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とある神様の転生記録-2

作者:水無月 葉
 やあやあ皆様おはこんばんにちわ。最近《紡ぎ手》とか呼ばれ出した元・人間の現在・神なヴァイス(仮名)です。まあ私は一種の縁結び神ですからね。どうしても戦いを避けられない場合はだいたい糸を使ってますし、そう呼ばれるのも仕方ないのかな、と思う今日この頃。

 閑話休題、それはさておき。
 今回は丁度折り返し地点に当たる50回目の事なのですが、私、TSしちゃったんですよね。trans(トランス)sexual(セクシャル)です、性転換です。余計な付属品もありましたが、見事すぎるほどに初代の私を男性化して美化した感じの見た目でした。髪と目の色は異世界っぽい感じになりましたけどね。

 さて、あんまり喋るとネタバレの恐れがあるので前書きはこの辺にするとして、そろそろ本編にいきましょうか。
 今回もその時々によって……というか、外面のイメージと内面のイメージのギャップが酷い事になっていますが、まあ楽しんでくださいませ。


Vol.50



 己の状態・状況を認識してまず真っ先に思った事は、『何故“私”の意識が表に出ているのか』と言うことだった。
 しかしそれについて考えを巡らせるよりも早く強い睡魔に襲われて、私の意識は一度落ちてしまい。
 ……次に覚醒した時には、己の状況、その他諸々の事情を認識し、その上でほぼ全てを理解した。理解してしまった。

 ――どうやら私は、性転換して転生してしまったらしい。



 ・
 *
 ・



 性転換転生。
 つまり、俗に言うTS転生と言うやつを体験したのは、今回のを除く50の生の中でも初めての事だ。生きるのに飽き転生にも驚き飽きてきた頃にこの仕様とは、なかなかどうして神様は気が利いている。いや、おそらくは魂量の調節の為、それまでいたのとは違う世界に回されることとなった際に私の魂が強すぎてシステムにバグが生じた末の結果だろうとは思うのだが。
 いやはや、本当にこれは予想外だ。

「アル。アルマ? まだ寝ているのか?」

 “アルマ”は今世の“私”の名前。この声は私の母親のもの。少々無骨な喋り方で実態も無骨で美人な軍人さんだが、良き母だ。怒ると般若になるけど。うん、母様がキレないうちに出て行こう。
 再度私の名を呼ぶ母に少しばかり声を張り上げて返事を返し、髪を整え、服のしわを伸ばして素早く身支度を整えるとお待たせしましたと部屋の外へ顔を出す。

「嗚呼、アルマ! 一昨日倒れたと聞いて心配していたんだ、体はもう大丈夫なのか?」
「そんな心配されずとも、体調はすこぶるいいですよ、母様」

 扉の隙間からひょっこり顔を出した私の体をさっと持ち上げて頬ずりしてくる母に思わず苦笑いを浮かべつつ、無難な答えを返しておく。……あ、因みに倒れたのは“私”が微睡みから完全に目覚めて、尚且つ過去全ての記憶を一気に思い出したせいで知恵熱を出した為です。母親に対する口調エトセトラは、恐らく無意識に壁を作ろうとした結果かと。
 私の答えの何が気に入らなかったのか、子供抱きされたままの状態で歩き出した母が口を尖らせる。

「むう。何時も言うのだがアル、母様に敬語を使わないで欲しい。実の母子(おやこ)なのに、堅苦しいではないか」
「何時も申し上げておりますが母様、これが私の地(というキャラ設定)です。今更この口調を変えろなどと、酷な事を仰らないでください。それに、堅苦しいのは母様に似たのであって、仕方のない事かと」

 そう言い返すと母様は、額に手を当て嗚呼と溜息にも似た声を漏らす。

「確かに母様は自他とも認める堅物だがね、アル。母様はアルのように口は回らないよ。全く、こう言うところばかり父様に似てしまって……。今からそんなでは将来婿の貰い手がなくなってしまう」
「ふふ、それも心配入りませんよ、母様。幸い、私は父様と母様から良い所ばかり貰いましたから。それに父様にはちゃんと母様()のような素晴らしい人がいますし」

