社説:エネルギー計画 原発維持は公約違反だ

毎日新聞 2014年02月26日 02時35分

 政府が、新しいエネルギー基本計画の原案を決めた。素案にあった原発重視の表現を一部修正するにとどめ、原発を活用し続ける方針を打ち出した。

 案じたとおりの結果だ。これでは2012年末の衆院選で自民党が掲げた「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」という公約に反する。計画の閣議決定に先立つ与党協議で、公約に即した軌道修正を図るよう求めたい。

 原案は「可能な限り原発依存度を低減させる」との目標を掲げた。それ自体は否定するものではない。問題なのは、その目標への道筋を描かず、むしろ原発の存続を前提にしていることだ。

 原子力規制委員会の規制基準に適合した原発について「再稼働を進める」と明記した。将来の原発の規模に関しても、コスト低減などの観点から「確保していく規模を見極める」とした。将来的にも原発ゼロは想定していないと読める。

 原発依存を続けるためには、新増設や建て替えが必要になるが、「脱原発」を打ち出した民主党政権時代のエネルギー政策は、新増設禁止を原則としていた。今回の原案はその原則を盛り込まず、新増設にも道を開いた格好だ。

 政府は東京都知事選への影響や経済産業省の審議会がまとめた素案の表現に対して自民、公明両党内から「原発偏重」と懸念する声が上がったことに配慮し、原案の決定を先送りしていた。その結果、例えば「基盤となる重要なベース電源」という原発の位置づけは、「基盤となる」が取れて「重要なベースロード電源」に変わった。

 いったい何が変わったのか。茂木敏充経産相は記者会見で「基本的に方向性が変わったとは認識していない」と説明した。反原発派の批判をかわすために表現を微調整しただけということらしい。これでは「可能な限り原発依存度を低減させる」という目標達成の意欲も疑われる。

 自民党が国民に約束した原発に依存しない社会を実現するには省エネを進め、再生可能エネルギーや効率の良い火力発電を普及・拡大する必要がある。しかし、それには電気料金引き上げなどの高い社会的コストが伴う。脱原発を「可能な限り」ではなく着実に実現するためには、政府の強い決意が不可欠なのだ。

 国の中長期的なエネルギー政策の方向性を決める基本計画は、脱原発の目標をはっきりと掲げるべきである。そして、そこに至る政策を打ち出す必要がある。計画は自民、公明両党との協議を経て年度内に閣議決定される。国民の将来に責任を持った協議を求める。

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