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2014年3月28日 (金)

政府統計から見た日本経済の現状やいかに?

今日は3月最後の閣議日です。ですので、31日に公表される鉱工業生産統計を除いて、主要な政府統計が多数発表されています。すなわち、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計、経済産業省の商業販売統計、そして、総務省統計局の消費者物価 (CPI) などです。すべて2月の統計で、消費税率引上げ前の駆込み需要に支えられてはいるものの、基本的には順調な景気の回復ないし拡大を示していると私は受け止めています。まず、長くなりますが、本日公表された統計指標のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

失業率3.6%に改善 2月、女性中心に雇用けん引
雇用の改善が続いている。総務省が28日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は3.6%と前月から0.1ポイント改善し、2007年7月以来の低さとなった。厚生労働省が発表した2月の有効求人倍率(季節調整値)も1.05倍と同0.01ポイント上がった。改善は15カ月連続で6年半ぶりの高水準。4カ月連続で求人数が求職数を上回った。
政府の経済対策や消費増税前の駆け込み需要が、雇用情勢の改善につながっている。子育てが一段落した主婦が働きに出る動きが続いており、女性の完全失業率は3.3%と1997年9月以来、16年5カ月ぶりの水準に改善した。
全体の就業者数(季節調整値)は6332万人と前月から13万人増えた。雇用者の数に占める非正規労働者の比率は38.2%と、依然としてパートや派遣、契約社員といった非正規が雇用の回復を引っ張っている側面が強い。
新規求人数(原数値)は前年同月比7.1%増えた。11業種のうち10業種でプラスとなり、製造業は19.9%増と、6カ月連続の2桁増だった。働き方ごとに見てもフルタイムとパートタイムでともに7.1%増だった。月ごとの新たな求職者1人に対して、新たな求人が何人分あるかを示す新規求人倍率は1.67倍と、21年9カ月ぶりの高い水準になった。大雪で新規求職者が減ったことも数字を押し上げた。
2月の小売販売額、同月で過去3番目 駆け込みで高額品伸びる
経済産業省が28日発表した2月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は前年同月比3.6%増の10兆9130億円と、2月としては比較可能な1980年以降で過去3番目の大きさだった。増加は7カ月連続。消費税率引き上げ前の駆け込み需要で、自動車や冷蔵庫など高額商品の販売が伸びた。
小売業の内訳をみると、自動車が14.9%増と6カ月連続でプラス。大型家電の買い替えが進んだことで、機械器具も11.2%増だった。大雪の影響で野菜の価格が上昇し、飲食料品も1.7%増となった。
百貨店とスーパーの大型小売店は2.4%増の1兆4686億円と、7カ月連続で増加した。既存店ベースは1.3%増。このうち時計や宝飾品などの売れ行きが伸びた百貨店は2.9%増。スーパーは衣服の販売が低調だったものの、消費増税前に主力の食料品で買いだめの動きがみられ、0.5%増だった。
コンビニエンスストアは6.2%増の7468億円だった。新規出店に加え、大雪に備え弁当などのまとめ買いが増えた。
同時に発表した専門量販店販売統計(速報)によると、2月の販売額は家電大型専門店は3571億円、ドラッグストアが3630億円、ホームセンターが2230億円だった。
2月消費者物価、9カ月連続プラス 上昇率は前月と同じ
総務省が28日朝発表した2月の全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、生鮮食品を除く総合が前年同月比1.3%上昇の100.5だった。プラスは9カ月連続で、07年10月から08年12月まで15カ月連続で上昇して以来の長さ。上昇率は1月と同じだった。
上昇率が1%を超えるのは4カ月連続で、08年5月から11月まで7カ月連続で超えて以来となる。電気料金やガソリンの上昇が引き続き指数を押し上げた。消費増税を前にテレビやパソコン、エアコンといった電気製品なども幅広く上昇。上昇品目数は290、下落品目数は172で、5カ月連続で上昇品目数が下落品目数を上回った。1月は上昇が279、下落が184だった。物価上昇の裾野は拡大している。
食料とエネルギーを除く総合(コアコア指数)は前年同月比0.8%上昇と5カ月連続のプラスだった。傷害保険料の引き上げや円安による海外パックの旅行代金の上昇が押し上げる構図が続いた。
同時に発表した3月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が1.0%上昇の99.7だった。伸び率が1.0%台に乗せるのは08年11月(1.1%上昇)以来。13年度平均の生鮮食品を除く総合は、前年度に比べ0.4%上昇の99.4で5年ぶりにプラスに転じた。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、さすがに、これだけ並べるともうおなかいっぱい、という気もします。次に、雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数・新規求人倍率となっています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。これは雇用統計だけでなく、シャドーで景気後退期をお示しした商業販売統計のグラフにも共通です。