 きっと大丈夫ですよ。とキラキラしい笑顔を意識して私はにっこりと笑う。そろそろ自分の年齢を数えるのが面倒になるほど生きただけあって、我ながら素晴らしい演技力だと思う。つーか、吹っ切っきって演技しないとこんなのやってられん。見た目は子供、頭脳は大人! を地でいってるうえに体は男、心は女! な隠れカマーさんとかマジやってられっかってーの!! 嗚呼、さっさとこの生活から抜け出したい。てゆーか義務教育(驚いたことに教育制度はしっかりしてた。中世っぽいのに意外だ)終わったら即トンズラしてやるわっ。
 と、密かに決意を固めている間にリビングにたどり着いたらしい。ここに来てようやっと床に降ろされた私は、リビング兼ダイニングルームの扉を開く母様によちよちと(体は現在3歳なのだ)ついてゆく。
 この世界ではありふれた内装の居間には7人の先客がおり、その内の一人が私達の存在に気が付いて声を掛けてくる。

「イルマさん、お久しぶりです。帰っていらしたんですね」
「ああ、つい先程ね。ウリシュラにエリス、それにオリヴィエ、カーラ、キム、クロリサ、ケリー。そちらは大事ないか?」

 母のご機嫌伺い(?)に愛想良く、もしくは元気いっぱいに返事をする二組の母子(おやこ)達。ちなみにウリシュラ(28歳)の子がオリヴィエ(男8歳)とクロリサ(女10歳)、エリス(30歳)の子がカーラ(女13歳)、キム(女6歳)、ケリー(女1歳)。母親含めお子様達含め、この人たちは皆私の家族だ。……あ、仲が大変よろしい他人と言うわけではないよ? 従兄弟でもない。マジで家族だ。社会的にもしっかり保障されている、一親等及び二親等だ。兄弟は皆腹違いだけど。
 まあつまり、父はハーレムを形成していたという事だ。すでに故人だけど。死因は腹上死だったらしい。そしてその時できた子がエリスの三女、ケリーという。突っ込み所が多すぎて笑うしかないと思う(アルマ)3歳の春だった。



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 *
 ・



 敬語キャラを自分にい、どうにかボロを出さず今世の家族をだまくらかして生きて、もうすぐ15年になる。
 幼く、また微睡(まどろ)みにあった意識がはっきりしだしたばかりの頃に知り得なかった事も覚え身につけて来たが……もう本当に逃げ出したい。切実に逃げ出したい。大事な事だからもう一度言う。

 逃 げ 出 し た い 。

 意味分からんとか思わないでくれ。きっちり説明する。だからお願いします見捨てないで(泣)
 と、柄にもなく誰かに泣きつきたくなるくらいにこの世界の水が合わないのだ。
 まあただ逃げたい逃げたいと連呼するだけでは本当に何も全く分からないだろうと思うので先程の宣言通り説明するが、まず、この世界はジーンという。地球でいうユーラシア程の大陸が一つ、オーストラリア二つ分が三つ、南極大陸程度が一つの計5つ陸地があり、国も人種も多数ある。私が住むのはオーストラリア二つ分の陸のうち、一番小さいロトロストスのジケギグズ国だ。気付いた自分が虚しいが、この国名、濁点を反転させたらすごく聞き覚えのある商品名になる。あと陸名、ロとトとスしかねぇ。
 閑話休題(それはさておき)、ここジーンの人類も地球の人類と基本的な特徴は一緒だ。手より足が長く、直立して二足歩行し、体表面の殆どの毛が薄いため皮膚が露出する。性機能も全く同じ。美的感覚も変わらない。まあ、地球人よりは身体能力も五感も高いけど、でも決定的に違うのは、彼、若しくは彼女らには耳か生えている、という事だ。
 ……なに、そんなの当たり前だって? 嗚呼、言い方が悪かったね――耳は耳でも、獣の耳が生えているんだよ。勿論尻尾も生えている。そしてその獣の種類も様々。子供はともかく、いい歳した大人がコスプレかと突っ込みたい所だが、全て本物だ。生物(なまもの)だ。まあ、50回も転生していればこういう種族を見ることなどザラであったため、今更驚きもしないし、また逃げ出したい理由でもない。むしろウェルカム獣耳。猫なら尚良し。ただし可愛い子に限る。
 まあ6割本気な話は置いておいて、問題なのはこの先だ。
 この世界、恐ろしい事に成人(15歳)を迎えた男は最低3人以上の妻を娶るのが当たり前。と言うか、寧ろ義務。おいコラ中身が女な私に3人も女を囲えと? っざけんじゃねえぞ法律作ったやつ出て来いやァ! と、それを知った時の私は心の中所か人目も体裁も繕わず現実(リアル)に叫びたかったが、そもそもがこの世界、女の数に比べて男の数が圧倒的に少ないらしい。故にこそ この法律があり、実際、異母兄弟含めて12人(結婚して出ていった姉達含む)も子がいるのに、男はたったの2人。それ以上産んだにも関わらず全てが女だったという事もあるらしい(姉の実話)。どんだけだ。
 そして更に常識をひっくり返されるのが、男女の在り方。
 地球で言えば男尊女卑もしくは亭主関白(両方とも20世紀あたりからは必ずしもというわけではなかったが)であるのに対し、ジーンでは女こそ外に出て働き一家の大黒柱となり、男は家事に子育てなどをして家を守るのが一般的。つーか家にいて当然。故に10歳で義務教育を受け始めた私も、5年間学校で料理洗濯掃除に裁縫、その他諸々の必修科目を受け、花嫁修行ならぬ花婿修行をしなければならなかった。まあ、もうすぐ終わるんだけど。
 50回も転生しておきながら一度として前世の常識が崩される事が無かった事に心から感謝すると同時に、本当に何なんだこの世界は! と、叫びたい所だが、これものっぴきらない事情……というか、越えられない性別の壁というべきものがある。具体的に言えば、男は平均して背が低く華奢で、女は平均して背が高く力が強い所とか。前世の常識からいくとお前ら絶対生まれる性別間違ってるだろと言いたいが、男はちゃんとついてるし、孕むのは女だ。……本当、最初の頃はまだしも、なんで50回目にもなって私が表に出てるのかな。何時もなら“私”は深く眠ってて、今代は今代で新しい人格が出来てた筈なのに……そしたら中身で腐るか外身で腐るか悩まずにすんだのに…………。うふふふ、なんかそのうち気が触れそう。――ああそうか、気が触れたフリしちゃえばトンズラするのも簡単だよねぇ……うん、この手でいこうかな。むしろ逝かせようかな、重婚が義務とかいう制度作った時の権力者。もう死んでるから噂である事ない事広めて社会的に。
 まあ8割本気な冗談は置いておいて、以上が今のこの環境から逃げ出したい間接的な要因。直接的な要因は……うん、まあ学生時代に後回しにしていた諸々のツケが一気に回ってきたのが原因だから、自業自得っちゃあ自業自得なんだけど、なんだけど!

