「すごく緊張したけれど、日本の人たちが2011年から世界選手権の開催を待っていてくれたことを思い出した。その観客の皆さんの思いが伝わってきて、私の演技を後押ししてくれたんです」
カロリーナ・コストナーは女子SP終了後の会見で、そう語った。
確かにさいたまスーパーアリーナの観客の熱狂的な声援は、通り一遍のものではなかった。日本選手への応援は当然としても、彼女たちの強力なライバルであるカロリーナ・コストナー、ユリア・リプニツカヤ、グレイシー・ゴールドらにも、観客たちはごく自然にスタンディングオベーションを捧げ、氷上にも多くの花束が投げ込まれた。
何種類もの国旗を持参する日本のファンたち。
さらにカナダの選手にはカナダの国旗、ロシアの選手にはロシアの国旗というように、海外選手の演技が終わると客席はその選手の出身国の旗で埋まる。
普通はその国から来た応援団が掲げるものだが、ここでは日本人の観客が各選手の国の旗をそのたびに取り出して、両手の間に広げて見せている。これには海外メディア関係者からも、驚きの声が出た。
「日本の観客は、いったい何種類の国旗を持参してきているの? ソチの観客とはまるで正反対だわ」
英国出身のベテラン記者がそう感想を述べた。何もソチに限ったことではなく、地元選手とそれ以外の選手の声援にある程度の差がつくのは、当たり前のことである。
だがさいたまスーパーアリーナでは、国籍に関わらずどの選手もまるで地元選手であるかのように、熱狂的に迎えられた。
この20年で変化した観戦マナー。
1994年に幕張で世界選手権が開催されてから、今年でちょうど20年になる。当時と比べると、日本の観客の応援マナーは随分と変わった。
「日本のファンは会場ではおとなしいのに、ホテルのロビーでは熱狂的に大声を上げる。どうにかその逆にして欲しいのですが……」と苦笑したのは、その大会で優勝したアイスダンサーのエフゲニー・プラトフだった。
この当時はスタンディングオベーションという習慣はまだ浸透しておらず、おそらくそれは後ろに座る人々への日本的な気遣いが原因であったように思う。
だがいつの間にか、良い演技には観客たちが立ち上がって拍手をするのが当たり前のことになった。日本の選手全体が国際的になり洗練されていくにしたがって、ファンたちも応援の仕方、盛り上げるコツを身に着け、一緒に洗練されていったように思える。
だがその一方で、勇み足から起きたようなハプニングもあった。
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