連載がまもなく1年を迎える。今年度の最終回では放射線の高線量地域の生きものの動向に触れておきたい。
東京電力福島第1原発の事故後、放射線による生物への影響はどうなのか、という問い合わせをしばしば受ける。生物への影響は前例が乏しい上、長期にわたって表れることが予想されるので、因果関係の立証は困難になるだろう。論文として公表された研究結果はまだ数えるほどしかない。その一つに、琉球大学の大瀧丈二准教授らが実施したヤマトシジミというチョウの研究があり、ウェブサイト上で一般に公開されたものを読むことができる。
■農地耕せず里山の荒廃進む
私自身が高線量区域で調べ続けているのは、人が住めなくなり、農地を耕せなくなったことによる里山の変化だ。近年、農業従事者の高齢化や生活の変化によって、里山が荒廃したといわれるが、その「最終形」に近い姿が示されてしまったのだ。人が住めなくなった土地は自然に戻るのか、それとも別の姿になってしまうのか――。
土壌が放射性物質で汚染されたことで、稲作ができなくなり、水田から水が消えた。乾ききっていた冬の農地に、風に飛ばされた外来種セイタカアワダチソウの種子が舞い降りた。例年なら、田植えで水が張られると芽吹くことはないのだが、水の消えた農地では旺盛に生長して一帯を多い尽くし、秋にはその花で一帯が黄色い海となった。
水が消えたことで、カエルの仲間が消えた。シュレーゲルアオガエルが大合唱するはずの晩春の夜に車の窓を開けて走っても、わずかな生き残りの声しか聞こえなかった。
幼虫が水の中で育つアキアカネの姿も高線量地域の大部分から消えた。アキアカネは稲作の水管理と生活サイクルが一致するために、水田で特に繁栄していたトンボの仲間だ。
大瀧丈二、東京電力、生きものがたり、ヤマトシジミ
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