養殖場「脱走」マグロ登場=自由に泳ぎ味上々
時事通信 3月29日(土)7時0分配信
漁師が「脱走マグロ」と呼ぶ、養殖いけすから海に逃げたとみられるクロマグロがこのところ各地で漁獲され、魚市場にお目見えしている。天然物として扱われるが、養殖物と変わらないトロたっぷりの良好な脂乗りが最大の特長。中には、純粋な天然物に近い締まった食感を兼ね備えた上質魚もいるため、注目され始めている。
東京・築地市場(中央区)には昨年から、目利き自慢の仲卸業者らが「小型なのに不自然なほど脂が乗っている」と首をかしげるマグロが頻繁に入荷している。産地は紀伊半島や四国、九州のいずれも大規模な養殖施設の周辺。過去に養殖物だったと断定はできないが、天然物が取れない時期にも入荷するため「養殖いけすから逃げた可能性が高い」と卸会社は説明しながら販売している。
ハマチなどの養殖魚も逃げることはあるが、いけすが壊れるような荒天時がほとんど。一方、体が大きなマグロは「平常時でも網を突き破って出る場合がある」と大手水産会社。いけす周辺には「逃げた魚目当ての漁船が集まってくる」(三重県の養殖業者)という。
脱出してからは運動量が増えるためか「歯応えなどの食感が養殖物より向上している」と築地の仲卸業者。餌に由来する養殖魚特有の臭いも薄くなっている場合が多く、味の評価は上々だ。
純粋な天然物を指名する高級すし店や、生産履歴のある養殖物を好む回転すしチェーンが扱わないため、価格は高級なクロマグロとしては安値。品質が高い割にお手頃とあって、魚の産地や履歴にこだわらない外食店などからの人気が高まっている。
最終更新:3月29日(土)12時37分
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