10月29日鹿児島性暴力裁判の被告人に対する証人尋問が行われました。
傍聴報告は中旬頃になりますが、新聞に掲載された記事を貼り付けます。
南日本新聞2013. B10.30. 鹿児島地裁公判
女性証言を不定~準女性強姦強制起訴~被告「強引でない」
ゴルフを教えていた少女に乱暴したとして、準女性暴行の罪で強制起訴されたゴルフ練習場経営、稲森兼隆被告(62)=鹿児島市=の第4回公判は29日、鹿児島地裁(安永武央裁判長)で稲森被告の本人尋問があった。稲森被告は「強引でなかった」と強調し、「指導名目でホテルに連れ込まれた」などとする女性の証言の大半を「うそだ」と主張した。
女生と性的関係を持った理由を「女性が指導から離れる喪失感」と説明。裁判官から「社会的に許される行為か」と問われると、「当時は喪失感で頭が回らなかった」「つながりを持ちたかった。性的行為以外に思いつかなかった。反省している」と述べた。
口止めされたとする女性の証言も全面的に否定。「厳しい指導で体罰もあった」とした女性や女性の同級生らの証言も、「うそだ」と主張した。
起訴状によると、稲森被告は2006年12月、ゴルフ指導を口実に当時未成年の女性をホテルに連れ込み、恐怖や混乱で抵抗できない状態の女性に乱暴したとされる。稲森被告側は「女性が抵抗できない状態を認識しておらず、罪を犯すつもりはなかった」として無罪を主張している。
次回公判は12月25日。検察官役の指定弁護士は、精神科医による心理鑑定書の提出と証人尋問を予定し、被害者の心理状態を立証したい考え。1月にも論告求刑公判が開かれる見通し。
女性証言は「うそばかり」 性犯罪初の強制起訴でゴルフ指導者
2013.10.29 14:26 [性犯罪] 産経新聞ニュース
ゴルフの教え子で当時18歳の女子高校生に対する準強姦罪に問われ、性犯罪で初めて強制起訴された鹿児島市のゴルフ練習場経営、稲森兼隆被告(62)は29日、鹿児島地裁(安永武央裁判長)の被告人質問で「(被害女性は)よくあんなにうそばかりつけるものだと思った」と述べた。
女性は公判で「ゴルフ指導の名目でホテルに連れ込まれ、直前にゴルフで説教をされていたため抵抗できなかった」と訴えたが、稲森経営者は「一切していない」と否定。「抵抗していなかったと認識し、受け入れてくれたと思った」と改めて起訴内容を否認した。
起訴状によると、平成18年12月9日、ゴルフ指導を口実に女性をホテルに連れ込み、混乱して抵抗できない状態にあることを知りながら乱暴したとしている。<B$K=w@-$r%[%F%k$KO"$l9~$_!":.Mp$7$FDq93$G$-$J$$><B$K=w@-$r%[%F%k$KO"$l9~$_!":.Mp$7$FDq93$G$-$J$$> 鹿児島地検は「拒否の意思表示をしていない」と不起訴にしたが、鹿児島検察審査会は昨年5月、起訴相当と議決。地検は再び不起訴としたが、検審は同年10月、起訴すべきだと議決した。
7月12日、鹿児島性暴力裁判の傍聴に行ってきました。S子さんは1つ上の階に設置されたビデオリンクの部屋で証人尋問を受けました。しかし部屋が別というだけで、その部屋がどのような状態なのか事前の情報はなく、唯一の配慮は被告人が裁判所に入る時間より1時間ほど早く時間差を設けて裁判所にはいるということだけでした。
ビデオリンクの部屋との音声の調節や確認などをしたうえで、公判が始まりました。S子さんの声は少し緊張を感じましたが落ち着いていて、聞き取りやすかったです。一方、ビデオリンクの部屋では進め方の協議などの際に裁判官がマイクのスイッチを切るため、「何が話されているのだろう」という気持ちがあったそうです。また部屋には、窓がないうえにロッカーなどが置かれた狭い部屋で、とても安心や安全を感じられる雰囲気ではありませんでした。
午前中の尋問はスムーズに進みました。S子さんは終始落ち着いて、質問に的確かつていねいに答えていきました。その声のトーンはS子さんが起きたことをありのままに語っていることを感じさせ、説得力がありました。お昼の休憩に入り、傍聴席にいた九州ブロックの谷崎さんと私はS子さんと付き添い人の亀井さんと合流、いっしょに昼食を食べました。S子さんは極度の緊張で食事がほとんどとれない状態でした。証言によって当時のことを生々しく思い出したしんどさもあったと思います。
