沖縄伝統楽器:三線ピンチ、技術継承へ協同組合設立
毎日新聞 2014年03月24日 15時38分(最終更新 03月24日 16時50分)
沖縄の伝統楽器・三線(さんしん)。ミュージシャンや観光客にも人気だが、安価な外国製に押され県産の減少に歯止めがかからない。現在沖縄で販売される三線の約7割は外国産とみられ、県産を作る三線職人は高齢化で年々減っている。危機感を持った職人たちは協同組合を設立し、伝統文化の継承に向けてPR活動に力を入れている。
那覇市内の静かな工房で、蛇皮を張るためのくいを打ち込む音が響く。この道40年の三線職人、又吉真也さん(59)は、ほとんどの工程を手作業で行う。「沖縄の人にとって三線は、先祖代々引き継がれる家宝。皮を張り替えれば100年後でも弾けるものを作っている」と語る。
三線は14〜15世紀に中国から琉球に伝わったとされ、王朝から庶民に広まった。現在は民謡のほかポップソングなどにも使われ、沖縄文化を代表する楽器になっている。
2001年放送の、沖縄が舞台のNHK連続テレビ小説「ちゅらさん」や、石垣島出身のビギンの活躍などで人気が高まり、このころから三線の売り上げは増加。那覇商工会議所の調査によると、ピーク時の06年度には年間約4万丁が販売された。
だが売り上げ増加に伴い、土産店などでは中国産やベトナム産などの安価品も出回るようになった。県内の職人による三線は安い物でも1丁5万〜10万円するが、外国産は1万〜3万円程度で購入できる。06年度は販売された約4万丁のうち、約3万丁が外国産だった。
又吉さんは「外国産にはすぐに壊れる粗悪品もある。修理を頼まれても、購入価格よりも修理代が高くなることもあった」と振り返る。三線職人で作る沖縄県三線製作事業協同組合によると、現在はブームが落ち着き年間約1万丁が販売されているが、約7割は外国産とみられるという。
県産三線は品質の高さで対抗するが、二つの課題に直面している。一つは三線作りに欠かせない良質な木材の不足。棹(さお)として使われることの多い黒檀(こくたん)は年数がたっても曲がらず、他の楽器や家具などにも使われる。主にフィリピンから輸入されるが、近年は減少。木材として使用できるまでに500年以上かかるため、良質な黒檀の枯渇は死活問題だ。
二つ目は担い手不足。10年前は県内に60人以上の職人がいたが、現在は約40人にまで減ったという。その多くが60代以上と高齢化も進み、技術の継承が急務となっている。