作ってやるからな。
まあ…ホホホホホ…。
山中先生怪しいだなんて。
稲村がそんな事出来るような男じゃないのよくおわかりのくせに。
もう…。
完全にイライラしてる。
はい。
あー頭くる!このカレーめちゃめちゃうめえ!なあ!うん!ありがとうございます。
(正一)頭にくるけどうまい。
(明次)うん。
うう〜!うう〜…!うう〜っ!奥様?あなたたち一度だってママの作ったカレーライスを褒めた事がないのに河野さんのカレーはうまいうまいって!パパから連絡がないってキレてんの?うるさい!タバコなんか吸ってすぐ火のつくマッチなんか買ってきて。
あなたのせいで健三郎はおばあちゃんの耳にやけどさせたりしたのよ!おばさんが言った。
えっ?あのマッチをおばあちゃんにあげろって言ったよ。
あなた本当なの?いいえ。
こいつが犯人だ!
(明次)家政婦が犯人だ!それなら警察に電話しましょうよ。
どうするの?いいの?110番しても。
あんたらかわいいとこあるじゃない。
《夜12時を回ったけれど奥様はまだ起きている》ああ〜!ハァハァハァ…。
うう〜…。
《でも一体ご主人様は誰とどこに行ったのか?》一条…。
(電話)
(電話の呼び出し音)
(一条藤麿)「はい一条です」あの…一条藤麿先生でいらっしゃいますか?
(一条)「はい」あのわたくし稲村先生の家の家政婦の河野でございます。
(一条)家政婦さん?はい。
あの少し難しいお話でお電話させて頂きました。
難しい話か…。
あんまり難しい話は好きじゃないなぁ。
今僕は締め切りでねぇほとんど寝てないんだよ。
ああ君は僕と稲村さんの事をどうしてわかったの?ああ稲村先生の大学病院にお電話をしたんです。
一条先生が糖尿の治療で稲村先生の…。
ああそれでか。
うん僕は稲村先生の患者なんだよ。
それが?どうかしたの?先生の代わりに水戸から電報を打ったのは一条さんでしょうか?もしもし?もしもし?電報を打ったのは僕ですがね。
それで君は僕に何を聞きたいの?ただ今帰りました。
あっ奥様。
なあに?どうしたの?おばあちゃんの様子を見て参ります。
あんまり甘やかしたりしないでねおばあちゃんを。
果物買ってくれとかお菓子が欲しいとかいちいちそんな事聞いてたらお小遣いがいくらあっても足りませんからね。
入院費だって大変なんですから。
これは?交通費。
お釣りちゃんとちょうだいね。
もちろんでございます。
(チャイム)いらっしゃいませ。
君まだいたのか。
本田さん。
なんです?夫が出張しているはずの場所にいなくて携帯がずっと不通って。
これって変よね?どうでしょうか。
あ…いやまさか先生はそんな悪い人じゃありませんよ。
そうかしら…。
ありがとう励ましてくれて。
心配しない事ですよ。
あなたが動揺するとあの家政婦の思うつぼだ。
でも夫は絶対に浮気してるのよ。
私寂しくて…。
この女よ〜く見てください。
「あなたの眼を見ずに戸を開けた」「別れはいつもついて来る」
(本田)誰だかわかります?「幸せの後ろをついて来る」「それが私のクセなのか」え…!「いつも目覚めれば独り」ハァ…私なんだか本当にあの人が怖くなったわ。
(ため息)仲間の家政婦以外には絶対に素顔を見せない女。
河野信子は本名なの?本田さん。
ええ結婚してた時は小川信子って言っていたそうです。
どうして離婚したの?いや離婚の理由はわかりません。
けど何か事件のようなものがあったんじゃないでしょうか。
普通の女じゃありませんよ。
ええ。
私…あぁ…金魚みたいに胸が苦しいわ。
えっ?ハァ…ハァ…。
どうしたらいいのかしら…。
あぁ…私怖いわ。
達也まだ帰りませんか。
まだ出張からお戻りになってません。
何が出張だか。
おばあちゃんまだ耳は痛みますか?ええ。