午後、少しだけ午前の続きの尋問があり、その後は反対尋問に移りました。この時に驚いたのは、相手方の弁護士の1人がビデオリンクの部屋へ向かったことです。「尋問の際に示される証拠などをS子さんに提示するため」という理由でしたが、被告人の側に立つ弁護士がすぐ横にいるという精神的負担をどう考えているのでしょうか。
反対尋問そのものは予想よりあっさりとしたものでした。しかし被害を受けた時の様子を具体的かつ細かく聞かれるのです。「その時、あなたは右を向いていましたか、左ですか」というようなことです。それが何年もの間苦しみ続けている被害者にどれほど大きな打撃を与えるか。もちろんS子さんは覚悟の上でここまできたわけですが、傍聴席で聞いている私たちでさえ本当につらく長い時間でした。
そして、とうとうS子さんは途中で意識が遠のいてしまいました。いったん休廷となり、急いでビデオリンクの部屋に向かうとS子さんはぐったりとしていました。その横に被告人の弁護士がいました(休廷中は席を外されましたが)。
看護師さんが呼ばれ、脈や血圧が測られました。数値的には異常なしとのことで、約20分後に尋問が再開されました。看護師さんが「この部屋は窓もないし、息苦しいですよね」と言われたので「やはりおかしい」とあらためて思いました。そんな環境のなかでがんばったS子さんでしたが、休廷直前の尋問ではほとんど意識のない状態での応答で、普段の彼女にとっては不本意なものだったのではと危惧します。
最後に驚くべき事態が起きました。反対尋問が終わった後、裁判官たちからの補足的な尋問がなされたのですが、あろうことか裁判長がS子さんの性体験に言及する質問をしたのです。すぐに指定弁護士が異議を申し立てました。当然のことですが、「本件とは関係ない」と。ところが裁判長は「関係あると考えます」と言うのです。指定弁護士がアメリカやカナダでのレイプシールド法の説明をしても聞こうとせず、最後には「アメリカやカナダは関係ない。ここは日本だ」と言い放ちました。さすがにこれはまずいと思ったのか、慌てて「関係ないというのは言い過ぎかもしれませんが、判決に向けて被害者の”人なり”を知るために必要な情報である」というような意味合いの発言をし、傍聴席からは驚きと怒りのこもったざわめきが起こりました。
この指定弁護士と裁判長とのやりとりの際にはビデオリンクと通じるスイッチがオフにされたため、S子さんには聞こえていませんでした。裁判長はスイッチをオンにして、再び過去の性体験に言及し、質問の意味が十分に理解できず、まだ判断力も完全に回復していない状態のS子さんが「すみません」と言うと、「過去の性体験があるかどうかへの答えは”すみません”ですか」「記録には”すみません”か、”・・・”か、どちらを記載しますか」と何度も追及するように尋ね、どちらかを選ぶように畳み掛けるように言い続けました。最終的にS子さんは「・・・」という記録を選びましたが、その声の様子から「判断」「決断」というより「とまどい」や「不安」が伝わってきました。
性暴力の被害に遭った人の訴えを聞くのに、その「人となり」を知る必要があるのでしょうか。「人となり」によって被害の重みが違ってくるのでしょうか。何より、過去の性体験と性被害との間にどのような「因果関係」があるというのでしょうか。その他にも3人の裁判官がそれぞれに、S子さんに対して「(被告人に)連れて行かれたのがラブホテルだと本当にわからなかったのか」「ラブホテルというもの自体は知っていたのか」「それまで行ったことはなかったのか」としつこく聞いていたことにも驚き呆れました。こうした尋問の内容、仕方に彼らの「意識」「本音」が表れていると感じています。それだけにこの裁判はS子さんにとって厳しいものです。しっかりと見守り、S子さんを支えていきましょう。
≪レイプシールド法(強姦被害者保護法)≫
アメリカおよびカナダには、「Rape shield law」という通称で呼ばれる証拠法で、性暴力の被害者が訴訟で不利益を受けることを防止する目的で制定された法律。
(目的)
第1 本来、被害者が過去においてどのような性的経験を有するかは、当該具体的な性行為についての「同意」、あるいは、被害者の供述の「信用性」ともなんら関連性はない。被害者の他の性的行為や性的経験についての証拠に証拠能力を認めることは事実判断を誤らせる危険性がある。また、法廷の場においてそれらを問題とすることは、不必要に被害者のプライバシーを侵害するおそれがある。
