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【社説】

プルトニウム 保有ゼロこそ目標だ

 日本はオランダでの核安全保障サミットで、核兵器に転用可能なプルトニウムなどの一部を米国に引き渡すことを決めた。プルトニウムを減らすためには、核燃料サイクル計画など止めたらどうか。

 米国に引き渡されることになったのは、茨城県東海村で日本原子力研究開発機構が保有する、高濃縮のウランとプルトニウム計三百三十キロだ。

 東西冷戦時代に米英両国から提供され、研究用に使われてきた。純度が高く、比較的容易に核兵器への転用が可能である。米国は日本の原子力施設のテロ対策に強い懸念を抱いている。

 核兵器の主材料になるプルトニウムはこれだけではない。

 日本は、エネルギー政策の根幹として、核燃料サイクルを進めてきた。原発の使用済み燃料に再処理を施し、プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を作って、高速増殖炉で再び使う、核燃料のリサイクルである。

 しかし、計画の要として機構が運営する高速増殖原型炉の「もんじゅ」(福井県敦賀市)は一九九一年の運転開始からトラブルが相次いで、発電らしい発電はしていない。

 原子力規制委員会は昨年五月、無期限の運転停止を命じている。核燃料サイクルは事実上、破綻状態だが、新エネルギー計画案では維持する方針である。

 日本はすでに四十四トンのプルトニウムを持っている。五千発以上もの原爆を製造できる計算だ。

 核拡散に敏感な米国はこの“潜在力”にも懸念を抱いている。

 六ケ所村の再処理工場が稼働を始めれば、年間約八トン増えるという。これらは、どうやって減らすのか。

 現状では、MOX燃料を通常の原発で使うプルサーマル以外に手だてはない。だが、原発一基あたりの年間消費量は〇・四トン程度と多くはない。玄海原発3号機などで運転実績はあるものの、放射線量の高さなど安全上数々の不安が指摘されている。

 二〇二二年までに原発全廃を決めたドイツでは、二十五年以上かけて一六年までにMOX燃料の処理を終える計画だ。

 これ以上プルトニウムを増やさないためには、発生源の原発を減らしつつ、再処理、つまり核燃料サイクルを放棄する以外にないだろう。

 新エネルギー計画に盛り込むべきは、プルトニウム・ゼロへの工程表なのである。

 

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