成田太昭
2014年3月28日14時00分
原爆症の認定申請を国が却下したのは違法だとして、熊本県の被爆者8人が却下の取り消しを求めた訴訟の判決が28日、熊本地裁であった。中村心裁判長は原告8人のうち5人の請求を認めて却下を取り消した。請求が認められた原告は、認定範囲を広げるとして国が昨年12月に導入した新基準でも却下されており、判決は新基準による認定行政が十分でないことを示した。
新基準で却下された被爆者を原爆症と認める司法判断は、20日の大阪地裁判決に続き2例目。判決は、原告が違法な申請却下で苦痛を受けたとして求めていた国家賠償請求は退けた。
原告8人は、原爆投下時やその直後に長崎市内にいて被爆した87~69歳の男女。被爆によって甲状腺機能低下症や高血圧症などの健康被害を受けたと訴えていた。2006~09年に原爆症の認定申請をしたが、被爆との因果関係が認められないなどの理由で却下され、11~12年に提訴した。
裁判では、脱毛や吐き気といった被爆直後の急性症状や被爆時の状況などから、被爆と健康被害の因果関係があると主張した。一方、国は被爆との因果関係を認めず、栄養失調や精神的影響などを健康被害の要因に挙げて反論した。
原爆症の認定をめぐっては03年以降、認定を求める被爆者の集団訴訟が続き、国が次々に敗訴。国は08年に認定基準を見直した。心筋梗塞(こうそく)や甲状腺機能低下症など4疾病については、被爆時の爆心地からの距離などの条件のほか、放射線の影響が原因だとする「放射線起因性」が認められる必要があった。
その後も訴訟がやまず、国は昨年12月に再び基準を改訂。新基準では、4疾病で放射線起因性の条件が外れたが、被爆時の爆心地からの距離は狭められた。被爆者団体は「全ての被爆者に手当を支給すべきだ」と反発していた。(成田太昭)
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朝日新聞社会部
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