でも注射してもらってるから少しは楽です。
そうですか。
よかった。
あっ河野さん。
これ…。
お気持ちだけ頂きます。
ありがとうございます。
あなたは心がきれい。
春子とは大違い。
本当に達也の嫁になってほしい。
一条先生でしょうか?あああなたでしたか?はい家政婦の河野です。
こちらに…。
あの…先生が水戸から電報を打ったのは本当でしょうか?嘘をついてる場合じゃないからね。
ちょうど水戸に仕事で行ってたんでねアリバイ工作を頼まれたんですよ。
稲村先生からはまだ連絡はないの?あ…はい。
奥さんはこれ?はい。
疑ってらっしゃるご様子で。
そう…まずいね。
今日中にお戻りにならないと大変な事になると思いまして。
ちょっと…。
はい。
あっ熱海の鶴洋荘…。
《熱海の鶴洋荘…》《そこにご主人様は女と泊まってる》あっ鶴洋荘さん?そちらのお客さんで稲村さんというお客が泊まってるはずなんだが。
あっ私?友人の一条という者です。
(一条)稲村のうちの者がケガしてね至急連絡を取りたいんだが。
うん多分…偽名で泊まってると思うんだが…。
女性連れなんで。
あっいる?いた?あっよかった。
繋いでください。
ああ先生。
いや事が事だからね。
他の事じゃないから。
ハハハ…いやいや。
ケガなんか大した事ないだろってひどいね先生。
うん。
ハハッ!いやわかるだろう。
帰りたくないって言われちゃってさ。
うん。
ハハハ。
うんうん。
うん…。
そりゃわかるけどさ。
携帯の電源まで切って一体誰と一緒なんだ?富美子かい?まあいいや。
とにかく今日中に帰った方がいいぞ。
うん。
はいわかった。
稲村さんね今夜遅くに帰るって。
はい。
ありがとうございました。
君口は堅いよね?はい大丈夫です。
一度飯でもどうだい?とんでもございません。
私みたいな女が…。
メガネ取ると美人だろう。
リンゴなんておばあちゃんに食べさせられますか。
ジュースにしようと思ったんですけど…。
あなたが勝手に病人に飲ませては困りますよ。
おばあちゃま…じゃあ私はおうちに帰りますから。
早く帰って子供たちの食事の支度してください。
ご主人様はまだお戻りにならないんでしょうか?あなた主人が女と浮気していると思ってるでしょ。
そんな…。
いいから早く帰って!もう!3人ともお腹空かせてますからね。
あっ…。
もう…。
《あの子たちがいくらお腹が空いたって知らない》《でも奥様ぐらいわからない女はいない》《人を7時過ぎまで働かせて夕食代もくれないし電車賃を500円出しただけ》《私余計な事をしてしまったかしらね》《一条って人に頼んでご主人様を帰るように仕向けたけどもう一晩泊まらせるようにしてやれば面白かったかもしれない》ラーメンもう1つ。
「あなたの眼を見ずに戸を開けた」「別れはいつも…」ん?変装してるのよあの人。
ん!?「それが私のクセなのか」笑った…。
ハハッごめんなさい。
あんまり美人で。
あなた悔しそうに。
ハハハハ!面白〜い!大嫌い!
(繁子)ハハハハハ…!ハハハハハ…!ちょっと…。
美味しい?うんハンパない!ハンパない!すげえうまい!
(電話)あ…。
(電話)鍋に触っちゃ駄目。
(電話)稲村でございます。
(女性)「稲村先生います?」失礼ですがどちらさまでしょうか?「お手伝いです。
そちらにお世話になった」ああお手伝いさんですか。
先生は今出張しています。
お帰りは今夜遅くになると思いますけれど…。
ちょっと貸して。
ちょっと貸してもう!もしもし?もしもし?なんだよ切れてんじゃん。
なんなんだよ…。
(ため息)今の電話の事は言わないで。
言うと2人が喧嘩するからさ。
なあ?イカ食べなさい。
わかったのかおい!わかったわよ!
(2人)あんたらブチ殺すよ!
