今年5月にリリースされたアプリ「Dモーニング」。『宇宙兄弟』、『クッキングパパ』、『グラゼニ』、『会長島耕作』、『GIANT KILLING』、『鬼灯の冷徹』など、講談社の週刊漫画誌『モーニング』の人気連載作が読めるアプリだ。8月にはアンドロイド版もリリースされている。月額課金はたったの500円。紙のモーニングが1冊330円で月に1320円かかっていたということを考えれば断然コスト的には電子版の方がいい。
そこで、遅ればせながら、シャーティックスでも「Dモーニング」のレビューをしてみたいと思う。
毎週木曜日
0時に配信!
今まで週刊コミック誌電子版の最新号は紙の号よりもちょっと遅れて配信されることが多かったが、「Dモーニング」は紙のモーニングと同時配信。しかも、WiFi環境下にあれば木曜日の深夜0時になると自動で最新号をダウンロードしてくれるのだ。続きが気になってしまい、最新号を求めて深夜コンビニに走るということもなくなったわけだ。
この背景には、出版社側の意識の変化が見て取れる。今まで「紙の週刊誌の売り上げが減るから……」と電子版での同時配信に消極的だった。しかし、WEBでも話題になった作品は紙の漫画の売り上げが落ちないことが証明されている。集英社の『ワンパンマン』(原作/ONE、作画/村田雄介)などがその典型例。もともとWEBでしか連載されてなかったが、紙のコミックでも売り上げが好調で累計部数は150万部を突破したとか。
電子版アプリならではの
機能が多数実装
目次には読者が選ぶ今週の期待度などによって色分けがなされている。また、見開きでドーンと来るページには間に何もないので、生原稿を読んでいるような感覚になり非常に読みやすい。iPhoneなどの携帯電話では少々文字が小さくて読みづらいかもしれないが、タブレット端末ならば紙のモーニングと同じサイズ感で読めるだろう。
余談ではあるが、1回契約すれば複数端末で利用することも可能。移動中の電車ではiPhoneで、家に帰ってきたらiPadでゆっくり読むというスタイルも可能だ。
また、おおひなたごうの『ラティーノ』と東村アキコの『メロポンだし!』はオールカラー掲載なのも『Dモーニング』のいいところでもある。なかなか全ページカラーの漫画というのもないだろう。そして、まさか「ラティーノ」の皮膚がピンク色だったとはビックリだ。
そして、Dモーニングオリジナルとして復刻連載も行われている。現在掲載されているのは新井英樹による『宮本から君へ』。1992年度第38回小学館漫画賞青年一般部門受賞とかなり古い作品ではあるが、非常に面白い。こういった機会でなければ手に取らない漫画を復刻版で読むのもまた一興だ。アンケートでは「復刻連載で読みたい作品を挙げてください」といった項目もあるので、「そういえばあの作品を読んでみたいけど、買うほどでもないし……」というのを挙げてみるのもいいかもしれない。
惜しむらくは『バカボンド』と『BILLY BAT』は紙のモーニングでしか読めない点。おそらくでは作者が許可を出さなかったのであろう。佐藤秀峰氏が『ブラックジャックをよろしく』を電子版で無料公開するなど電子化に対して積極的な作家も居れば、電子化を毛嫌いする作家もいる。こればかりは仕方がない。今後ラインナップに入ることを強く望みたい。
さて、『Dモーニング』が出たことで今後、各出版社の週刊マンガ誌は電子化の流れが進むはず。ただし、それには時間がかかるというのがシャーティクスの見解だ。というのも元々出版社というのは電子化にはかなり疎い人種が集まっている。2010年にiPadやSmartia、Sony Reader、GALAPAGOSなどの電子書籍リーダーが出そろったことで「電子書籍元年」ともてはやされたが、結果は御覧の通りだ。いまいちパッとしていないのが現状であろう。やはり、出版社側の人間にとっては「電子化は面倒な割に版権の管理が面倒であまり妙味はない」という認識になっているのだ。
特に集英社などはその傾向が顕著。上層部に電子化嫌いの人が多く、社内も各編集部と版権を扱う部署などが縦割りになっていることで連携が取れず動き出しがかなり遅い。コミックの電子化などの企画を出してもあまり実現には至っていないのだ。とはいえ、前述の『ワンパンパン』が出たことによって集英社内でも「電子化もうまくやれば儲かるかも……」と変化が起きている模様だ。ヤングジャンプなどの青年コミック誌などは、人件費と印刷コストが膨大にかかっており部数を刷れば刷るほど赤字。紙のコミックが出ることでその赤字をトントンに回収出来ている。電子化してもコミックが売れるとなれば飛びつかない理由はなくなってくるはず。
とにもかくにも今後の週刊コミック誌の電子化は「Dモーニング」の成果にかかっているとも言える。モーニングを毎週読んでいる人は是非、アプリ「Dモーニング」に乗り換えてみてはいかがだろうか。