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「労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する研究会」報告書

昨日、厚生労働省の「労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する研究会」報告書が公表されました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000042212.html

報告書は、日本再興戦略(平成25年6月閣議決定)等でも、「多様な正社員」へのキャリアアップ支援等といった労働市場政策の観点から「職業能力の見える化」を促進することが重要な課題に位置づけられていること等を踏まえ、国内外の労働市場における能力評価制度の活用の実態・課題などを分析の上、能力評価のあり方に関し、以下の3点を柱として今後の施策の方向性について提言しています。  

新たな業界検定の整備

2  技能検定制度の見直しを含む職業能力評価の仕組み全体の見直し・体系化

3  職業能力評価と教育訓練、マッチングなどの労働市場政策上の統合的運用

厚生労働省は、この報告書を踏まえ、職業能力評価制度のあり方について、さらに幅広い観点から検討を進め、「職業能力の見える化」を推進していきます。

雇用維持型から労働移動促進型へ、といったキャッチフレーズは、それを下支えする労働市場インフラ、とりわけ企業を超えた職業能力評価システムが確立していなければ、単なる下方移動の促進にしかなりません。

その辺の理解のないまま流動化を叫ぶ人々も多いですが、さすがに日本再興戦略はそこをきちんと理解した上で、「職業能力の見える化」を求めており、この報告書はそれを受けて、今後の政策の方向性を示そうとしています。

とはいえ、そもそも今まで内部労働市場にどっぷりつかって企業を超えた能力評価の必要性に対してきわめて冷淡であった一般社会感覚を考えると、一歩進めるのもなかなかとっかかりがないところでもあり、業界検定の整備というあたりから入っていこうとしているようです。

<現状・課題>

○ 少子高齢化や経済のグローバル化の中での 「人材力強化」 の必要性

○ 産業や労働市場の構造変化などに伴う個人の円滑 なキャリアアップや転職支援、 非正規雇用労働者などの「多様な働き方」を実現するための支援の必要性

→「日本再興戦略」 などを踏まえ、 非正規雇用労働者 、キャリア形成上の課題を抱える層のキャリアラダー(はしご) として、 業界検定といった能力評価の仕組みを整備するなど、職業能力の「見える化」を促進 すること が喫緊の課題。

<今後の施策の方向性>

業界共通の「ものさし」としての職業能力評価制度の整備について、以下を提言。

1  新たな業界検定の整備

○ ジョブ型労働市場で、非正規雇用労働者が集積し、キャリアアップの必要性・効果が高く、雇用吸収が見込まれる業種・職種(対人サービス分野など)が重点

○ 人材ニーズを直接把握する業界(団体)が、採用・人事の基準としての位置づけ・活用を目指し、現場で求められる実践力などの職業能力を直接把握・分析の上、検定などの評価手法を開発・運用。それに対し、国が弾力性を備えた基準などによって質を保証することで、実践性を備えた、新たな業界検定の仕組みを整備

2       職業能力評価の仕組み全体の見直し・体系化

○  技能検定制度についても、労働市場での活用を念頭に、試験の実施方式や

内容の改訂、ものづくり人材養成の裾野(3級など)を拡大するなど、課題・ニーズに応じた充実・見直しが必要

○  これら職業能力評価の仕組みが、全体として安心・信頼性を持って活用されるよう、国が共通の基準を整備し、公的支援の対象にも位置づけることで普及を促進

3      職業能力評価と教育訓練、マッチングなどの労働市場政策上の統合的運用

○  職業能力評価と教育訓練プログラムを、共通の人材像に基づき一体的に運用

○ その成果をジョブ・カードなどに反映し、キャリア形成支援に活用

○ ハローワークなどの職業紹介機関でも、職業能力評価をマッチングの鍵として積極的に活用するなど、労働市場政策上の統合的な運用の仕組みを整備

→これらの取組を通じ、「産業界が求める職業能力」と「各人が有する職業能力」を客観的に比較することが可能な「ものさし」を整備することにより、マッチング機能の最大化を目指す。

<参考>

厚生労働省では、日本再興戦略を踏まえ、「多元的で安心できる働き方」の導入促進の観点から、平成26年度から、業界検定の導入ニーズの高い業種・職種に焦点を当て、業界検定などのツール策定、モデル活用などに取り組む「業界検定スタートアップ支援事業」に着手することにしています。

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