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第二話 この世の地獄が生まれて

トップページ > 神代ふみあき書庫 > 非赤松椎名系作品 > フレデリカとゼロ魔 > 第二話 この世の地獄が生まれて




 ああ、今日も生きて朝日が拝めました。
 夜半から続き、日の出と共に終わる「終わる世界演習」と領民から呼ばれているシゴキを、どうにか今日も乗り越えました。
 このシゴキに比べれば、軍事演習? はっ、どこのお遊戯ですか? というレベルなのです。
 これが三日に一度行われるというのだから、ぜったい僕を殺したいに違いないとはじめの三日は思ったんですが、手を変え品を変えて防御や逃走をしていると、日に日に攻撃のレベルが上がってゆき、最近では山をも両断するような魔法が襲ってくるようになりました。
 ラ・ヴァリエールの長女など、はじめは観戦していましたが、日に日に過酷になるシゴキから視線を逸らし、最近ではシゴキが始まると自室にこもるようになったのです。
 まぁ、僕が両手両足が変な方向に向いて血を吐きながら空中から落ちてきたのを目撃してから視線を逸らし始めたので、それなりにトラウマになっているはずですが。
 それでもシゴキをやめないあたりが師匠の恐ろしいところで、無茶苦茶高い水の秘薬を大量に投与して特訓を続けさせるというのですから気が違っているのです。
 ともあれ、魔法はガンガンレベルが上がって、現在、水トライアングル、風ライン、火ライン、土トライアングル、とかなりの万能になりつつあるのです。
 正直、師匠は風をどうにかしてトライアングルに仕立てたいらしく、特訓に次ぐ特訓が続いていますが、防御と治癒に集中せざるえないので、水と土がレベルアップしてしまうのです。
 そんなわけで、ここは一つ座学でもと提案したのですが、演習時間が倍になっただけでした。
 そろそろ死ぬのですよ?




 見た目はお姫様、口調もお姫様。
 だけど根性が王子様という、非常に変な男の子は、名前もお姫様のようだった。

 フレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデ。

 お母様の直弟子の息子さんを直接鍛えると聞いたとき、なにを血迷っているんだ、と正直に聞いてしまった。
 確かに長女である私は母の才能を受け継いでいるとはいいがたいし、次女のカトレアは病弱で成人できないかもしれない。
 三女も些か根性にかける性格であることはわかっているので、外部に期待をかけるのも理解できるけど、それでもルイズと同い年の子供に、まさかまさかの特訓が続いていた。
 はじめはキャーキャーいって逃げるだけであったフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデ。
 しかし、日を追うごとに反撃したり罠を仕掛けたり、罠に見せかけて反撃したりと、実に命知らずに正面攻撃を仕掛け始めた。
 それを実に嬉しうそうに正面からつぶすお母様だったんだけど、ある日、表情を歪めさせられていた。

「・・・死んだかしら?」

 見れば、四肢はあらゆる方向を向いており、愛らしい顔は血にまみれ、頭から庭に落ちてきてきた。
 本気で死んだと私は思ったけど、奇跡的に水の魔法に目覚めたフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデはとりあえず両足を治癒させて、信じられない速度で庭を走り抜け植木に隠れた。
 そこで意識が途切れたらしく、血反吐を吐いて植木の中で半死半生になっていた。
 まるで、宝石箱を見つめる乙女のような瞳でお母様はフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデを見つめる。
 どんなにいじっても壊れない玩具を与えられたようなものに違いない。
 私はそれ以降、家の予算の許す限り水の秘薬を大量入荷しておくことにした。
 さすがにあの愛らしい少年が死ぬのはいやだったから。




 はじめは嫉妬した。
 あれだけお母様に特訓されれば魔法も開花する、と。
 で、間近であの特訓を見て、私は逆のことを思った。
 魔法の才能がなくてよかった、と。

 フレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデは魔法の才能の固まりなのだそうだ。
 お母様との特訓のなかで、すべての属性のドットに目覚めたかと思いきや、今度はすべてラインになった。
 うちにきて僅か一年ほどのことだった。
 その才能に嫉妬するのが普通だけど、あの才能を生んだのがお母様との特訓なら、魔法など使えなくても良いとすら思った。
 というか、偏在を使って山をも削るカッタートルネードを四本も叩き込まれて生きてる時点でフレデリカも規格外だと思う。
 そんなことをこの前の休みの時に本人へいうと、実に清々しい笑顔でこんな事を言われた。