(笑い声)
(携帯電話)おかえりなさいませ。
「連絡をしてくれてありがとう」「今病院の表にいるんだが春子が怪しむといけないんで“家に連絡したらあなたから母の事を聞いた”と言うんでね」かしこまりました。
家に電話したら家政婦が早く病院に行ってくれと言うんで…。
私の留守の間に健三郎がすぐ火のつくマッチをおばあちゃんに渡したんですよ。
あの家政婦がちゃんと見ていてくれないからですよ。
家政婦に関係ないだろう。
留守番を頼んだんですから。
あの人がちゃんと見ていてくれて当然ですよ。
馬鹿!私が仕事で出張の時ぐらいデパート歩きを控えたらどうなんだ。
もう少ししっかりしてもらわないと困る。
どこでお仕事だったの?水戸だ。
水戸のどこでしょうか?水戸の近くの山の温泉だよ。
電話のないランプだけの宿屋で携帯も通じない。
だから電報を打ったろう。
なんだその顔は。
一条くんも一緒だったんだ。
嘘だと思うなら聞いてみたらいい。
一条さんって誰でしょうか?友達の小説家だ。
糖尿で僕の患者だ。
その人がなぜ水戸の会合に出るんです?医師だけじゃないんだ。
患者の立場からも発言を…。
嘘だわ。
信じられないわ。
あなた口裏を合わせるようにその人に頼んだんでしょ。
だから一条に聞いてみろって言ってるじゃないか。
頭のいい君の事だ。
嘘なら嘘ってわかるだろう。
夫の浮気を疑うようなそんなみっともない女にはなりたくありません。
どうしてそんなにきれいなのに僕を疑うのかね。
当たり前でしょう。
まさかと思ったらお手伝いのクミちゃんにまで手をつけたりして。
なんの話だ?とっくに知ってますよ。
知っていて私の事笑ってるんですから!春子落ち着け!私が嫁として至らないから!女の魅力がないから!夫をお手伝いなんかに取られるんだって笑ってるのよこの人!
(泣き声)
(泣き声)ああっ!泣いたって駄目よ。
泣いてるのはこの私よ…!春子頼むからやめてくれ。
あの家政婦に「ずっと家にいてくれ」「せがれと仲よくなって春子を追い出してくれ」なんて言ったりしてるのよ!そうでしょう!どうしました?ああ大丈夫です。
ちょっと興奮して…。
申し訳ない。
大丈夫ですか?大丈夫。
春子帰ろう。
あなたどこに?え?もちろんうちだよ。
もう遅いし帰ろう。
女と温泉へ行ってきたくせによく家帰ろうなんて!帰るよ。
失礼。
あの女のいる家になんて帰りたくない!あの女?どの女の事なんだ?ああ〜!何を言ってるんだ?意味がわからない。
この女よ。
誰だ?これ。
すごい美人でしょ。
知らないよ会った事がない。
家政婦。
家政婦?あなたの大好きなうちの家政婦。
えっ?「幸せの後ろをついて来る」河野さん?フフフ…。
「それが私のクセなのか」
(笑い声)本田さんがねあの女の仲間の家政婦たちに話を聞きに行ってくれたのよ。
あの女今頃私たちが喧嘩していると思って笑ってるわよ。
どうして変装してるんだ?理由は誰も知らないんですって。
美人って言われるとすご〜く嫌がるそうよ。
本当の顔でいる時は家政婦と一緒にいる時だけでいつもはウイッグをかぶってひどいメークして丸メガネかけてるんですってよ。
事件でも起こしてるんじゃないだろうね。
嫌だってば!嫌よ嫌よ…!おかえりなさいませ。
やめて…。
いいから!何を!何かご用はございませんでしょうか?私一人で寝るから。
馬鹿な事言うな!
(ドアの閉まる音)《2人は喧嘩をしたに違いない》《面白い》ご主人様…。
先ほどお手伝いの女の方からお電話がありました。
イタッ!イタッ…!離せ!痛い!痛いって!ああっ!おぼっちゃまたちはご主人様に黙っていてくれとおっしゃいましたけどお手伝いの方はとても思いつめたご様子でしたので申し上げておきます。
では私休ませていただきます。
おやすみなさいませ。
イタッ!駄目だって!静かにしろ!