第2 被害者の性行動や過去の性経験に関する証拠を捜査の過程で収集したり、裁判で公開したりすることは、法廷が被害者の性行や行状を裁く場となりかねず、被害者に無用の羞恥心を抱かせ、さらに被害者が周囲からセカンド・レイプを受ける可能性も大きい。これらの行為が許容されると、被害者が告訴をためらって法的救済が受けられなくなるばかりか、結果として性暴力という違法行為と行為者が放置されることになる。
この法律が制定されるまで、性暴力事件において、被害者が加害者との性交に「同意」していた証拠として、被害者の過去の性経験が提出されるというケースがしばしば見られた。加害者のそうした戦術は、被害者に法廷で多大な屈辱を与え、また被害者が告訴することを妨げる原因ともなってきた
(波線は編集者)
≪強制起訴までの経緯≫
当時18歳の高校生だったS子さん(仮名)は、プロゴルファーになるためゴルフ教室に通っていました。2006年12月そのゴルフ場経営者である男性(61)に鹿児島市内のホテルに連れて行かれ強かん被害を受けました。この経営者は、S子さんの指導者でもありました。
鹿児島地検は「嫌疑不十分」として不起訴処分にしました。
S子さんは2012年2月20日に検察審査会に申し立てを行い、同年5月11日鹿児島検察審査会は「起訴相当」と議決しました。
この時の議決書によれば「男性は、ゴルフ指導の名目でホテルに連れ込み、直前に30分間説教している」と指摘しています。「年齢や子弟関係から、女性は抵抗することが相当困難な状態になった」との判断もしました。地検は「議決を踏まえて再捜査する」としましたが、8月3日再び嫌疑不十分で不起訴処分としました。
そして10月24日、検察審査会は、鹿児島地検が二度不起訴処分にしたこの事件を準強姦罪で「起訴すべき」と議決し、男性は強制起訴されることが確定しました。
検察審査会は上記理由に加え「被害者の従順な性格を利用し、行為を受け入れざるを得ない状況に追い込んだ」と判断しています。
12月12日には鹿児島地裁から検察官役に指定された大脇通孝弁護士らによって、準強姦の罪で在宅起訴されました
最近の性暴力裁判は、一審・二審が有罪になっても最高裁で敗訴するケースがあり、予断は許せない状況であると思います。
以上のような経過を経て強制起訴されたこの裁判は、性暴力史上初めての強制起訴であり、状況から考えても、勝訴しなければならないと考えています。そのためには社会的関心が高く、この裁判が注目されている状況を裁判官たちに示すことが大切です。
≪みなさんへのお願い≫
会員のみな様の暖かいご支援をお願いしますとともに、鹿児島はもとより九州にお住まいの知り合いの方にも「傍聴支援」を呼び掛けていただきますよう。お願い致します。
裁判の日程については分かり次第ご連絡しようと思っています。
≪もうひとつのお願い≫
S子さんは、プロゴルファーになる夢をあきらめ現在、鹿児島を離れて関東で働いておられます。様々に経費がかかるため、裁判支援カンパをお願いいたします。同封しました振替用紙に「裁判支援」と明記の上、お振込をお願い致します。
【郵便払込取扱票】
番号:00960-8-73781
加入者名:SSHP全国ネットワーク
日 時:2012年8月2日(木)9時~16時半
場 所:かながわ女性センター
テーマ:スクール・セクハラを防止するために
内 容:男女平等教育への理解を深めるとともに人権を尊重した対応をするためにスクール・セ
クシュアル・ハラスメントについて正しく理解し、児童・生徒にどう対応するか理論とワー
クショップで学びます。
講師:特定非営利活動法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク
代表 亀井明子
≪タイム・スケジュール≫
午前の部では、『スクール・セクハラの概念と実態』をお話します。
午後の部では、『スクール・セクハラの相談に向き合う』ことをロールプレイを通して実践的に学
びます。
※詳細・お申し込みは【かながわ女性センター】のホームページから
=京都教育大学集団準強かん事件の処分無効判決について=
京都地裁判決を見て、私たちは大学に対して処分は妥当であり、大学として控訴されるように要望書を出しました。
以下は大学学長に宛てた文書です。
