第三話 「物語」が生まれて
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転生者による原作改変や歪曲は、二次創作の特権ともいえますが、不快にならない程度に留めるのはエチケットかな、とか思いました。
第三話 「物語」が生まれて
私を健康にしてくれた人、その名はフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデ。
少女のような声と容姿を持つお母様のお弟子さん。
ルイズと同い年でありながらスクエアの魔法使い。
貴族としては男爵と低い地位ながら、父親が母の後任であるマンティコア隊の隊長で、母親が水の治療士としては最高峰とまで言われるほどの実力者。
私の治療に何度も通ってくれていて、その上、水の資質があるからとフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデをラ・ヴァリエールに送り出してくれた方。
嫡子であるというのに。
お母様のお弟子さんでもあるという事で、国内での評判も高かったのですが、実の息子をお母様の弟子に差し出したという事で「非常識女」とか「息子殺し」とか社交界でささやかれていましたが、魔法学校入学前の段階でスクエアにまでなった実力の影響か、今度は「無償の愛」とか「無心の愛」とか言われるようになっているのが悔しいです。
親がどうしたとかそういう事じゃないんです。
フレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデ、彼が命を懸けて努力し続けた結果なのに。
ああ、なんて、なんて愚かしい貴族社会・・・・。
「で、カトレアねえ様。どんな感じなのですか?」
私は今、フレデリカが趣味で書いたという物語を読んでいるところ。
「灰かむり姫物語」と題された物語は、私の琴線に直撃の内容で、泣きに泣きました。
ええ、何度も読みかえして泣きました!
昨晩見せてもらってから、何度も読み返して、もう睡眠不足です。
そんなことを言うと、フレデリカは凄くうれしそうでありながら真っ赤になって照れて見せました。
・・・ああああああ、なんて愛らしい!!
まずい、まずいわ。
このままベットに引き込みたい誘惑が・・・・
「フレデリカ!! これ以外にも物語があるってほんとなのぉ!?」
突如私の部屋に現れたのはエレオノールお姉さま。
お姉さまの手には私の持っている原稿と同じぐらいの量の原稿とルイズが握られています。
「いやーん、まだ全部読んでいないのにー!」
「こういう知的な内容は、姉にまず譲るものです!!」
「ひどいひどいですわ、私は直接フレデリカに感想を求められたのにぃ!」
「なぜです、フレデリカ!! このような知的な内容は、まず長女に意見を求めるべき気ではないですか!?」
ばんばんと叩かれた原稿には「白雪姫」と書かれています。
こちらも姫ですか、ちょっと興味がありますね。
「フレデリカ、フレデリカはここにいますか!? 続きはどうなるのですか!? 早く書きなさい、いいえ、早々に語るのです!!」
今度はお母様が現れました。
お母様の手にも原稿が握られていましたが、私たちよりも遙かに厚い内容です。
「お母様、それ、私も読んでかまいませんか?」
「・・・貴女たちには少し早いにようですね。」
「でも、ルイズと同い年のフレデリカが書いたんですよ?」
「宮廷事情に明るくない貴女たちが読んでも意味不明な内容です。もう少し大人になってから読みなさい。」
そういって抱きしめた原稿には「風と共に去りぬ」と書かれていました。
これが以後、ド・リステナーデ家とラ・ヴァリエール家の基幹産業になり、演劇革命さえ起こしたという「物語産業」の始まりでした。
これより魔法学校入学まで、フレデリカの生活は「執筆7」:「修行3」に移行し、もっとも心休まらない日々とフレデリカが語った時期になるのでした。
この影響で、ラ・ヴァリエールの書庫は我が国でもっとも貴族子女が訪れたい場所になったのでした。
うる覚えの記憶で童話をルイズに語ったところ、本にまとめようと言う話になったのです。
使用人の女の子たちも巻き込んで、10冊ほど簡単な製本でつくったところ、カトレアねえ様にばれてしまい、一冊召し上げられた上に新しい物語を作る旨指令が下った。
そこで、不幸物語であるシンデレラを、我が国の貴族っぽく作ったところ、大好評。
平行して「白雪姫」と「風と共に去りぬ」を途中まで書いたのがまずかった。