(鼻歌)おはよう。
おはようございます。
寝不足だわ〜。
まぶしい!《お芝居をしている》《暗い顔をしているとご主人と喧嘩をしたんだと思って私が喜ぶと思って》おはようございます。
おはよう。
今日は休日?はい。
そうか。
ゆっくりしてくるといいよ。
ありがとうございます。
姉さんおはよう。
いらっしゃいませ。
あらあなた家政婦さん?はい河野と申します。
姉さんうるさいから大変でしょ?え〜?
(寿子)フフフ…。
メールをするからねそれを見てよく考えて。
ねえおばあちゃんやけどしたんだって?そうなの。
あの家政婦がボーッとしてるから。
(メールの着信音)
(信子の声)「…忘れたくて」「あなたの眼を見ずに戸を開けた」「別れはいつもついて来る」「幸せの後ろをついて来る」「それが私の…」会長さんヒロミは?怖いねぇ。
今日どこ行ってんの?かわいい!かわいい!
(ヒロミ)ジャーン!
(一同)かわいい!
(ヒロミ)さすが元大統領の愛人だわ似合う!大統領じゃないよ。
総理大臣だよ。
(笑い声)歩いて!早く早く!
(一同)フ〜!みんなに買ってもらった。
そう。
とってもかわいい。
シズちゃん本当に素敵!帽子代。
カラオケ動画の。
いくらで?5万円。
(ヒロミ)痛い!痛い…!男に噛まれるのはいいけど女に噛まれるのはやだ!私が本当の顔見られるのがすごくやだって知ってるくせに!贅沢よそんなにきれいなのに。
うるさい。
また噛むぞ!
(一同)まあまあまあまあ…!私よ〜くわかる。
きれいだからって幸せになるとは限らない。
ねえ!シズちゃんも昔きれいだったもんね。
3人…自殺した。
えっ?ん?ん?3人も?じ…自殺?もしかしてシズちゃんに恋い焦がれて死んじゃったとか?ええ…!ねえ熱海行ける人。
(3人)はい!えっと…ヒロミユキミッちゃん…じゃあ3人オッケー。
熱海すぐ行って。
よっしゃー!えーっとね鶴洋荘っていう旅館で…。
鶴洋荘?
(牧子)うん。
《稲村さんが女と泊まった旅館だわ》鶴洋荘で何かあったの?うんチフス患者が出たんだって。
チフス?なんでもねチフス菌を感染させたネズミを放り込むっていう脅迫状が来たんで慌てて宿泊客調べたら1人感染者出たんだって。
まあ大騒ぎで旅館休んだけど女手が足りないっつうからはいすぐ行って。
やだやだそんなの無理!パス!私も。
嫌よチフス。
伝染するんでしょ?チフス…フフフフ。
フフフフフ…。
(家政婦)チフス?嫌〜!
(牧子)えっ!ハハハ…!神様っているのね!アハハハハ…!天罰ってあるのね!アハハハハ…!「熱海の鶴洋荘に宿泊していたチフスの疑いの患者は精密検査の結果真正とわかりました」「警察では脅迫状の内容から鶴洋荘に恨みを持つ者の犯行と見て捜査にあたっています」「また脅迫状の届いた18日から今日までの宿泊客にも伝染の恐れがあり他にも感染している人物がいないかどうか調べを進めています。
激しい腹痛や40度前後の高熱を出すチフス菌は…」あっ熱がある!馬鹿。
私は医者だぞ。
感染してるかどうかぐらいすぐにわかるんだ。
一緒に行った女は誰だ?伝染してるかもしれないぞ。
そんな事はないよ。
家政婦にも気をつけろ。
家政婦?あの子はあんたが鶴洋荘に泊まった事を知ってんだ。
警察が動いてんだろう。
事件なんだからな。
《「熱海中央警察様」》《「ニュースで熱海の鶴洋荘にチフス患者が出たと知り驚きました」》《「左の人物が18日の夜鶴洋荘に泊まった事は確実です」》《「東京都大田区田園調布東6丁目」》《「稲村達也」》《「東都大学病院内科部長」》《「一知人より」》義兄さんおかえりなさい。
早かったのね。
ちょっと疲れてね。
春子は?姉さんもぐったりしてるわよ。
義兄さんが悪い事するからよ。
私もう絶対に食事なんて作らない。
勝手にしろ!なんなの!あなたって盛りのついた犬なの?お前こそ50になる50になるってイライラして!まあまあまあちょっと2人とも!喧嘩するのは仲いい証拠よ。
この人ね今ね絶対に女がいるのよ。
もう!早く食事の支度しろ!嫌よ!
