コラム:プーチン大統領が見据える「新世界秩序」
[26日 ロイター] - By Nina Khrushcheva
ウクライナ南部クリミア半島の編入を強行したロシアのプーチン大統領。筆者の頭をよぎるのは、もしロシアの領土拡大への欲望が、クリミア半島だけで満たされなければどうなるかという懸念だ。プーチン大統領はウクライナ東部や、さらにモルドバなどにも次々と手を伸ばしていくのだろうか。
実際、世界の目がウクライナの首都キエフでの反政府デモやソチ五輪に向いていた先月、モルドバのガガウズ自治区では、ロシアへの編入の是非を問う住民投票が静かに行われていた。クリミア同様に親ロシア派が多い同自治区では、住民たちは、「西側太陽系の小さな衛星群」でいるより、「プーチンの惑星」になる方が経済的に楽になると訴えている。
ロシア編入という言葉が耳に心地よく響くのは、もちろん机上の空論に過ぎない。暮らし向きが良くなるという約束は、西側の制裁でロシア経済が急速な下降線をたどれば、消えてなくなる可能性が高い。ルーブルはすでに対米ドルで今年に入って約9%下落した。多くの人(筆者自身を含む)は、プーチン大統領は近いうちに国際的な反発を乗り切れなくなるとみている。
しかし、もしプーチン大統領の真の狙いが、旧ソ連の再統合を指揮するだけにとどまらなかったらどうだろうか。プーチン大統領の長期的戦略が、世界で新たな保守的ブロックを構築し、冷戦構造の繰り返しを狙っているとしたらどうなるだろう。
反西側を声高に訴えることで、プーチン大統領はロシア国民を、これまで以上に従順かつ愛国的な市民という型枠にはめこもうとしているが、すでにそれは効果を表しているようだ。プーチン政権下では、国民の実に63%が自国を「大国」とみるようになっている。これは、過去数年で最高の水準だ。
西側と距離を置く今のロシアでは、プーチン大統領はジャングルの王として振る舞うことができる。そしてプーチン大統領にとってジャングルはロシア国内だけでなく、彼が作り上げようとしている全く新たな世界秩序でもある。
ロシアが、特にモスクワが2008年までに、かつてキリスト教正教会の中心地だった東ローマ帝国の首都ビザンチウムを模倣し始めたことは今や明らかだ。東ローマ帝国の公式の国章だった双頭の鷲の紋章は現在、モスクワ市内の地下鉄や政府の建物、赤の広場、ボリショイ劇場など随所で見られる。 続く...