白雪姫は里帰りしていたエレオノール様に発見されるし、風と共に去りぬは御師匠様に発見されてしまった。
既存の童話と併せて貴族用の装丁にしたものを売らせろというか広めたい、と御師匠様に熱望されたので、致し方なく許可したところ、爆発的に広まってしまった。
童話は簡易装丁版で市政にあふれ、物語は貴族社会にはびこってしまった。
娯楽の少ないこの世界には劇薬だったみたいなのです。
そんなわけで、新たな物語を記憶の向こうから引っ張り出したり、古典をこの世界風に変換したりしてネタを出し続けているのですが、供給に対して好みが千差万別で対応しきるわけがないのです。
最近では父上の関係者から「男性向けの物語」の所望があったので、ザックリとソフトなハーレム系ギャルゲーっぽい内容を書いたところ、御師匠様がキレるほどファンレターが来て驚きすぎたのです。
実はその中に、「ギトー」とか「リッシュモン」とか「ド・ワルド」なんてやばげな名前も混ざっていて、冷や冷やものなのですよ。
で、次はこのキャラクターを中心に、という要望を見ると彼らの性癖がしれます。
たとえば、「ギト○」さんは、お色気むんむんのお姉さまタイプに弱い。
「リッシュモ○」さんは、お色気よりも母性あふれるお姉さんタイプに翻弄されるのが好み。
「ド・ワルド」さんは、言わずとしれた「ロリコン」。
それも、ナイチチツンデレが好みという超強者。
最近成長著しいルイズはストライクからはずれているらしいいのですが、幼い頃から洗脳して育てるという路線がばっちりらしく、抜粋した「若紫」を返事で送ったら、「神」扱いされたのです。
とりあえず、この手紙を持っていれば、最悪「ド・ワルド」を異端認定できるので切り札にばっちりなのですよ、ニパー。
と、そろそろ原稿をあげないと殺されてしまうので、サクサク書きましょう。
えーっと、そうそう、「マイフェアレディー」。
これでも読んで、股間の煮えたぎった殿方が反省してくれればいいんですがねぇ?
どれだけの想像力があるのか分からない。
はじめは私とフレデリカのお遊びだったんだけど、いつの間にか簡単な本まで作って、最近では物語の出版でフレデリカの実家やうちまで潤ってしまっている。
初めからのつき合いで、私はまるでフレデリカの秘書みたいな事をしているけど、どちらかというと一番初めの読者みたいな感じだと思ってる。
色々と貴族社会を風刺した内容や、過去の事件を引っ張りだして脚色している場合が多いので、家柄や風評にならないようにかなり気を使って読んでいる。
でも、「ツェルプストーとラ・ヴァリエール物語」は、かなりまずい。
というか、完全にダメだ。
この、過去に名前で存在しない「ロミオとジュリエット」という架空の名前は良いけど、事件や騒動、そしてあたかも本当にあったかのような話の展開は不味すぎる。
明らかにラ・ヴァリエールの評判を落とすものだって事で、かなり不味い。
こんな原稿をお母様に見せられない。
そう思って頭を抱えていたところ、ひょいっと原稿を奪う手。
それは絶対に見せて引けない相手、お母様だった。
じっくりと内容を読んだ後、お母様は杖を構えてフレデリカに向かいました。
「辞世の句を詠むことを許可します」
「とりあえず、これは必要なことなのですよ」
フレデリカ曰く、彼の実家はまぁいいとして、王位継承権をもつようなラ・ヴァリエールが他人のゴシップを揶揄するような話ばかり出版しているのは不味い。自分たちの話も出さないと、そろそろまずい、という。
それをきいた瞬間、色々と思い当たるところがあるのか、顔をしかめて杖をおろすお母様。
「内容をよく読んでもらえば分かると思うのですが、基本、12~13歳の子供が愛だ恋だと大騒ぎして自殺騒動まで起こして大人を困らせるというのが真実なのです。こんな話を悲恋とかもてはやすとなると、よっぽど頭が暖かい連中なのです」
予言するわよ、フレデリカ。
この話は売れるわよ?
それも、年頃の乙女のいる貴族にバカ売れ。
間違いないわ。
ゲルマニアにも絶対売れるわ。
ツェルプストーが売って回るに違いないもの。
あー、なんというか、未来が暗いわ。
懐は暖かくなるでしょうけど。
あーあ。
※ 今回の元ネタ
うるおぼえの童話 ・・・ 不思議の国のアリス
灰かむり姫物語 ・・・ シンデレラ
白雪姫物語 ・・・ 白雪姫
若紫 ・・・ 源氏物語
風と友の去りぬ ・・・ 風と共に去りぬ
ツェルプストーとラ・ヴァリエール物語 ・・・ ロミオとジュリエット
※読み直しつつアップしているので、結構時間がかかります(OTR)
原作名:ゼロの使い魔
文字数は3,536文字