(明次)家政婦さんは?
(健三郎)作ってもらえば?もう来ないわよあんな女!
(チャイム)やっほー!これで今日もうまいご飯が食えるぞ!
(3人)イエーイ!
(正一)いけいけ!やったー!ただいま戻りました。
夕刊でございます。
何アイコンタクトなんかして。
え?いちいちうるさいなお前は。
ごまかさないで。
今なんか変だったわよ。
どうもあなたたち前から変だわ。
どこ行くの?逃げるの?書斎だ。
来るんじゃない。
仕事だ。
あなた何か隠してるでしょう。
それは隠してる事もございます。
え?家政婦しか知らない事はございます。
主人の事で何を?それは申し上げられません。
守秘義務というものでございますから。
私は妻です。
言いなさい。
命令!奥様の事でもご主人様に隠してる事もございます。
えっ私の事?何?何?あなた何を知ってるっていうのよ。
嫌な人ねえ。
どうして戻ってきたのよあなた。
キャベツで何作るの?あ〜俺ロールキャベツ嫌いなんだよな。
餃子にしよっか。
餃子食いてぇ!僕も!手伝えよ。
(3人)うん!何を使うかわかるかな?姉さん私帰る。
仲よくしてね。
え〜泊まっていってよ…。
ちょっと風邪気味なのよ。
花冷えで寒いから。
ねえちょっと待ってよ。
(明次)おかわり!はい。
はい。
《奥様は妹と外出した》《きっと私の悪口を口から泡を吹いて言っているに違いない》《あの妹は花冷えと言って風邪気味のようだった》《何か変な気がした》
(携帯電話)はい河野です。
「わたくしです」「今夜は妹のところに泊まります」「主人にそう伝えてください」わかりました。
もしもし?「主人食事はしました?」いいえ。
食欲がないそうなんです。
「河野さんあなた何もかも知っているんじゃないの?」何もかも?
(通話が切れる音)変だわ。
どうしたんだろう…。
うぅ…寒い!イテッ!馬鹿!ブチ殺したろか!
(泣き声)おはようございます。
おはよう。
春子は?妹さんのところです。
電話したけど出ないんだよ。
携帯にも出ない。
どうしたんでしょう?君…熱海の事を春子に?いいえ。
そうか。
嫌だねこんな嵐みたいに。
あの…。
奥様がこの辺にいらっしゃいますよ。
じゃあ。
うぅ…!あっ!馬鹿!馬鹿!馬鹿…!ああっ!あぁ…。
奥様ご主人様がご心配なさっております。
寿子が…チフスで入院したのよ。
えっ!?《妹の寿子…》《あの人のよさそうな女の人がチフス…》《稲村の女は寿子だったのか》寿子がチフスにかかった。
この意味あなたならわかるでしょう?熱海の鶴洋荘に寿子は泊まったんでしょ。
一緒に泊まったのは誰?主人。
主人は水戸の会合に出ると嘘を言って寿子と熱海に行ったんでしょ。
あなたみんなわかっているんでしょ?そんな勝ち誇ったような顔なんかしなくたって…私死にたいほど傷ついてるわ。
ずーっと妹に騙されてたのよ。
なんて馬鹿な女だって笑ってたのよ。
妹も主人も…。
天罰です。
奥様はいつも人の事を笑ってらっしゃいます。
自分だけが幸福で自分だけが美しく自分だけが偉いと。
弱い悲しい貧しい…。
必死に生きてる人々を軽蔑して笑ってらっしゃいます。
ですからこういう不幸な事が起こるんです。
うるさい家政婦のくせに。
失礼致します。
先生奥様がお帰りになりました。
寿子さんがチフスで入院されたそうです。
それがどうしたんだ。
君春子に何か言ったのか?いいえ。
秘密を漏らせば守秘義務違反だ。
損害賠償だ。
お熱があるんですか?大丈夫だ。
