台湾の立法院(国会)を大学生らが占拠するという異常事態が続いている。

 馬英九(マーインチウ)総統の率いる国民党政権が、中国との経済協定を強引に進めたと反発している。

 政権や既成政党への不満に加え、中国への急速な接近をめぐる不安が根底にあるようだ。

 こうした若者らの奔放で自由闊達(かったつ)な政治行動は、80年代以降の台湾が成し遂げた民主主義の発展のあかしともいえる。

 馬政権は強制力を避けて慎重に打開策を探ってほしい。台湾民主政治の歩みに禍根を残さない収拾を望みたい。

 混乱のきっかけは、馬政権が昨年、中国と署名した「中台サービス貿易協定」だ。金融、運輸、医療などの分野で互いの市場開放を取り決めた。

 立法院での承認をめぐり、与野党は対立した。その末に国民党が委員会の審議を打ち切ったことが学生らを怒らせた。

 「中国は大事だが、接近し過ぎている」。そんな思いは多くの市民も共有している。学生らの行動は同情を集め、大学教授らの支援も広がった。

 馬政権は、中国との関係改善を掲げて08年に発足した。その方針は当初広く支持を集め、10年に中国と「経済協力枠組み協定」という包括合意をした。

 今回の協定は、その中の一分野にすぎない。馬政権はそう軽くみたのではないか。4年前の協定当時と比べ、説明に丁寧さが欠けたことは否めない。近年相次いだ政権の不祥事で不信が高まっていた背景もある。

 学生らは問題提起という一定の役目を果たした。全般に統率もとれている。だが、占拠をずっと続けるわけにはいくまい。どこかで落としどころを見据える決断が必要になろう。

 最大野党の民進党は、協定承認に反対し、学生の行動を支持している。ただ、反原発など最近の運動をめぐっては、市民の自発的な動きが目立ち、民進党の存在感が薄い。民意の核としてどう役割を担うか、課題を突きつけられている。

 これまでの台湾の民主化の過程は、他国の事例と比べて犠牲者が少なく、野党結成の容認、総統の直接選挙、政権交代へと、穏やかに進んできた。これは誇るべき歴史だ。

 学生らの意識の高さと、彼らが立法院から排除されずにいる様子には、対岸にいる中国の心ある人々も注目している。

 台湾の民主主義を守るという見地から、与野党、学生、市民のそれぞれの立場で何ができるか、協定の審議でどこまで妥協できるか、再考してほしい。