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失業率がほぼ3%台半ばまで低下し、有効求人倍率も1倍を超えているんですから、雇用は堅調に推移しているといえます。もちろん、いくぶんなりとも4月の消費増税を控えた駆込み需要の効果も含まれていると考えるべきですが、2月の積雪の影響もあって、1997年の消費税率引上げほどの駆込み需要は2月時点では生じておらず、むしろ、雇用の増加には4月以降の景気動向も盛り込まれている可能性が十分あると私は受け止めています。そのあたりの企業マインドは、4月1日に公表される日銀短観に現れるんだろうと期待しています。発表された現実の指標を離れて、ひとつの参考ですが、失業率はどこまで低下するのか、という議論があります。一例として、日経センターで集計しているESPフォーキャストの結果では、3月7日に公表された最新の2月調査におけるフォーキャスターの平均で、2015年度は3.61%、2016年1-3月期でも3.58%と、3%台半ばの現在の水準で下げ止まる、という予想が示されています。あるいは、この水準が自然失業率である、というエコノミスト間の緩やかなコンセンサスがあるように私は感じています。しかし、フィリップス曲線に基づく議論では、日銀のインフレ目標2%を達成するためには3%そこそこか、2%台に突っ込むくらいの失業率が2%のインフレに対応する可能性も高く、私も3%台前半、具体的には3.1%とか3.2%の失業率は十分に達成可能ではなかろうかと考えています。特に、ここ2-3か月の足元では、高齢化とともに労働力人口が減少する中で、就業者が増加するという好ましい形で、また、急速に失業率が低下する形で雇用が改善しています。ですから、記憶は定かではありませんが、今年に入ってから、外部の財界団体だか労働組合だかとの会議の席上で、あくまでエコノミストとして、こういった趣旨の個人的な見解を展開したこともあります。4月からの消費増税で一時的に雇用が悪化する可能性はありますが、その先も景気が腰折れせずに回復ないし拡大を続けた場合、どこまで失業率が低下するかも興味深いところです。

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小売販売も前年同月比で+3.6%の増加となっています。消費者物価上昇率が+1%台半ばにも達していませんから、実質で見ても+2%を超える増加です。他方、総務省統計局の家計調査では2月の消費支出は前年同月比で実質▲2.5%の減少となっており、消費を現す統計の結果が分かれてしまいました。私は基本的に家計調査よりも商業販売の方に信頼を置いているんですが、2月の積雪とともに昨年がうるう年であった点を考慮すれば、商業販売統計ほど小売売上げが増加するのもやや疑問が残ります。いずれにせよ、引用した記事の通り、消費支出は自動車や家電耐久財の駆込み需要に支えられて堅調に推移していると考えてよさそうです。逆に、4月の消費増税以降の買控えによる反動減に対してもそれなりの覚悟が必要です。

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消費者物価も+1%を超えて順調に上昇率を高めて来ましたが、4月からの消費増税により一時的にせよ需給ギャップがマイナスに振れますので、この1%台前半ないし半ばの上昇率でモメンタムが低下する可能性があります。興味あるのは、その場合、日銀があくまで目標の2%インフレに向かって追加的な金融緩和に踏み切るのか、それとも、インフレ目標の達成を先延ばしにして静観するのか、という点です。私は基本的にリフレ派のエコノミストなんですが、インフレ率原理主義者ではありませんから、金融の追加緩和はその時点での景気動向に依存すると考えています。やや大胆な意見かもしれませんが、噛み砕いていえば、景気がよくてインフレが低ければ結構なことではないか、すなわち、インフレ目標の達成のために景気を加熱させるべきではないと考えています。ただ、もう1点強調しておくと、物価上昇のけん引役が為替と原油などの商品価格から、引用した記事にもある通り、かなり幅広い品目に裾野を広げています。ヘッドラインやコアのインフレ率は頭打ちになりつつあるように見えなくもありませんが、その中身は多くの品目で価格が上昇するという好ましい内容に変化した、と考えるべきです。

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最後に参考まで、上のグラフは全国51都市、すなわち、県庁所在市と政令指定市の消費者物価地域差指数です。横浜がトップでもっとも物価水準が高く、東京都区部とさいたま市がこれに続いています。なぜか、私が2年間単身赴任した長崎市がこの首都圏の3地域を追っている形になっています。

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