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学生・労働者諸君!日本生産性本部から今年の新入社員のタイプが発表された。今年は「自動ブレーキ型」だ。

私は、毎年、この調査について首をかしげている。毎年、一緒じゃないか、と。今年の新入社員は「新入社員型」なのではないか、と。

この調査は、日本生産性本部「職業のあり方研究会」が命名し、発表している。ちなみに、平成14年度までは現代コミュニケーションセンターという機関が命名していた。

私は『普通に働け』(イースト・プレス)、そして4月に発表する『「できる人」という幻想』(NHK出版)という本で、この「今年の新入社員のタイプ」について考察した。

昭和48年から平成25年までの調査の概要を読み込んだ。

あることに気づいた。それは、言っていることが毎年ほぼ同じではないか、ということだ。

「どうも取り扱いが難しい」
「大人しくて冷めている」
「過保護で育ってきたので打たれ弱い」
「画一的で個性・自主性がない」
「安定志向」
「効率重視」
「丁寧なフォローが必要」

これを、その前年の出来事やヒット商品と結びつけて表現しているわけだ。いかにもステレオタイプ的な若者評論である。

平成26年度の新人の特徴「自動ブレーキ型」についてリリース文では

知識豊富で敏感。就職活動も手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了。何事も安全運転の傾向がある。人を傷つけない安心感はあるが、どこか馬力不足との声も。どんな環境でも自在に運転できるようになるには、高感度センサーを活用した開発(指導、育成)が必要。


とある。

平成25年はこうだ

「ロボット掃除機型」

一見どれも均一的で区別がつきにくいが、部屋の隅々まで効率的に動き回り家事など時間の短縮に役立つ(就職活動期間が2か月短縮されたなかで、効率よく会社訪問をすることが求められた)。

しかし段差(プレッシャー)に弱く、たまに行方不明になったり、裏返しになってもがき続けたりすることもある。能力を発揮させるには環境整備(職場のフォローや丁寧な育成)が必要。


もちろん、「タイプ名」「紹介文」は違うのだが、「効率を重視している」「丁寧なフォローが必要」という傾向は変わらない。

とはいえ、この「今年の新人は◯◯型」は上手くできているな、感じる。ここがにくいところである。企業や大学へのヒアリングなどをもとに行っているので、その年の新入社員を捉えているなと思ったりもする。その年の就職活動の状況などのデータも上手く織り交ぜており、ある程度は論拠になりそうなものを提示はしている。

また、メディアでは「◯◯型」だけがひとり歩きするのだが、元々のレポートには取り扱い方のコツなども述べられていて興味深い。

新入社員が仕事がほぼ未経験であり、上の世代にとっては理解できない部分があることは変わらない。

というわけで、今年の新入社員は「新入社員型」なのだ。それぞれを丁寧に見て、不毛な世代間対立などやめて、良いところを伸ばしましょうや。

普通に働け (イースト新書)
常見陽平
イースト・プレス
2013-10-10


あと、『普通に働け』(イースト・プレス)の「今年の新入社員」に関する章、さらに4月上旬発売の『「できる人」という幻想』(NHK出版)での入社式に関する章は、新入社員がいかに異質なものとして見られているか、過剰な期待がされているのかがわかるので、ぜひ、チェックして頂きたい。


今の私の気持ちを、札幌の偉大な先輩、フラットバッカーが歌っている。「ハードブロウ」という曲だ。

「いい加減にしなさいよ、今に痛いめにあうわよ」


心が洗われる曲だからぜひ聴くように。