 ……しつこい奴は嫌われるよ?

 眼前に差し出されるカラフルな花の意味を知りたくもないのに正確に読み取ってしまえる事に心底うんざりしつつ、殺気にも似た雰囲気を醸し出す綺麗どころ…………うん、殺伐としてなければ綺麗どころな女性陣にだらだらと冷や汗を流す。くそっ、無駄に高い理解力と器用さが今は恨めしい。手ぇ抜いても学年20位以下にならないとかこの体スペック高すぎるだろ。ここ国一の学校なのに。
 いやしかし……マジでどうしよう。つーかどうやったら逃げれるのだろう。気が触れたフリというのは、いくらなんでも今世の親に失礼すぎるので却下のつもりだったんだが……これは、割と本気で検討するべきか。それともこの人たち蹴散らしてトンズラするか。一般的には弱い男だが、50回分の人生経験に裏打ちされた技術はダテじゃない。こいつらが良家の子女な上に二つ名が付くくらい強いくとも、恐らくできない事はないだろう。幸い、私の身体能力は男の平均より女の平均の方に近いし。
 大混乱した頭のまま脳内会議で可決された学校崩壊(物理)の案が実行される前にひょっこりと校長が顔を出す。自分より巨大な害獣相手にも果敢に飛びかかっていく女性かりうどですら私の求婚者たちの覇気に当てられて裸足で逃げ出していたので、恐らく他の教師かその場にいた通行人から連絡を受けたのだろう。優しい目でニッコリと笑う校長に正気を取り戻したものの、物騒な思考からは抜け出せなかった私は縋るように校内最高の権力保持者を見るが、まかせとけとばかりの態度でとんでもないことを言い出した。

「全員と結婚しちゃいなよ☆」

 グッと親指を立ててゴーサインを出す校長にかなり本気で殺意が湧いたが、直後私を襲った悪寒に身を震わせ、恐る恐る後ろを振り返る。ギラギラと情欲たぎる肉食獣と目があった。