チフスじゃない。
血圧だ。
焼いておけ。
君…私の妻になりなさい。
あっああ…!《富美子なんてバーの女のふりをして手紙を書いていたのは寿子だった》《あの虫も殺さないような人のよさそうな女が実の姉の夫と秘密を持っていたなんて》《本当に人間はわけのわからない生き物だ》河野さん…。
おかえりなさいませ。
あなたにはお世話になったわね。
せがれと春子さんの様子が変だって孫たちが私を迎えに来た。
このうちが壊れそうになってる。
年寄りの寂しさから河野さんには色んな事言ったけど…今日で終わりにしてください。
はいわかりました。
(チャイム)
(正一)河野さん!警察が来たよ!お茶はわたくしが出します。
私に会いに来たんだ。
お前は来るな。
熱海の警察の刑事さんたちだから私がいると嫌なんでしょ。
声が大きい!河野さんお茶は私が運びます。
あっはい。
(山下刑事)全員来てください。
お話を伺いたい事があるんで。
子供たちもですか?子供…。
いやお子さんはいいでしょう。
(畑中刑事)チフス患者の出た旅館です。
チフスというのは腸チフス菌による感染病で1週間から20日の潜伏期間のあと発熱して死に至るかもしれないという病気です。
何者かがチフスに感染したネズミを投げ込むという脅迫状をよこしたんです。
それで犯人を捜してます。
細川寿子さんというのは奥さんの妹だそうですね。
はい妹です。
今朝5時過ぎにひどい悪寒がすると言って病院に行って診断の結果チフスに感染してる事がわかったそうですね。
そうです。
わたくしが病院に連れていきました。
(畑中)奥さん今体の状態は?大丈夫です。
(畑中)そうですか。
寿子さんは18日から19日まで鶴洋荘に泊まってました。
(畑中)これは宿泊者名簿です。
荒木正雄と松井富美子ですか?偽名です奥さん。
偽名?そうです。
妹の寿子さんだという事は旅館の従業員に確かめてありますから。
稲村先生。
なんですか?大学病院で内科部長をなさってるそうですね。
ええ。
医師の立場からするとチフスという病気が重大なものである事はよくおわかりでしょう。
もちろんわかります。
では伺います。
この荒木正雄というのは?知りません。
知らない?ええ。
一体どういう意味なんです?私が寿子と一緒にいたとおっしゃるんですか?19日の午後に先生に電話があったでしょう。
電話?一条という男が稲村という人が泊まっているかと電話をしました。
帳場の人は以前から稲村達也という大学教授をよ〜く知っていた。
その日も偽名で泊まっているのを知っていたので電話を繋いだ。
それで一条という人の電話を繋いだそうですよ。
おかしいな。
おかしい?私は鶴洋荘には行ってませんけどね。
ハァ…先生。
いや本当に行ってないんですから。
先生の大学病院には細菌の実験室がありますよね。
細菌?あっ私がネズミを…。
チフス菌のネズミを投げ込んだとおっしゃるんですか?
(山下)事件なんですよこの件は。
だから泊まったのか泊まってないのか正直に言って頂かないと。
あ…いやしかし…。
(泣き声)行ってない!私は寿子さんとは。
このハガキが…。
こう書いてあります。
「ニュースで熱海の鶴洋荘にチフス患者が出たと知り驚きました」「左の人物が18日の夜鶴洋荘に泊まった事は確実です」「東京都大田区田園調布東6丁目稲村達也」「東都大学病院内科部長。
一知人より」知人?女です。
女の字です。
(畑中)先生あなた細川寿子さんと鶴洋荘に宿泊したんでしょ?
