「いろんな人から『死ね』と言われた」

 中学2年生の男子生徒は遺書にそうつづっていた。昨年夏、名古屋市南区のマンションから飛び降りて命を絶った。

 同市と市教育委員会は第三者検証委員会を設けた。いじめが要因の一つとする報告書を今月まとめ、遺書も含めた全文をホームページで公開した。

 すべてを公開することをめぐり議論は尽きなかった。だが、「悲劇を繰り返さないで」との遺族の思いを重視した。

 生徒はなぜ、痛ましい道を選んだのか。そこには読み取るべき教訓があるはずだ。

 教育現場でも、子どもの心理に配慮しつつ報告書を活用すれば、貴重な教材になろう。

 いじめの調査では、遺族が学校や教育委員会に不信感をもつケースがたびたび起きた。大津市のいじめ事件でも、教委の調査姿勢が遺族を傷つけた。

 名古屋市の対応は早かった。独自の判断で検証委の即時設置を決めた。遺族に調査状況を丁寧に伝え、信頼関係を築いた。

 「疑問が明らかになり、胸のつかえが取れた」。遺族のコメントである。同様の事態に向き合う場合の手本になろう。

 検証委は、生徒が教室や部活で暴言や、机への落書きなどの嫌がらせを繰り返し受け、苦痛を蓄積させたと認定した。

 日ごろから多くの生徒の間で「うざい」などの悪態が常用されていたため、この生徒への暴言も埋没した。学校全体での是正の努力が欠けていたことが背景として指摘されている。

 いじめに気づくには、思春期の心理について知識を深める必要がある。名古屋市は4月から、拠点中学に常勤のスクールカウンセラーなどを置き、多忙な教員を支援する。評価できる試みだ。

 いじめを防ぐには、教員だけでなく、子どもたち自身の力を伸ばすことも大切だろう。

 生徒は学校の出来事をしばしば教員よりもよく見ている。今回の調査でも教員が気づかなかったいじめの証言があり、「なぜ相談に乗れなかったのか」と後悔する生徒もいた。仲裁に乗り出す生徒が増えれば、大きな効果を生むだろう。

 「学校をよくする主体は自分たちだ」。生徒たちにそんな自覚を促す取り組みがもっとほしい。地域の中学校の生徒会役員が集まり、いじめ問題などを話し合う「サミット」を開いている自治体もある。

 さまざまな工夫をこらし、学校と地域の全体で、いじめをなくす意識を高めたい。