 ――ああ、君たちは校長の提案に賛成なんですね、わかります。だからそんなにじり寄って来ないでください。怖いです。

 口に出してそう言いたいけれど、言ったら最後、精根尽き果てるまで貪られそうな気がビシバシするので口元を引きつらせて一歩、二歩と後退する。あ、これ多分花束受け取らなくても食われるかも。性的な意味で。うわあ、男になって貞操の危機を迎える羽目になるとか、想像したことなかったわあ。女って怖い((((;゜Д゜))))
 なんて、あまりの緊張感に現実逃避を試みるも、とん、と背中が壁にぶつかった音で否応なく現実と向き合う羽目になり――気が付けば手の中に捧げられた花束が。しまった、どうにか撤回しなければと口を開く前にまたもや背筋を襲った悪寒に従い咄嗟に握った花束ごと両手を突き出せば、一気に距離を詰めて来た女性の顔面にぽふっとクリティカルヒット。

「「「「「「………………」」」」」」

 そして私の目の前に大きく横たわる、痛々しい沈黙。
 や、ややややばいやばいやばいやばいッこれ放っといたら殺気に転化するよねやばいよねこれ!? と、パニックになりそうな思考をなんとか制御して、この過ぎるほどに痛々しい沈黙を破るべく声を張り上げる。

「わ、私はっ! その、こういうのはとっておきたいタイプなんですッ。ですから、ええと……け、結婚式……いや初夜まで待ってもらえませんかっ?」

 ……せ、背中がむず痒いっ。なんだこの乙女ならぬ乙メン発言!? 咄嗟の事とはいえ、我ながら気持ち悪いよ! と、後々冷静になった時に悶絶したが、その時の私に余裕なんてものはノミ虫ほどもなく、むしろノミ虫ほどの跳躍力でもって遥か彼方に飛んで行ってしまっており、かなり本気で泣きも入っていた為かあっさりと承諾されてしまい。
 ……取り敢えず首の皮一枚で命拾いならぬ我が身の純潔を拾うことに成功した私が、どうやって結婚式を阻止するべきか頭を捻るもどう足掻いても回避は無理と結論付けるまであと数十分、ならばできるだけ先延ばしにしようと思いつくまで数時間、その方法を思いつき実行するまで約一月(ひとつき)、更には極力親に迷惑を掛けず、ついでに生存を絶望視させて結婚式前に姿を眩ませる方法を思いつき、実行に移すまであと約半年。

 ――思えば、この時期が一番大変だったなぁ………………。



 思いついたのでやってみた。後悔はしていない。



★登場人物★
*コルネイユ・アルマ(男)
 本編主人公。ロトロストス大陸では苗字がなく、名前の最初に父親の名前を入れるのが習わし。結婚すれば、コルネイユ・ヌル・アルマという風になる。
 白い猫の獣人で、檸檬(レモン)色の髪に緑の目の美少年。自らの意識は封印できずとも強すぎる力の封印には成功していたらしく、15の秋に貞操を守る為獣に食われたと見せかけて白昼堂々と姿を眩ました後、封を解いたら髪が真っ白になった。が、むしろ好都合だと思っている。
 ジーンの一般男性にしては背が高く、20歳の頃には173cmまで伸びた(一般成人男性の平均は165cm)。小さな頃からこっそり体を鍛えていたので、脱いだら見事な細マッチョ。体型はゆったりしたローブで誤魔化している。

*ジョザイア・ヌル・コルネイユ(男)
 アルマの父。故人。
 垂れ耳(ロップ)系の兎獣人。アルマの髪色や口元、輪郭などはこちらから受け継いだ模様。
 死因が腹上死である為、アルマは「父様どんだけ性欲強いんだ? むしろウサギの性欲が強いって本当だったんだ」とか思っているが、実際は毎夜毎夜3人の妻に襲われ続けていたせい。どこのエロゲだ。

*コルネイユ・アインス・イルマ(女)
 旧名サムエル・イルマ、アルマの母。コルネイユ・アインスは『コルネイユの一番目の妻』という意味。
 茶虎猫の獣人で、黄色地に茶色のメッシュが入った髪にアルマと同じ緑の目。仕事中は緑灰色の軍服を纏う。
 速さで勝負する軍人。ただし扱いは地方公務員。

*コルネイユ・ツヴァイ・エリス(女)
 コルネイユの二番目の妻。ドーベルマンの獣人。カーラ、キム、ケリーの母。出て来てはいないが、他にも多数子供がいる。

*コルネイユ・ドライ・ウリシュラ(女)
 コルネイユの三番目の妻。コアラの獣人。オリヴィエ、クロリサの母。出て来てはいないが、他にも多数子供がいる。

*アルマに求婚を迫った女性たち
 合計で5人いて、犬系、栗鼠系、象系、鼠系、獅子系の獣人。みんな良家の令嬢。実力も権力も半端ない。二つ名が付くレベル。でも本気だしたアルマには束になっても勝てないと思われる。


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