強姦事件でさえ加害者が正当化されるスポーツ界の理不尽


(更新 2012/9/10 16:00)

 社会問題化しつつあるスポーツ界のセクハラ。だが、勇気を出して被害を訴えても、社会の無理解が立ちはだかる。

 九州地方でプロゴルファーを目指していた、20代半ばの針本恵子さん(仮名)は2006年の冬、ゴルフの指導者だった庄司正人(仮名・当時56)にラブホテルに連れていかれ、「強姦された」という。一度は告訴を見送った恵子さんだが、2010年、地元県警に被害届を提出することを決意する。

 しかし、庄司が不起訴処分になったと告げられた。「半年間、何の音さたもなく、たった1週間で結論が出るなんて、今考えると、最初から処分は決まっていたんだと思います。検事さんは、『抵抗しようと思えばできたのにしなかった』と言うのです。庄司は両親の前で、泣きながら強姦の事実を認めている。謝罪の言葉を記した誓約書もあるのに、なぜ同意があったと認定されるのか。納得できなかった」(恵子さん)。

 すぐに、恵子さんは、検察審査会に不服申し立てをした。そして今年5月、検察審査会は、「信頼感や恐怖感から心理的に抵抗や反抗できない状態であることを認識しながら犯行を行った」として「起訴相当」議決を出した。だが、再捜査に当たった女性検事の対応が、またも恵子さんの期待を打ち砕いた。

「30歳くらいのキリッとした感じの女性でした。当時、庄司に抵抗できなかった心境を一生懸命、説明したのですが、『う~ん』と首をかしげ、『私には理解できないんですけど』と言われました。痴漢でも、抵抗できる人ばかりじゃない、恐怖で体が固まってしまう人もいる、と訴えても、『私は言えるタイプなので、逃げられない気持ちがわからない』と。抵抗できなかった私が悪かったのかと、傷つきました」

 地検は8月3日、「被害者が同意していないのは明らかだが、心理的に抵抗できない状態だったとまでは言えない」として、2度目の不起訴処分を発表した。

 長くスポーツ界に蔓延するセクシュアルハラスメントを追及してきたスポーツライターの山田ゆかり氏は、こう話す。

「今回の地検の判断は、スポーツ界のセクハラの実態に対し、あまりにも無知、無理解だとしか言いようがない。指導者が、絶対的な力関係や信頼感を利用し、立場の弱い選手に迫るというのは典型的。周囲も実績ある熱心な指導者、という理由で黙認することが少なくないため、加害者が正当化されてしまう」

※週刊朝日 2012年9月21日号

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