安さと活気が魅力の名古屋市中区の商店街・大須。4月1日からの消費増税を控え、買い物はどうなるのか。歩いてみると、店は頭を悩ませ、やりくりする客からも不満がもれた。

●商店、価格維持したいが…

 250円弁当などで知られるスーパー「サノヤ」。主婦らで混みあう店頭の価格表示は本体と税込みの両方だが、本体を一回り大きく目立たせる。佐野由典社長(55)は「増税の影響がまったくないとは言えないが、生鮮食品を扱うのでそれほど影響はないのでは」。それでも、より安く仕入れる工夫をするという。

 ハンバーグなどが人気の喫茶店「珈琲(コーヒー)ぶりこ」は、2月に本体価格を上げた。税込み400円だったコーヒーは税抜き400円に。4月から8%の税込みで432円になる。古川真琴社長(42)は「小麦粉やオリーブオイル、チーズなどの値上がりが続き、価格維持がすでに限界」。メニューには、最近の値上げに理解を求める説明を記す。

 大須には若者向け衣料品店も多く、競争は激しい。

 20~30代の女性向けの店では3%のアップ分を本体価格を下げて吸収し、税込み価格を据え置こうと考えていたが、店長の女性は「据え置きを1年間でも続けたら経営が厳しい」と迷う。男性向け衣類を扱う「SWAG(スワッグ)」の竹川錬店長(20)は「品質に自信がある」。本体価格は維持し税率アップ分を上乗せする。

●買い物客、少しでも節約

 お客も悩む。サノヤに来た市内の40代女性は「増税してもあまり消費行動は変わらない。必要なものは買う」。ただ、中学生の長男がいる別の40代女性は「腐らないものは今のうちに買う。子どもは食べ盛り。少しでも節約しないと」。

 中区の主婦(75)は年金が夫と合わせて月8万円。家賃は5万円で貯金を切り崩し、20年近く同じコートを着る。「食品くらい税金をかけないで」と怒る。

 中村区の一人暮らしの60代男性は貯金がなく、生活保護を受ける。住宅費を除くと月7万~8万円。そこから、食費、電気、ガス代を払う。外食頼りから自炊に切り替えるが、料理は苦手で、レトルト食品を食べる日が増えそうだ。

 持病を抱えるが、健康的な食生活とはほど遠い。「貧乏人いじめの増税だ。何とかならないのか」と力なく話した。(渋井玄人)