独立行政法人京都教育大学
学長 位藤紀美子 様
2011年7月22日
特定非営利活動法人
スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク
代表 亀井 明子
京都教育大学集団準強かん事件の「無期停学無効」判決に対しての控訴要請書
7月16日付け新聞報道により、2009年「集団準強かん」で無期停学処分になった6人の学生のうち4人が「処分取り消し」を求めた裁判により「無期停学無効」の判決が出たことを知りました。この判決に私たちは強く抗議の意を表し、貴大学に対しては毅然とした態度で「処分の有効性」を主張し、控訴されることを強く要望いたします。
その理由を以下に述べます。
① この裁判は、処分の軽重について争ったものであり冤罪を主張した内容でないこと。
② ①の観点から「集団準強かんがなかった」とされるのは実に不可解である。
③ 「集団準強かん容疑」で逮捕され、その後被害者の告訴取り下げがあり示談が成立している点から、示談に応じたのは何らかの性的行為が集団であったと認めたからに他ならない。
④ 学内(居酒屋であっても集団として場を移動してのコンパであり学内の関係をそのまま継続としていると捉え最低限セクハラ行為として考えても)でのこのような性的な行為はセクハラ行為であり、当時大学が「男子学生を隔離し、女子学生の修学を保障」するのは当然の措置であり、被害者擁護の観点から「停学処分」は当然である。
又「無期停学処分」を解かなかったことも、本来であれば被害学生が修学を完了するまでその措置は継続されるべきものであり当然と考える。
⑤ 次に重要な観点として、このような状況(1人の女子学生と6人の男性との間の合意は如何にも不自然であり、見張りをつけたりした経緯も考えれば)で合意はあり得ない。
⑥ どのような職業に就くにしろこのような性的行為は人間としての資質に多いなる問題があると考える。ただ教員養成大学に学ぶ学生として、今後教員になるにせよ、体育会の学生としてスポーツ指導者になるにせよ、子どもを対象とした職業を選択することは大いに考えられる。
教員の性犯罪(スクール・セクハラに該当する事案)の裁判事例を以下に記している。
既に承知のことであると思うが2010年3月18日広島高裁で争われた裁判の判決で、以下の記事にある様に、この事件の被告の教諭は学生時代から性癖があったと裁判の中で立証されている。
「教え子の女子児童に性的暴行をしたなどとして、強姦(ごうかん)や強姦未遂などの罪に問われ、一審で法定最高刑の懲役30年とされた元小学校教諭森田直樹被告(44)の控訴審判決公判が18日、広島高裁であり、竹田隆裁判長は改めて懲役30年を言い渡した。竹田裁判長は、一審で認定された事実の一部について、事実誤認を認め一審判決を破棄。その上で「狡猾(こうかつ)に長期にわたって犯行を繰り返しており、誠に悪質」と断じ、「一部について証拠上認定できず刑責を問えないことを考慮しても、最高刑をもって臨むほかない」とした。
判決によると、森田被告は約4年8カ月の間、勤務先の小学校の校舎内などで、教え子の女子児童延べ15人に対し、計95件に上る性的暴行やわいせつ行為をした。」
現に学生の中の一人は、停学中逮捕直前まで地元の学童保育の指導員として働いていたという事実もある。
蛇足であるが当時、当該市の教育委員会幹部であった父親が青少年課長(決定権を有する)という肩書きで学生を採用していたことも教育に携わるものとして大きな問題である。
⑦ 児童だけでなく、教育現場でのセクハラの訴えの中には教員間での事象も多発している。
女性を性の対象と捉え、性を蹂躙することは人格権の侵害であり、性的自由の侵害、又労働権の侵害にもなり幾重にも重なる大きな人権侵害行為である。
このような場面での加害者を見てきた私たちは、性犯罪からの回復は極めて困難であり未知の分野であることを考慮すると、本来は児童に関わる職業・ボランティア等も制限するのが妥当であると考えています。
日本では未だ法的に整備されたものはほとんどありませんが、アメリカの公民権法では、厳しく制限していると聞きます。これらに習うべく今後の課題として捉えることは重要です。
私たちは、貴大学の「無期停学」処分の決定を当然のことと考え支持を表明するとともに、この度の判決に対して控訴を決断いただきたく、要請いたします。