ウクライナ:新政権が「右派セクター」取り締まりへ
毎日新聞 2014年03月28日 20時29分(最終更新 03月28日 23時21分)
◇狙いは5月25日の大統領選前に国内情勢の安定化
【モスクワ田中洋之】ウクライナ新政権が民族主義を掲げる極右連合「右派セクター」の取り締まりに乗り出した。右派セクターはヤヌコビッチ前大統領を追放した先月末の政変で一定の役割を果たしたが、過激な武闘路線を強め、ロシアと対立する要因となっていた。新政権内では右派セクターの活動禁止も検討されており、5月25日の大統領選を前に国内情勢を安定させる狙いがありそうだ。
ウクライナ西部で25日、検察官への暴行容疑などで指名手配されていた右派セクター幹部のムズイチコ氏が警官に見つかり、拘束時に射殺される事件が起きた。治安当局は偶発的に起きたと説明。これに対し、右派セクターの活動家約2000人が27日夜、首都キエフの最高会議(国会)を包囲し、事件の真相解明とアワコフ内相の辞任を求めて抗議。一部は庁舎のガラスを割るなど暴徒化した。
右派セクターは一連の反政府デモを主導し、ヤヌコビッチ政権を打倒したとして市民の一部から英雄視され、影響力を浸透させてきた。これに対し、ロシアは「新政権は過激派に乗っ取られた」と批判。右派セクターがロシア系住民の多い東部や南部で反ロシアの挑発行為を拡大すればロシアの軍事介入を招く恐れがあり、新政権としても右派セクターを「野放し」にできないと判断している模様だ。
ウクライナ与党「祖国」筋がロシア通信に語ったところによると、新政権の治安責任者の会合が28日に開かれ、アワコフ内相が右派セクターの活動禁止を提案、国家安全保障国防会議のパルビー事務局長がこれを支持した。最終的な決定は出なかったが、協議は継続されるという。
一方、右派セクターのヤロシ代表は5月の大統領選に立候補する意向を表明しているが、最新の世論調査によると支持率は0.9%にすぎない。非合法化されてもパルチザン的な活動を継続するとみられ、ウクライナの不安定材料となりそうだ。