政府は28日、首相官邸で開いた国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)で、特区の第1弾として「東京圏」「関西圏」、沖縄県、新潟市、兵庫県養父市、福岡市の6カ所を指定した。特区は地域限定で規制改革を進め、日本経済の成長を促す。首相は新たな提案があれば追加指定を検討する考えを示した。
首相は国家戦略特区を、医療や農業などの規制緩和に省庁や業界団体などの抵抗が根強い「岩盤規制」の突破口と位置付ける。会議では「岩盤規制を打破するためのドリルを動かせる体制が整った」と強調。「今後2年間で岩盤規制改革全般をテーブルに乗せ、突破口を開いていく。聖域はない」とも語った。
大都市部では、大胆な規制緩和で日本経済の成長をけん引する役割が期待できる地域として東京圏と関西圏を選んだ。
東京圏は都内、神奈川県、千葉県成田市で構成。2020年の東京五輪をにらみ、グローバル企業を誘致する国際的なビジネス拠点を目指す。関西圏は大阪、兵庫、京都の3府県で、京都大学iPS細胞研究所などを擁する強みを生かして成長産業と位置づける医療のイノベーション拠点にする。
沖縄県は外国人観光客の誘致を目指す観光産業の拠点として選定し、査証(ビザ)の発給要件の緩和などを想定している。米軍普天間基地(同県宜野湾市)移設問題にも配慮した。
岩盤規制の代表格の「雇用」「農業」では、それぞれ改革に積極的な自治体を選んだ。雇用は解雇が許される事例を示すことでベンチャー企業が人を雇いやすくするなどの提案をした福岡市を指定。農業では農地の流動化を阻む農業委員会の改革に意欲を見せた兵庫県養父市と、大規模化を推進する新潟市を選んだ。北海道の自治体も手を挙げたが「改革意欲が乏しい」(政府関係者)ことなどから落選した。
国家戦略特区には、大都市圏の「広域特区」と特定のテーマの「バーチャル特区」の2種類があるが、今回は特に区別せずに指定した。指定地域は5月に国、地方、民間による協議会を設けて今夏をめどに具体的な計画をまとめる。政府は計画を認定したうえで、企業誘致や雇用で数値目標を示して達成度を定期的に検証する。
指定地域の計画は、規制改革で具体的に踏み込んだ内容にできるかが特区の実効性を占う。政府は地域の追加指定も検討しており、今回の指定をモデルケースに規制改革の流れを全国に広げられるかも課題になる。
安倍晋三、農業、東京圏