【猪瀬氏略式起訴】 議会や記者会見での説明は何だったのか
【信濃毎日新聞】<社説>
■略式起訴に応じず正式裁判を求め、無罪を主張するのが筋だ。でなければ、有権者や議会をだましたことになる
議会や記者会見での説明は何だったのか。
猪瀬直樹前東京都知事が、立候補した知事選の前に医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受け取った問題だ。猪瀬氏がこれを選挙資金と認める意向を示し、東京地検特捜部は公選法違反(収支報告書の虚偽記入)の罪で略式起訴する方針を固めたという。
略式起訴は、裁判にかける正式な起訴と違い、簡易裁判所が扱う100万円以下の罰金などの事件を対象に、容疑者が認めた場合に行われる簡略化した手続きだ。裁判所は公判を開かず、検察から送られた書類の審査だけで略式命令を出す。
速度超過の道交法違反や交通事故の自動車運転過失致死傷などに適用される場合が多い。事件処理の迅速化が狙いで、検察が略式起訴したその日に裁判所が起訴内容通りの命令を出し、被告が即日、罰金を納付して確定することが少なくない。
猪瀬氏は、知事選前の2012年11月に徳洲会の徳田虎雄前理事長と初めて面会した。その2週間後に次男の徳田毅前衆院議員から議員会館で5千万円を受け取ったことが問題になった。
このカネの趣旨について猪瀬氏はこれまで、「選挙をやったことがなく、その後の生活に不安があったので、個人的にお金を借りた」と説明。収支報告書に記載義務がある選挙資金ではないと繰り返してきた。
その通りなら、略式起訴に応じず正式裁判を求め、無罪を主張するのが筋だ。でなければ、有権者や議会をだましたことになる。
徳田前理事長は特捜部の調べに「選挙に使ってもらうためのお金として貸した」と供述した。徳田前衆院議員も同様の説明をしている。猪瀬氏側が有罪を免れないと踏んで、法廷に立たずに済む道を選ぶとすれば、こそくと言われても仕方がない。あらためて有権者や議会に説明する責任がある。………(2014年3月27日)<記事全文>