(畑中)わかりますよ。
社会的な地位と名誉もありますしね。
ねえ奥さん先生熱海に行ったんでしょ?違いますか?主人はそんな人じゃありません。
主人は妹と浮気するような人じゃありません。
主人は私と子供たちをおばあちゃんを愛してます。
主人はその日水戸の会合へ行ったんです。
熱海へなんか行ってません。
嘘じゃありません!困ったな…。
ええ。
(風のうなる音)まだ吹いてる。
だから寒いんだ…。
悪いけどコーヒーを淹れてくれる?スイッチを押すと落ちるから。
入ったらケーキと一緒に持ってきて。
あの子たちに聞かれたくない事があるものですから…。
なんだい?このハガキの事か?ええそうです。
それは…私が書きました。
先生が熱海に行った事を知ってるのか?いいえ。
嘘を書きました。
嘘?憎かったんです幸せそうで。
幸せほど嫌なものはありません。
だから嘘を書きました。
しかし旅館の従業員が先生に電話を繋いでるんだから。
それは…それは…荒木正雄という人じゃないんでしょうか刑事さん。
(風のうなる音)先生は熱海には行っていません。
本当の事です。
それにチフス菌に感染したネズミを投げ込むような真似をする人ではありません。
(畑中)君がくだらないハガキよこすからだよ。
違うとは思っても全て裏取るのが警察の仕事だからね。
はい。
申し訳ありませんでした。
帰ろう。
了解。
どうぞ!コーヒーとケーキどうぞ!結構です。
(ドアの開閉音)どうなったんだよ。
親にそんな口きくんじゃない!馬鹿者!ちゃんとしなさいあんたたち。
河野さん来て〜!お寿司だよ。
ああ…きれいだわねえ。
わたくしやるわ。
今日はおばあちゃんの退院祝いですから。
一緒に食事してください。
とんでもございません。
やっぱ美味しい。
(繁子)いいお出汁が出て美味しい。
本当よく出てるわね。
(健三郎)美味しい!
(時計のチャイム)ありがとうございますおぼっちゃま。
短い間でしたがお世話になりました。
最後の日に美しい家族のご様子を拝見する事が出来ました。
嬉しく存じます。
どうぞ皆様これからも仲よくお幸せにお過ごしくださいませ。
化粧水何を使ってるの?秘密です。
秘密?そう。
教えてくれるかと思ったんだけど。
河野さんなぜ自分の顔を隠すの?そんなにきれいなのに。
私ね…夫に捨てられました。
この顔のせいで夫に疑われて。
男がいる隠れて浮気してる…毎日言われて。
殴られたりナイフで切られたり。
DV?ええ。
ドメスティックバイオレンスです。
一度死にかけた事があったんです。
入院してる間に夫が逃げました。
「このまま一緒にいるとお前を殺してしまう」と手紙が来ました。
殺してほしかったわ私。
毎日泣いてました。
(ため息)風の便りで夫が普通の目立たない顔の女の人と再婚した事を知りました。
悲しかったわ。
ママー!パパー!お母さん早く!お母さん早く!
(笑い声)それから顔を見せるのが怖くなったんです。
町を歩いてると男たちが皆私の顔を見てるような気がして…。
(信子の声)「あなたは私の戸を叩いた」「私は別れを忘れたくて」「あなたの眼を見ずに戸を開けた」「別れはいつもついて来る」「幸せの後ろを…」お寿司食べる時泣いてた。
「いつも目覚めれば独り」あなた。
うん。
河野さん頼んでももう来てくれないだろうな。
駄目!あんな美人。
2014/03/01(土) 12:00〜14:15
ABCテレビ1
松本清張ドラマSP「熱い空気」[再][字]
伝説のドラマ『家政婦は見た!』の原作が米倉涼子主演で蘇る!ある過去から美貌を隠している家政婦が、派遣先の不幸をのぞき、楽しみながら家族を破滅へと追いやってゆく…
詳細情報
◇番組内容
米倉涼子演じる家政婦の信子は、家族の闇をずるずると引き出すことを楽しむ黒い家政婦。
おかっぱ頭にそばかす、丸メガネという不気味な出で立ちでわざと美貌を隠している。それにはある過去の秘密が関係していた…。
信子は、派遣先のセレブな家庭を破滅へと追いやってゆくが…思いも寄らない大事件が勃発する!
◇出演者
米倉涼子、余貴美子、高岡早紀、東幹久、原幹恵、東ちづる、笹野高史、段田安則、野際陽子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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