「ルイズ、あなたも絶対規格外なのです。今はまだ猶予期間(モラトリアム)なので、この時間を大切にするのですよ」

 まるで予言者のようなせりふだったけど、この後に出されたフレデリカ作のバカウマケーキのせいで、私はこのことを忘れてしまう。













 昨日、チートに目覚めたのです。
 まぁ、この世界を「ゼロの使い魔」の世界として認識している時点でチートなのですが、とうとう転生者の醍醐味「チート」に目覚めたのです!!
 なんと、水と風と土がスクエアになったのです!!
 それもそれぞれがスクエアレベルで扱えるのです!!
 おお、なんたるチート!!
 ・・・ごめんなさい、違うのです。
 ・・・純粋に死にそうな特訓の成果なのです。
 ただ、この魔法の成果なのですが、カトレアねえ様(と呼ばないと起こられるのです)の病巣が分かりました。
 いわゆるガンなのです。
 そりゃ、表面的に水の魔法で治しても無駄なのです。
 元々のガン細胞を倒しても転移しているせいでイタチごっこという状態なのですから。
 色々と抱きしめられたりルイズと共にオママゴトに巻き込まれたりしながら調べたので時間がかかりましたが、なぜか大量に備蓄されている水の秘薬を大量使用すればかなりの確率で直るはずなのです。
 そんなわけで、御師匠様に相談したところ、深々と頭を下げられてしまいました。

「何でもします、だから娘を救ってください」と。

 内心、特訓の中止を訴えようかと思いましたが、実のところ、その特訓のおかげで実力を上げた訳ですし、数々の最強勇者ロボ練金ゴーレム部隊も師匠との特訓で磨かれた訳です。
 だから、不祥の弟子に向かって頭を下げるなんて格好の悪いまねをしないでほしいのです。

「師匠、あなたはいつものようにこう言ってくださればいいのですよ?『成し遂げなさい』と。」













 それは夢のような光景。
 次女カトレアは、たぶん成人するまで生きられないと言われていたし、生きていたとしても定期的に水の治療士の世話になり続けるほかないとまで言われていた。
 何度完治させても何度もかかる病。
 完治せず、そして延々に苦しみ続ける。
 不憫すぎて何度涙を流したか分からなかった。
 しかし、過去から今現在にかけてもっとも優秀な弟子であるフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデは言う。

「これは、この病は、絶対的な力と強引なまでな治癒ですべての病巣を活性化した上で、針の先ほどの病巣すら見逃さない集中力を数十人単位で投入すれば完治できるのです。」と。

 娘の病気は、きわめて小さい単位の体の一部が反乱を起こし、次々と反旗を翻させる病気なのだとかたる。
 だから、わざと反乱の予兆を持つ体の一部まで反乱を起こさせ、薙祓う必要がある、と。
 初めて聞く話だったが、主治医を始め、アカデミーの治療士たちもその意見に賛成し、一大治療作戦まで立案された。

 長女エレオノールとフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデによる指揮により、治療士団は三日三晩の治療を終え、今は倒れ込むように眠っている。
 指揮をしたエレノオールも疲労の極みにあるが、細々と行った解析の結果から、妹の健康を確認し、倒れ込むように床に伏した。
 いや、それをゆっくりと受け止めたフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデが、魔法でエレノオール受け止めて、あいているソファーに寝かせた。
 我が弟子も魔法力の大半を使い果たしているはずなのに、ここ一番で踏ん張りがきくのは特訓のおかげであろうと自画自賛だ。
 感謝を込めて、特訓のレベルをあげようかしら?



原作名:ゼロの使い魔

OU:1人
UA:23,032人

文字数は3,152文字