<フィギュア>浅田真央 若手が見惚れるトリプルアクセル
トリプルアクセルの伝説
日進月歩でテクニックが進化していくのがスポーツ界の常だが、女子フィギュアに関しては現在、世界レベルの大会でトリプルアクセルを跳んでいる選手は浅田しかいない。
しかも、伊藤みどりさんが22年前のアルベールビル五輪で女子として初めてトリプルアクセルを成功させて以来、五輪で成功させたのはバンクーバー五輪とソチ五輪の浅田だけ。だからこそ浅田は「アクセルは自分にしかできないジャンプだから」と、このジャンプに強い思い入れを見せ、調子が悪くても妥協することなくプログラムに取り入れてきた。
「小さい頃から、伊藤みどりさんにずっと憧れていた。オリンピックでは、伊藤みどりさんが跳んだトリプルアクセルを、自分も受け継いでいきたいと思ってきた」と言うのだ。
「集大成」という位置づけで臨んだソチ五輪を終えた今、来季以降の去就はいまだ不透明だが、仮に浅田が引退するとなればこのままトリプルアクセルが女子フィギュア界から消滅してしまうことになりかねない。しかし、世界選手権という大舞台で、これ以上ないほどの出来映えのトリプルアクセルを見せたことで、影響を受けた若手や子どもたちが将来、トリプルアクセルを継承していくかもしれない。そのためにも今回の大成功は意義深いことだったのだ。
SPの1位から3位までが出席して行われた会見では、海外メディアから「フィギュア界で最も古い、2010年にキム・ヨナ選手が作った記録を抜いた。しかもトリプルアクセルを入れて、新記録を作った。それに対してどう感じているか?」という質問が出た。浅田は「世界歴代最高と聞いたときはとてもビックリしたし、うれしかった。得点というのは後からついてくるものでいつもは目標にしていないが、トリプルアクセルという、現時点で自分しかできないジャンプを入れての最高の演技での得点だったのだなと感じている」と返した。
SPでは「100点(満点)です」と自己評価した浅田。次の目標は、フリーで再びトリプルアクセルを成功させ、最高の演技でシーズンを締めくくることだ。それはフィギュア界の未来にトリプルアクセルを継承していくこと、そして「トリプルアクセルの浅田」という伝説をつくっていくことへとつながる。
(文責・矢内由美子/スポーツライター)